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九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

再掲、書評「サピエンス全史」(2)現代の平和  文科系

2019年03月24日 08時32分39秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 連載の2回目をご紹介する。明日は3回目と、この書評で起こったSICAさんという方との論争とを合わせて紹介したい。良い質問だったから、良い討論ができたと考えているからだ。


【 書評「サピエンス全史」(2)現代の平和  文科系 2017年05月03日 | 書評・番組・映画・演劇・美術展・講演など

『暴力の減少は主に、国家の台頭のおかげだ。いつの時代も、暴力の大部分は家族やコミュニティ間の限られた範囲で起こる不和の結果だった。すでに見たとおり、地域コミュニティ以上に大きな政治組織を知らない初期の農民たちは、横行する暴力に苦しんだ。権力が分散していた中世ヨーロッパの王国では、人口10万人当たり、毎年20~40人が殺害されていた。王国や帝国は力を増すにつれて、コミュニティに対する統制を強めたため、暴力の水準は低下した。そして、国家と市場が全権を握り、コミュニティが消滅したこの数十年に、暴力の発生率は一段と下落している』

『これらの諸帝国の後を受けた独立国家は、戦争には驚くほど無関心だった。ごく少数の例外を除けば、世界の国々は1945年以降、征服・併合を目的として他国へ侵攻することはなくなった。こうした征服劇は、はるか昔から、政治史においては日常茶飯事だった』

『1945年以降、国家内部の暴力が減少しているのか増加しているのかについては、見解が分かれるかもしれない。だが、国家間の武力紛争がかってないほどまで減少していることは、誰も否定できない』

 最後に、こういう現代の現象を学者達はうんざりするほど多くの論文で説明してきたとして、4つの原因を挙げている。
①核兵器によって超大国間の戦争が無くなったこと。
②人的資源とか技術的ノウハウとか銀行とか、現代の富が複雑化して、戦争で得られる利益が減少したこと。
③戦争は採算が合わなくなった一方で、平和が他国からの経済的利益を生むようになったこと。
④そして最後が、グローバルな政治文化が生まれたこと。以上である。

 今回の最後に、こんな文章も上げておく意味は大きいだろう。
『2000年には、戦争で31万人が亡くなり、暴力犯罪によって52万人が命を落とした。犠牲者が1人出るたびに、一つの世界が破壊され、家庭が台無しになり、友人や親族が一生消えない傷を負う。とはいえ、巨視的な視点に立てば、この83万人という犠牲者は、2000年に死亡した5600万人のわずか1・48%を占めるにすぎない。その年に自動車事故で126万人が亡くなり、81万5000人が自殺した』

 もう一つ、こんな文章もいろいろ考えさせられて、興味深いかも知れない。
『(これこれの部族は)アマゾンの密林の奥地に暮らす先住民で、軍隊も警察も監獄も持たない。人類学の研究によれば、これらの部族では男性の4分の1から半分が、財産や女性や名誉をめぐる暴力的ないさかいによって、早晩命を落とすという』

 なお、もちろん、以上これら全ての文章に、学者は学者らしく出典文献が掲げてあることは言うまでもない。

 (明日3回目と、これを巡って起こったある論争をご紹介する) 】
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再掲、書評「サピエンス全史」(1)野心的人類史  文科系

2019年03月24日 07時59分50秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 今改めて、この本が世界の脚光を浴びています。NHKのBSだったかで、特集番組が組まれたりして。2年前3回に分けて書評拙稿を書きましたが、再掲いたします。

【 書評「サピエンス全史」(1) 文科系
2017年05月01日 | 書評・番組・映画・演劇・美術展・講演など

 書評「サピエンス全史」(1)野心的人類史

 例によって、要約付きの書評をしていくが、なんせこの本は題名が示すとおりハードカバー2冊合計500ページを優に超えてびっしりという大部なもの。ほぼ全部読み終わったが、人類史をその通りの順を追って紹介してみても仕方ないので、この本の特徴とか、目立った章の要約とかをやっていく。その第1回目として、この本の概要と特徴

