学問空間

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0131 後鳥羽院=プーチン説

2024-07-27 | 鈴木小太郎チャンネル「学問空間」
第131回配信です。


一、前回配信の補足


権門体制論は承久の乱の戦後処理を説明できるのか。

新年のご挨拶(その2)〔2021-01-03〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/c17a2e0b20ec818c1ab0afd80862eb6f
承久の乱後に形成された新たな「国際法秩序」〔2021-10-01〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/c6e725c677b4e285b26985d706bf344c
川合康氏「鎌倉幕府研究の現状と課題」を読む。(その4)〔2023-03-09〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/445055e235c4074de2517fb032953962
0024 佐藤雄基氏の研究について(その1)〔2024-01-24〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/b40ce7a34a7da740383ef93a82085e32

国家の本質を「正統的暴力の独占」と把握し、国際法上の「国家」概念に照らして幕府を「国家」と考えれば、承久の乱の戦後処理を合理的に説明できそう。
しかし、当時の人々は、当時の人々なりの「国家」「日本国」概念を持っており、幕府を含む「一つの国家」、「一つの日本国」の存在を疑ってはいなかった。
では、現代の歴史研究者は、当時の人々の「国家」「日本国」概念に従属しなければならないのか。

古文書・古記録の世界に沈潜している研究者は、「ひとつの国家」を疑う必要を全く感じていないように思われる人が多い。

「慈光寺本妄信歴史研究者交名」(その50)─高橋秀樹氏の場合〔2023-11-16〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/c640dc22ec21d1fa533cf80b6b4e5e86

史料概念としての「国家」「日本国」と分析概念としての「国家」を切り離すメリットは何か。
抽象度の高い分析概念として「国家」を使用することにより、

(1)特定の政治権力を他の時代、他の地域の「国家のようなもの」と比較し、当該政治権力の性格をつかみやすくなる。
(2)国家論と社会論の役割分担が明確になる。

不明確な代表例
宮地正人等編『新体系日本史1 国家史』(山川出版社、2006)
https://www.yamakawa.co.jp/product/53010

『新体系日本史1 国家史』〔2013-12-02〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/d11b8a4cd53f6ebeec7ada9557201c65
宮地正人氏「国家」(『日本史大事典』)(その1)(その2)〔2014-01-31〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/8efa01d90ea67cfdcc039c6012ec7cc9
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/ed4ea2f8386d8adfa8d2d7d3073df7f6

「史料概念」と「分析概念」〔2019-07-16〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/72564c188bd1ced974a3406b89d38e62


二、後鳥羽院=プーチン説

「鎌倉クラスター向けクイズ」へのコメントで、筆綾丸さんがプーチンに言及。
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/ac6d4eaa2383d39dc1dd244584ad5cfa

ウクライナ戦争は「国家」を考える上で絶好の素材。
プーチンは独自の歴史観から、ウクライナが「国家」であることをそもそも認めていない。
ソ連邦解体の混乱の中で、西欧諸国の陰謀により、ウクライナは「国家」であるかのような外形を一応整えた。
しかし、それは正しくない歴史であり、正しい歴史観に基づく秩序を回復しなければならない。

後鳥羽院は独自の歴史観から、鎌倉幕府が「国家」であることをそもそも認めていない。
治承・寿永の内乱の混乱の中で、源頼朝の策謀により、幕府は「国家」であるかのような外形を一応整えた。
しかし、それは正しくない歴史であり、正しい歴史観に基づく秩序を回復しなければならない。
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4 コメント

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Unknown (筆綾丸)
2024-07-28 11:38:15
小太郎さん
伝鳥羽僧正作『鳥獣戯画』において、鳥=後鳥羽院、獣=鎌倉の権力者とすれば、承久の乱とは獣が鳥を捕まえて籠に閉じ込めたものだ、と言えなくもないですね。
プーチン著「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」(2021年7月)
を戯画化すれば、
尊成述「朝廷と鎌倉の歴史的一体性について」(1221年5月)
となり、両者の間隔はブキミなくらいピッタリ800年、バッソ・コンティヌオは、前者がキリスト教(ギリシャ正教)、後者が顕密です。
返信する
Unknown (筆綾丸)
2024-07-28 14:21:32
アニメ「逃げ上手の若君」(第4回)
昔、鶴岡八幡宮で小笠原流の流鏑馬を見たことがありますが、ヤル気のなさそうな馬がいて、よく覚えています。諏訪大社の巫女が耳を小笠原の弓矢で射抜かれるシーンは、偶然とはいえ、タイムリーなエピソードだ、と感心しました。
なんちゃってクリスチャンのトランプは、耳をAR-15で射抜かれ命拾いして曰く、
I had God on my side.
あの巫女は、生贄の耳裂鹿のように、人身御供になるのかなあ、可哀想に、と思いました。
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Unknown (鈴木小太郎)
2024-07-30 21:17:42
>筆綾丸 さん
「承久の乱後に形成された新たな「国際法秩序」」と同じく、後鳥羽院=プーチン説も最初は冗談のつもりで考えたのですが、けっこう似てますよねー。
「逃げ若」の耳のシーン、単行本の方で一応知っていましたが、確かにトランプを連想させて、ちょっとドキッとしました。
返信する
Unknown (筆綾丸)
2024-07-31 22:15:50
小太郎さん
承久の乱は後鳥羽院の特別軍事作戦で、battle ではなく operation だ、 といえそうですね。
返信する

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