通勤のふとももに置く茄子紺の加藤治郎の歌集の重さ
歌に拠るすなはち心病みたるとおのれ蔑みゐたりし日々よ
サックスがつめたく指にくひこんで鞍馬は今日もきまぐれ時雨
二〇〇○年一月八日さびしくて兄国弟国(えくにおとくに)とふところ過ぐ
くれなゐの葡萄の舟をはこびくるゼフィロスの髭、岐(えだわか)れして
自転車の鞍のかたちは葦舟の春の水面(みなも)をくだれるかたち
(大辻隆弘 兄国 短歌新聞社)
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『兄国』の後半から好きな歌。
加藤治郎の歌集の重さという歌に、そこはかとなくライバル意識のようなものを感じる。お互いに切磋琢磨されているのだろう。歌風は治郎さんの方が、ポップで軽妙な感じがある。大辻さんは抒情的なものにこだわっておられるのだろうか。また、この時期の歌に既視感があるのは、題詠マラソンのせいだろう。
歌に拠るすなはち心病みたるとおのれ蔑みゐたりし日々よ
サックスがつめたく指にくひこんで鞍馬は今日もきまぐれ時雨
二〇〇○年一月八日さびしくて兄国弟国(えくにおとくに)とふところ過ぐ
くれなゐの葡萄の舟をはこびくるゼフィロスの髭、岐(えだわか)れして
自転車の鞍のかたちは葦舟の春の水面(みなも)をくだれるかたち
(大辻隆弘 兄国 短歌新聞社)
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『兄国』の後半から好きな歌。
加藤治郎の歌集の重さという歌に、そこはかとなくライバル意識のようなものを感じる。お互いに切磋琢磨されているのだろう。歌風は治郎さんの方が、ポップで軽妙な感じがある。大辻さんは抒情的なものにこだわっておられるのだろうか。また、この時期の歌に既視感があるのは、題詠マラソンのせいだろう。