 オクスフォードで博士号を取った40歳のイスラエル人俊秀の歴史学者が書いた世界的ベストセラー本だが、何よりも先ずこの本の野心的表題に相応しい猛烈な博識と、鋭い分析力を感じさせられた。中世史、軍事史が専門とのことだが、ネット検索にも秀でていて、古今東西の歴史書を深く読みあさってきた人と感じた。ジャレド・ダイアモンドが推薦文を書いているが、このピューリッツァー賞学者のベストセラー「銃、病原菌、鉄」や「文明崩壊」(当ブログにこの書の書評、部分要約がある。06年7月8、19、21日などに)にも匹敵する守備範囲の広い著作だとも感じさせられた。両者ともが、一般読者向けの学術書をものにして、その専門が非常な広範囲わたっている人類学者の風貌というものを成功裏に示すことができていると思う。

 まず全体が4部構成で、「認知革命」、「農業革命」、「人類の統一」、「科学革命」。このそれぞれが、4、4、5、7章と全20章の著作になっている。
「認知革命」では、ノーム・チョムスキーが現生人類の言語世界から発見した世界人類共通文法がその土台として踏まえられているのは自明だろう。そこに、多くのホモ族の中で現生人類だけが生き残り、現世界の支配者になってきた基礎を見る著作なのである。
 「農業革命」は言わずと知れた、奴隷制と世界4大文明との誕生への最強の土台になっていくものである。

 第3部「人類の統一」が、正にこの作者の真骨頂。ある帝国が先ず貨幣、次いでイデオロギー、宗教を「その全体を繋げていく」基礎としてなり立ってきたと、読者を説得していくのである。貨幣の下りは実にユニークで、中村桂子JT生命誌研究館館長がここを褒めていた。ただし、ここで使われている「虚構」という概念だが、はっきり言って誤訳だと思う。この書の中でこれほどの大事な概念をこう訳した訳者の見識が僕には疑わしい。哲学学徒の端くれである僕には、そうとしか読めなかった。
 第4部は、「新大陸発見」という500年前程からを扱っているのだが、ここで語られている思考の構造はこういうものである。近代をリードした科学研究は自立して深化したものではなく、帝国の政治的力と資源・経済とに支えられてこそ発展してきたものだ、と。

 さて、これら4部を概観してこんな表現を当てた部分が、この著作の最も短い概要、特徴なのである。
『さらに時をさかのぼって、認知革命以降の七万年ほどの激動の時代に、世界はより暮らしやすい場所になったのだろうか?・・・・もしそうでなければ、農耕や都市、書記、貨幣制度、帝国、科学、産業などの発達には、いったいどのような意味があったのだろう?』(下巻の214ページ



 日本近代史の偏った断片しか知らずに世界、日本の未来を語れるとするかのごとき日本右翼の方々の必読の書だと強調したい。その事は例えば、20世紀後半からの人類は特に思い知るべきと語っている、こんな言葉に示されている。
『ほとんどの人は、自分がいかに平和な時代に生きているかを実感していない』
『現代は史上初めて、平和を愛するエリート層が世界を治める時代だ。政治家も、実業家も、知識人も、芸術家も、戦争は悪であり、回避できると心底信じている』
 と語るこの書の現代部分をこそ、次回には要約してみたい。こんな自明な知識でさえ、人類数百年を見なければ分からないということなのである
。げに、正しい政治論には人類史知識が不可欠かと、そういうことだろう。第4部「科学革命」全7章のなかの第18章「国家と市場経済がもたらした世界平和」という部分である。

(続く)】
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続「ギター、僕の暗譜法」   文科系

2019年03月07日 14時54分03秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 僕のクラシック・ギター生活についてここに何本もエントリーを書かせていただいてきたが、そのうち超古いエントリー「ギター、僕の暗譜法」が、またまたここのエントリー・アクセス・ベスト10に入ってきた。2010年12月26日掲載という古い物にまで辿り着いて読んで下さった方々がよくあるようにまたまた現れたわけだ。このエントリー自身の出し方はこうする。

