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■ 芦之湯温泉 「きのくにや」 〔 Pick Up温泉 〕

 

箱根七湯のひとつ芦之湯温泉の「きのくにや」は創業1715年(正徳五年)、約三百年の歴史をもつ老舗宿です。
昨年暮れ、今夏(みしゅらんオフ)と2度宿泊し、社長ともお話する機会がありました。
なお、湯づかいの変更を検討中(オフでも参加者の勝手な意見が飛び交いました ^^;)で、近々このレポ内容とは違ったお湯になるかと思われます。

<芦之湯温泉「きのくにや」>(箱根町、12:30-15:00/2h、1,000円、0460-3-7045)
「きのくにや」には「正徳の湯」、「枯淡の湯」、「家族風呂 鶴」、「家族風呂 亀」の4つの貸切風呂と「湯香殿」(男女別、内湯・露天)、「貴賓殿」(同)の2つの浴場があり、「湯香殿」「貴賓殿」は日帰り入浴できます。順にいきます。( )は入浴した季節。

<貸切風呂>

 

1.「正徳の湯」(冬・夏)
本館「春還樓」の前、道をはさんだ資料館の右手にあり、江戸時代の浴室を再現したという温泉好きには見逃せない浴場。仙液湯(芦之湯第1号泉)という由緒ある自家源泉をつかっています。
階段を下って向かう風情ある湯屋で、前庭(道からも見える)にはおなじ源泉を湛えるモニュメント「無量の湯」(入浴不可)があります。泉源はこの無量の湯の脇です。
脱衣所から一段低く、総木造2人くらいの小ぶりの浴槽2つを配置。浴室自体がGL(グランドレベル)より低くなっています。
お湯に浸かるだけの施設なのでアメニティ類はありません。
浴槽横にそれぞれ3本の湯量が調節できるパイプがあります。右が真水の沸かし湯、中央が仙液湯源泉、左が町営揚湯泉です。仙液湯の泉温が低いので、揚湯泉を混合、加温しています。左と右、冬と夏でそれぞれお湯のイメージが違ったのでわけて書きます。

 

<左手浴槽・冬>
熱めで黄色がかった緑白色のうすにごり湯(透明度50cm)。弱いしぶ焦げイオウ臭で揚湯泉の比率が高い感じ。温まり感あって悪くはないが硫黄泉の面白みにはやや欠ける。
<左手浴槽・夏>
ややぬるめ(だったと思う)、きもち懸濁し茶とクリームの湯の花多数。濃度感弱くイオウ一本で攻めてくる感じは秩父あたりの硫黄泉のイメージ。先客が真湯で薄めたかも。

 

<右手浴槽・冬>
かなりのぬる湯で青味がかったにごり湯(透明度30cm)にはクリーム&黒い浮遊物少量。色味は左手浴槽より弱いのに透明度が低いのが不思議。しぶ焦げイオウ臭+ラムネ臭。とろみを帯びて肌に染み入るような絶妙なお湯は、温まりが弱いのでいくらでも入れる。
イメージ的には奥蓼科の渋御殿湯に近いか?。湯温や浴感からみて、ピュアに近い仙液湯源泉が入っていたと思う。
<右手浴槽・夏>
ほぼ適温(だったか?)、ねず色のにごり湯(透明度25cm)で甘い感じのイオウ臭。濃度感あり、ベースに硫酸塩がしっかりとあって、そのうえにイオウが乗っている感じのお湯。

というように、かなり違います。
基本的に源泉パイプは常時開で、ぬるいときに”町温泉”(揚湯泉)を開、それでもぬるいときには”沸かし湯(真湯)”を投入するよう掲示があるので、ぬる湯が苦手な人の後は、仙液湯の源泉はうすまってしまいます。前客の湯づかい(?)でお湯が変わってしまうので、なるべく早い時間に予約するのが正解です。
冬・夏とも、なぜか源泉から遠いはずの右手浴槽の方がいいように思いましたが、給湯ルートが微妙に影響しているのかもしれません。

【使用源泉 / 仙液湯(芦之湯第1号泉) ※町営揚湯泉にて適宜加温調整】
単純硫黄温泉(硫化水素型) 37.9℃、pH=6.6、成分総計=0.833g/kg、Na^+=47.0mg/kg 、Mg^2+=35.6、Ca^2+=71.5、Fe^2+=0.05、Al^3+=0.09、Cl^-=6.31、HS^-=11.9、SO_4^2-=344、HCO_3^-=66.7、メタけい酸=179、硫化水素=33.8 <H12.8.15分析>
<温泉利用掲示> 加水:なし 加温:あり 循環:なし 塩素系薬剤(錠剤)使用:あり

2.「枯淡の湯」(夏)

 

「正徳の湯」の山側にある半露天で、ここも仙液湯使用。「正徳の湯」よりこぢんまりしてお籠もり度は高いです。木造1.2人の小浴槽。木箱の湯口のなかに3本のパイプ。うち左と中が出ていて、左がぬるいイオウ泉系、中が適温で量が多く単純温泉系(町営揚湯泉?)。
ややぬるめのお湯は透明度20cmの乳白色にごり湯。弱いしぶ焦げイオウ臭で、ヌルすべがあります。濃度感はうすいですが、かなりの温まり感があります。ただ、お湯的にはややとりとめのない感じ。お湯よりも貸切露天を楽しむ浴場かな?

