ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

「ヤジャ」にいそしむ韓国の高校生 -辞書にない言葉 その2

2009-08-20 01:32:39 | 韓国語あれこれ
 8月15日の続きです。キム・リョリョン作のYA小説「ワンドゥギ」中の韓日辞典にはない単語その2は<ヤジャ(야자>。
 まず用例を紹介。高校3年生ワンドゥギの立場で書かれています。
 똥주한테 잡히는 바람에 야자도 해야했고・・・
 (糞トンジュ先生につかまったおかげで、「ヤジャ」もやらなくてはならなくなって・・・)
  ※<똥주>は担任の先生の名。ホントは<동주>だが、こう書くと<糞トンジュ>。

 辞書にある야자は「椰子」だけ。
 例によってネット検索するとたちまちヒット! 야간 자율학습(ヤガンチャユハクスプ)、つまり夜間自律学習の<야(ヤ.夜>と<자(チャ.自)>をとった略語なんですね。

 韓国では、日本に比べ比率的にはるかに多くの中学・高校生が夜遅くまで勉強しています。ソウルの飲み屋で飲んで、夜11時頃ホテルに戻る道で高校生とすれ違うのはよくあることです。ヤジャでなく、ハグォン(학원.学院)=塾から帰る生徒も多いでしょうが・・・・。
 <自律>の言葉が示す通り、(名目上は)正規授業ではなく、各生徒が自ら学習の足らない部分を補う時間なのだが、事実上は大部分の学校で強制的に行われているそうです。
 放課後から、多くの中・高では午後8~9時頃、3年生の場合は11時まで行われたりもするといいます。したがって、「弁当を2食分持って登校する」という話を何かで読みました。ヤジャにはもちろん決まりがあるわけでもないので、学校や地域によっても違いがあるそうです。
 「生徒の健康に良くない」等の批判もあり、行政側から規制も図られたりもしていますが、肯定論も根強いようで、状況は変わっていないようです。

 私ヌルボが以前読んだカンプルの恐怖漫画「Timing」も、夜の高校で<ヤジャ>の生徒たちが死んでゆくコワ~い漫画だったなあ、ということを思い出しました。
     

 夜間自習は台湾の高校でもやってるらしいですよ。
 日本だったら、先生も親も、当の生徒も「勉強のため夜の学校を開放してください」とはまず言わないでしょう。

金大中元韓国大統領 拉致事件以外にも、幾度も生死の岐路が・・・

2009-08-19 16:54:47 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 昨8月18日金大中韓国元大統領が逝去しました。私ヌルボも思うところがいろいろあります。冥福を祈ります。
 予定を変更して、彼が85年の生涯で、何度も立たされた「生死の岐路」の一つについて記します。
 ネタの主な出所は、木村幹「韓国現代史」(中公新書)です。
  
 1950年6月25日午前4時、北朝鮮軍が38度線を越えて侵攻を開始した。朝鮮戦争の勃発である。当時金大中は、自ら経営する海運会社・木浦商船の仕事でソウルにいた。人民裁判を目撃して脱出を決意した彼は漢江を渡し船で渡り、直線でも320キロある木浦まで約20日かけて歩き通した。しかし彼が木浦の自宅兼会社に着いた時にはすでに北朝鮮軍は木浦に達していて、韓国軍の軍属だった弟や、町有数の資本家だった義父は連行され、金大中の家財道具も没収されていた。
 帰郷した金大中が家族と生活したのはわずか2日。<資本家>の帰郷を聞きつけた北朝鮮支配下の警察により連行され、2ヵ月の収監の後、9月18日に他の囚人とともに処刑場に送られた。しかし処刑予定の日、北朝鮮軍は木浦から突然撤退し、彼は九死に一生を得るのである。
 3日前の15日、米軍が仁川上陸作戦に成功したことがその背景にあった。
 金大中の回想によると、木浦で収容された「右翼反動分子」約220人中、助かったのは120名にすぎなかったそうだ。

 あるサイトには、「5回 の死ぬ峠と 6年の収監生活,10年間の軟禁そして亡命生活」とありました。
 1973年、東京のホテル・グランドパレスから拉致された事件は、多くの日本人の記憶に残っています。
※中薗英助がこの拉致事件に迫った「拉致」(現代教養文庫・新潮文庫)は映画「KT」の原作本(今は出ていない)。読み応えがある本ですが、どのあたりが事実とフィクションの境界なのかが私ヌルボにはよくわかりません。
   

