toboketaG の春夏秋冬 

雑文、雑感、懐古話そして少しだけ自己主張。
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176-260712「飢餓海峡」を読み直す

2014年07月12日 | 小説・映画・など

 

Dsc02880 前橋市横室町のカヤの巨樹。 隣地が牛小屋で、栄養分は豊富。一般的に針葉樹は虫害や病気に強いようできわめて樹勢が良い。東日本一と説明されている。

 

 

乱読癖が治らない。

新聞に載った小説の背景紹介を見て読み直す気になる。ご存じ水上勉の小説。

映画化された中では、犯人犬飼多吉(本名樽見京太郎)を三国連太郎、それを追う

函館署の刑事弓坂を伴淳三郎、犯人に救われる女八重を左幸子、さらに弓坂ととも

に犯人のアリバイを崩す舞鶴署の刑事を若き日の高倉健と、そうそうたる配役。健さ

ん以外は亡くなってしまった。

 

まず本を読もう。読み終わったら映画を見てみよう。かなりのボリュームだったが1週

間で読み終わり、すぐに映画を見る。両方を見ての感想。

最初に本。犯人は北海道で強盗殺人放火と大罪を犯し、連絡船を沈めた台風の余

波の中、手漕ぎ和船で下北半島の仏ヶ浦に渡る。その後10年が経過し今は京都府

舞鶴市で水産物加工会社の営者となり、地元の名士になっていた。

場面場面で背景を勝手に想像しながら中に没頭する。私が過去に見聞きした舞

台、高度成長期以前の貧しい農村、北海道大地、網走監獄、寂しい下北半島の

農家、森林鉄道、恐山、焼夷弾で焼け野原になった東京下町、戦災孤児がたむろし

ていた上野駅地下道、片足をなくした白衣の傷痍軍人の奏でる物悲しいアコーディ

オンのメロディー、低いが込み入った山や谷が連なる京都府北部の地形。これらが

勝手に舞台として頭に浮かぶ。作者もすべての舞台を歩いたわけではあるまい。想

像を通して作者と一体になる。

P8165074 植え込みの緑を維持する散水。

そして映画。巨匠内田吐夢監督の手になる映画。昭和40年作とある。数々の賞を

獲得した。しかし本を読んだ後に映画を見ると頑張っているとはいえ、映像化の限界

があるように思える。物足りない。本で私が勝手に想像した人物、地形、層雲丸転覆

(史実では洞爺丸)の現場とどこか違う。

戦後映画の傑作との評価の高い黒澤明監督の映画。「七人の侍」、「用心棒」、「野

良犬」等は原作となった小説はない。先入観なしで映像に接せることができる。対比

するものがないので映像が全て。小説の映画化は難しいものだと思う。内田監督は

黒沢監督に比べて明らかにハンディを背負う。それを承知で映画化に踏み切ったと

思う。

本とはすばらしい娯楽。自由気ままの想像の中で楽しむことができる。

 

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