市の星月夜日記

織江市の短歌、エッセイ

いつはらぬ雪の結晶ひいやりと聖夜の指を傷に揃へぬ

2011-12-24 17:14:47 | Weblog


 『未来』新年号がはやくも届いた。



 出掛けついでに、図書館に行って鈴木しづ子さんの句集を借りる。



 『夏みかん酸っぱしいまさら純潔など』


 謎の多い女流俳人。このなかに、句集「春雷」「指輪」をおさめる。


 一句、一句、きざまれるような自己表白。露悪ではない省察。

 このひとの生きざまを語る十七文字。


  雪こんこんしびとのごとき男の手

  コスモスなどやさしくふけば死ねないよ

  月の夜の蹴られて水に沈む石


  ……。


 わたしは橋本多佳子さんのファンで、彼女の裂帛の吐露をいくつも心にとどめている。


  雪はげし抱かれて息の詰まりしこと

  夫(つま)恋へば我に死ねよと青葉木兎

  乳母車夏の怒涛に横向きに


 俳句もどき、を作っていたころ、感動して読んでいた。対照的な女性ふたり、相通うものは、嫋嫋とした風情のなかの鋼のような強さ、だろうか。


 見てくれの佳さを超えて、芯の強さが立ち昇り、ときにたじろぐ。


 口当たりのよさに傾きがちなわたしは、ときにこういう作家に出会うと、息を呑み、たちすくむ思いになる。



 


 


 今夜はクリスマスイブ。

 さまざまなひとが、いろいろな思いをこめて集い、祝い、祈る。


 被災地の方の寒さが、あまりつらくありませんように、と。

 また、被災者ではない、日常の中で、さまざまに疲れ、心いたむひとにも、やわらかな時間がありますように。


 
 このちいさな部屋を覗いてくださったあなたに、良い聖夜でありますように。









 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アルファポリス