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関東温泉紀行 / 関東御朱印紀行
【 コラム 】 「五感+αで楽しむ」 第2回 〔 にごり湯(濁度) 〕
前回の「湯色」につづいて今回は「にごり湯(濁度)」です。(写真は手白沢温泉(栃木)と渋温泉(長野))
※事例としてあげた温泉には、現在、廃業または休業となっているものもあります。
1-2).にごり湯(濁度)
温泉のなかでもひときわ人気が高いのが”にごり湯”。温泉ガイドにはにごり湯をテーマにしたものさえあるし、施設ごとに”にごり湯マーク”をつけるガイドも増えてきた。
栃木や箱根には「にごり湯の会」まである。
たしかににごり湯はみるからに温泉っぽいし、成分も濃そうだ。
私も温泉を回りはじめの頃、温泉ガイドの浴槽写真をネタに、濁っていそうなお湯を目皿モードで探したものだ。
一口ににごり湯といっても色や泉質はさまざまで、単純温泉や規定泉のにごり湯もめずらしくない。
なので、「にごり湯=成分が濃い」という単純な図式は成り立たない。
温泉好きのあいだでは「にごりは劣化の証」説も根強いが、浴槽に注がれるやいなやすぐににごりを帯びるお湯もあるので、一概にはいえないと思う。
うすにごり、ささにごり、懸濁、微濁など、にごりをあらわす言葉は多彩だがおおむね主観的。
にごりの程度は正確には透明度(白色円板(セッキー円盤)が見えなくなる水面からの深さ)であらわすが、手のひらが見えなくなる深さでもおおよそは計れる。
透明度5㎝以下だとかなり濃いにごり湯だ。
a).白濁(乳白色にごり湯)
みるからに効きそうな乳白色のにごり湯はすこぶる人気が高く、白骨、乳頭、那須湯本などがその代表格。
肌が透けないので混浴向きでもある。温泉騒動の発端となった白骨温泉の入浴剤投入事件は、”乳白色にごり湯”の人気がいかに高いものかを物語っている。
おもに硫黄コロイドにより白濁するといわれ、新鮮な湯口のお湯は透明なことが多い。
秩父や奥多摩あたりの硫黄まじりのお湯は、お湯が新鮮なうちは透明だが、混雑してお湯がなまってくると微白濁しがち。
こうなると貴重な甘イオウ臭は跡形もなく、さして面白みのないお湯となってしまう。これは「にごりは劣化の証」説があてはまる例だ。
関東周辺で鮮度の高い白濁湯に入ろうとすると、どうしても山側の温泉になる。
そのなかで平野部の白濁湯、喜連川早乙女温泉は異彩を放っている。
ただし、湯が揉まれていない午前中は透明のこともあるので、確実にGet(笑)したいなら夕方以降がおすすめ。
北関東では、那須湯本、塩原新湯、日光湯元、奥鬼怒(加仁湯、日光沢)、万座、草津(一部)など。
群馬の老神(穴原)や尾瀬片品方面でもタイミングによりうすく白濁するお湯がある。奥蓼科の渋辰野館、渋御殿湯、渋の湯などいずれも冷鉱泉ながらにごり湯の名湯揃いだ。
志賀高原周辺では硯川が乳白色にごり湯。川原小屋(ジャイアントスキー場下)でも源泉によっては乳白色にごり湯を楽しめる。
箱根では大湧谷造成泉と芦之湯が双璧。箱根の人気は、造成泉ながら乳白色にごり湯がふんだんに楽しめるところが大きいと思う。
千葉には意外に硫黄を含むお湯が多く、岩婦や七里川でも白濁することがあるが、乳白色まではいかないようだ。
(写真は地獄温泉(熊本)と大湧谷造成泉(強羅)(神奈川))
b).青緑白濁
白濁湯ベースだが、温泉成分により青味や緑味を帯びるもの。とても綺麗な湯色のうえに質のいいお湯が多いので好き。
メタけい酸や重曹分が関係するという説があるが詳細は不明。
