気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

合成風速 小林信也

2007-08-16 00:24:14 | つれづれ
FAXの末尾に「愛している」と書きそのあとすぐに(笑)と添へる

法学部出て電算機屋となり今日も吹かるる強冷風に

五週間を家族の元に帰らねば血がみな青くなりたるごとし

次男に勝つて長男に負ける腕相撲人生すでに折り返し済み

本人に言へぬ本音を電話に言ふ黙つて聞いてくれる妻がゐる

(小林信也 合成風速 本阿弥書店)

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塔の小林信也の『千里丘陵』につづく第二歌集。大阪に単身赴任していた著者は、五年半を経て、いよいよ家族の元に帰ることになる。単身赴任中、家族と連絡を密に取り、奥さまと京都を散策したり、電話やFAXで話し合ったり、ますます家族の絆を強くしているのがわかる。電算機関係の仕事らしいが、その間、短歌を詠み、短歌評論同人誌「D・arts」を執筆し、充実した生活を送られたようである。
歌の雰囲気からして、フィクションではないようで、単身赴任がより一層家族を近づけるケースもあるのだと思った。著者の温かい人柄が感じられた。