 ※70~80年代、彼が軍事政権によって弾圧されていた頃は、日本のわれわれ(?)は金大中は親共政治家かなという先入観がありましたが、上記のようなことを知るとそれが錯覚だったことがわかります。

 その他の「生死の岐路」としては以下のものがあります。
 1971年。彼は交通事故を装った暗殺未遂事件に遭っている。
 1980年5月、政治権力を握った「新軍部」は、9月軍法会議で、光州事件を背後で企図したとして、彼に内乱陰謀罪等の罪名で死刑判決を下した。

 「5回 の死ぬ峠」ということは、上記以外にも何かあるのでしょうね・・・・?
 とにかく、文字通り波瀾万丈の人生としかいいようがないですね。しかし結局は凝りに凝ったスゴロクを<上がり>で終わったような人生です。それも<大統領>で十分すぎるほどの上がりなのに、<ノーベル賞>までつくとは・・・・

 最初にあげた木村幹「韓国現代史」はお薦め本です。
 ただ、このタイトルはダメ!
 韓国に関心がある人でも、これでは政治史の概説書かな?と思ってしまうのでは?
 私ヌルボもそう思って、買った後しばらくツンドクのままでした。
 が、たまたまチラッと真ん中あたりを開いて見てみるとオモシロイではないですか!
 北朝鮮軍侵攻の情報に接したとき、李承晩大統領は「魚釣りを楽しんでおり、・・・それをただちにやめなかったと言われている」とか、高麗大学の学生会長だった李正博の、朴正熙や鄭周永とのエピソード、金大中と金泳三との間のいろいろ・・・・。
韓国の戦後を代表する政治家たちの回顧録や伝記等を参考に、興味深い具体的事実に基づいて政治の流れをわかりやすく叙述しています。
 せめて「なるほど! 韓国現代史」ぐらいにでもすればよかったのに。最近の雨後のタケノコ的新書とは違うぞ!という中公のプライドが邪魔しちゃったのかな?

韓国の人気歌手テ・ジナの日本デビュー と 韓国のタクシー運転手さんがくれたCDの話

2009-08-18 11:56:11 | 韓国の音楽
          
 今朝ラジオで知った芸能ニュース。
 韓国の人気歌手テ・ジナ(태진아)が56歳にして「すまない」という歌で日本デビューすると17日ソウルでの記者会見で発表したそうです。

 テジナといえば1973年デビューのベテランで、チョーヨンピル(59)とならぶ韓国の国民的トロット歌手。写真のように、ド派手な衣装と帽子がトレードマーク。
 関連記事をネット検索すると、サンスポや報知では「韓国の北島三郎といわれる」としているのに対し、スポニチでは「韓国の森進一」ですと。私ヌルボの印象では北島三郎の方に近いと思いますが、サビの部分になると声のカスレぐあいがちょっと森進一ぽさも感じさせる、かもしれません。
 報知の記事ではさらに、「芸名の由来は当時の人気俳優・歌手から1文字ずつとった」とあります。おそらく、「カスマプゲ」で知られる1967年デビューの南珍(ナム・ジン.남진)と、66年デビューの羅勲児(ナ・フナ.나흔아)から<진>と<아>をとったのでしょう。<태>についてはわかりません。

 トロット(트로트)は韓国演歌ですね。ウィキペディアの説明文中、「K-POPではクデ(그대~日本語でいう「君」・「あなた」に相当)を多用するのに対し、トロットではタンシン(당신~日本語において、婚暦の長い夫婦や付き合いの長い恋人同士で、あるいは親友同士で、また喧嘩相手に対して用いられる「おまえ」・「あんた」に相当する)」とあるのには深~く合点いたしました。

 ところで、私ヌルボがテジナを知ったのはそんな昔のことではありません。
 昨年夏、仲間たちと韓国の南原方面に気ままな旅に出かけたのですが、ヌルボが所用のため先に帰った後、仲間たちが乗ったタクシーで、例のごとく運転技士(ウンジョンキサ)アジョシが歌を流してました。仲間の一人が「いい歌ですね~」と言ったら、キサアジョシがそのCDをくれたのです。(この気前の良さに◎!)
 ※ウィキペディアのトロットについての説明文には「韓国ではドライバーが好んで聞くジャンルの音楽」とも記されています。(笑)

 ・・・・ということで、そのCDのコピーをヌルボももらったのですよ。ところがキサアジョシが自分の好みの歌を入れた自作CDなので当然歌詞カードは無し。で、語学学習のつもりで歌詞の聞き取れた部分を糸口に検索して全曲の曲名・歌詞と歌手をつきとめました。(なんともヒマなこってす。) 歌手・曲名は下記の通りです。ただし競作とかもあるので、歌手名は絶対正しいとは言いかねます。

