ギリシャ神話あれこれ:曙神エオス

 
 フランス映画を観ると、いつでもどこでも、すぐにカップルができる。えー、あんなに簡単にくっついていいの? すると相棒が言う。フランス人は、恋のために生きているんだよ、と。
 常に恋せずにはおれない気持ちって、どんなものなんだろう?

 曙の女神エオス(アウロラ、オーロラ)は、太陽神ヘリオス、月の女神セレネとともに、光明の3神の一神。朝の空を射し染める曙光にも見紛う金の髪をなびかせて、二頭立ての馬車を御し、兄ヘリオスを先導しながら天空を駆ける。すると夜が明ける。

 姉セレネと異なり、恋多き奔放な女神。星の神アストライオスとのあいだに、北風ボレアス、南風ノトス、西風ゼピュロス、東風エウロスら、風の神々を産んだのが有名だが、他にも恋人は数知れない。
 けれども、そのすべてがことごとく悲恋に終わっている。

 エオスは、あるときアフロディテの愛人アレスに激しく言い寄られる。ちょっと迂闊なところがある彼女、つい、アレスの求愛に応じて交わってしまう。が、このためにアフロディテから、並々ならぬ嫉妬と怨恨を買うことになる。
 こうして、アフロディテの呪いによって、エオスは、誰彼構わず絶えず恋に身を焼くように、しかも人間の男に恋するように、仕向けられる。
 
 エオスは美青年を見つけると、節操もなく、東の果てにある自分の館へとさらってゆく。そして彼らを愛で、慈しむのだが、彼らはいずれ醜く年老いて、不死であるエオスを残して死んでゆく。
 エオスはそのたびに嘆き悲しむ。が、そんなことなどコロリと忘れて、めげずに男を漁り続ける。ティトノス、ケファロス、オリオン、そしてゼウス神が大鷲となって天上へさらっていった、オリュンポスの酌童ガニュメデスも、実はエオスが先に見初めたのだという。
 う~む、憐れ。

 朝露は、トロイア戦争で英雄アキレウスに倒された、我が子メムノンのために流した涙なのだとか。

 画像は、ドレイパー「曙の門」。
  ハーバート・ドレイパー(Herbert Draper, 1863-1920, British)

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