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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ベルヴィル・ランデブー」

2005-12-02 19:18:43 | 映画の感想(は行)

 (原題:LES TRIPLETTES DE BELLEVILLE)オスカー長編アニメ部門で「ファインディング・ニモ」と最優秀賞を競った注目作。

 とにかくキャラクターが“立って”いる。自転車レース中にマフィアに拉致された孫を救うため、フランスから足こぎボートで大西洋を越え大都市ベルヴィル(ニューヨーク?)に乗り込むバアちゃんと、彼女に協力する三つ子のバアちゃん。台詞はほとんどないものの、その行動は極限にまで型破りでシュール。「ハウルの動く城」に出てきた“なんちゃってバアさん”など足元にも及ばない活躍ぶりだ。バアちゃんたちのお供をする老犬も見事なコメディ・リリーフ。

 絵柄もぶっ飛んでいる。子供が観たら引きつけを起こしそうな各キャラクターのグロい御面相。遠近法など眼中にないような大胆な構図とレトロな雰囲気。フライシャー兄弟の影響も窺われる奇想の極致だ。

 これが長編デビューになるシルヴァン・ショメの演出は実にパワフルで、クライマックスのマフィアとの追撃戦など、緊迫感がないのに異様に盛り上がる(爆)。

 そして何と言ってもブノワ・シャレストの音楽。ジャンゴ・ラインハルトにオマージュを捧げたようなノリの良い楽曲の数々は、あまりの素晴らしさに泣けてきた。特に“人生に意味なんか無くていい。ベルヴィルでスウィングしてランデブー!”と歌われるテーマ曲は、ここ数年の映画の主題歌ではベストだと思う。

 相当にクセの強い作品だけに幾分“観客を選ぶ”映画だが、その芸術性の高さにより屹立した存在感を誇示している作品だ。観る価値は絶対にある。
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「いぬのえいが」

2005-12-02 06:59:55 | 映画の感想(あ行)
 犬をめぐるさまざまなエピソードをリレー形式でつないだ疑似オムニバス作品。ただし各パートの出来にはかなり差がある。

 ミュージカル仕立ての導入部はダサい振り付けとド下手な歌に“引いて”しまった。映画の主軸になるのが中村獅童扮するCMプランナーと柴犬のポチとのストーリーだが、可もなく不可もなしの出来で印象は実に薄い。アニメーションのパートも意味がよく分からず、何よりキャラクター・デザインが嫌いだ。

 対して面白いのは第五話の「恋するコロ」(監督:佐藤信介)である。犬の目から見た飼い主と自分の恋を語るエピソードだが、佐藤隆太演ずる脳天気な飼い主と、これまた脳天気な片想い相手(乙葉)との掛け合いに犬のモノローグ(声:荒川良々)がツッコミを入れるという設定が抜群だ。第七話「犬語」(監督:永井聡)も、オチは予想通りだが、やっぱり爆笑させられた。

 最終話「ねえ、マリモ」(監督:真田敦)は、ハッキリ言ってズルい。犬を飼ったことのある者なら絶対に泣かざるを得ない話になっている。ただし、ラストが犬ではなく飼い主の宮崎あおいのイメージショットであるのは異論が出そうである(まあ、私はそれでも良いのだが・・・・笑)。

 全体的には不満な点もあるが、企画やプロデュースの方向性としては申し分ない。少なくとも「Jam Films」なんかよりずっとマシ。ひょっとしたら関連商品として「ねこのえいが」も出来るかもしれない(やっぱ無理かな)。
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浅倉卓弥「四日間の奇蹟」

2005-12-02 06:57:19 | 読書感想文
 文庫本の帯に“第一回『このミステリーがすごい!』大賞金賞受賞作品。映画化決定!”というフレーズが踊っていたので思わず購入してしまった私は天下の大馬鹿者である(爆笑)。

 何でも篠田節子の「ハルモニア」(私は未読)のパクリだという話だが、それは別にしてもこの本はヒドい。将来を嘱望された主人公のピアニストが“有り得ない発砲事件”で手に障害を負い、身元を引き受けた知的障害をもつ少女(実はピアノの名手?)の内面に“有り得ない落雷事故”によって意識不明になったヒロインの看護婦の魂が乗り移り、しかも彼女は“子供が産まれないから”という時代錯誤的な理由で親族から離縁させられたという“有り得ない過去”を持ち・・・・etc.今時テレビの昼メロでも恥ずかしくてやらないような超御都合主義なネタが延々と続く。

 当然、ストーリーも工夫も何もない腑抜けた田舎芝居そのものだ。しかも人物造型が滅茶苦茶でまったく魅力無し。優柔不断なだけの主人公もさることながら、自分の生い立ちや心情などを“しゃべり出したら止まらない”とばかりに蕩々と披露してくれるヒロインには気色悪ささえ覚えてしまう。

 だいたい、これのどこが“このミステリーがすごい!”なんだよ。ミステリー的興趣なんて皆無ではないか(苦笑)。

 なお、映画は観ていない。いくら監督が「チルソクの夏」などの佐々部清といっても、原作がこれでは良い映画に仕上げることは困難を極めるからだ(事実、映画も評判は芳しくないようだ)。
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