1.ペク・ミヒョ[백미현]    내 삶을 눈물로 채워도
2.イ・テウォン[이태원]    솔개
3.パク・サンミン[박상민]  상실
4.パク・サンミン[박상민]  비원
5.パク・サンミン[박상민]  눈물잔
6.ペク・ジヨン[백지영]    Dash
7.ペ・チョルス[배철수]   외로운 술잔
8.ユン・スイル[윤수일]   도시의 천사
9.チン・シモン[진시몬]   낯설은 아쉬움
10.チン・シモン[진시몬]  애원
11.テ・ジナ[태진아]    그대곁에 잠들고싶어
12.パク・カンソン[박강성] 문밖에있는그대
13.ヒ姉妹[희자매]     실버들
14.チョン・ヨンノク[전영록] 애심
15.チャン・ユンジョン[장윤정] 사랑아
16.ティッシュ・イノホサ   Donde Voy
17.ユ・サンボク[유상록]   가인
18.ペク・ミヒョン[백미현]  나 같은건 없는건가요...
19.ク・チャンモ[구창모]   아픈만큼 성숙해지고
20.ノゴジリ[노고지리]    찻잔
21.カン・チョル[강철]     두 여인

 このCDは、トロットの魅力をより深く感じさせてくれたと思います。ク・チャンモの「아픈만큼 성숙해지고」なんか、ホントにじんときますね~。そしてテ・ジナの歌唱力!も初めて知りました。キサアジョシに心から感謝!!

 この際、ついでに16.Donde Voy(私はどこへ行くの?)について。メキシコ出身の歌手ティッシュ・イノホサのこの切ない情感の漂うフォークソング風の歌は、何年も前にある韓国サイトのバックに流されていたのですが、ヌルボは歌手も曲名も全然見当がつかず、スペイン語がわからないということもあって、結局わからずじまいになっていました。はからずもこのCDのおかげでわかりました。
 韓国ではドラマに用いられたこともあって、かなりヒットした歌のようです。
※2005年の「中央日報」(日本語版)のサイト<噴水台>にもこの歌のことが載ってました!

<セルカ族>って? <ポンカ>や<ディカ>は? 

2009-08-17 08:31:51 | 韓国語あれこれ
 「東亜日報」のサイト内の<トッケビニュース>はかなり以前から愛読しています。なかなか興味深い小ネタがいろいろあって楽しめます。 

 先月何となくその<トッケビニュース>を見ていたら、「セルカ(셀카)族が選んだ ソウル セルカ 名誉の殿堂Best5」という記事がありました。

 
 <셀카>は韓日辞書を引いても載ってませんが、記事を読むとすぐ見当がつきました。<self camera>のことなんですね。

 ※デジカメは<ディカ(디카)>、ケータイのカメラはヘンドポン(orヒューデポン)のポンをとって<ポンカ(폰카)>といいます。

 で、<セルカ族>とはオシャレな店や背景の美しい場所で、デジカメとかケータイのカメラとかで自分を撮るのを楽しんでいる人たちのことだそうです。
 
 先の記事の「名誉の殿堂Best5」にあげられているのは次の5ヵ所です。
①サンアム洞 ハヌル公園
②サムチョン洞 カフェ小路
③鍾閣(チョンガク)駅 チョンノタワー タプクルラウド
④シンサ洞 トサン公園前カフェ小路
⑤新村(シンチョン)コーヒーショップ

 これらについては私ヌルボはよく知りません。あしからず。

ヌルボの韓国映画の思い出 & ★韓国映画ベスト12★

2009-08-16 19:38:52 | 韓国映画(&その他の映画)
       

 私ヌルボは、映画館で年間50~100本ぐらい観る映画ファン(オタク?)で、中でも韓国(&北朝鮮)映画はけっこう観てきました。
 ※韓国語では<○本>じゃなくて<○ピョン(편.編)>ですね。

 日本で韓国映画に少し注目し始めたのが1994年日本公開の「風の丘を越えて ~西便制」
 その後、21世紀の韓国映画ブームの引き金になったのが1999年公開の「シュリ」ですね。

