気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

兄国弟国

2007-08-01 00:47:24 | つれづれ
通勤のふとももに置く茄子紺の加藤治郎の歌集の重さ

歌に拠るすなはち心病みたるとおのれ蔑みゐたりし日々よ

サックスがつめたく指にくひこんで鞍馬は今日もきまぐれ時雨

二〇〇○年一月八日さびしくて兄国弟国(えくにおとくに)とふところ過ぐ

くれなゐの葡萄の舟をはこびくるゼフィロスの髭、岐(えだわか)れして

自転車の鞍のかたちは葦舟の春の水面(みなも)をくだれるかたち

(大辻隆弘 兄国 短歌新聞社)

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『兄国』の後半から好きな歌。
加藤治郎の歌集の重さという歌に、そこはかとなくライバル意識のようなものを感じる。お互いに切磋琢磨されているのだろう。歌風は治郎さんの方が、ポップで軽妙な感じがある。大辻さんは抒情的なものにこだわっておられるのだろうか。また、この時期の歌に既視感があるのは、題詠マラソンのせいだろう。