雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

パラダイス・ロスト

2012-12-13 19:53:06 | 
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2012-03-24

柳広司著"パラダイス・ロスト"を読みました。
"ジョーカー・ゲーム"、"ダブル・ジョーカー"の続編です。
D機関や結城中佐の説明は"ジョーカー・ゲーム"で
読んでくださいね。
この本もとてもおもしろかったです。
連作短編集です。

"誤算"
島田亮祐はフランスでドイツ兵に頭を殴られレジスタンス
の男女三人に助け出されます。
気を失い気づいたときには一時的な記憶喪失に陥っていました。
島田はD機関の一員で記憶を失ったとしても大事なことを
しゃべったりしない訓練は受けています。
彼らはドイツ兵に追われています。
島野の機転で彼らは窮地を脱します。
やがて三人の中の一人が裏切り者だったことがわかり
仲間に取り押さえられます。
すべては最初からこのようになるように仕向けられた
出来事でした。
日本はドイツと同盟を結ぼうとしています。
D機関が調べ伝えたことは握りつぶされています。
失望を味わうことが多い仕事ですが彼らは任務を遂行
していきます。
結城中佐が最後に登場しています。

"失楽園"
シンガポールの英国領事館付武官のマイケル・キャンベル
はジュリアに出合って恋に落ちました。
英国実業家のブラントがラッフルズ・ホテルの庭で死体と
なって発見されました。
事故死とみられましたがジュリアが突き飛ばしたと
名乗ってでました。
キャンベルはジュリアの無実を信じて調べました。
ブラントと揉めていた英国陸軍大尉リチャード・
パーカーを突き止めました。
証拠の品を見つけパーカーに突きつけられます。
ジュリアが釈放されます。
しかしキャンベルはもしかして一番良くシンガポールの
状況がわかっていたパーカーを陥れるため、自分は
操られたのではないかとおぼろげに思います。
彼を誘導したのはホテルのバーのバーテンダーの
言動でした。

"追跡"
英国タイムズの日本の特派員のアーロン・プライスは
逮捕されました。
彼はD機関の存在を知り結城中佐を追っていました。
やがて有崎という家族に養われた男の子がいたことを
突き止めます。
あらゆる学問を教授され、その後英国へ留学をしている
ことを突き止めます。
プライスは英国のスパイでした。
日本にスパイ網を作り上げていました。
彼は英国へ連絡を取ろうとしたところを捕まりました。
自殺するより道はないと遺書を書いて決行しようとした
ところを釈放されました。
彼はやがて知ることになります。
作り上げた組織の内容を英国に知らせようとそれと
わからないよう特殊な紙に記しておきました。
遺書はその紙の上に書かれていました。
遺書が掏り取られました。
組織は潰されることでしょう。
プライスはもう英国の役には立たないと見なされ釈放
されたのです。
結城中佐の身元はすべて作られたもので、プライスは
スパイ網を潰すために最初から踊らされたのでした。

"暗号名ケルベロス 前編"
朱鷺丸は日本人とアメリカ人を乗せてサンフランシスコを
出航しました。
ドイツ人が何人か乗船しています。
アメリカにいたドイツ人が日本、ソ連を経由してドイツへ
帰ろうとしています。
イギリスに見つかったら大変なことになります。
内海は船内でクロスワード・パズルに興じています。
モーガンと名乗るアメリカ人がパズルに興味を示し
いっしょに解きます。
内海はモーガンがイギリスのスパイのルイス・マクラウド
であることを見抜きハワイで下船するよう命じます。
イギリスの軍艦が姿を見せました。
マクラウドはほっとして酒を飲みほしました。
そして毒死しました。

"暗号名ケルベロス 後編"
イギリス兵が乗船してきます。
ドイツはエグニマ暗号機で暗号の送受信をしています。
この暗号の手法はすぐに変えられるので1つの暗号文を
突き詰めて考えても役には立ちません。
マクラウドはエグニマ暗号解読に携わっていました。
そのため偽情報を流し自国の船を犠牲にしてドイツの
暗号文を手に入れました。
日本にやってくるマクラウドをハワイで捕捉するのが
内海の任務でした。
やがて犯人は内海によって暴かれました。
幼い子供と犬を連れた女性シンシアでした。
彼女はマクラウドによって沈没させられたイギリスの
貨物船の航海士の妻でした。
彼女はマクラウドが自国の船を犠牲にしたことを知り
復讐のためドイツのスパイとなりました。
内海はシンシアから娘と犬を託されました。
ケルベロスとはシンシアの暗号名です。

D機関のスパイが活躍します。
危機に陥っても危なげなく回避していきます。
相手を殺さず自分も死なないという信念の彼らです。
どうなるのだろうと手に汗を握るというスリルと
サスペンスには欠けますが、だいじょうぶ、彼らは
やり遂げるという安心感があります。
それに偏向した考えの持ち主ではなく状況がよく
見極められる人達です。
日本の中枢には調べ上げたことが有効に使って
もらえないことがありますがさりとて失望は
しません。
どんどん読み進める本です。
前の2冊より読みやすいように思います。