兵隊あつかいの 秋霜烈日に否!
5月22日、テレビ朝日に顔出しで出演した元・検事、市川寛さんが翌日の明治大学のシンポジウムで生々しく体験を語った。インターネット上ではその映像が流れている。
検事になった時、先輩検事から「ヤクザと外国人に人権はない」と教わる。「外国人は日本語が分からないから、日本語であればどんなに罵倒してもいい」。「ある外国人の被疑者を取り調べた時、千枚通しを被疑者に突き付け日本語で罵倒した。こうやって自白させるんだ」とも教える先輩。
三年目、上司に自白調書の取り方を伝授された。それは検事が勝手に作った調書を被疑者に突き付けて署名させるという方法。もし被疑者が署名を拒否したり抵抗したら「これはお前の調書じゃない。俺の調書だと言え」。このような教育を受ける間に、それが当たり前だと思うようになる。徹底的に人権感覚・法感覚を麻痺させる新人教育で検事はモンスターになる。
そして任官八年目、被疑者に「ふざけんなこの野郎。ぶっ殺すぞ」と暴言を吐き、これを契機に辞職。暴言が辞職理由ではない。暴言や恫喝は、他の検事たちも日常的に行っているからだ。むしろ暴言行為を公の場で認めてしまう、つまり検察組織の暗黙の掟破りで辞めさせられたのだった。
市川さんは、いろいろな場面の細部を語る。例えばフロッピー前田で有名になった特捜部方式。「生意気な被疑者は机の下から蹴るんだよ! むこうずねを蹴るんだよ! 特別公務員暴行凌虐罪をやるんだよ!」。
検事生活を振り返り、一年目のときから「バッジを外せ」、すなわち「やめろ」という指導をするのは如何なものかと語る。「研修所の検察官がやっとの思いでかき集めた49人。それが初年度に3人も退職。早い話が兵隊」。
「検察は正義の役所だから、負けるわけにはいかない。僕らはその最前線の兵士。戦場で人を撃ち、申し訳ないと言ってたら、自分が撃ち殺される」。良心の呵責に苦しみつつ従ってしまう。つまり、撃ちたくもないのに撃ってしまう。
ベトナムやイラクに従軍した兵隊たちと同じように、兵役を終え家に帰ってくると、我にかえって「撃ってしまった」と悩み苦しむと。
「お前の代わりはいくらでもいる。そう思っているところが検察庁だろうと、今言わせてもらう」。ようやく夢から覚めた彼は、暴走を止める一助を果たしたい。さらに検察を改革できるとしたら、今が最初で最後のチャンスだと説く。
辞職五年目だが、なかなかできない勇気ある告発だ。
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