南無煩悩大菩薩

今日是好日也

左様なら西方浄土極楽へ

2021-05-23 | 壹弍の賛詩悟録句樂帳。

(photo/original unknown)

その昔、亀と呼ばれた大泥棒がついに捕まり打ち首となった。

なかなかの洒落者で首を刎ねられる前に一句所望しこんな辞世を残している。

  萬年も生きよとおもうたこの亀が こころの泥で首がスッポン

同じ泥棒にこんな者もいた。是非にもと辞世を所望し、

  浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ

すると、立会人がそれは大泥棒石川五右衛門じゃないかといったところ、「はい、これが盗み納めでございます」

ある乞食は寺の門前にこう書いてこと切れていたという。

  知り知らぬ憂さ嬉しさの果ては今 もとの裸のもとの身にして

他にも乙なところでは、

  一期栄華一杯酒 四十九年一酔間 生不生死亦不死 歳月只是如夢中    -上杉謙信

  善もせず悪も作らず死ぬる身は 地蔵も褒めず閻魔叱らず   -式亭三馬

  今までは人のことだと思うたに 俺が死ぬとはこいつはたまらん   -太田南畝

       詩も歌も達者なうちによんで置け とても辞世はできぬ死に際    -多田八千次郎 

  来山は生まれたとがで死ぬるなり そこでうらみもなにもかもなし  -小西来山

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皆まで聞かず

2021-05-15 | 野暮と粋

(picture/original unknown)

多数での雑談中、流れの中である人がある婦人にそれで子供は何人いますか?と尋ねた。

「私の子が6人、夫の子が6人、全部で9人でございます」

「なるほどそうですか」とうなずいたきり彼は話題を変えた。

この会話を聞いていた人々、「6人+6人=9人?」いくら考えてもどうにも合点がいかない。

その場でいちいち聞くも野暮だと思い、そのあとこっそりたずねると、

「あれは主人と先妻の間の子が3人の所へ今の嫁さんが3人の連れ子を持って後妻に入り、夫婦の間にまた3人の子ができたということじゃ。それをあからさまに後妻というのが恥ずかしいのでああいう風に言ったのだろうよ」。

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Abstract Composition

2021-05-14 | 意匠芸術美術音楽

(gif/Abstract CompositionⅡ)

カンディンスキーの作品を動かすと地歌とシンクロする。可はどうかは別にして不思議な感覚を自らの手に入れた私は勝手にご満悦なのである。

" YUKI " Hide Kanzaki 「雪」神崎ひで 1959@新橋演舞場

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上を向け

2021-05-12 | 世界の写窓から

(picture/source)

新米の水兵がマストの上での作業を命じられ、帆柱高く登って行った。

しかし途中でちょっと下を見たら急に恐ろしくなり足がすくんで一本も進めなくなった。

この様子を下から見ていた隊長が剣を抜いて「上を向け!」と大声で叱咤した。

水兵はその声に励まされて天の一角を見つめた。そしていずこまでもと上空高く登って行ったということである。

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天啓

2021-05-04 | 酔唄抄。

(source/God Vector)

ほんとうに人の心に触れたときほど嬉しいことはない。

お互いの心と心がとけあってそこにあたたかい情が流れる。

信じあった人たちと語り合っていると、時間のたつのもなにもかも忘れてしまう。

まして酒の友よ。

じっくりと振り返る緊急事態宣言の下、時勢による変化というものはある意味において普通だったことが実はとても豊かであったことを教えてくれる。

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Don't You Want Me

2021-05-03 | 世界の写窓から

(photo/source)

-Gilberto Carvalho, Minister of the General Secretariat of the Presidency of Brazil, speaks to Munduruku Indians during a meeting at the Planalto Palace in Brasilia, June 4, 2013

The Human League - Don't You Want Me (Official Music Video)

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溶け込むのだ。

2021-05-02 | 古今北東西南の切抜

(gif/source)

はるかかなたの山々にその源を発し、さまざまな土地を流れてきた小川が、ついに砂漠に出会った。

小川はこの砂漠も、それまでに克服してきたすべての障害物と同じように通り抜けようとしたが、砂の中へ流れ込むと同時に吸い込まれてしまうのであった。

この砂漠を渡ることが自分に課せられた務めであると信じていたにもかかわらず、小川にはもうそれ以上、先へ進むべき道はなかった。するとその時、砂の中から次のようなささやき声が聞こえてきた。

「風は砂漠を渡ってゆける」

小川は反論した。「風が渡ってゆけるのは空を飛べるからであり、わたしの場合は砂にぶつかって吸い込まれるだけだ。それがわたしの運命なのだ」

「これまでのやり方で突き進んでいっても、ここを通り抜けることはできない。いずれ消滅してしまうか、沼地になるだけだろう。目的地にたどり着きたいのなら、風に運んでもらわなければならない」

「しかし、そんなことが、いったい、どうやってできるというのだ」と小川は思った。

「風の中に溶け込むのだ」と砂が言った。

この考えは小川には受け入れ難かった。何かに溶け込んだことなど、これまでに一度もなかったし、自分の個性を失いたくはなかった。それに、一度自分を無くしてしまったなら、ふたたびもとの姿に戻れるという保証がどこにあるというのだろう。

「風には、水を持ち上げて砂漠の上を運び、地上に降ろす能力がある。水は雨となって落ち、ふたたび川になるのだ」

「でも、その話が本当かどうか確かめようがないじゃないか」

「この話は真実であり、もし信じないのなら、おまえは沼以上のものにはなれないし、沼になるのでさえ何年もかかるだろう。そして、明らかに沼は、小川とはまったく違った存在だ」

「いまのままの小川であり続けることはできないのか?」

「いずれにせよ、おまえはいまの自分であり続けることはできない。おまえの本質が運び去られてしまうからだ。やがておまえは、ふたたび小川になるだろう。自分の本質について何も知らないので、おまえはいまだに小川という存在であり続けているのだ」

このとき小川の心の中に、ある記憶がぼんやりと蘇ってきた。小川は自分がーそれとも自分の中の一部分だったのだろうか?ー風の両腕に抱きかかえられていたときのことを思い出した。そして、さらに記憶をたどっていくうちにー本当にたどれたのだろうか?ーはっきりとそう確信できたわけではなかったが、これは本当に実行しなければならないことなのだと思った。

小川は蒸発してゆき、上空で両手を広げて待っている風の中へ溶け込んでいった。風はやさしく、また軽々と小川を運んでゆき、遠く離れた山々の頂上に達すると、そこでおだやかな雨を降らせた。

砂の話を疑っていた小川はこのとき、「ついに私は自分の本質を知ったのだ」と思った。そしてこの体験の一部始終を、これまで以上に深く記憶にとどめようと努めた。

-切抜/「スーフィーの物語」より

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