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書評 「嫌われた監督」(文藝春秋社)  文科系

2022年06月02日 00時34分13秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 この評判の本2090円也を、本日書店で買ってきて、すぐに全12章500ページ弱の半分ほどを読んでしまった(2日追記 本日完読により、末尾に追加記述あり)。『20~21年の「週刊文春」に連載された落合博満・中日監督時代』を単行本に書き直したこの内容は、予想通りのもので、ちょっと良い小説以上に面白いこと、面白いこと! すぐに書評を書く気になった。

 あらかじめ見当を付けていた内容は、こういうもの。
 中日球団としても歴史的まれにあれだけ鮮やかな実績を上げた監督が「嫌われ」、辞めさせられたのは、こういうことに決まっている。「勝つ野球」と「興業としての人気ある野球」とで、よく起こる矛盾があって、球団が後者を取ったから前者を追求した落合が辞めることになった、と。そしてまさにこの予想通りの内容だったのである。こういう問題性を、あるスポーツ新聞新米記者が落合就任の2004年度に感じ取り始めていたからこそ、この本が書けたとも分かるのである。
  こうしてこの本はまた、野球に勝つには何が必要かこそ分かるものである。このことを1人1人の当時の選手ら12人を例にとって八年間にわたって追跡、分析、解明していく、そういう内容になっている。

 プロ野球はスポーツかエンタテインメントなのか? これが球団赤字問題が絡んだ集客上結局エンタテインメントの方に傾いてきたというのが、落合が嫌われた理由なのだろう。そして、野球のこの「スポーツ離れ」を危惧しているとも読めるものである。

 2007年に日本シリーズ制覇までの準備期間に当たる4~6年の3年間、その第1~3章のそれぞれ、川崎憲次郎、森野将彦、福留孝介はすべて面白かった。
 川崎では、野球界功労者とも言えるこの栄光の人物に引退の花道を作ってやる結果になった道程を通して、自分の選手への要求、遇し方というものをチームに示して見せたわけだし、立浪に換えて守りの中心に育てるべく森野をいかに鍛えていったかは、まさに鬼気迫る描写力である。福留という天才が、「人間」落合ではなく「打撃指導者・落合」と付き合ってきたのだと書いている下りも、またとても面白かった。

 最後の感想だが、野球界はサッカー界とは大変に違うと思ったところだ。サッカー界でエンタテインメントとか、この本で言うところの「ロマン」とかを第一に追求したら、そのチームはたちまち「降格」するにちがいないのである。日本プロ野球界は12球団しかないから、「相互扶助組織」のようになっているのではないか。そうでないと営業として生きていけない世の中になった?

 

 2日の追加分

「強いチームをつくらなくてはいけません。それと同時にファンを大事にしなくてはいけません」、「(落合は)メディアを、ひいてはファンを軽んじている」。これらが球団幹部の落合に対する遠慮がちな不満の声であった。それにしても、これだけの実績を残した監督が、どうして退団になったのか。8年間Bクラス陥落なし、リーグ優勝4回でそのうち日本シリーズ優勝1回。それも、退団が決まったこの11年も、15勝3敗2分という終盤戦の猛烈な追い込みによって、他を圧倒する強さを見せたその真っ最中の退団発表だった。プロ野球って、強すぎる球団があると客が減るのかな? そういうファンを大事にするって、どういうことなんだろう。今のアメリカのように「フライボール革命」をおこす? するとこれは、「低め球も含めたすくい上げ打法」になって、落合が強さの敵として嫌う、波があって不安定な野球そのものではないのか?

コメント (1)
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