元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐」

2005-12-25 18:28:46 | 映画の感想(さ行)
 観る前から誰でも結末は分かっている。だからストーリーそのものに対する興趣はない。肝心なのは、アナキンがジェダイを裏切って暗黒面に堕ちダース・ベイダーになる、そのプロセスだ。

 しかし、ジョージ・ルーカスには“人間ドラマ”は描けない。登場人物の内面描写なんて、ハナから縁のない監督である。悪の総帥から“家族を助けて欲しければダーク・サイドに来い”と言われてホイホイと寝返ってしまう、単に“こういう理由でこうなりました”という“お話”を淡々と追っているだけで、そこには観客に迫ってくるようなアナキンの葛藤や苦悩などは何もない。


 ハッキリ言って、他の監督に任せるべきではなかったか。物語の背景として必要以上に挿入される評議会やら元老院やらの政治劇も、やたら饒舌なだけで内容は空疎。そして“どうして共和制から帝政へと移行したのか”という大事なことはスッポリ抜けている。

 戦闘シーンをはじめとするSFXはそれはもう見事。だが、これだけカネとヒマとを掛ければ、良くできていて当たり前である。それどころか、大仰な特殊効果の釣瓶打ちに終盤は退屈さを覚えてしまった。

 さて、内容は不満ながらも作品自体は大ヒットである。ここで終わらせるのは興行的にもったいないのではないか。本作のようなアンハッピーエンドでは満足できない観客も多かろう。レイアとハン=ソロとの子供が大活躍するであろう「エピソード7」以降を是非製作してほしいものだ。もちろん、その際はルーカスは製作総指揮に回り、演出は新進気鋭の若手かベテランの大物、あるいは個性派に当たらせて多彩な展開を見せて欲しい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「宇宙戦争」

2005-12-25 08:32:50 | 映画の感想(あ行)
 (原題:War of the Worlds)この映画でのトムくんのギャラは莫大なものであるらしいが、その9割をダコタ・ファニングに譲った方がよい。本作の主役は彼女である。あの精神錯乱一歩手前みたいな表情で絶叫しまくる様子は、それだけで入場料のモトを取れる・・・・というか、それすらなかったら完全に“カネ返せ!”と言いたくなるような出来だ。

 ヘンに“親子の情”に物語を振ろうとしても、スピルバーグには無理な相談。トムくん一家がひたすら逃げまくるシーンばっかりで、展開に山も谷もない。地下室のシーンは「ジュラシック・パーク」の二番煎じで、宇宙人のデザインなんか論外だ。


 だいたい、百万年も前にメカを多数地中に隠していたというのに、今まで誰も気づかなかったという設定が噴飯もの。ラストの“オチ”にしたって、百万年も前に地球に関わっていながら、そのことを知らないなんてデタラメの極みではないか。

 明らかに、53年の最初の映画化版には負ける。そしてH・G・ウェルズの原作にはもっと負ける。原典通りに舞台を19世紀のイギリスにして時代考証をしっかりやった方が大作感は出たはずだが、製作者はそこまで考えが及ばなかったか。SFXはさすがによく出来ているが、それだけで作品自体のアドバンテージにならないのは当然である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「フライ,ダディ,フライ」

2005-12-24 18:42:08 | 映画の感想(は行)

 高校生の娘に大怪我を負わせた極悪学生に仕返ししようと、やたらケンカが強い在日朝鮮人少年に“弟子入り”した中年男の一夏を追う・・・・という、まるで有り得ないムチャクチャな話を違和感なく見せるには、キャラクターを完璧に“立たせる”しかない(笑)。

 金城一紀の原作と脚本は、前作「GO」と同様にキャラクター造形さえしっかりやれば(ストーリーに無理があっても)最後まで突っ走れる構造を持っているのだと思う。その意味では成島出監督は見事に合格だ。