 ヌルボにとっての最初の韓国映画は、いつの何という映画だったか、ずいぶん昔のことなので忘れようとしても思い出せません。(←バカボンのパパの名セリフ)
 たぶん、1991年に日本で公開された「ソウルの虹」「神様こんにちは」あたりではないかと思います。
 「ソウルの虹」は客もまばらな映画館でしたが、実際の政界スキャンダルに基づいた力作でした。
 そして何よりも、「神様こんにちは」(上の画像)は韓国映画の魅力にとりつかれるきっかけとなった感動作であるとともに、それまで知らなかった名優アン・ソンギを初めて知った作品でした。
 この映画は、アン・ソンギ演じる障碍者青年が、貧乏詩人・未婚の妊婦とともに慶州をめざすというロードムービーですが、アン・ソンギを知らなかったヌルボは本当の障害者俳優が演じているのかと思ってしまいました。(知り合いでまったく同じことを思った人がいます。)
 ※「神様こんにちは」のDVDは、韓国で日本語字幕付きのものが発売されています。ネット通販で購入可能。ただし、「風が吹く」が「風邪が吹く」になってたり、ちょっとヘン。

 また、まだ80年代だったか、NHK教育TVで佐藤忠男先生解説のアジア映画劇場を続けていて、その中で今も印象に残っている韓国映画が紹介されていました。「風吹く良き日」「チルスとマンス」「われらの歪んだ英雄」などです。
 「チルスとマンス」でアン・ソンギと共演した(当時の)若手俳優がパク・チュンフン。1992年東京映画祭に「私の愛、私の花嫁」が出品された関係で上映会場に来ていて挨拶しました。ヌルボもその後彼と握手して「チェミイッソッソヨ!(おもしろかったです!)」とか言ったら、たしか「ハングンマル、ハシムニッカ?(韓国語話されるのですか?)」とか言ってたんじゃないかな? 今も聞き取りは苦手なもので・・・・。(汗)
 ※あ、「私の愛、私の花嫁」での花嫁役があのチェ・ジンシルだったんだなあ。歳月の流れの早さを痛感します。

 2000年ころまでは日本で公開の韓国映画はたぶん9割以上は観てきたと思います。が、今世紀は公開本数が増えて(推定駄作も多くなって)とてもついていけなくなりました。
 しかし、北朝鮮映画と合わせると合計150本は超えるのでは、と思います。(110本くらいまでは数えていたが・・・・。) 

 その中から、まったく個人的な尺度で<ベスト12>をリストアップしてみました。
 自分で思うに、昔の作品が多いです。ちなみに、いつだったか、「映画ファンのための 韓国映画読本“男目線”のコリアン・ムービー・ガイド」(ソニーマガジンズ.2007年.2200円)という本を見てたら、かなりヌルボの趣味と合ってるなあ、と思いました。

 なお、韓国映画関係のナンバー1サイト<シネマコリア>には今日もかなり参考にさせていただきました。ずうっと前、<ソチョンのHP>の初期のころからお世話になってます。もしかして、まだご存じない方、ぜひ見てみてください! 

[ヌルボの韓国映画ベスト12]
順位・・・「 作品 」(監督.公開年)
1位・・・・「神様こんにちは」(ペ・チャンホ.1987)
2位・・・・「風の丘を越えて ~西便制」(イム・クォンテク.1993)
3位・・・・「猟奇的な彼女」(クァク・チェヨン.2001)
4位・・・・「僕が9歳だったころ」(ユン・イノ.2004)
5位・・・・「ペパーミント・キャンディー」(イ・チャンドン.1999)
6位・・・・「八月のクリスマス」(ホ・ジノ.1998)
7位・・・・「われらの歪んだ英雄」(パク・チョンウォン.1992)
8位・・・・「グエムル 漢江の怪物」(ポン・ジュノ.2006)
9位・・・・「殺人の追憶」(ポン・ジュノ.2003)
10位・・・「おばあちゃんの家」(イ・ジョンヒャン.2002)
11位・・・「オールドボーイ」(パク・チャヌク.2003)
12位・・・「ほえる犬は噛まない」(ポン・ジュノ.2000)

※2010年4月4日の追記
  改訂版をupしました。→[150本の中から選んだ・・・★韓国映画ベスト20★]

ヘッパンを投げてよこせ!  -辞書にない言葉 その1

2009-08-15 11:30:39 | 韓国語あれこれ
      

 朝から有線でKBSラジオを聞くともなく聞いていると、「クァンボクチョル」ということばがしきりに耳に入ってきます。そうか、今日は光復節だったんですね。
 10時ちょうどから式典の中継。国旗に対して敬礼! 愛国歌斉唱、その次は「一同、ムンニョム(묵념黙念)」かな?