【使用源泉 / 仙液湯(芦之湯第1号泉) ※町営揚湯泉にて加温調整?】
<温泉利用掲示> 加水:なし 加温:あり 循環:なし 塩素系薬剤(錠剤)使用:あり

3.「家族風呂 鶴」(夏)

 
 

別館「遊仙観」寄り、「湯香殿」の前にある別棟の家族湯。鶴と亀がほぼシンメトリに並んでいます。ここはてっきり町営湯ノ花沢造成泉と思っていましたが、なんと幻の湯ノ花沢町営揚湯泉を単独使用。
脱衣所から一段低く石造2人の入り心地のいい小さな湯船。窓が小さく暗めながら趣のある浴場です。
石から突き出た石膏の析出つきの木の湯口から少量投入で、槽内注排湯はなく全量をしずかにオーバーフローのかけ流し。
ほぼ無色透明の熱湯には、茶クリーム&こげ茶の湯の花が盛大に舞っています。かすかな石膏風味に焦げ臭をまじえた心地よい湯の香。掲示によると塩素系薬剤投入ですが、カルキ気はまったく感じられませんでした。
明瞭なとろみと肌になじんでくるような石膏泉系の絶妙な湯ざわり。力感と温まりのあるお湯は、上毛あたりのお湯を彷彿とさせます。これは箱根でもかなり上位にランクされるお湯かと・・・。
いまのシステムだと、温泉好きはよんどころなく「正徳の湯」を選択するので、この上質なお湯が陰にかくれたかたちになっているのは残念です。

【使用源泉 / 箱根町揚湯井2号】
単純温泉 52.7℃、pH=8.0、成分総計=908.1mg/kg、Na^+=82.1mg/kg 、Mg^2+=25.1、Ca^2+=98.3、Fe^2+=痕跡、Al^3+=0.1、Cl^-=4.9、HS^-=0.1、SO_4^2-=387.0、HCO_3^-=159.0、メタけい酸=138.1、硫化水素=0.01 <H5.2.8分析>
<温泉利用掲示> 加水:なし 加温:なし 循環:なし 塩素系薬剤(錠剤)使用:あり

<湯香殿>
メイン浴場。男女別でそれぞれ内湯と露天があります。男湯の露天が「芦ノ湖周遊風呂」、露天源泉風呂が「神遊風呂」、女湯の露天が「美肌の湯」と名づけられています。

4.「湯香殿男湯内湯」(冬・夏)



ここは主力と思われる「底無しの湯、黄金湯(2番)混合泉」をつかっています。
黒みかげ石枠石タイル貼7.8人の浴槽ひとつ。湯口はなく、熱湯の底面注入のみでかなりの量をオーバーフローしていてコンディション良好。
カラン8、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。
お湯は42℃(夏)~44℃(冬)と熱め。青味がかったうす白濁~乳白色で味不明。かなり強いしぶ焦げイオウ臭ととろみのある入り心地のいいお湯で悪くありません。(ただ、冬場は熱すぎてほとんど誰も入っていなかった ^^; )
掲示では循環濾過となっていますが、他の循環浴槽にくらべて格段にお湯がいいです。

【使用源泉 / 底無しの湯、黄金湯(2番)混合(芦之湯第3号、6号混合)】
単純硫黄温泉 34.7℃、pH=7.6、成分総計=627mg/kg、Na^+=41.0mg/kg 、Mg^2+=19.7、Ca^2+=65.5、Fe^2+=0.01、Al^3+=0.01、Cl^-=6.79、HS^-=21.2、SO_4^2-=266、HCO_3^-=43.1、メタけい酸=150、硫化水素=6.00 <H10.1.19分析>
<温泉利用掲示> 加水:なし 加温:あり 循環濾過:あり 塩素系薬剤(錠剤)使用:あり

5.「湯香殿男湯露天-芦ノ湖周遊風呂」(冬・夏)

 

富士山の絵が掲げられた露天風呂でマスコミによく登場します。
岩枠タイル貼8.9人の浴槽に岩の湯口から投入+大量底面注入でオーバーフローなし。
人気浴槽のうえにぬるめなので、グループ客がとぐろをまいていてお湯はなまり気味。
透明度50~60cmくらいのうす白濁で、冬はイオウがなまった燻し臭、夏はカルキ臭がありました。個人的にはあまり感心しないお湯でした。

【使用源泉 / 不明(底無しの湯、黄金湯(2番)混合?)】

6.「湯香殿男湯露天源泉風呂-神遊風呂」(冬・夏)


