黄昏の叙情風景

 

 絵をサーフィンしていると、ときどき、日本ではほとんど知られていない、けれども他に類を見ない独特の雰囲気を持つ絵を描く、絶対に外せない画家を発見することがある。こんな絵があったなんて。こんな絵を描くなんて。 ……なんだか絵の世界が、グンと広がったように思える。
 ソールベリは私にとってそうした画家。この画家、絶対に知っておいたほうがいい。

 ハラルド・ソールベリ(Harald Sohlberg)はノルウェーの風景画家。ムンクと同時代に活動し、「新ロマン派(Neo-Romanticism)」に括られるらしい。
 故国の自然を描いたその風景画には、独特のムードが漂う。で、彼は特異な画家として、近年まで忘れられていた。  

 北欧の絵によく見かけるノルディック・カラー。それを、ちょっと薄ぼんやりとトーン・ダウンすると、ソールベリの色になる。……ような気がする。
 白夜あるいは常夜の光のせいか、ソールベリの色調はどこか中途半端で、はっきりしない。コントラストも弱く、以前ある人が言っていたが、写真で言う「眠い画像」のような印象。で、彼は「黄昏の画家」とも呼ばれていたという。
 人の気配のない、忘れ去られたような静謐な自然風景は、新ロマン派らしい、物質文明によって失われつつある自然への懐古が感じられ、叙情的で神秘的。一方で、どこか異質さも感じられ、厭世的で、名状しがたいペーソスを帯びている。

 彼は若い頃から画家を志し、ヴェレンショルを初め、様々な画家から教わっている。が、ウェブ上でも彼の絵をあまり多くは見かけない。ノルウェーまで行けば、彼の絵にたくさん会えるだろうか。
 30代後半になってグラフィック・アートを学び始め、その後は版画に専念したというから、絵はあまり描かなかったのかも知れない。

 いずれにせよ、こんなに素敵な絵を描く画家が日本にフツーに紹介されないのは、ちょっと悲しい。
 ノルウェーまできっときっと観に行くから、それまで待ってておくれ。

 画像は、ソールベリ「北の花畑」。
  ハラルド・ソールベリ(Harald Sohlberg, 1869-1935, Norwegian)
 他、左から、
  「太陽の輝き」
  「夜」
  「冬山の夜」
  「夏の夜」
  「実りの野」

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