①エントリー本欄の右欄外にある今月分カレンダーのすぐ下の「バックナンバー」と書いた年月欄をスクロールして、2010年12月をクリックする。
②すると、すぐ上の今月分カレンダーが2010年12月分に替わるから、その26日をクリックする。
③すると、このエントリー本欄そのものが2010年12月26日のエントリーだけに替わるから、その中からお求めの物をお読みいただける。

 なお、この中に書いた「暗譜法」、大好きな曲の「暗譜群」などについてその後の経過、苦労などが、このエントリーへのコメントとしてずっと付いている。つまり、20数曲の暗譜群や僕のギター生活が老いとともにどう変化していったかについて、その後8年、78歳までの老いの記録ということだ。このエントリーに付いたこんなコメントが、そういう一つの老いの記録として参考にしていただけるだろうか?などと考えている。
①16年2月9日 「(これがアクセス・ベスト10に入ってきた)記念にまた・・・」
②16年5月15日「今の暗譜群」、曲名が書いてあります。
③16年8月14日「暗譜の不思議」 数年前に「僕の腕では上手く弾けるようにはならない」として暗譜群から落として全く弾いていなかったバリオス「郷愁のショーロ」を復活した話です。翌17年に発表会で弾きました。例によっていつもの5割の出来も出せず、とても下手でしたが。
④17年7月14日「記念に」 ③の「ショーロ」と、同じく暗譜群から落としていたのを復活したタレガの「マリーア」とを発表会で弾いた話です。
⑤18年6月2日 「ギター生活近況」 これは、このエントリーに付けた、暗譜群全曲名を示した最終コメントです。これ以降今日までは、次の2曲が加わりました。タレガ「ゆりかご」、リヨベートの「アメリアの遺言」です。

 以上よろしく。同じく老いと格闘しているギター弾きさん御同僚に、お読み願えれば幸いです。

 なお、何度も書いてきた僕のギター経歴を改めて書きますが、こんな浅いものでしかありません。ギター弾きという者を実際に観たこともなく、人前で弾ける曲など1曲もないというカルカッシ教本の1人習いのあと、退職後の62歳で先生について、今78歳です。
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書評『「日米基軸」幻想』  文科系

2019年02月20日 06時31分37秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 詩想社新書から出ているこの本は、進藤榮一、白井聡お二人の対談本である。折しも、安倍首相による「トランプ氏をノーベル賞に推薦」が世界の笑い物になっているような現在である。この本の「終章 破綻した政権と国民 白井聡」を抜粋紹介してみれば、この推薦状が持つ意味というものも日本国民の骨身にしみてよーく分かるというもの。ということをもって、この本の書評に替えたい。

『対談を終えてこのまとめの文章を書いているいまも国際情勢は激変を続けており、何を書けば「これは確実」と言えるのか、きわめて厳しい状況にあります。・・・・2016年9月、安倍晋三首相は訪米の機会をとらえてクリントン候補のもとを訪れ・・・・そして、まさかのトランプ大統領誕生。ある報道によれば安倍晋三氏は「話が違うじゃないか!」と腹立ちまぎれに外務官僚を怒鳴りつけたそうです。そこで安倍氏は、金のゴルフクラブを携えて、すぐにトランプ氏のもとへ跳んで行き、ニューヨークのトランプタワーで会談します。・・・・そしてその後、北朝鮮による核兵器と弾道ミサイル開発の問題が一気に緊迫の度を加えます。米朝指導者間の罵倒合戦に続いて、9月19日の国連での演説にて、トランプ大統領は「北朝鮮の完全な破壊」の可能性を口にして、世界をどよめかせます。・・・・そして年が明け、(2018年)二月に韓国平昌にてオリンピックが始まる前後から、緊迫していた朝鮮半島情勢が一挙に変化し始めます。南北対話が始まるなかで、トランプ政権は早期の米朝直接対話を決断します。・・・・アメリカの圧力強化、強硬路線を宣布する役割を進んで担ってきた日本政府には一切の相談なしにこの決定は下されました。
 このように朝鮮半島を巡る情勢が激変する最中に、トランプ大統領は、貿易赤字削減を目指し、鉄鋼とアルムニウムの輸入に対して、25%の追加関税をかけることを発表しました。しかも、韓国、EU、メキシコ、カナダ、オーストラリア等がこの決定の適用除外に指定される一方、この決定を発表する際には、「安倍晋三首相と話をすると、ほほ笑んでいる。『こんなに長い間、米国を出し抜くことができたとは信じられない』という笑みだ」と延べ、世界で唯一、安倍晋三氏を名指ししたのでした。・・・・ここまでの安倍氏の振る舞いは、まさに「インテグリティ」を欠いたものであり、矢部宏治氏いわく、「インテグリティを欠いていること」は、アメリカ人にとって人間として最も低劣なことにほかならないからです。
 日本の主流派が奉じる「日米同盟基軸」の将来がどのようなものとなるのか、ここからも明らかではないでしょうか。それは伏在していたものが表に出るということにすぎないのでもありますが、「友情と敬意」のオブラートの下に岩盤のように横たわる軽蔑の感情が、今後ますます目につくようになるでしょう。』

