元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「インファナル・アフェアⅢ 終極無間」

2005-12-07 06:52:58 | 映画の感想(あ行)
 トニー・レオン扮する潜入警官が殉職した後の、アンディ・ラウ演ずる刑事の“善人への道”を描く第三作。

 この作品で台湾金馬奨の主演男優賞を受賞したラウの演技は素晴らしく、暗い過去を払拭するかのごとく潜入マフィア狩りにのめり込む切迫した主人公の心情をうまく体現化している。ただし、彼が頑張れば頑張るほど、本作があまりにも素晴らしかった第一作の“後日談”でしかない構図が透けて見え、どうも落ち着かない。ラストの扱いなど、よく考えると“当然の帰着”を提示しているに過ぎないのではと思ってしまう。

 それでも、前二作では説明されなかった数々のネタの背景を披露してくれる点や、クールなエリート刑事を演じるレオン・ライの存在感など、この作品ならではの見所を用意している点は認めて良い。ただし、ケリー・チャン扮する女医とのくだりは不要だし、刑事同士が互いを監視し合うくだりの段取りが悪くサスペンスが盛り上がらない。

 何より、第一作で見られたカメラワークの身を切られるような鋭いカッティングと寒色系の映像美がないのが寂しく、撮影監督の重要性を痛感する結果となった。

 それにしても、行き当たりばったりでドラマを作っていた感のある香港映画が、正面切って“脚本の善し悪し”を言及される状況を作り出したこのシリーズの功績は小さくはない。ハリウッド版がどういうアプローチをしてくるのか楽しみだ。
コメント
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