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書評「国家と教養」(藤原正彦)①  文科系

2019年07月19日 10時48分01秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 この人の2005年11月に発行されたベストセラー「国家の品格」は僕が買った2006年4月版がもう第24刷とあったが、合計30万部出たとか。それに相応しい内容の本だったと、ここにも書評を書いた覚えがある。著者が日本をこれだけ悪くした近年のアメリカ批判を、僕と全く同じ視点から行い始めた本でもあった。 今回の「国家と教養」は、この点こそを真っ正面に据えて教養というものを論じたものと言える。

 お茶の水女子大学で数学を教えた名誉教授で、英米にも長い留学経験があるお方であって、特にイギリスの文化には詳しいお人だと読んだ覚えがある。そもそもイギリスの伝統やジェントルマンが好きなのだ。それを踏み外していく自分の「俗」を横から見て、「やっぱりいかんよ」としかめ面作って自分を叱って見せてますよーと、文中自ら暴露しているようなユーモアーとともに。

 今回のこの本は、題が題だけに作者のそれこそ「教養」の質量次第で成功失敗が決まるようなもの。それだけに大風呂敷を広げてよくこれだけ書かれたと読んだ。書くために改めてあれこれ色々復習、確認の読み直しなどもずいぶんされたのだろうと、そんな猛烈な熱意も伝わって来る古今東西の教養を巡る膨大な内容なのである。もちろん、彼は数学者なのだから、種本も何冊かあったのだろうが。

 こういう大志、熱意の出所はやはり、アメリカの言うがままに社会的弱者を踏みにじって恥じないような日本に変えてしまった今の日本国家への怒り、義憤と、読めた。この点は、「国家の品格」を書いた動機の一つでもあった。この2冊は言わば姉妹本なのである。
「弱者を踏みにじるという意味で惻隠の情を忘れた国家は、最も品格がないものだ」
 これに今回の「国家と教養」が付け加えたのが、このこと。
「人文教養を基礎とした旧制高校風の教養が長い目で見れば最も大切なものだが、これらの教養市民層が政治、社会、大衆文化などの教養から離れている時、ヒトラードイツもそうだったのだが、実に惨めな国になってしまった」

 ただしこの作者、僕と違って「右翼と呼んで下さっても結構だ」と言うようなお方である。日本大好きだし、そもそも武士道が好きだし。真の右翼とは、本来そういうものなのかな。「弱者を助け、強きを挫く」という惻隠の情!

(続く)
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