元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「亡国のイージス」

2005-12-22 06:58:01 | 映画の感想(は行)
 いくら本物のイージス艦を海自から貸してもらおうと、福井晴敏による原作があまりにも面白いため、よほどの工夫をしないと映画が成功するはずもないが、その意味で本作は失格。

 まず監督の人選を誤った。阪本順治は一対一の肉体アクションは得意だが、こういう賑々しいスペクタクル軍事活劇映画は不向き。銃撃戦のシーンでさえ画面に隙間風が吹きまくっているのだから話にならない。音楽担当と編集者をハリウッドから招いているが、いっそのこと監督もマイケル・ベイやリドリー・スコットあたりを呼んでくれば良かったのだ。

 そして脚色の不備。登場人物をもっと絞り込んだ方がベターだった。特に女性工作員など不要。少なくともテロップで各キャラクターの役職ぐらい明示すべきである。

 反面、真田広之扮する先任伍長の矜持や寺尾聰演じる艦長の苦悩はあまり描かれておらず、キャストの存在感に丸投げしているような印象を受ける。それに原作でのラストのオチを省略したため、テーマの重大さが伝わってこない。

 そもそも作り手自身が骨太なメッセージを発出することに及び腰ではなかったのか。そうでなければ北朝鮮の国名さえ出せないようなヘタレぶりを露呈させるはずもない。

 さらに致命的なのは製作費の不足である。この題材は少なくとも50億円ぐらいは必要だが、それは無理としてもクライマックス場面にはもっと力を入れるべきではなかったか。僚艦を撃沈する場面さえ映像化できないのだから話にならない。これでは敵の首領の“よく見ろ日本人、これが戦争だ”とのセリフも宙に浮いてしまう。終盤の東京湾岸の場面もテレビの特撮番組並みだ。そして首相を交えた作戦本部の描写もえらく安っぽい。「踊る大捜査線」の警視庁司令室のセットにも負けている。

 全体的に、長い原作を相手に健闘しているのは理解できるが、この程度ではとても評価できない。

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