 モリカケに顕れた官僚「忖度」文書偽造。日本の基幹統計をさえ改竄してアベノミクスの「成果」を上方に書き替えさせた「問題意識」圧力。内政の追及から逃げ出すためにやっているような「金ばらまき」外交。そういう政治の内実をこんなに大きく、鮮やかに描き出した本は珍しい。それは世界の過去現在を30年単位以上で見る目、学識がさせる技なのだと思ったことだった。「この程度の国民40%に似合った政治」という白井のこんな文言も、いろんな本を読んできた中でも初めて見た気がする。

『この無能かつ腐敗した政権を、国民は相対的に支持しているのです。政権と同程度に国民総体が劣化していると言わざるを得ません。要するに、安倍政権とは、いまの国民の水準に見合った政権であるのでしょう。・・・・安倍政権が倒れたからといって、即座にそのような合理的な転換ができるとは、私には到底思えません。なぜなら、安倍政権が去っても、そこにはそれを長らく支持してきた、安倍政権と同様に、無能かつ不正で腐敗した国民が残るからです』
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書評 チョムスキー「覇権か生存か」   文科系

2019年02月08日 07時19分27秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 アメリカがまた、ベネズエラを潰す勢いにまで、画策を激しくしている。世界の嘲笑の的・トランプが「軍事派遣も検討している」と発言している有様だ。ベネズエラ敵視は長年続いてきた事だが、ここに来て軍事覇権までとは、何事か? 非民主主義が酷すぎるというなら、サウジの徹底身分制社会を非難し、そこの記者殺し皇太子でも吊し上げても良さそうなものを。アメリカ最大の知識人の1人チョムスキーのイラク戦争論を振り返ってみるべき時だと愚考した。2016年の旧稿であるが。この書を読むと、イスラム国もその元はアメリカが作ったものだと、よーく分かるのである。武器、兵器も与え、さらに加えて直接に訓練まで施して。アフガン戦争とイラク戦争は、21世紀のアメリカの世界戦略、動向を正しく考える場合に不可欠の知識だと考える。


 チョムスキーが説く「イラク戦争勃発まで」    

 ノーム・チョムスキーをご存じの方も多いだろう。偉大な言語学者にして、現代世界の全ての学者たちの論文で聖書、プラトンに次いで引用される著作が多い現存の人物である。現在87才のアメリカ人だが、米国政府の戦争政策の長年の研究者、告発者でもある。彼の著作に「覇権か生存か」という隠れた世界のベストセラーがあって、そこで問題にされているイラク戦争部分を抜粋してみる。2004年9月発行の集英社新書による全9章(新書版337ページ)のうち、『第5章 イラク・コネクション』50ページ余の部分から。なお、同書にはこんな壮大な副題が付いている。『アメリカの世界戦略と人類の未来』!

