2005年末の経済財政諮問会議で、長期金利より名目経済成長率を高めに見通している従来の政府見解に対して「楽観的すぎる」との異論が相次いだらしい。これまでより成長率を厳しく見れば歳入の伸びは鈍り、金利を高く見れば国債の利払いによる歳出はより増える。このため、異論に沿って見解を見直すと、財政再建の見通しも厳しくはじく必要がある。(2006年1月4日 朝日新聞)
たぶんマスコミとしては、関係者をこの「長期金利が名目GDP成長率より高くなる派」と「同、低くなる派」とに単純分割して“さて、どちらが勝つかなァ”と高みの見物を決め込むつもりだろうが、ハッキリ言ってマスコミも経済財政諮問会議のメンバーの連中も脳天気に過ぎるスタンスである。
彼らはそもそも問題の意味すら分かっていないのだろう。確かに長期的スパンで見れば、長期金利は名目成長率にインフレ率が上乗せされた水準にあり、よって物価水準がプラスにシフトしてゆく限り長期金利のほうが名目成長率よりも高くなる。対して実際の成長率が高く見込まれた高度経済成長期などには、名目成長率が長期金利を上回る局面があった。しかし、こんなのは単なる「結果論」あるいは「現象面」での話でしかない。当事者としてそれを“どっちが高くなるのかなァ”と“予想”しているだけで果たして良いのか。
“予想”なんてのは評論家に任せておけばいい。経済財政諮問会議のメンバーがやるべきことは、長期金利と名目成長率を“予想”することではなく、実際に“どうするか”、つまりは、名目GDP成長率をどうやって上げるかを提案しなければ話にならない。
竹中平蔵は“4%は伸びるんじゃないか”と寝ぼけたことを言ってるが、名目GDP成長率をアップさせる具体的施策を何も実施せず、デフレ基調を放置して名目成長率がそんなに上向くはずがないではないか(注:名目成長率=実質成長率+インフレ率)。まさか構造改革の促進とやらで何とかなると思っているんじゃないだろうな。竹中の脳内で構築された“サプライサイド経済学”ではそうなるのかもしれんが、実体経済において構造改革(生産性向上)が国の経済マクロを押し上げた事例など(少なくとも我が国では)存在しない。
本気で名目GDP成長率を上げようと思うのなら、やるべきことは“過去の歴史”が証明している。だが、政治家もマスコミも(意識的か無意識的かは知らないが)それを完全に無視している。“長期金利が名目GDP成長率より高くなるのかなァ。ならば増税も仕方ないなァ”という“予想”の世界で遊んでいるうちに、国民生活は苦しくなる一方だ。いい加減、茶番はやめてもらいたい。