気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

スカートの裾いっぱいの

2007-08-29 22:17:54 | つれづれ
ふるさとはしにばしょとしてとっておく風花の舞う朝、出立す

憂鬱に傾く今日の鶴田伊津ひしゃくで掬うように連れ出す

百年の眠りがほしい誰からも傷つけられず傷つきもせず

入道雲のへりを目指して坂上がる一人の孤独二人の孤独

うしろからあなたは我をだきたがる竜胆の花かかえるように

スカートの裾いっぱいの歩幅もて勝どき橋の夕暮れをゆく

(鶴田伊津 百年の孤独 六花書林)

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『百年の眠り』のⅡから。傷つきやすい感性を裡に秘めて、明るくふるまう作者が見える。二首目は、自分の名前をフルネームで入れた珍しい歌。三句目ど真ん中に鶴田伊津が5音で納まっている。愉快。
勝どき橋の歌は、新年歌会で高得点だったような記憶がある。この芯の強さが彼女の持ち味だと思う。