(1)イラク戦争の経過

 1990年までは、アメリカはフセインをずーっと支え続けてきた。イラン・イラク戦争(80~88年)の時以降ずーっとイランこそがアメリカの標的だったし、89年10月にもフセイン政権に食糧、化学薬品、科学技術など多大な支援をしている。中東安保の柱として彼を活用して、その「巨悪」にも目をつぶってきた。大量破壊兵器もどんど支援してきた。ところが・・・。
1990年8月 フセインがクゥエート侵攻
1991年1月 湾岸戦争開始
1991年3月 全国で反フセイン暴動発生。アメリカは、フセインによるこれの鎮圧・大虐殺行動を黙認  
2001年9月 9/11テロ事件
2001年10月 アフガニスタン戦争
2002年1月 ブッシュ大統領「悪の枢軸」発言。イラク、イラン、北朝鮮を名指す。
2002年9月 アメリカ、国家安全保障戦略発表。予防戦争(先制攻撃)概念を世界に表明
2002年10月 米議会、対イラク武力行使容認を決議
2002年11月 国連が4年ぶりに、イラク大量破壊兵器を査察
2003年3月 イラク戦争始まる

(2)その「台本」

①国際版
『1980年代における「対テロ戦争」の二大中心地は、中米と、中東及び地中海地域だった』が、その中東を観ると
『ワシントンにいる現職者が取り組んだ活動の一つは、よく知られるようになった。1980年代にCIAとその関係組織がイスラム過激派を募り、正規軍及びテロリスト部隊としての組織化に成功した事実だ。カーターの国家安全保障担当補佐官だったズビグニュー・ブレジンスキーによれば、その目的は「ロシア人をアフガンの罠におびき寄せること」であり、初めは秘密工作によってソ連をそそのかし、アフガニスタンを侵略させることだった』
『その直後の結果として起こった戦争のためにアフガニスタンは荒廃し、ソ連軍が撤退しレーガンのイスラム聖戦士に取って代わられると、更に悲惨な状況になった。それがもたらした長期的な結果は、20年に及ぶ恐怖政治と内戦だった』
『ソ連軍の撤退後、アメリカとその同盟者(その中にアルカイダを始めとするイスラム聖戦士が含まれる)によって徴募され、武装及び訓練されたテロ組織は矛先を他国に向け・・・・・(1993年には)関連グループが「CIAのマニュアルで教えられた手法」に従い、世界貿易センタービルを破壊する一歩手前までいった。計画を立てたのは、シェイク・オマル・アブドル・ラーマンの支持者だったことが判明している。ラーマンはCIAからアメリカ入国の便宜を図ってもらい、国内でも保護されていた人物だ』
(以上161~163頁からの抜粋)

 とこのような経過で、イスラム戦士が育成され、911からイラク戦争へと繋がっていったと、チョムスキーは説いている。
 
②国内版
『(2000年に大統領になった)ジョージ・ブッシュ二世のために、広報活動の専門家とスピーチライターは、天国へまっしぐらの実直な男というイメージを作り出した。「理屈抜きの本能」を信じ、自らの「展望」と「夢」を思い描きながら、「世界から悪人を追放」するために前進する男、要するに古代の叙事詩や子供のお伽噺に、カウボーイ小説を混ぜ合わせたごとき滑稽な人物像である』
『(フッシュらが言うところの)テロとは何を指すのか?・・・・適切な答えが出れば意義あるものにもなろうが、こうした疑問は公開討論の場には決して持ち込まれない。代わりに、都合のいい定義が採用された。テロとは、我々の指導者がそう宣言するものなのだ』


 00年大統領選挙で、ブッシュは民主党候補ゴアと争って、有名な「疑惑の辛勝」を勝ち得た。選挙への無力感が過去最高レベルの50%以上に達した。04年の選挙を控えて、さらに落ちた人気への新戦略が必要だった。軍事費増、富裕層減税から社会保障費削減がさらに進んだからだ。
 そこから「先制攻撃による新しい過激な軍事戦略の提出」に国民の目を向けさせる事に励んでいった。この「冒険主義」には多くのリスクがあったが、以下の狙いに邁進したわけである。「米国社会の徹底的な改造に着手し、それによって1世紀にわたる進歩的な改革を押し返すことと、世界を恒久支配するための帝国の壮大な戦略を確立させることである。そうした目的に比べれば、それに伴うリスクは、些細なことと思えるのかも知れないのだ」(P183)

