AD際族

コロナ共存の広告表現の近未来観

集合知の無知(8)

2016-09-08 18:47:13 | 今そこにあるメディアのリスク




先日何度も命を助けて頂いている先生の診察に鎌倉に参りました。M先生はお若いですが、ハーバード大学にフェローで、イタリアの学会に行ってらしたそうです。
この「Drive Motivation 3.0」のお話をしましたが、「お金じゃないよね。好きだからやってるんですよね。」と仰ってました。

「サム・グラックスバーグのロウソクの実験」

次にサム・グラックスバーグという科学者がこのロウソクの問題を使って行った実験です。
彼は現在プリンストン大学にいます。この実験でインセンティブの力がわかります。彼は参加者を集めてこう言いました。



「この問題をどれくらい早く解けるか時計で計ります」。そして1つのグループには、この種の問題を解くのに一般にどれくらい時間がかかるのか、平均時間を知りたいのだと言います。
もう1つのグループには報酬を提示します。「上位25パーセントの人には 5ドルお渡しします。1番になった人は 20ドルです」。これは何年も前の話なので、物価上昇を考慮に入れれば、数分の作業でもらえる金額としては悪くありません。十分なモチベーションになります。
このグループはどれくらい早く問題を解けたのでしょう? 答えは、平均で3分半余計に時間がかかりました。3分半長くかかったのです。そんなのおかしいですよね? 私はアメリカ人です。自由市場を信じています。そんな風になるわけがありません。人々により良く働いてもらおうと思ったら報酬を出せばいい。ボーナスに コミッション、あるいは何であれインセンティブを与えるのです。ビジネスの世界ではそうやっています。
しかしここでは結果が違いました。




思考が鋭くなり、クリエイティビティが加速されるようにとインセンティブを用意したのに、結果は反対になりました。思考は鈍く、クリエイティビティは阻害されたのです。
この実験が興味深いのは、それが例外ではないということです。この結果は何度も何度も、40年に渡って再現されてきたのです。この成功報酬的な動機付け―If Then式に「これをしたら これが貰える」というやり方は、状況によっては機能します。しかし多くの作業ではうまくいかず、時には害にすらなります。これは社会科学における最も確固とした発見の1つです。そして最も無視されている発見でもあります。
先ほどのロウソクの実験を、2つのグループに分けて、片方には報酬あり、もう片方には報酬なしとしたところ、「報酬あり」 のグループのほうが「ロウソクの問題」を解決するのに平均の160%もの時間を要したという結果と綴られておりました。

そして意味深いのは、同じ条件で40年にわたって繰り返されたロウソクの実験の中で、ただの一度も、「報酬を提示されたグループが提示されなかったグループより問題を早く解決できることがなかった」こと。結論は何か。
機能的固着を超える、イノベーションは、インセンティブ(飴)システムからは産まれないということではないでしょうか?
今の時代「モチベーション2.0」の経済社会の形成自体が成り立たない。と申しますか、外発的モチベーション即ち対価であるお金があってこその、内発的モチベーションが高まる。」という欺瞞に誰もが触れずにきたのでしょう。