ギリシャ神話あれこれ:月神セレネ

 
 我が家の黒猫の名はルナルナという。ドラゴンズのホームランバッター、エクトル・ルナから、相棒が命名した。私はもっと、濁音の混ざった意味ありげな名前がよかったんだけれど、相棒は柔らかい響きのほうがいいと言い張って、ペネロペだの、キーラだの、ウィノナだの、エマだのと候補を挙げる。……全部、女優の名前じゃんか。
 結局、黒いからって理由で、ドミニカ出身のパヤノだのブランコだのと挙げ出したので、ルナで手を打った。ルナには月という意味があるから、黒猫っぽいかもと思ったんだ。

 月の女神セレネ(ルナ)は、太陽神の兄ヘリオス、曙神の妹エオスとともに、世界を照らす光明の3神の一神。
 彼らはそれぞれ手ずから手綱を取って、二頭立ての黄金の馬車を御して天空を駆ける。太陽神ヘリオスを曙神エオスが先導し、月神セレネが後に従う。セレネが天を駆けているあいだは、夜というわけ。

 ヘリオスが昼、太陽に照らされた世界で起こる事件をあまねく眼にするのと同様に、セレネは、夜の出来事をあまねく見護る。月の光は夜闇を照らし、夜陰に迷う者を導き、夜陰に乗じる者を明るみに出す。
 同じく月の女神として、アルテミスやヘカテと同一視され、満ちゆく月、満月、欠けゆく月、という三相を持つ一体神のうちの一神と見なされることもある。月に関わる権能から、女性の生理的周期、つまり生命の繁殖も司る。

 浮気な兄ヘリオスや、恋多き妹エオスとは異なり、セレネが自ら(しかも一方的に)恋慕った恋人は、約一名、かの有名なエンデュミオンだけ。
 セレネは絶世の美男エンデュミオンが老いていくのを嫌い、生きたまま永遠に醒めない眠りを与える。そして、夜ごとエンデュミオンのもとを訪れて、眠る彼に寄り添い、眠る彼を愛で、眠る彼と交わる。で、メネと呼ばれる50人もの暦月の女神たちを生んだという。
 ……どうも神さまのやることは不自然だよね。

 画像は、ハレ「ルナ」。
  エドワード・チャールズ・ハレ(Edward Charles Hallé, 1846-1914, British)

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