③ そして、イラク戦争
『02年9月には、国家安全保障戦略が発表された。でっち上げられた恐怖によって、イラク侵攻に向けて国民の間に充分な支持基盤ができ、意のままに侵略戦争を始める新たな規範が設けられた』
『イラクとの戦争は、それを実行すれば大量破壊兵器とテロが拡大するかもしれないという認識のもとに実行された。だが、それに伴うリスクは、イラクに対する支配権を強化し、予防戦争の規範をしっかりと築き、国内における政治力も高められるという見込みと比べれば些細なことと考えられた』


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「JFK」を観たが、凄い映画だ  文科系

2019年02月03日 09時54分57秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 昨夜、アメリカ映画「JFK」の完全版だかをテレビで観た。ケビン・コスナーが地方検事役をやった、1991年製作の有名な映画だ。何が凄いって、ケネディ大統領の暗殺事件を扱って、こんな台詞まで出てくる。
『これは、クーデターだ。・・・ジョンソン大統領も・・・』
 として、ジョンソン大統領の顔を何度も登場させていた。

 つまり、ケネディの副大統領ジョンソンを大統領にするために、この事件を誰かが起こしたと示している。アメリカの政治世界から映画のこの部分が問題にならなかったのだろうかと思ったことだった。ドナルド・サザーランドが演じた軍関係の人物を登場させて、政府内部の、それも最上層部からのクーデター犯行なのだと描いてあるのだから。

 そこで、この映画のウィキペディア解説を読んでみた。内容が非常に分厚く、それも色々あって、興味深かったこと! 映画の筋に合致した現場検証の証人・証拠がいくつか後に否定されたというのが、先ず第一。次いで、この事件の政府報告書である有名なウォーレン報告の内容と、ケネディの死体に残った傷跡とが完全に矛盾しているという点がいくつもあげられているうえに、死体に証拠改竄の跡すら残っていたという事実まで報告されていた。これらからの結論は、こういうもの。オズワルトの単独犯行説は完全に無理があること。彼が使ったとされる旧式のイタリア・ライフル(だけ)ではこの事件は不可能だということ。よって、ウオーレン報告を作った政府最上層部に何か重大な真相隠蔽工作が働いたのは確かだということ、などである。

 あと10年ほどするとこの事件をめぐる政府文書、掌握していた証拠などが全て公開されることになっていて、世界中の論議を呼ぶことになる。が、ともあれ、ケネディと、彼の弟で大統領選挙に出馬中、同情票で当選有力視というさなかに暗殺されたロバートの相次ぐ死は、アメリカという国の政治における最大の暗黒部分であることも確かだろう。ちなみに、ロバートの死もケネディと同じで、公式発表と矛盾する謎の部分が多いと、ウィキペディアにもあった。
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「サピエンス全史」書評で起こった論争  文科系

2019年01月21日 09時40分50秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 「サピエンス全史」書評の旧稿紹介は、既に(2)(3)をご自分で当ブログを検索されて読まれた方がおられるようだ。ここのアクセスベスト10に(2)が入ってきたからこれが分かった。よってもう、後続編の紹介はしないでこれを初めて紹介した時に起こったある戦争論の論争をご紹介しよう。日本人なら常識になっているような、「人類史論から見たら誤った戦争論」を反論された方がおられたからだ。
 なお、続編(2)(3)は各17年5月3、7日に掲載されている。
 さらにまた、以下の僕は厳しい言葉で応えてはいるが、このお相手SICAさんにはとても感謝している。しっかりした、内容も簡潔明瞭な文章を書かれて、この書の内容の深さを掘り起こして下さったとも言えるからである。げに、人間、人類の明日に臨むに際して、過去の歴史を正しく知る事が大切かという事だろう。ただし、歴史をきちんと知る事はものすごく難しい。それはどうしてなのか。その秘密の最大の柱をこそ、以下の論争からお分かりできるようにと願っている。


