元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「サマリア」

2005-12-12 06:50:41 | 映画の感想(さ行)
 主人公の援交女子高生二人のうち身体を売るのは片方だけで、もう一人は“マネージャー役”に徹しているものの、それでも相方が見知らぬ男に抱かれるのが我慢できない。しかし“いつかふたりでヨーロッパ旅行する”という目標(らしきもの)のためズルズルと援交稼業を続けていたが、一方の死をきっかけに金を男たちに返す“逆援交”に走る・・・・という設定そのものは悪くない。

 演じる二人もなかなかのもので、醒めきった眼差しが印象的なクァク・チミンと世の中を諦観したようにいつも笑顔を絶やさないハン・ヨルムの存在感は素晴らしい。

 当然、映画は屈折した二人の内面に食い込んでいくと観客は予想する。ところが本作はそうならず、あろうことか娘の援交に腹を立てた父親の凶行の方に物語の焦点は移動してしまう。

 タイトルの「サマリア」とは、聖書に出てくる“異教徒が住む土地”のことらしいが、映画のヒロインたちを差別の対象であったサマリア人になぞらえるという、あまりにも図式的な作劇を見ても分かるように、作者にとっては女子高生側の事情には興味はなく“援交の反社会性の断罪”しか描きたくないのだろう。


 キム・ギドク監督の物の見方は一面的であるようだ。また、よく考えると“単純に過ぎる(と作者が捉えているらしい)”韓国の社会そのものに自ら神学校で学んだという知識を無理矢理当てはめているようにも思える。それは、あまり面白いものではない。
コメント (1)
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