 とりあえず、光復節のメディア観察はまた今度ということにして、予定のネタに入ります。

 昨年夏、ソウルの書店でなんとなく平積みの表紙にひかれて購入した本がYA小説「ワンドゥギ(완득이)」。読んでみるとこれが大正解で、私ヌルボは書籍選択のカンの冴えを再認識したのだが(自画自賛!)、その内容紹介はまた今度として、そこで目にとまった新語を紹介します。
 
 ※ブログ開設5日目にして、「<また今度>という言葉がおまえの常套句になるだろう」という神の言葉が今聞こえてきた。抗うチュルオプソ(ことはできない)。名前もヌルボ(늘보のろま。怠け者)にしちゃってるしなー・・・・

 で、「ワンドゥギ」に出てくる辞書にはない言葉その1が今日のテーマのヘッパン(햇반)。主人公の男子高校生ワンドゥギに、何の因果か隣の建物の<オクタプパン>に住む担任教師が叫ぶ。「ヘッパンを投げてよこせ!」
 ※言葉その2以降や、この<オクタプパン(屋塔房)>もまた今度、ですよ。(笑)

 ヘッパン? 辞書を引いても出てない。何だ? 太陽の飯?
 こんな時便利なのがネット検索。햇반と打ちこんで探すとたちまちヒット。
およそ「ワンドゥギ」の漫画風挿画で見当はついていたのだが、レンジでチンするパックご飯なんですね。あるサイトによれば、「韓国“パック米飯”の代名詞、“ヘッパン”が韓国の食文化を変えた!」とのことです。(これは日本語で検索)
この10年間で売上は急上昇。2006年12月の時点で、10年間の販売個数は4億個。韓国4600万人の人口中、1人あたり8.7個のヘッパンを食べたことになるとか・・・。

 製造販売元のサイトもなかなか興味深いですよ。→コチラ

 さらに私ヌルボが着目したのはその分量ですね。標準が210g。
 日本では標準が200gなのでわずか10gの違いですが、この差の意味は大きいと思いますよ。その辺の考察は、もちろんまた今度!(笑&汗)

韓国で人気の漫画家

2009-08-14 23:53:26 | 韓国の漫画
      

 韓国でも漫画は出版文化の一大分野を占めています。そのかなりの部分が日本の漫画の翻訳で、ベストセラーのリストを見るとおよそ7割ほどが日本の作品でしょう。
 私ヌルボは、そんな売れ筋の漫画よりも、韓国の漫画家による<成人漫画>や、素朴な味わいのある<純情漫画>のファンです。
   ※韓国の<成人漫画>とは、日本とはちょっと意味あいが違って、広く大人向きの漫画と
    いうことで、とくに書店でキョロキョロ周囲を気にして盗み見るようなものではありませ
    ん。(まあ、そのテの漫画もあながち否定するものでもないが・・・。)

 最近教保文庫のサイトを見てたら、たまたま「漫画家ベスト」というのが目にとまりました。開いてみると、「国内作家ベスト15」「日本作家ベスト15」「海外作家ベスト10」と分けられ、それぞれの人気作家がリストアップされていました。
 とくにヌルボとしては、「国内作家ベスト15」が今後の漫画購入の参考となるかも、と思って見てみましたよ。ちなみに、その韓国漫画家のリストは以下の通り。(順序=順位を示すかどうかは不明。数字はヌルボが便宜上つけたものです。)

①ホ・ヨンマン(허영만) ②コ・ウヨン(고우영) ③シム・スンヒョン(심승현) ④カンプル(강풀) ⑤イ・ヒョンセ(이현세) ⑥パク・ソヒ(박소희)⑦チョ・ソク(조석) ⑧カン・ドハ(강도하) ⑨イ・ウォンボク(이원복) ⑩チェ・フン(최훈) ⑪ヤン・ヨンスン(양영순) ⑫クォン・ユンジュ(권윤주) ⑬パク・ヒジョン(박희정) ⑭チョン・ククジン(전극진) ⑮ハン・スンウォン(한승원)

 いかがでしょうか? うーむ、韓国漫画オタクを自任するヌルボも知らない名前がいくつもあるゾ、ということで、この方々の紹介は後回し、ね。(汗)

 ということで、今日は「日本作家ベスト15」の方をのぞいてみましょう。以下の15人です。(順位の数字(?)と各コメントはヌルボがつけました。)

