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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ニワトリはハダシだ」

2005-12-03 07:45:06 | 映画の感想(な行)
 本作の“前作”といわれる「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」(85年)は、原発ジプシーだの在日外国人だのといった社会のはぐれ者に対する必要以上のシンパシーが鬱陶しく、どこが面白いのかさっぱり分からなかったが、それから20年近く経って製作されたこの「ニワトリはハダシだ」は、社会派を気負った態度がいい按配に“抜けて”きた。しかも喜劇としてのパワフルさは“前作”以上。森崎東監督は70代後半になってもまだまだ元気だ。

 京都府舞鶴市を舞台にした警察と検察、ヤクザと“貧民ども”が勝手に関わり合う汚職事件の顛末は正直言って滅茶苦茶だが、これをもって“ストーリーが練られていない”と片付けるのは野暮というもの。

 いくら地方都市とはいえ、ここに描かれる濃密な人間関係は実際はあまりないものだろうし、在日朝鮮人達が全員あんな飄々とした生活を送っているわけはなく、知的障害児達がみんな良い子であるはずもない。滑稽なほどの“暴力刑事”がいたりする反面、ヤクザもほとんど怖く描かれていない。

 そう、本作は今では失われた地域共同体の理想形を描くファンタジーなのだと思う。そう割り切って観れば、実に楽しめるシャシンだ。

 登場人物が多いわりに各キャラクターが粒ぞろいなのにも感心。倍賞美津子と原田芳雄の“おもろい夫婦”ぶりをはじめ、脇を固める岸部一徳や石橋蓮司、柄本明、李麗仙、余貴美子らも楽しそうに演技をしている。子役の浜上竜也と守山玲愛も素晴らしい。

 そしてこの映画一番の“発見”は養護学校の教師(いちおう主人公)を演じる肘井美佳だ。まさしく“体当たりの演技(注:エッチな演技という意味ではない ^^;)”で観る者を圧倒(しかもカワイイ)。これが映画初出演らしいが、楽しみな人材である。港町の風情と宇崎竜童の音楽も捨てがたい魅力だ。
コメント
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