去る3月24日から26日にかけて、福岡市博多区石城にある福岡国際会議場で開催された「九州ハイエンドオーディオフェア」に行ってきた。今年は20回という節目であることもあり、コロナ禍で長らく実施していなかったオーディオ評論家の福田雅光の司会による“オーディオアクセサリーの聴き比べ大会”が開催された。
今回のネタは仮想アースとクリーン電源装置である。結論から先に言えば、これらのアクセサリーを使用することによるメリットはあると思う。聴感上のS/N比や音場の見通しなどが、非使用時に比べてアップしているのが見て取れる。ただし、敢えてこれらを導入する価値があるかどうかは、意見が分かれるところだ。なぜなら、いずれも財布には優しくないからだ。
たとえば、クリーン電源装置の代表モデルであるACCUPHASEのPS-1250の価格は税込で88万円もする。この金額を文字通り“アクセサリー費用扱い”でポンと出せるハイエンドユーザーだけが購入の対象にするような性格の商品だ。大半のユーザーは、それだけの予算があるならばスピーカーやアンプなどの主要コンポーネントのグレードアップに回すだろう。
さて、2022年11月に北九州市で開催されたオーディオフェアで紹介されていたESOTERICの超弩級レコードプレーヤーGrandioso T1(定価700万円)が今回も展示されていたが、関係者の説明によると、実はこの機器にはユニークな機能が付与されているらしい。それは、モーターとターンテーブルを接触させずに駆動させるマグネドライブ・システムを採用しているこのモデル、モーターとターンテーブルの“距離”を調節してトルク(回転力)を弱めることも出来るのだという。
どうしてそんな機能があるのかというと、トルクを故意に低下させることによりBGM的なソフトな音にするためらしい。通常、トルクなんて大きければ大きいほど音質がアップして好都合だと思われるが、あえてローファイをセレクト可能にするあたり、このブランドはある意味ユーザー思いなのかもしれない。そういえば新製品のプリアンプGrandioso C1X solo(定価200万円)は、音をフェードアウトする際のレベル設定が出来るという。果たしてその機能が必要なのかは不明だが、特性追及一辺倒ではない姿勢を示そうとしているあたりは興味深い。
ACCUPHASEのブースで面白かったのが、同社が引き受けた機器の修理案件が紹介されていたことだ。このメーカーはどんなに古いモデルでも原則修理を引き受けてくれるのでユーザーからの信頼度も高いが、中には困ったケースもあるらしい。アンプのケースを開けてみると埃が山のように積もっていて、何とか除去してユーザーに返却したものの、間を置かず同じ症状で再修理の依頼が舞い込んだという。つまりは、凄まじく不潔な環境で使用されていたということで、そんな状況で高級オーディオ機器を使うなと言いたい。
また、適度に温かいアンプの上部パネルが飼い猫の寝床になってしまい、そのままオシッコを漏らして(笑)アンプが動作不能になった例もあるとか。猫の小便は金属を錆び付かせる効果が高いとかで、かなりの部品が使い物にならなくなる。驚いたことに、このような事例は同社だけで年間10件以上発生するらしく、最近のペットブームはオーディオファンにとっては大きな不安要因になりつつあるようだ。
(この項つづく)
今回のネタは仮想アースとクリーン電源装置である。結論から先に言えば、これらのアクセサリーを使用することによるメリットはあると思う。聴感上のS/N比や音場の見通しなどが、非使用時に比べてアップしているのが見て取れる。ただし、敢えてこれらを導入する価値があるかどうかは、意見が分かれるところだ。なぜなら、いずれも財布には優しくないからだ。
たとえば、クリーン電源装置の代表モデルであるACCUPHASEのPS-1250の価格は税込で88万円もする。この金額を文字通り“アクセサリー費用扱い”でポンと出せるハイエンドユーザーだけが購入の対象にするような性格の商品だ。大半のユーザーは、それだけの予算があるならばスピーカーやアンプなどの主要コンポーネントのグレードアップに回すだろう。
さて、2022年11月に北九州市で開催されたオーディオフェアで紹介されていたESOTERICの超弩級レコードプレーヤーGrandioso T1(定価700万円)が今回も展示されていたが、関係者の説明によると、実はこの機器にはユニークな機能が付与されているらしい。それは、モーターとターンテーブルを接触させずに駆動させるマグネドライブ・システムを採用しているこのモデル、モーターとターンテーブルの“距離”を調節してトルク(回転力)を弱めることも出来るのだという。
どうしてそんな機能があるのかというと、トルクを故意に低下させることによりBGM的なソフトな音にするためらしい。通常、トルクなんて大きければ大きいほど音質がアップして好都合だと思われるが、あえてローファイをセレクト可能にするあたり、このブランドはある意味ユーザー思いなのかもしれない。そういえば新製品のプリアンプGrandioso C1X solo(定価200万円)は、音をフェードアウトする際のレベル設定が出来るという。果たしてその機能が必要なのかは不明だが、特性追及一辺倒ではない姿勢を示そうとしているあたりは興味深い。
ACCUPHASEのブースで面白かったのが、同社が引き受けた機器の修理案件が紹介されていたことだ。このメーカーはどんなに古いモデルでも原則修理を引き受けてくれるのでユーザーからの信頼度も高いが、中には困ったケースもあるらしい。アンプのケースを開けてみると埃が山のように積もっていて、何とか除去してユーザーに返却したものの、間を置かず同じ症状で再修理の依頼が舞い込んだという。つまりは、凄まじく不潔な環境で使用されていたということで、そんな状況で高級オーディオ機器を使うなと言いたい。
また、適度に温かいアンプの上部パネルが飼い猫の寝床になってしまい、そのままオシッコを漏らして(笑)アンプが動作不能になった例もあるとか。猫の小便は金属を錆び付かせる効果が高いとかで、かなりの部品が使い物にならなくなる。驚いたことに、このような事例は同社だけで年間10件以上発生するらしく、最近のペットブームはオーディオファンにとっては大きな不安要因になりつつあるようだ。
(この項つづく)