ギリシャ神話あれこれ:太陽神ヘリオス

 
 中学生のとき、クラスの生徒たちの内情を担任の先生にいちいち報告する生徒がいた。やれ誰が掃除の手を抜いただの、やれ誰が鞄のなかに櫛を隠し持っていただの。だって校則違反を公にしないのは潔くない、というのが彼女の言い分。
 で、彼女はクラス中から疎まれていた。密告屋というのは疎まれるもんなのかな。ま、実際には、本質的でない基準に囚われていて、それに周囲を巻き込んでいるから、疎まれていたんだろうけど。

 ギリシャ神話では、太陽神ヘリオスと月神セレネ、曙神エオスという光明の3神が、世界を照らしている。彼らは、ティタン神族が世界を支配していた時代の太陽神ヒュペリオンと、月神テイアとを親に持つ兄妹神。

 太陽神ヘリオス(ソル)は、太陽の運行を司る。彼は毎朝、四頭立ての炎の馬車に乗り、手ずからこれを御して天空を駆ける。
 彼はオリュンポスのはるか東、地の果てにある神殿から、馬車を駕して駆け上がると、地上にあまねく光を与えて天空を横断し、 西の果ての海オケアノスへと入っていく。この極洋オケアノスは、世界のまわりをぐるりと囲んで流れている。ヘリオスはオケアノスで沐浴し、馬車とともに巨大な黄金の杯に乗ると、オケアノスの流れに運ばれて、東の神殿へと帰り着く。
 こうして太陽は毎日、東から昇り、西へと沈んでいく。……なんとも忙しい神さま。

 すべてを明るみに照らさずにはおかない太陽のもとでは、あらゆる事件は、例外なくヘリオスの眼にするところとなる。で、公明正大なヘリオスは、自分の知る事実を、当然それを知っておくべき者に、告げ知らせる。
 アフロディテがアレスと密通しているのをヘファイストスに告げ口したのも、ハデスがペルセフォネを誘拐したのをデメテルに告げ口したのも、実はこのヘリオス神。……まあ、悪く言えばチクリ屋。

 かなり大勢のニンフや女性に手を出している浮気神でもある。ま、ギリシャの神さまなんだから仕方ないけれど。

 後年になると、ヘリオスはしばしば、同じ太陽神アポロンと同一視されている。

 画像は、ラ・フォッス「日の出」。
  シャルル・ド・ラ・フォッス(Charles de La Fosse, 1636-1716, French)

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