①亜樹直(あぎ・ただし)=「神の雫」は韓国で一大ワイン・ブームを巻き起こしました。会社の
      上司が部下に「読め!」と言って渡したとか。
②山岡荘八=「徳川家康」は韓国では「大望」という題でロングセラーに・・・・って、これ小説じ
      ゃん(突然横浜市民に)。「織田信長」は横山光輝・画で出てるようだけど・・・、
      「大望」の漫画は誰が描いてるのかな?
③神尾葉子=「花より男子」は目下ドラマで大人気! 「花より○○(コッポダ○○」は韓国で
      流行語になってるそうな・・・・
④いがらしゆみこ=「キャンディ・キャンディ」のアニメはWikipedia@pediaによると韓国ではほと
      んど日本(1976~78年)と時差なく放送が開始。髪が長くて愁いを帯びた素敵な男
      性のことを「テリウス」(テリィのこと)と言う。『冬のソナタ』の作劇に影響を与えた」
      とあるぞ。韓国の人たちは国産アニメだと思って視ていたとのこと。韓国版アニメ
      のDVD-BOX×2/全115話収録というのもネット通販で出てます。ところで、版権問
      題はその後どうなってるの?
⑤尾田栄一郎=「ONE PIECE」第53巻、目下韓国で漫画ベストセラーのトップですよ!
⑥二ノ宮知子=「のだめカンタービレ」はコミック本に続きCDもヒット。ドラマもケーブルTVで
      放映された。韓国語の吹替えというのも聴いてみたいネ。
⑦あだち充=「タッチ」とか、今となっては懐かしいなあ!
⑧井上雄彦(たけひこ)=やっぱり「バガボンド」ですよね~!
⑨浦沢直樹=やっぱり「20世紀少年」ですよね~! (「MONSTER」もあったか。)
⑩天野 明=・・・ってオジサン方知ってましたか? 女性なんだって! 「家庭教師ヒットマン
      REBORN!」は知ってました? 「少年ジャンプ」で連載中なんだって! この頃の
      オジサンは「少年ジャンプ」あんまり読んでないからなあ・・・。(とつぶやくヌルボも
      オジサン)
⑪青山剛昌(ごうしょう)=「名探偵コナン」は韓国でも大人気。現在第64巻が出てて、漫画
      部門第7位にランクイン。
⑫寺沢大介=「ミスターチョバプ(寿司)王」が経営必読書だって!? これって「将太の寿司」
      ですよね? 彼だけ다이스케 테라사와(ダイスケ・テラサワ)と姓名が逆なのは
      なぜ?
⑬大場つぐみ=代表作が「DEATH NOTE」。「少年ジャンプ」に連載中の「バクマン」は韓国で
      現在第2巻が第18位にランクイン。
⑭矢沢あい=「NANA」は韓国では第21巻発売中。ランク第17位です。
⑮CLAMP=「ツバサ」。他にもいろいろ。

 まあよーするに、日本の人気度とほぼ同様ってことですかねー? 別にオドロキのネタでもなかったようですね・・・・(一方的敗北宣言)

 あ、それから、韓国漫画関係の情報を収集していたら、Konestのサイト中に「韓国マンガ事情~前篇~」というすごいオタクっぽいページを見つけましたよ! 皆さん、まあ見てみてください。 
 6月に「~前篇~」が出たきりで「~中篇~」はまだのようです。この熱いさなか、オタクらしく編集作業に没頭してるのかなあ? がんばってください。ヒムネラ! パイティング!! アナタには負けるみたいです。(一方的敗北宣言その2)

孔枝泳の最新作「るつぼ(トガニ)」を読む②

2009-08-13 18:51:14 | 韓国の小説・詩・エッセイ
     

 カン・イノ、34歳。妻の口ききで、ソウルから霧津(ムジン)市の聴覚障害児の学校慈愛学園に臨時教師として勤めることになり、車で現地に向かう。その最初の場面から、霧津は文字通り濃い霧に覆われている。
 ところが、その学校では奇妙な雰囲気が漂っている。その後徐々にそこで以前から「忌まわしいこと」が行われていたことがわかってくる。・・・・

 霧津は実在の町ではない。1964年金承鈺(김승옥キム・スンオク)が発表した短編小説「霧津紀行(무진기행)」の舞台とされた架空の都市である。
 サイトを検索すると、金承の出身地順天が霧津とされているということで、この小説でもそこを念頭に仮構されているのかと思った。ところがコリアプラザのポップに「実際に光州であった事件をもとに・・・」とあったので、改めて調べてみると、たしかにあった。2005年光州××学校事件。あえて具体的な紹介はしないが、ひどいとしかいいようのない事件である。