 とにかく登場人物が“濃い”。オヤジ役の堤真一の、序盤の絵に描いたような小市民から、不良少年の手荒い指導によってみるみるうちに“責任感の強いファイター”に変貌するまでの渾身の演技(?)には圧倒される。相手役の岡田准一も大健闘。孤高を気取っていた一匹狼が中年男に付き合っているうちに等身大の高校生としての苦悩と心情を露わにしてゆく過程には共感してしまった。

 コメデイ・リリーフとしての少年の“取り巻き”連中や、中年男の通勤仲間(田口浩正とか神戸浩とか、クセ者揃い)の描写も大いに笑わせてくれる。

 この映画は若い観客より“おっさん世代”にアピールするはずだ。中年男の奮闘ぶりには拍手を送ると共に、駅から家までのランニングぐらいは敢行して身体を絞り込みたいと思った者も少なくなかろう(私もそのうちの一人だ・・・・爆)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「銀のエンゼル」

2005-12-24 08:54:49 | 映画の感想(か行)
 舞台は北海道の田舎町、国道沿いのコンビニエンスストアを舞台に、店主の中年男と家族、そして周囲の人々の人生模様を描く。監督は鈴井貴之。

 ちょっと辛口な描写もあるが、悪人は一人も出て来ず、みんな収まるところに収まってしまう。主演の小日向文世のキャラクターがそのまま映画の雰囲気になっているような、ほのぼのとした味わいが捨てがたい作品だ。

 佐藤めぐみ扮する主人公の娘の進学問題がメインストーリーだが、それよりも毎晩チョコボールを一箱買って帰るバツイチ子持ちの若い女(山口もえ)の行動に、金のエンゼル(幸福)を手に入れるには、毎日を地道に生きて、一個ずつでも銀のエンゼル(日常の中の小さな喜び)を集めていくしかないのだという、作者のポジティヴな視点が表されている。

 妻役の浅田美代子をはじめ、西島秀俊や大泉洋など脇のキャラクターも万全。そして“HOTバナナ”とか“ポルシェのトラクター”とか“コーヒーメロン”とかいった得体の知れない小道具(笑)が抜群の効果をあげている。茫洋とした風景の中に建つコンビニを演劇のステージのように見立てる構図も面白い。鈴井監督は地元では人気のある作家らしいが、他の作品も観てみたいものだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「チーム★アメリカ ワールドポリス」

2005-12-23 17:01:36 | 映画の感想(た行)
 「サウスパーク」のトレイ・パーカーとマット・ストーンによる、マリオネット(操り人形)アクション大作(笑)。

 対テロ国際警備組織“チーム・アメリカ”の“行き過ぎた活躍ぶり”を描く本作、何よりCGなどの最新技術はあまり使わず、昔の「サンダーバード」ばりの精巧なセットと手作りの“特殊効果”だけでアクション巨編を作り上げているところがエラい。しかもマリオネットならではのヒョコヒョコとした各キャラクターの動きをちゃんとフィーチャーし、場面によってはそれを逆手に取ったようないい加減な処理をしているのも面白い。

 内容は全編これおふざけと下ネタのオンパレードで、程度を知らない残虐描写も含めて、R18になるのも当然と思わせる(個人的にはマイケル・ムーアが自爆テロを敢行するシーンで爆笑してしまった)。

 だが、政治的ネタが満載のようでいて、作り手達にはイデオロギー方面にはまったく興味がなく、ただ“有名人をコケにしたい”という下世話なスタンスを最後まで貫いているのはアッパレだ。ちょうど「亡国のイージス」がテーマを大上段に振りかぶりつつも北朝鮮の国名さえ出せなかったヘッピリ腰と比べると、カツドウ屋としての志の高さは侮れないものがある。


 こういうネタは“一発芸”みたいなもので、ヘタに続編を作るとドッチラケになるからやめた方が良いだろう(爆)。とにかくストレス解消にピッタリの痛快編(?)である。カットされた過激場面を含めた“本番篇”も観てみたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「亡国のイージス」

