元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ZOO」

2005-12-10 18:08:12 | 映画の感想(英数)
 若手人気作家・乙一の同名ホラー短編集から5話を映画化したオムニバス篇。

 一番面白かったのは第一話「カザリとヨーコ」である(監督:金田龍)。高校生の双子の娘を一方だけ猫可愛がりして一方を虐待する母親に扮するのが松田美由紀という配役からして強烈。吉行和子扮する謎の老婦人も不気味。さらに凄いのが一人二役で娘のカザリとヨーコを演じ分ける新人・小林涼子で、若い頃の安達祐実を(←今でも若いけど)もっと異常にしたような存在感に目が離せない。バックに流れるラフマニノフの「ヴォーカリーズ」も抜群の効果だ。

 ただし、物語自体のオチは読める。このパートに限らず、最終話「ZOO」を除く四話全てが途中で結末が予想できる。それだけに、キャスティング等のストーリー以外の部分に工夫がやや足りないエピソード残り3本(第三話はアニメーションだが)は観ていて少し辛いものがあった。

 で、その「ZOO」だが、暗い道路を走る車のモチーフといい、意味不明の筋書きといい、ズバリ言ってこれはデイヴィッド・リンチの「ロスト・ハイウェイ」のパクリである。さらに、主人公が腐乱死体の記録を取るくだりはピーター・グリーナウェイの「ZOO」からの借用も窺われ、どうも愉快な気分になれない。監督は「blue」の安藤尋だが、彼自身の責任というより原作がそうなっているのかもしれない。

 なお、劇場は中高生で一杯。たぶん乙一のファンであろう。私は彼の小説は「暗黒童話」しか読んでいないが、もともとは少年マンガ雑誌が企画した小説コンテストから出てきた人らしいので、若年層へのアピール度は高いと思われる。
コメント
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