 この忌まわしい事件の概要は、小説では意外に早く明らかにされる。しかし加害・被害の事実が明確化しても、問題はむしろその後の経緯だ。
 加害者側はあまりに手ごわい。彼らに味方するのは、彼らの属する町の権力層・富裕層だけではない。また追及する側にも弱みがある。・・・・
 町に立ち込める霧は真実を隠蔽するものの象徴であり、陰鬱で不気味である。
 また「るつぼ」という語は、韓国でも「悲しみのるつぼ」「苦しみのるつぼ」「感動のるつぼ」等々、日本語とほぼ同様に用いられるようだが、ここでは道徳と常識の廃墟というべき「狂乱のるつぼ」を意味している。

 ・・・・ネタバレを極力避けて内容を紹介するとおよそこのようになる。

 孔枝泳は何度も光州を訪ねて多くの事件関係者と会い、取材したという。
 おそらく、日本でこのような生々しい実際の事件、それも完全に解決しきっていない事件を扱った小説が書かれるとさまざまな論議をよぶだろう。
 また、文学作品としての評価も、「<善>側、<悪>側の人物の描き方が明瞭すぎ、図式的である」とか「文学というより一種のプロパガンダではないか?」との批判も出てきそうだ。

 <悪>に果敢に立ち向かう人権運動センターで働く女性ソ・ユジンに、事件担当のチャン巡査部長が「そんな純真な方法で世の中を変えようというのは・・・・」と言うのを遮って、ユジンは決然と言う。
 「そんな考えは父が亡くなって捨てました。私は世の中に私が変えられないように闘っているんです」。
 このひたむきすぎるほどのひたむきさ。まさに386世代の代表作家らしい孔枝泳自身が投影されている。

 読者の心を捉えているのも、この作家とその作品のもつ強さ・ひたむきさだろう。(私もその一人だが・・・。) 韓国の大多数の読者評からもそれがうかがわれる。
 一方、ごく少数派だが、次のような評にも目がとまった。
 「率直に言って、私は少し残念に思いました。まだ1980~90年代の問題意識をひきずっている386世代の作家から抜け出せないのではないかと思い、失望しました」。

<孔枝泳の最新作「るつぼ(トガニ)」を読む①>

孔枝泳の最新作「るつぼ(トガニ)」を読む①

2009-08-12 23:48:02 | 韓国の小説・詩・エッセイ
      

 孔枝泳(コン・ジヨン공지영)の「るつぼ(トガニ.도가니)」を今月初め読了した。(「オンマをお願い」に続く2冊目の原書だ。

 韓国のポータルサイトDAUM上で昨年11月から連載されていたネット小説で、今年5月完結まで累積照会数1100万を超えるほど注目された作品ということで、6月末に単行本が出されると、即ベストセラーにランクインした。(教保文庫の8月1週総合5位)

 私がこの本を読もうと思った理由のひとつは孔枝泳という作家に対する関心である。
 2007年「私たちの幸せな時間(우리들의 행복한 시간)」という韓国映画が日本でも封切られた。カン・ドンウォン、イ・ナヨン主演で、死刑囚の男と自殺未遂を繰り返す女性とのコミュニケーションを描いた秀作だが、その原作者が孔枝泳だった。社会的なテーマを多く取り上げている、386世代>の代表的な女性作家だ。(「私たちの~」の執筆のきっかけも、1997年23人も死刑囚の死刑執行のニュースを聞いた時の衝撃だったという。)
 ウィキペディアには「延世大学英文科卒。労働運動に身を投じ、収監も経験する。その体験を反映させた短篇小説「日の上る夜明け」で1988年にデビュー」とある。

 数ヵ月前、たまたま「私たちの~」の翻訳を手がけた蓮池薫さんのブログをのぞくと、「孔さんは三回結婚なさって、三回離婚されています。そしてお父さんの違うお子さん三人をご自分で育てていらっしゃる」ということや、来日する彼女を空港に迎えに行った時のこと等々が記されていて、さらに興味が増した。
 ※このブログには、翻訳者として自立するための友人からのアドバイス、その後
  翻訳の苦心と努力等々についても興味深く記されていた。「半島へ、ふたたび」
  のタイトルで6月単行本として新潮社から刊行。

 この本を読もうと思ったふたつめの理由。教保文庫のサイトからのネット通販で購入するつもりでいたが、職安通りのコリアプラザに行ったらあったので手に取って見てみたところ、これまた「オンマをお願い」と同様のミステリー・タッチで、冒頭から引き込まれた、ということ。
 
 さてさて、この「トガニ」の内容だが、これがすごい衝撃作というか、問題作というか・・・・。
 
 老骨にムチ打って始めたこのブログ、昨日今日と、1日分の分量が多すぎですね。(笑)
 ・・・・ということで続きは明日。

 あ、ちょっと付け足し。「トガニ」というと韓国料理「トガニタン」のトガニ、すなわち「牛の膝皿の骨と肉」を思い起こす方もけっこう多いと思いますが、この本のトガニは同音異義で「るつぼ(坩堝)」のことです。

<孔枝泳の最新作「るつぼ(トガニ)」を読む②>

韓国の大ベストセラー 申京淑「オンマをお願い」、翻訳本刊行を期待!