2005-12-22 06:58:01 | 映画の感想(は行)
 いくら本物のイージス艦を海自から貸してもらおうと、福井晴敏による原作があまりにも面白いため、よほどの工夫をしないと映画が成功するはずもないが、その意味で本作は失格。

 まず監督の人選を誤った。阪本順治は一対一の肉体アクションは得意だが、こういう賑々しいスペクタクル軍事活劇映画は不向き。銃撃戦のシーンでさえ画面に隙間風が吹きまくっているのだから話にならない。音楽担当と編集者をハリウッドから招いているが、いっそのこと監督もマイケル・ベイやリドリー・スコットあたりを呼んでくれば良かったのだ。

 そして脚色の不備。登場人物をもっと絞り込んだ方がベターだった。特に女性工作員など不要。少なくともテロップで各キャラクターの役職ぐらい明示すべきである。

 反面、真田広之扮する先任伍長の矜持や寺尾聰演じる艦長の苦悩はあまり描かれておらず、キャストの存在感に丸投げしているような印象を受ける。それに原作でのラストのオチを省略したため、テーマの重大さが伝わってこない。

 そもそも作り手自身が骨太なメッセージを発出することに及び腰ではなかったのか。そうでなければ北朝鮮の国名さえ出せないようなヘタレぶりを露呈させるはずもない。

 さらに致命的なのは製作費の不足である。この題材は少なくとも50億円ぐらいは必要だが、それは無理としてもクライマックス場面にはもっと力を入れるべきではなかったか。僚艦を撃沈する場面さえ映像化できないのだから話にならない。これでは敵の首領の“よく見ろ日本人、これが戦争だ”とのセリフも宙に浮いてしまう。終盤の東京湾岸の場面もテレビの特撮番組並みだ。そして首相を交えた作戦本部の描写もえらく安っぽい。「踊る大捜査線」の警視庁司令室のセットにも負けている。

 全体的に、長い原作を相手に健闘しているのは理解できるが、この程度ではとても評価できない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DIATONEが復活

2005-12-22 06:51:53 | プア・オーディオへの招待
 三菱電機エンジニアリング株式会社が、オーディオブランド「DIATONE(ダイヤトーン)」のスピーカーを発売するらしい。

 ダイヤトーンは三菱電機のオーディオ用ブランドで、特にスピーカーに関しては国際的な評価を得ており、放送局のモニター用として多用されていた。民生用でもかなりの実績があり、“名器”と呼ばれる機種をいくつも輩出した。

 ちなみに私も、高校生の頃にオーディオセットを揃えてから今まで、スピーカーは主にダイヤトーンを使い続けている(まあ、一時期オンキョーに「浮気」したけど ^^;)。98年に今の機種に買い換えたところ、まさかそれがダイヤトーンの最後の製品シリーズのひとつになろうとは思いもしなかった(99年に三菱電機はオーディオ部門から撤退)。

 その後は国産メーカーでマトモにスピーカーのラインナップを揃えているところはビクターぐらいで、あとは“海外製におまかせ状態”の時期がずっと続いていただけに、今回の復活は嬉しい。もっとも、その復活第一弾の機種は一本105万円という一般ピープルには容易に手が出ない価格帯だが(^_^;)、これから安価な製品もリリースされることを期待したい。

 件の製品はひょっとしたら2月の九州AVフェスタで試聴出来るかもしれないな。今から楽しみである。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「アイランド」

2005-12-21 06:58:37 | 映画の感想(あ行)
 76年製作のディストピアSF大作「2300年未来への旅」(原題:Logan's Run )と設定・ストーリーが似ている。ついでに言えば主演のユアン・マクレガーと「2300年~」の主人公マイケル・ヨークは共にイギリス人、ヒロイン役のスカーレット・ヨハンソンと「2300年~」のジェニー・アガターも“ベビー・フェイスに巨乳”という点で一緒だ(爆笑)。

