こんな話がある。
羅漢:私達には、仏の教えは深甚微妙かつ無上のものでなかなかたどり着けない、それでお尋ねしようとにここにやって来ました。
釈迦:よく来た。
羅漢:ではさっそく、世界は、有りますか無いですか。
釈迦:有る無いの両方だ。
羅漢:今有るとは何を以て有るのですか、今の無いとは何を以て無いのですか。
釈迦:生者にとっては有り死者にとっては無い、つまり私は有るとも無いとも言っている。
羅漢:人は何を頼りに生きますか。
釈迦:食べ物を頼りに生きる。
羅漢:食べ物はどこから来ますか。
釈迦:火、風、水、土の四元素からできる。
羅漢:四元素は何処から来ますか。
釈迦:それらは空から生じる。
羅漢:空は何処から生じますか。
釈迦:無から生じる。
羅漢:無は何処から生じますか。
釈迦:世界の本性から生じる。
羅漢:その本性は何処から生じますか。
釈迦:涅槃から生じる。
羅漢:その涅槃は何処から生じますか。
釈迦:なぜそのような深甚なことを尋ねる、涅槃に動きは無く生じるものでは無い。
羅漢:涅槃を成就しましたか。
釈迦:まだ到達していない。
羅漢:もし涅槃に到達していないならどうして涅槃が無上の至福と知ったのですか。
釈迦:逆に汝に聞く、この世の衆生の生活は苦か楽かどちらだ。
羅漢:とても苦しいものです。
釈迦:その苦しいとはどのようなことだ。
羅漢:死んでいく者達の痛みを見ているととても耐えられない、私は死が苦しみだと知っています。
釈迦:それでは尋ねる、まだ死んでいないお前は死が苦しいとどうして知った。
羅漢:・・・・
釈迦:私は、死で無く生でも無い十方世界の諸仏を見てきた、それ故に涅槃が無上の至福と知った。
・・・
百喩経というもののなかにある話である。