 
これはすばらしいです。逸品です。
1人用の瓶風呂で、竹樋の湯口から38℃くらいの源泉が少量注がれオーバーフロー。温度は夏場で20℃台、冬場はあまりに冷たくて一瞬浸かっただけでした。で、じっくり浸かった夏のレポです。
やや青緑がかった透明で白クリーム色の湯の花がただよいます。絶妙のぬる湯はしっかりとした甘+しぶ焦げイオウ臭にたまご味+微苦味。イオウが強く塩味がまったく感じられない味臭は「黄金湯」の”十三番の湯”に似た感じかと。とろみに加えスルスルとしたイオウ系の湯ざわりと硫酸塩泉系のキシキシが拮抗し、抜群の入りごこちになっています。ひょっとして「正徳の湯」よりいいかも・・・。
ここは朝にも入りましたが、湯の花少なくにごり気味でいまいちでした。投入量が少ないので、浴客が多いとすぐになまってしまうのかもしれません。
湯香殿の露天は23時で閉まりますが、ここは夜通しでも入っていたいお湯でした。
こうしてみると、主力の混合泉(底無しの湯、黄金湯(2番)混合)も仙液湯に負けず劣らずすばらしいお湯に思えます。

【使用源泉 / 底無しの湯、黄金湯(2番)混合(芦之湯第3号、6号混合)】

<貴賓殿>
別館「遊仙観」寄りのサブ浴場。男女別でそれぞれ内湯と露天があります。男湯の内湯が「黄金湯」、露天が「山風の湯」、女湯の露天が「華の湯」と名づけられています。
本館からの渡り廊下に飲泉所があり、豊潤なたまご味の源泉を味わうことができます。
また、手前廊下には歴代(?)の源泉(→黄金湯、底無しの湯、仙液湯、達磨湯)の古い温泉分析書が掲示されています。

7.「貴賓殿男湯内湯-黄金湯」(冬・夏)

 

赤みかげ石枠タイル貼7.8人の浴槽で、5本の竹の湯口から投入し底面吸湯+切欠からの上面排湯。カラン5、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。
ごくわずかに懸濁したお湯はほぼ適温で、弱いしぶ焦げイオウ臭。よくあたたまりますが、なんとなくのったりした浴感で、はっきりいってたいしたお湯ではありません。
ここで楽しめるのは、なんといっても奥の壁面から突き出ている5本の竹樋で、左から”底なしの湯””十三番の湯””だるま湯””仙液湯””黄金湯”と名づけられています。
浴場手前に”十三番の湯”以外の温泉分析書が掲げられ、それぞれお湯の感じが違うので、てっきり「すべて別源泉投入?、きのくにや恐るべし!」と思っていましたが、数本の源泉の混合比率を変えて投入しているようです。それでもけっこう楽しめるので、温泉マニアは”利き湯”を楽しんでみてください (^^)

こんな感じでした。
投入量 : だるま湯 > 黄金湯 > 底なしの湯 > 仙液湯 > 十三番の湯
湯 温 : 仙液湯 > だるま湯 > 黄金湯 = 底なしの湯 > 十三番の湯
硫黄気 : 十三番の湯 > 仙液湯 = 黄金湯 > 底なしの湯 > だるま湯
硫黄臭の質 : 十三番の湯(甘系)、仙液湯(しぶ焦げ系)、黄金湯(しぶ+ラムネ系)
ふつうに考えると、湯量のある「町営揚湯泉」と「底無しの湯・黄金湯混合泉」を混合していて、だるま湯は揚湯泉系、十三番や底なしの湯は混合泉系なのだと思います。

【使用源泉 / 底無しの湯、黄金湯(2番)混合(芦之湯第3号、6号混合)】
<温泉利用掲示> 加水:なし 加温:あり 循環濾過:あり 塩素系薬剤(錠剤)使用:あり

7.「貴賓殿男湯露天-山風の湯」(冬・夏)

 

屋根つき岩枠鉄平石敷4.5人の浴槽で中庭に面しています。
竹樋が3本あり、うち2本からの投入で切欠からの上面排湯。
ややぬるめのお湯は、きもち翠がかって(?)微濁。弱いしぶ焦げイオウ臭。鮮度感が弱く、個人的にはあまり好きなお湯ではありませんでした。

【使用源泉 / 不明(底無しの湯、黄金湯(2番)混合?)】
<温泉利用掲示> 加水:なし 加温:あり 循環濾過:あり 塩素系薬剤(錠剤)使用:あり

と、いろいろ書いてきましたが、お湯的に気に入ったのは、
正徳の湯(冬) >= 神遊風呂(夏) > 鶴の湯 > 湯香殿内湯 の順かな?
ただし、イオウ泉は変化が激しいので、再訪したらまた変わるかも・・・(笑)。

みしゅらんオフでは、ほぼ全員が源泉混合使用の見直しを提案していました。すばらしい源泉をもっているので、どのように変わるか楽しみです。

〔 2006年12月23日・24日レポ 〕
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