西澤保彦著"腕貫(うでぬき)探偵、残業中"を読みました。
ミステリーです。
探偵役は名前がどこかに書かれていたかな。
本の中では腕貫男などと呼ばれています。彼は市役所の
職員で"何でも相談にのります"と看板を出してあちら
こちらで話を聞く仕事をしています。
この本には前作があります。まだ読んでいません。
そちらも読んでみたいと思います。
相談にのりますといっても市役所の仕事としての相談で
事件の相談ではないのですが、彼の元へ事件の相談が
持ち込まれます。
連作短編集です。最初の話だけは彼が実際に事件に
巻き込まれます。あとは安楽椅子探偵物です。
目だたなく物静かで、食べ物についてはうるさく
いろんなおいしい店を知っています。
最初の事件で知り合った大学生のユリエが次からの
話で登場してきますが、彼女は美人でとても明るく
活発で対照的な存在です。
"体験の後"
レストランテアトロで食事中に強盗が押し入り客が
人質になります。
その中に腕貫男と学生のユリエとマオがいます。
事件は強盗事件と思われましたが意外な方向に
向かいます。
"雪のなかの、ひとりとふたり"
二月のバレンタインデーのころ、ユリエは去年の
年末の雪が降った日の朝にマンションの窓から撮った
写真に写っている車を見ておかしいと感じます。
車は夫が妻を口げんかが元でスタンガンを押し付けて
死なせてしまった人の物です。
その当日の朝の写真でした。
雪が積もりずっとそこにあったことを思わせ夫の
話の内容と状況と違います。
ユカリは腕貫(こう呼びます)が食事をしている店を
見つけ出し相談を持ちかけます。
"夢の通い路"
父親が亡くなり遺品の整理をしていて高校時代の
自分の写真を見つけます。
あこがれていた梨紗といっしょに写っています。
まったく覚えがない写真です。
彼は高校時代を過ごした櫃洗市へ行くことになりました。
高校時代の友人に話しを聞いたり梨紗に出会って話しを
聞きますが記憶がありません。
当時火事で家が焼けその時の記憶を失っています。
たまたま出会った腕貫に話しを聞いてもらいます。
"青い空が落ちる"
長年独身で高校の先生をしていた松島が病死している
のが見つかりました。
身寄りがなく遺産は町内会に寄付する遺言を残して
いました。町内会の人たちが調べると五千万円が
引き出され何に使われたかわかりません。
警察に調査依頼があった話しが刑事から腕貫に
伝わります。
この話しは犯罪ではないのですが人の心を操って
破滅へと導いてしまいました。
破滅した人自身の問題ではあるのですがきっかけを
与えた先生はちょっと残酷な人です。
"流血ロミオ"
中学三年生の直紀と真美子の家は隣り合っています。
窓を開けると話しができます。
二人はそうやって家族に内緒で会話を楽しんでいました。
窓を飛び越え部屋へくるように誘われた日の翌日に
真美子が首を絞められ殺され直紀は頭を打って意識を
失くしているのが見つかります。
家に泊まっていた真美子の叔父は家を抜け出して
車で真美子の友人を轢き殺し自分も事故を起こし
亡くなりました。
叔父の犯行と思われました。事実は・・・
"人生、いろいろ。"
大学生の健介は同棲している佐和子をもてあまして
います。別に付き合っている珠美と共謀して
佐和子を殺す計画を立てます。
綿密な計画を立てましたが計画だおれで失敗して
殺せませんでした。
同じ時に実家に泥棒が入ります。
認知症が進んだ祖母は家族に内緒で現金を仏壇に
隠していました。
健介は聞いて知っていました。そのお金が消えました。
そこにあることを知っているのはいっしょに実家に
来たことがある珠美しか考えられません。
佐和子と珠美が共謀して泥棒に入ったと知り呆然と
します。
しかしこの話しのもっとおもしろいところは・・・
健介は人を殺さなくて幸いでした。
ちょっとずるいと思うのは記憶喪失になった人が
出て来る話しが二つあることです。
でも腕貫さんいいです。