 もっとも「2300年~」自体が出来の悪い映画だったので、今回の作品はそれの“改良版”という位置づけだろうか。少なくとも活劇場面はスゴい。次から次へと繰り出される限度を知らない破壊シーンは、即物的なカメラワークも相まって、かなりの迫力を産み出している。さすがマイケル・ベイ監督、馬鹿力だけはハリウッド随一だ。

 反面、この演出家に“観客が感情移入できるようなキャラクター設定”など無理な注文であるのも確か。登場人物はすべて“将棋の駒”に過ぎず、細々したところは“俳優の存在感”に丸投げである。そのへんを割り切ってしまえば、観る側も“暇つぶしにもってこいの映画”として楽しめるだろう。

 物語の背景が2010年代になっているのは、最近のクローン技術の進歩を見ると、有り得ないことではないと妙に納得してしまった(笑)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「いつか読書する日」

2005-12-20 06:57:08 | 映画の感想(あ行)
 監督の緒方明が幼少期を過ごしたという長崎の街の描写が出色だ。名所旧跡などひとつも出てこないが(注:劇中には長崎という文字さえ出てこない)、坂の多い風情のある佇まいが、逆に主人公たちの行き場のなかった鬱屈した心情をうまく象徴している。ロケ地は同じながら、ただの“観光映画”でしかない「解夏(げげ)」とはかなりの違いだ。

 自らの想いを心の底に押し込んだまま50歳を過ぎてしまった中年男女の不器用な恋をしみじみと綴る緒方の演出は、前作「独立少年合唱団」から格段の進歩を遂げている。特に、岸部一徳扮する主人公が職場に訪れた老人に“50歳から85歳までは長いですか?”と尋ね、相手が“ああ、長いよ”と素っ気なく答える場面は胸を突かれた。中年から後にも時間はたっぷりある。人間、過去のしがらみから脱して新しい人生に踏み出すのに“もう遅い”ということはないのだ。

 ヒロイン役の田中裕子の演技には感心する。来る日も来る日も禁欲的なまでに黙々と牛乳配達に勤しみつつ、内に情動を秘めて生きる女を生々しく実体化。「火火(ひび)」での仕事も併せて本年度の賞レースを賑わすことだろう。

 終盤の展開が余計だったり、題名に“読書”が付いていながら、あまり重要なモチーフに成り得ていなかったりする欠点はあるが、まずは観る価値十分の佳作だと言えよう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「逆境ナイン」

2005-12-20 06:53:08 | 映画の感想(か行)
 「海猿」でソツのない演出力を示した羽住英一郎監督は、このギャグマンガの映画化でも必要以上のおふざけはナシにして地道にストーリーを追っている・・・・というか、実写版ではそういうアプローチしか出来ないであろう。ヘタに原作通りの悪ノリを“そのまま”映像化しようとすると絶対失敗する。映画と漫画とはメディアとして完全に別物なのだ。

 それを承知していれば、多少ギャグが上滑りしてメチャクチャ度がイマイチでも、あまり腹も立たない。それどころか、よく健闘したと思う。舞台を地方(三重県)に持ってきたのも正解で、これを首都圏で撮ったら嘘くささが全開だ。CGの使い方が控えめなのも良い。


 玉山鉄二はとても高校生には見えないが、パワーと演技力とヤケクソで乗り切っており、見事に型破りな主人公像を実体化。校長(藤岡弘、)や野球部監督(田中直樹)など、脇のキャラクターは万全。女子マネージャー役の堀北真希も可愛らしい。惜しむらくは他の野球部員の“熱さ”が足りないこと。何やら彼らだけ小手先の笑いに拘っているようで愉快になれない。おかげで最後のオチが決まらなくなってしまった。演技指導にはもうひとつ努力して欲しい。

 お手軽映画には間違いないが、意味もなくシネマスコープで撮られていることも含めて、劇場で観る価値はあるとは思う。それにしても“透明ランナー制”には笑わせてもらった(爆)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする