世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記
魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-
ギリシャ神話あれこれ:アポロン
ギリシャの神々はみんな多かれ少なかれ怖ろしいけれど、私は子供の頃から、そのなかでも特にガイアとアポロンが、最も怖ろしいと思っていた。二人とも、親や子や異性に対する愛憎が、ずば抜けてイビツだったから。
特にアポロンは、現代人に通ずるイビツさを持つ。ハイソな分、余計に不気味に感じる。彼のような人格の人間がホントにいれば、その人は病気だと思う。
アポロン(アポロ)は、音楽、予言、光明(のちに太陽)、医術、弓術の神。牧畜も司り、子供の守護神でもある。アルテミスとは双子の姉弟。
詩歌の女神ムーサ(ミューズ)たちを従えて竪琴を奏で、あるいは、銀の弓矢で人命を奪う疫病を送る。死を与えると同時に、それを治癒することもできる。
若々しくて美しい、明朗で理知的な、優雅で高貴な青年神で、最もギリシャ的な神格を持つと言われる。優れた美貌と肉体、才能を兼ね備えた、非の打ち所のない神。
であるから、もちろん恋愛も数多い。自分の領分に近しいムーサや巫女、野を駆けめぐるニンフ、といったようなのがタイプらしい。が、彼の恋愛はまともには実らず、ことごとく玉砕している。
特に女性からは振られてばかり。正妻もなし。モテないわけのない神が、面目丸潰れの失恋続き。ギリシャ神話一の振られ男。
どうも恋愛運が悪いだけでなく、アポロン自身の性格の複雑さに、問題があるように見える。彼という神は、中身は見かけほど明朗ではない。かなり短気で寛容さに欠け、不実で陰険で、狡賢いのに間抜け。シスター・コンプレックスだという噂も。
例えば、恋人が自分を裏切ると、熟考なく即座に殺したり、彼女らを生涯にわたって苦しめるような陰湿な報復をしたり。自分の子が殺されれば、腹癒せに、なんの罪もない一つ眼巨人たちに八つ当たりして、彼らを皆殺しにしたり。姉アルテミスに恋人ができたと知るや、奸計をめぐらして、彼女自身にその恋人を射殺させたり。
……多分にバランスの悪い、激しく怖ろしい、残忍なまでの愛憎を持つ。心理学なんかが、喜んで取り上げそうなタイプのような気がする。
画像は、モロー「アポロと9人のミューズたち」。
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau, 1826-1898, French)
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