ヴェネツィア絵画のきらめき

 

 「ヴェネツィア絵画のきらめき展」に行ってきた。自転車漕いで、片道3時間くらい。
 イタリア絵画はそれほど私の好みではないのだが、そのなかでヴェネツィア派の絵は、鮮やかな色彩と、後には独特の風景・風俗のモティーフとで、やはり興味深いものがある。この企画展は、ヴェネツィア派最初の巨匠ジョヴァンニ・ベッリーニから、その黄金期を飾ったティツィアーノやティントレット、イタリア絵画最後の輝きと言われるロココ期のティエポロやカナレットなどまでが来ていて、結構良かった。

 ヴェネツィアではフィレンツェより半世紀ほど遅れて、15世紀後半にルネサンス美術が始まる。ジョヴァンニ・ベッリーニがヴェネツィア画派を確立したとされるが、このベッリーニ一族は高名な画家たちばかり。
 続いてジョルジョーネやティツィアーノ、ヴェロネーゼ、ティントレットらが活躍した16世紀に、ヴェネツィア派は黄金期を迎える。
 
 ヴェネツィアはイタリア・ルネサンスにおいて、フィレンツェとともに絵画の中心的位置を担った。が、ヴェネツィア絵画はフィレンツェのそれとは随分、雰囲気が異なる。
 同じ宗教・神話主題を扱ったものでも、一般に言われているように、フィレンツェの絵が線的、フォルム的であるのに対して、ヴェネツィアの絵は色彩的で感覚的。ヴェネツィアでは、メッシーナがフランドルから油彩技法をもたらして以降、早くから油彩画が発達した。そのためか、ヴェネツィア絵画の色彩はくっきりと濃く、明るい。
 が、地中海貿易の繁栄に裏打ちされた共和制国家ヴェネツィアという、文化的背景からの影響も大きいように思う。ヴェネティア絵画はどことなく余裕ありげ。伸びやかさがある。見せたい人物を最明に描いたり、筆の力だけでササッとハイライトを入れたりと、闊達でエロティック。

 18世紀にはヨーロッパ他国の進出によってヴェネツィアの衰退は顕著となる。ヴェネツィア絵画も衰えを見せるが、ティエポロの登場によって、俄然、最後の光彩を放つ。この時期のヴェネツィア絵画は、相変わらず神話や宗教を主題としているにも関わらず、流麗で躍動的な雰囲気があり、従来のような重量感はあまり感じられない。
 そして、カナレットのような、ヴェドゥータ(景観画)と呼ばれる、建築学的に精緻な、明瞭で静謐なヴェネツィア市景や、マルコ・リッチやグァルディのような、カプリッチョ(奇想画)と呼ばれる、動感あふれる寒々しい幻想景、という風景画も登場。水都の独特の風景は海外で人気を呼び、そう言えばモネやルノワールなどの近代のフランス画家たちも、ヴェネツィアにだけは訪れて、その風景を描いている。

 やっぱ、ヴェネツィアにも行きたいな。相棒の優先順位によれば、この水都、ずっと下のほうにあるんだけれど。

 画像は、ティツィアーノ「洗礼者ヨハネの首を持つサロメ」。
  ティツィアーノ(Titian, ca.1485-1576, Italian)
 他、左から、
  G.ベッリーニ「鏡の前の若い裸婦」
   ジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini, ca.1430-1516, Italian)
  ジョルジョーネ「若い娘の肖像」
   ジョルジョーネ(Giorgone, ca.1477-1510, Italian)
  ティツィアーノ「フローラ」
  ティントレット「胸をはだけた女の肖像」
   ティントレット(Tintoretto, ca.1518-1594, Italian)
  ティエポロ「オウムを連れた女」
   ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ
    (Giovanni Battista Tiepolo, 1696-1770, Italian)


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