甘酸っぱいということは

 
 最近、昔のことを次から次へと思い出す。これは私が高校生のときの話。

 ある天気のよい昼休み、私はふと、教室にいたくなくなって、校舎の外に出てぶらぶらと歩いていた。その高校は、竹林の地主に地所を売ってもらえずに、校庭も校舎も狭苦しく、周囲は竹やぶに囲まれていた。
 普段はそんなことはないと思うのだが、その日は、校舎の外にも校庭にも、生徒の姿が見当たらなかった。

 どこへ行こうというつもりでもなく、校門のほうへとぶらぶら歩いていると、後ろから、キッ、と自転車のブレーキの音がした。のっそりと振り返ると、一人の男子生徒が、自転車に跨がって立っていた。

 それは、オブーという男の子だった。
 私は彼と、中学校で同じクラスになったことがあった。その頃私は、ときどき、クラスの野球部の男子たちに嫌がらせを受けていた。オブーは野球部だった。で、その嫌がらせに加担していた。

 まさか私に用があるとは思わなかったので、私は彼を無視して、そのままぶらぶらと歩き出した。すると、彼は自転車をのろのろと漕ぎながら私についてきた。

 なんでついてくるんだ、バカ。すると彼が声をかけてきた。
「ガム、やろうか? 甘酸っぱいやつ」
 私は驚き呆れてオブーを見た。

 To be continued...

 画像は、J.G.ブラウン「ベリー摘みの少年」。
  ジョン・ジョージ・ブラウン(John George Brown, 1831-1913, British)

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