長年運に恵まれず、生活はカツカツながらもコツコツと愚直に勤勉に生きてきた男がおりました。
教育ローンを使い、やっとのことで子供を育て上げ、社会に出した後でその男は、自分の人生に挑戦すべく、ゼロから、自分で商売をしてみることにしました。
半世紀を越える、その男の人生は、その真面目さと誠実と努力によって、彼を知っている人々に、まがいのない信用と信頼を貯金しておりました。
その貯金と利子は、決して多くはないけれども、今の人生のささやかな欲求には充分なものが与えられました。
しかし、その男は一抹の不条理と寂しさを今抱えています。
そうではなかったときには感じられなかった、幸せや裕福につながる成功というものへのやっかみというものです。それは圧力のようなものです。
その男は、「牛の角」「馬の角」になぞらえてこういいます。
世間には、どんなに大きな牛の角があっても、それを不自然とは誰も思わない。しかし、どんなに小さな角であっても、それが馬に生えていると見れば、ああだこうだと言い始める。と。
春先に希望の黄色を可憐に咲かせる福寿草。
注意しなければ、すぐにでも踏み潰してしまいそうだ。
たくさんの福寿草が自由に芽吹き育つ環境が、この国にはどれだけあるのだろうか。