前橋市横室町のカヤの巨樹。 隣地が牛小屋で、栄養分は豊富。一般的に針葉樹は虫害や病気に強いようできわめて樹勢が良い。東日本一と説明されている。
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乱読癖が治らない。
新聞に載った小説の背景紹介を見て読み直す気になる。ご存じ水上勉の小説。
映画化された中では、犯人犬飼多吉(本名樽見京太郎)を三国連太郎、それを追う
函館署の刑事弓坂を伴淳三郎、犯人に救われる女八重を左幸子、さらに弓坂ととも
に犯人のアリバイを崩す舞鶴署の刑事を若き日の高倉健と、そうそうたる配役。健さ
ん以外は亡くなってしまった。
まず本を読もう。読み終わったら映画を見てみよう。かなりのボリュームだったが1週
間で読み終わり、すぐに映画を見る。両方を見ての感想。
最初に本。犯人は北海道で強盗殺人放火と大罪を犯し、連絡船を沈めた台風の余
波の中、手漕ぎ和船で下北半島の仏ヶ浦に渡る。その後10年が経過し今は京都府
舞鶴市で水産物加工会社の経営者となり、地元の名士になっていた。
場面場面で背景を勝手に想像しながら中身に没頭する。私が過去に見聞きした舞
台、高度成長期以前の貧しい農村、北海道の大地、網走監獄、寂しい下北半島の
農家、森林鉄道、恐山、焼夷弾で焼け野原になった東京下町、戦災孤児がたむろし
ていた上野駅地下道、片足をなくした白衣の傷痍軍人の奏でる物悲しいアコーディ
オンのメロディー、低いが込み入った山や谷が連なる京都府北部の地形。これらが
勝手に舞台として頭に浮かぶ。作者もすべての舞台を歩いたわけではあるまい。想
像を通して作者と一体になる。
そして映画。巨匠内田吐夢監督の手になる映画。昭和40年作とある。数々の賞を
獲得した。しかし本を読んだ後に映画を見ると頑張っているとはいえ、映像化の限界
があるように思える。物足りない。本で私が勝手に想像した人物、地形、層雲丸転覆
(史実では洞爺丸)の現場とどこか違う。
戦後映画の傑作との評価の高い黒澤明監督の映画。「七人の侍」、「用心棒」、「野
良犬」等は原作となった小説はない。先入観なしで映像に接せることができる。対比
するものがないので映像が全て。小説の映画化は難しいものだと思う。内田監督は
黒沢監督に比べて明らかにハンディを背負う。それを承知で映画化に踏み切ったと
思う。
本とはすばらしい娯楽。自由気ままの想像の中で楽しむことができる。
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