高校生の娘に大怪我を負わせた極悪学生に仕返ししようと、やたらケンカが強い在日朝鮮人少年に“弟子入り”した中年男の一夏を追う・・・・という、まるで有り得ないムチャクチャな話を違和感なく見せるには、キャラクターを完璧に“立たせる”しかない(笑)。
金城一紀の原作と脚本は、前作「GO」と同様にキャラクター造形さえしっかりやれば(ストーリーに無理があっても)最後まで突っ走れる構造を持っているのだと思う。その意味では成島出監督は見事に合格だ。
とにかく登場人物が“濃い”。オヤジ役の堤真一の、序盤の絵に描いたような小市民から、不良少年の手荒い指導によってみるみるうちに“責任感の強いファイター”に変貌するまでの渾身の演技(?)には圧倒される。相手役の岡田准一も大健闘。孤高を気取っていた一匹狼が中年男に付き合っているうちに等身大の高校生としての苦悩と心情を露わにしてゆく過程には共感してしまった。
コメデイ・リリーフとしての少年の“取り巻き”連中や、中年男の通勤仲間(田口浩正とか神戸浩とか、クセ者揃い)の描写も大いに笑わせてくれる。
この映画は若い観客より“おっさん世代”にアピールするはずだ。中年男の奮闘ぶりには拍手を送ると共に、駅から家までのランニングぐらいは敢行して身体を絞り込みたいと思った者も少なくなかろう(私もそのうちの一人だ・・・・爆)。