世界経済諸問題解決の方向③ ワシントン・コンセンサスへの規制、運動
①中進国が先進国を追いかけ、後進国が中進国を追いかけて物作りが活発になるにつれて、アメリカを中心とした先進国は株、金融に活路を見出していった。その結果が5回目で述べたこのことだ。
『1970年から2007年までの38年間に、208カ国で通貨危機が、124カ国で銀行危機が、63カ国で国家債務危機が発生しています。金融危機は、先進国、新興工業国、開発途上国を問わず、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカを問わず起こっていたのです。これに対し、第二次大戦後1970年以前の時期には、国際金融危機や大規模な一国金融危機はほとんど発生していません』
この状況の最新問題は、ユーロ危機である。背後に日米などの金融機関がいることが分かっていても、どうしようもないという窮状、難問なのである。さらにまた、ギリシャ、スペインなどの現窮状はサブプライムバブルや、ゴールドマン・サックスに騙された事やに起因する事も既に周知の事実である。
汗水垂らして蓄えた金を一夜にして奪っていくこんな動きに対して、いろんな防衛、規制論議が起こるのは当然のことだろう。まず防衛というのは、一時的な当面の絆創膏手当に過ぎないにしても、こんな事があげられる。
「金融危機国への外貨融通制度、あるいは銀行など」が各地域に国家連合的に作られ始めた。アジア通貨危機から学んだASEANプラス日中韓が、日中等の支出で大きな資金枠を持った例。岩波新書「金融権力」(本山美彦京都大学名誉教授著)は、南米7カ国が形成したバンコデルスル(南の銀行)に注目している。
最近の次の出来事も、この部分に関わることと言える。南アフリカで開かれたBRICS首脳会議は、新興国支援を目的とした「BRICS開発銀行」と、危機の際に資金を融通し合う「共同積立基金」の創設で合意したそうだ。戦後の世界経済は、「世界銀行」と「国際通貨基金」を中心とするブレドン・ウッズ体制によって支えられてきた。BRICSの構想は、その「過去の遺物」から離れ、独自の体制づくりに乗り出すというものだ。
G20などにおける、世界レベルの金融規制改革の現状はどうだろうか。先回に観てきたような堂々巡りにしても、こんな事が論議されてきた。銀行の自己資本比率を高めるだとか、レバレッジ規制だとか。さらに「大きくて潰せない銀行」を世界29行にしぼった対策として「潰せるようにする」ことや、税金なしに破綻処理をする方向なども論議されてきた。が、現状は何も決まっていないに等しいと言える。アメリカや日本が邪魔しているのであろう。
②実体経済重視の方向
「金融にはまだまだチャンスがある。当面日本はここに活路を求めよ」と語る人にさえ今、中・後進国が遠からずキャッチアップを遂げるから、そうしたら世界中に現状よりもはるかに失業者が増えて、世界は困窮しつくすと観る人も多いはずだ。中後進国などの生産性アップは凄まじく、すぐに供給過多の時代が来るということだ。たとえば、岩波ブックレット「グローバル資本主義と日本の選択」の武者陵司・武者リサーチ代表がその一人である。ドイツ銀行、大和証券などを経たアナリストとしてかなり有名な人らしい。この人は加えてこう述べている。『インドでも中国でも、極端に安いチープレーバーの供給は、少なくともあと5~10年は続くのではないでしょうか』と語っている。生産性が高い現代はそのような速さで物作りの飽和状態に困り抜くようになると観ているのである。当然のことだろう、人間はものの中でしか生きていけず、金融だけで食ったり暮らしたりはできないのだから、自動車やIT産業に代わるような新商品が生み出されなければ、あるいは別のやり方で職を創り出さねば、世界の人々の職業がどんどんなくなっていくばかりだろう。「グリーンニューディール」政策とか、格差の解消・雇用問題などをなによりも強調する人々は、そういう方向と言えよう。「グリーンニューディール」とはこういうものだ。
『用語の起源は、イギリスを中心とする有識者グループが2008年7月に公表した報告書「グリーン・ニューディール」である。ここでは、気候・金融・エネルギー危機に対応するため、再生可能・省エネルギー技術への投資促進、「グリーン雇用」の創出、国内・国際金融システムの再構築等が提唱されている。
同年10月には、国連環境計画(UNDP)が「グリーン経済イニシアティブ」を発表し、これを受けて(中略)
オバマ大統領は、今後10年間で1500億ドルの再生可能エネルギーへの戦略的投資、500万人のグリーン雇用創出などを政権公約として打ち出した。(中略)』 (東洋経済「現代世界経済をとらえる Ver5」)」)
グリーンニューディール政策には雇用対策も柱として含まれているわけだが、雇用対策自身を現世界最大の経済課題と語る人はこんなことを言う。
(続く。なお、次がこのシリーズの終わりです。次回は、この②の続きと③「金融暴力への世界の運動」を書く予定です)
