新聞の経済欄、国際欄を見ていると、もうなんというか「ダーティーキャンペーン」とも読めるものばかりである。相手の暗い部分を暴き出し、大宣伝して自分が儲ける、そんなことだらけとも読めるのだ。
6日夕刊に『独仏など15カ国格下げへ S&P 欧州危機対応遅れ指摘』
これの関連で7日の朝刊には、『欧州基金債格下げも S&P』
これと同じ紙面に今度は、『オリンパス第3者委報告 買収観測くすぶる市場 監査法人 国際的信頼に傷』
S&Pって、格付け会社だろう。それもエンロン倒産などでは直前まで優良格付けをしていた前科がある会社ではなかったか。当時、アメリカのファンドや投資銀行と人的にツーカーだと非難された前歴もある。何のことはない。上の前二つの記事はこうして、ファンドや投資銀行が、空売りで儲けるためのアナウンス効果を狙ったキャンペーンとも言えるのだ。「欧州の国債などはまだまだ下がるよ!」。保有しきれない中小機関などの売りを誘い、大投資会社が明日の空売りに備えるためのキャンペーン。日本の5大銀行だけが「国債頼り」で黒字になり、ほとんどの中小銀行が下降線であるのは、その証といえまいか。
オリンパスの粉飾決算が今話題になっているのも、将来の「日本空売り」の布石にもなりうるものだろう。この点は、以前のここの拙稿で述べたことがある。上記3番目の記事文中にこんな文章が出てきたのが、いかにも意味深長だと思う。
『長年にわたる問題を指摘できなかった日本の監査法人や監査を受ける日本企業に対する信頼は、国際的にも著しく傷ついた』
そう言えば、エンロンが倒産した時、格付け会社が直前まで超優良を付けていた理由が、こうだった。「監査法人ぐるみで粉飾決算があった。(格付け会社が)これを見抜けなくて、騙されていた」。この監査法人アーサーアンダーセンはその後つぶれたが、これを教訓にアメリカ金融・格付け会社が一体となって、日本のババ指摘兼「日本信用落としで空売りの布石」を発想したものでもあろうか。にしてもこちらオリンパスは、正真正銘のババ・エンロンとは違って、消化器内視鏡で世界70%シェアを誇る超優良会社。なかなか買えなかったはずのここの株を、粉飾決算追求キャンペーンによって買い占めを狙っているのでもあろうか。同じ日の同一新聞すぐ下に、こんな記事もあった。
『タワー社が株大量購入 大株主に』
タワー社の大量株保有目的は、「純投資」と財務省に正式報告されているが、この5・95%のオリンパス株もやがてすぐどこかへ行くのではないかか、怪しいものである。そして、この記事の文中には、こんな報告もあった。
『米系ゴールドマン・サックス証券などのゴールドマン・サックスグループが大量に買い入れ、グループ合計で6・67%を保有、メガバンクを除くと「筆頭株主」となった』
経済ダーティーキャンペーンが、金儲けの布石ばかりと言える時代になった。何のことはない、合法的なインサイダー取引みたいなものといつも思うのは、僕だけだろうか。国債や株の値が下がるほど儲かる仕組み。人や国家の運命を左右するようなこういう数字が、意識して「これでもか」とばかりにアナウンス効果を狙って下げられていく時代。金融帝国主義が来るところまで来て、世界の諸国家を飲み込む時代とも言える。17日の拙稿で観た中日春秋のこの表現は、正に一事が万事。慧眼だと思う。
『民主主義の政治制度で選ばれた宰相が、相次いで、いわば「市場」にクビを切られたことには、割り切れぬものがある。(中略)「市場」が政治をしのぐ力を持つなら、それは民主主義より”金”主主義とでも呼ぶべきである』