2009-08-11 14:49:25 | 韓国の小説・詩・エッセイ
    

 昨年11月刊行の申京淑(신경숙.シン・ギョンスク)「オンマをお願い」(엄마를 부탁해)は今年上半期80万部を超える大ベストセラーになり、8月に入っても教保文庫で総合2位を維持している。その反響は<読書界>を越え、<オンマ・シンドローム(엄마 신드롬)>現象を引き起こしているとのことだ。(演劇・映画等々にも関連ネタはあるようだが・・・。)
 田舎で暮らす老父母は故郷の家で暮らし、上京した息子・娘たちはそのまま都会で自立して、それぞれの家庭生活を営んでいる。
 ソウルで暮らす4人の息子・娘が誕生日を祝ってあげようと老父母を呼ぶのだが、各々事情があってソウル駅まで誰も迎えには出向かない。結果的にはそれが甘かった。雑踏の中、ソウル駅で地下鉄に乗り込んだ老父が振り返ると、いつも後をついて歩いているはずの老母がいない。戻って探すがみつからない。オンマ(お母ちゃん)行方不明との知らせを受けた息子・娘たちは、ビラを配り、心当たりの場所を探しまわる。
 ・・・・最初の章はこのように始まる。この章の「おまえ(너)」は長女で小説家。自身のことですが、あえて二人称で書いています。リアルな筆致なので、申京淑自身のことをそのまま書いたのでは?と思えるほど。事実、彼女は知り合いの作家から「お母さんはみつかりましたか?」と声をかけられたこともあったそうだ。
 第二章以下は、長男や老父等々の視点から母が描かれる。
 各自が、母の不在によって初めてその存在の大きさに思い至る。そしてそれらをすべて読み得る立場の我々読者は、母がたんに母としてだけでなく、一人の女性としての思いも持ち、そんな人生の場面もあったことを知るのである。
 この2、30年ほどの間、韓国の人々は自らの生活向上、社会の発展に邁進してきた。その過程で、ややもすれば忘れられてきた母の存在に、この小説を通して多くの人々が気付いた、ということだろう。
 この小説はフィクションである。しかし、釜山で視覚障害者の読書会に招かれた話や、中学卒業後兄を頼って上京した頃のエピソードなど、申京淑自身の体験がかなり盛り込まれているようだ。
 彼女の作品が読者の共感をよぶのは、その個人的体験が、韓国の多くの人々の共通体験として受けとめられるという側面が大きいと思われる。が、そればかりでない。登場人物の内面の描写が深く、また穏やかな筆致の中に作者の誠実な人間性が感じられる点には、世代や国を越えて、多くの読者が魅かれることだろう。
 私も、「オンマはみつかるのだろうか?」という推理小説的興味に引きずられて読み進んだが、途中からは物語の展開もさることながら、特に難解な言葉や言い回しを用いずとも感じられる省察の深さに引き込まれた。韓国の長編小説を原文で読み切ったのは初めてだ。(ちょうど1ヵ月で読了。少年向き小説や漫画はけっこう読んできたが・・・。)
 この1月職安通りのコリアプラザで何となく裏表紙の惹句につられてたまたま購入したのがこの本だったことは幸運だった。

 日本の出版社関係の方、もう翻訳にかかっていますか? 刊行を期待しています。「オンマをお願い」をお願い!

※2011年2月6日の追記
「この2、30年ほどの間、韓国の人々は自らの生活向上、社会の発展に邁進してきた。その過程で、ややもすれば忘れられてきた母の存在に、この小説を通して多くの人々が気付いた、ということだろう」と書きましたが、むしろ、伝統的な「家族」の解体が進行してきて、それとともに母親が一個の女性として見られるようになってきた、と解する方が適切かもしれません。
※2022年11月14日の追記
 (大変遅ればせですが)この小説は2011年「母をお願い」(安宇植訳・集英社文庫)という書名で翻訳書が刊行されました。