野球選手ダルビッシュが珍しいプロ野球選手だと最初に思ったのは、このこと。投球技術をアメリカのある名投手と(前田健太も交えて3人で)教えあって来たという話を聞いときだった。こう言いながら。
「日本では他チームの選手と教えあうのは、禁じられていた。今、これができて楽しい」
また、関連してこんなことも語っていた。
「平松のカミソリ・シュートと言われても、今は何も残ってないですよね。平松さんがこれを残して行ってくれなきゃ、実にもったいない話ですよ」
さて、こんな彼は「本当のスポーツ」を求め、その伝道者にもなりたいのだと観てきた。スポーツを観るスポーツ、つまり興業とか金銭とかばかりに換えてしまう風潮に意識して逆らっているとも。そういう彼が今、WBCを前にしてそういうスポーツ観を日本選手に熱烈に語っている姿が、改めてとても興味深いのである。日本の名だたる野球のプロたちがスポーツの原点をダルビッシュから拝聴して、技術を交換しているこの光景!
プロスポーツには二つの面、観点がある。真のスポーツのほかに、興業としての「観せるスポーツ」とそれが肥大した「金銭スポーツ」、このための勝利至上主義。この後者は、エンターテインメント、つまり他人を楽しませる娯楽と言って良いだろうが、これが真のスポーツを歪めてきた。そんなスポーツは今、アメリカでも日本でも陰りを見せているのだろう。ダルビッシュもそれを感じているはずだ。こんなことさえ語ってきたのだから。
『「野球」はそんなに好きじゃない。投手の技術自身が好きなのだ』
この場合の「野球」って何を指すのかと、僕は考え込んでいたものだ。
プロスポーツは、真のスポーツを追いかけているアマチュアアスリートとともに、手を携え合ってその喜びを世に伝えてしか発展の道は開けないのだと思う。