雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

家族芝居

2011-08-09 21:41:18 | 
佐川 光晴
文藝春秋
発売日:2005-02


佐川光晴著"家族芝居"を読みました。
以前に読んだ"おれのおばさん"の前に当たる本です。
関連した人が出て来るとはいえどちらを先に読んでも
ぜんぜん問題ありません。
"おれのおばさん"のおばさんの元夫の善男が主人公です。
東京新宿区で八方園という老人グループホームを運営
しています。
介護福祉士の善男一人で6人のお婆さんたちの世話を
しています。といっても70歳以上のお婆さんたち
ですが身の回りのことは自分でできるし炊事、掃除
なども手分けしてやっています。
居候していた家の持ち主が亡くなって善男に後を
引き継いでくれるよう言い残したため後を引き継いだ
わけです。

アキラは善男のお父さんの妹の子、善男の従兄弟です。
北海道大学医学部に受かったのに父親の意向で東京に
行けと言われて善男の八方園に住んで手伝いをしながら
受験勉強をしています。
最初の章はアキラの視点で書かれています。
善男はお年寄りたちにひどい暴言をあびせかけています。
もっともお年寄りはそんなことでめげたりせず言い返します。
絶対なる信頼を善男によせています。
しかしだからといってなにを言ってもいいとは思えません。
読んでいて嫌な気分になりました。
それくらい強い言葉でないとお年寄りを動かすことは
できないのかとは感じます。

次の章ではお年寄りの一人が寝ているうちに亡くなります。
年の暮れで火葬場もお休みになります。
マイクロバスを借り棺おけを積み残ったお婆さん達、アキラ
を積んで亡くなった和代の娘にまず会わせに走ります。
その後引き受けてくれた火葬場の近くまで走ってお弔いを
します。
ずいぶん乱暴なお弔いです。亡くなった人、残った人が
納得できるお別れならそれでいいのでしょう。
インドネシア人のお母さんと日本人の父親を持つ
二人の女の子、レーウィ、ラットナーが八方園の住人に
加わりました。

会計士として八方園を見ていた有里と善男が結婚する
ことになります。
八方園で暮らし始めます。
この最後の章は有里の視点で書かれています。

演劇をやっていた善男がどうして介護福祉士となった
のか、この本からは成り行きでそうなってしまったと
いう感じです。
でもこの人はやるからには最後まで手を引かない人
だという生き方はわかります。
善男は信頼はできる人でしょうけど好きだとはいえません。