①中進国が先進国を追いかけ、後進国が中進国を追いかけて物作りが活発になるにつれて、アメリカを中心とした先進国は株、金融に活路を見出していった。その結果が5回目で述べたこのことだ。
『1970年から2007年までの38年間に、208カ国で通貨危機が、124カ国で銀行危機が、63カ国で国家債務危機が発生しています。金融危機は、先進国、新興工業国、開発途上国を問わず、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカを問わず起こっていたのです。これに対し、第二次大戦後1970年以前の時期には、国際金融危機や大規模な一国金融危機はほとんど発生していません』
この状況の最新問題は、ユーロ危機である。背後に日米などの金融機関がいることが分かっていても、どうしようもないという窮状、難問なのである。さらにまた、ギリシャ、スペインなどの現窮状はサブプライムバブルや、ゴールドマン・サックスに騙された事やに起因する事も既に周知の事実である。
汗水垂らして蓄えた金を一夜にして奪っていくこんな動きに対して、いろんな防衛、規制論議が起こるのは当然のことだろう。まず防衛というのは、一時的な当面の絆創膏手当に過ぎないにしても、こんな事があげられる。
「金融危機国への外貨融通制度、あるいは銀行など」が各地域に国家連合的に作られ始めた。アジア通貨危機から学んだASEANプラス日中韓が、日中等の支出で大きな資金枠を持った例。岩波新書「金融権力」(本山美彦京都大学名誉教授著)は、南米7カ国が形成したバンコデルスル(南の銀行)に注目している。
最近の次の出来事も、この部分に関わることと言える。南アフリカで開かれたBRICS首脳会議は、新興国支援を目的とした「BRICS開発銀行」と、危機の際に資金を融通し合う「共同積立基金」の創設で合意したそうだ。戦後の世界経済は、「世界銀行」と「国際通貨基金」を中心とするブレドン・ウッズ体制によって支えられてきた。BRICSの構想は、その「過去の遺物」から離れ、独自の体制づくりに乗り出すというものだ。
G20などにおける、世界レベルの金融規制改革の現状はどうだろうか。先回に観てきたような堂々巡りにしても、こんな事が論議されてきた。銀行の自己資本比率を高めるだとか、レバレッジ規制だとか。さらに「大きくて潰せない銀行」を世界29行にしぼった対策として「潰せるようにする」ことや、税金なしに破綻処理をする方向なども論議されてきた。が、現状は何も決まっていないに等しいと言える。アメリカや日本が邪魔しているのであろう。
②実体経済重視の方向
「金融にはまだまだチャンスがある。当面日本はここに活路を求めよ」と語る人にさえ今、中・後進国が遠からずキャッチアップを遂げるから、そうしたら世界中に現状よりもはるかに失業者が増えて、世界は困窮しつくすと観る人も多いはずだ。中後進国などの生産性アップは凄まじく、すぐに供給過多の時代が来るということだ。たとえば、岩波ブックレット「グローバル資本主義と日本の選択」の武者陵司・武者リサーチ代表がその一人である。ドイツ銀行、大和証券などを経たアナリストとしてかなり有名な人らしい。この人は加えてこう述べている。『インドでも中国でも、極端に安いチープレーバーの供給は、少なくともあと5~10年は続くのではないでしょうか』と語っている。生産性が高い現代はそのような速さで物作りの飽和状態に困り抜くようになると観ているのである。当然のことだろう、人間はものの中でしか生きていけず、金融だけで食ったり暮らしたりはできないのだから、自動車やIT産業に代わるような新商品が生み出されなければ、あるいは別のやり方で職を創り出さねば、世界の人々の職業がどんどんなくなっていくばかりだろう。「グリーンニューディール」政策とか、格差の解消・雇用問題などをなによりも強調する人々は、そういう方向と言えよう。「グリーンニューディール」とはこういうものだ。
『用語の起源は、イギリスを中心とする有識者グループが2008年7月に公表した報告書「グリーン・ニューディール」である。ここでは、気候・金融・エネルギー危機に対応するため、再生可能・省エネルギー技術への投資促進、「グリーン雇用」の創出、国内・国際金融システムの再構築等が提唱されている。
同年10月には、国連環境計画(UNDP)が「グリーン経済イニシアティブ」を発表し、これを受けて(中略)
オバマ大統領は、今後10年間で1500億ドルの再生可能エネルギーへの戦略的投資、500万人のグリーン雇用創出などを政権公約として打ち出した。(中略)』 (東洋経済「現代世界経済をとらえる Ver5」)」)
グリーンニューディール政策には雇用対策も柱として含まれているわけだが、雇用対策自身を現世界最大の経済課題と語る人はこんなことを言う。
(続く。なお、次がこのシリーズの終わりです。次回は、この②の続きと③「金融暴力への世界の運動」を書く予定です)