黄金週間なものですから、家を留守にするお宅も多うございましょ。
どうか、火の始末にお気をつけなすってお出かけください。
泥棒なんてものは、たいしたものを盗っちゃあいきませんが、火は灰になるまで色気をだしますんで、へぇ。
江戸の町火消しってぇのは、ずいぶんと格好がよかったようで、特に纏い持ちというのは、華稼業でございまして、若い、背が高い、男前が、条件だったようです。
天下御免の纏い持ち。男としてはあこがれであります。
勇気も抜群で、「ここまでで食い止めてやる。」と言う場所に立つんですな。そこで組仲間は、そこまで火が回らないよう必死で消火活動をするわけであります。
強い組織ですなぁ。
それぞれ町ごとには、いろは別の組織名がついており、め組というのは特に有名でございます。
一番乗りをどの組も狙うのですが、地元の組が早いのは当たり前でございまして、よそから来た組に1番纏いは譲るのが慣わしだったようです。
こういう敬意の払い方も、意気じゃあございませんか。
・・・しかし。
へ組。というのはいただけませんなぁ。なんだか力が入りません。
「おう!おぅ!おう! そこどきやがれ、火事だってんだ。へ組が通るぜ!」
・・・なんとなく燃え広がりそうでございます。
火の用心が、への用心ということにもなって都合が悪うございましょう。
大変なときに罹災者の感情も害します。
語呂がなんともいかんしがたい。
・・・。
実際は、へ。ら。ひ。ん。などという組はさすがになかったようでございます。
子供組なんてものがあって、ん組の子の組を呼ぶのは、やはりいかんでしょう。
やる気がうせてしまいます。
馬鹿噺はこれぐらいで、火の用心。
火のときは 金銀などに目をかけて
大事の命 捨てぬ用心。