(原題:LES TRIPLETTES DE BELLEVILLE)オスカー長編アニメ部門で「ファインディング・ニモ」と最優秀賞を競った注目作。
とにかくキャラクターが“立って”いる。自転車レース中にマフィアに拉致された孫を救うため、フランスから足こぎボートで大西洋を越え大都市ベルヴィル(ニューヨーク?)に乗り込むバアちゃんと、彼女に協力する三つ子のバアちゃん。台詞はほとんどないものの、その行動は極限にまで型破りでシュール。「ハウルの動く城」に出てきた“なんちゃってバアさん”など足元にも及ばない活躍ぶりだ。バアちゃんたちのお供をする老犬も見事なコメディ・リリーフ。
絵柄もぶっ飛んでいる。子供が観たら引きつけを起こしそうな各キャラクターのグロい御面相。遠近法など眼中にないような大胆な構図とレトロな雰囲気。フライシャー兄弟の影響も窺われる奇想の極致だ。
これが長編デビューになるシルヴァン・ショメの演出は実にパワフルで、クライマックスのマフィアとの追撃戦など、緊迫感がないのに異様に盛り上がる(爆)。
そして何と言ってもブノワ・シャレストの音楽。ジャンゴ・ラインハルトにオマージュを捧げたようなノリの良い楽曲の数々は、あまりの素晴らしさに泣けてきた。特に“人生に意味なんか無くていい。ベルヴィルでスウィングしてランデブー!”と歌われるテーマ曲は、ここ数年の映画の主題歌ではベストだと思う。
相当にクセの強い作品だけに幾分“観客を選ぶ”映画だが、その芸術性の高さにより屹立した存在感を誇示している作品だ。観る価値は絶対にある。