青系だと那須高雄、万座、箱根芦之湯(きのくにや)、箱根湯の花沢、塩原新湯、高峰、緑系だと草津(一部)、日光湯本、塩原元湯、箱根芦之湯(松坂屋本店)あたり。
大湧谷造成泉でも緑色を帯びるものが多い。
色合いは天候や湯の揉まれ具合で微妙に変化するので、入ってみてのお楽しみ。
鹿沢や浅間隠鳩ノ湯、那須弁天など、重炭酸土類泉系の名湯でも渋い紺ねず色ににごるものがある。
北信では高山温泉郷がのきなみ乳白色系のにごり湯で青緑濁を帯びる。おぶせ温泉も町なかながら華麗な湯色の本格的にごり湯を楽しませてくれる。
(写真は那須高雄温泉(栃木)と高峰温泉(長野))
c).赤茶濁
おもに鉄分による。
鉄分は少量でもにごりを出すので、規定泉でも赤茶濁するものがある(足利地蔵の湯、蓼科明治など)。
赤茶濁は鉄分の酸化によるもので、湧き立ての緑がかった透明湯が次第に赤茶のにごり湯に変化していく。このあたりの変化は伊香保の露天風呂から石段街に下っていくと実際に体験できる。(→関連レポ)
赤茶のにごり湯は強烈な印象を与え、特有のサビ臭やギシギシとした湯ざわりも出るので好き嫌いのわかれるお湯だ。
また、色合いから”金”の字を充てることがあり、有馬の金泉、伊香保の黄金の湯は有名。
泉質的には、単純鉄泉、緑礬泉、食塩泉など多岐にわたる。関東の平野に出る化石海水型の強食塩泉には赤茶濁するものがかなりあるが、浴槽では除鉄され、まっさらの透明になっているものも多い。
単純鉄泉系では天狗(長野)、伊勢崎五色、前橋総社、三島竹倉、緑礬泉系では毒沢、赤滝、寺山、金峰泉(山梨)、十谷山の湯(同)、食塩泉系ではくらぶち相間川、白寿の湯、秋山郷小赤沢など。
那須高久の報恩は多量の湯泥をともない強烈。
(写真は小赤沢温泉(長野)と毒沢温泉(長野))
d).緑茶濁
赤茶濁と同様鉄分が関係するが、より新鮮な場合や土類を含むお湯にみられる。
とくに重炭酸土類系では赤茶の石灰華に緑茶のにごり湯が映えて趣がある。
濁度は赤茶濁よりおおむね薄めで、赤茶の酸化鉄が大量に舞っていることもある。正苦味泉系のお湯でもモスグリーンのにごり湯が出るような気がしているが、入湯数が少ないので確信もてず。比較的ハズレの少ないお湯が多くてこれも好き。
那須萌芽、塩原福渡、矢板小滝、赤城、滝沢、伊香保、姥子山越、奥蓼科渋川など山の湯に多いが、東鷲宮百観音、三郷早稲田、柏湯元など、鮮度の高い化石海水系でもみられる。
(写真は金島温泉(群馬)と赤城温泉(群馬))
e).黒灰濁
黒湯やモール泉は黒く濁っているようにみえるが、実際は湯色が重なっているだけで濁度はあまりない。
黒色系のにごり湯は関東周辺では数少ないが、硫黄分によるものがある。どちらかというとうすい硫黄泉より食塩含み(含硫黄-Na-Cl)の泉質に多いような気がする。
有名どころでは塩原元湯「大出館」の「墨の湯」。東信の戸倉上山田、千古などでも薄めながら黒灰濁がみられた。
いずれもしぶ焦げイオウ臭たっぷりの名湯群だが、湯中に硫化鉄をバラまき、尻が黒くなったりするので要注意(笑)
山梨、早川筋の奈良田、光源の里や雨畑もねず色ににごる硫黄泉系。
秩父の下津谷木(クアパレスおがの)は一時期湯づかいがよくなっていて、しっかりとイオウ臭のする灰濁色のお湯が楽しめた。(現在休業中の模様。)
名湯、いわき湯本は湯色の変化が激しいが、ときに凄みのある紺ねず色ににごることがある。
(写真はいわき湯本温泉(福島)と下津谷木温泉(埼玉))
(第2回目 「見る-にごり湯(濁度)」 おわり / 次回予定 湯の花)
【BGM】
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