【 Unknown (sica)2017-05-03 16:00:44
『現代は史上初めて、平和を愛するエリート層が世界を治める時代だ。政治家も、実業家も、知識人も、芸術家も、戦争は悪であり、回避できると心底信じている』
これには「一般国民」は入ってないんですよね・・・
左翼勢力特有の傲慢さを感じるのは私だけでしょうか

Unknown (s)2017-05-04 04:34:16
私は
『現代は史上初めて、平和を愛するエリート層が世界を治める時代だ。政治家も、実業家も、知識人も、芸術家も、戦争は悪であり、回避できると心底信じている』
に疑問を呈しただけで、「政治指導層が平和を愛する心を持ったから戦争が少なくなった」より「戦争は損になる割合が多くなった」「核による恐怖の平和」という現実を認めているのなら、それほど反論もありません】


【 反論 (文科系)2017-05-04 19:05:49
 この文章に反論。
『私は「現代は史上初めて、平和を愛するエリート層が世界を治める時代だ。政治家も、実業家も、知識人も、芸術家も、戦争は悪であり、回避できると心底信じている」に疑問を呈しただけで、「政治指導層が平和を愛する心を持ったから戦争が少なくなった」より「戦争は損になる割合が多くなった」「核による恐怖の平和」という現実を認めているのなら、それほど反論もありません』
 これも、この歴史家が述べているような人類の過去の史実、人間の真実を知らなくって、現代の感覚で過去を見るから言えること。だからこそ、「この点に関して、過去の人類がどうだったかを貴方知っているのですか?」と怒って詰問した訳でした。
 貴方が嘲笑った文章のすぐ前にこう書いてあります。
『歴史上、フン族の首長やヴァイキングの王侯、アステカ帝国の神官をはじめとする多くのエリート層は、戦争を善なるものと肯定的に捉えていた』
 つまり、民主主義はもちろん、広範囲な統一国家も少ない時代では、我が部族だけが「人間」で、他は獣なのです。獣に対する人間の勝利は「我が信ずる神の栄光」も同じこと。こう理解しなければ奴隷制まっ盛りの時代なんて到底分からない訳です。
 こういう大部分の人類史時代に比べれば、「人種差別は悪」というような「民主主義のグローバル時代」では、どんな為政者も「戦争は悪」、万一必要と理解したそれでさえ悪となるわけ。つまり必要悪。


 追加です (文科系)2017-05-05 17:02:16
 追加します。
 こういう大事な史実一つを知っているかどうかで、現代史とその諸問題の見方もかなり変わってくるはずだ。現代世界政治で最も重要な民主主義という概念の理解でさえもこうなのだから。つまり、今の民主主義感覚で過去の人間も観てしまう。
 現生人類どうしでさえ、「自分の感覚で相手を捉えて,大失敗」とか、長年の夫婦でさえ、『相手がこんな感覚を持っていたとは今まで全く知らなかった。人間って、違うもんだなー』なんて経験は無数にあるのだ。そして、相手と自分が違う点が認められた特にこそ、人間理解、自己認識が一歩進む時なのだ。ソクラテスが喝破したように「自分を知るのがいかに難しいか」と同じように「(過去の感覚との違いを認めてこそ)その時代の感覚を知ることができる」ということがいかに難しいかという問題でもある。
 だから僕は、このブログにこんなことも書いてきました。僕は時代劇なんてまともには観ない。すべて嘘だからだ。現代の感覚で過去の人間を見ている。現代人に、「士農工商」が華やかだった江戸時代前半の人々の対人感覚が分かるはずがない。
 時代劇なんて全て、当時の感覚からすればリアルさに欠けるはずである。
 むしろ、それをいい事に、現代のリアル感覚を書けないストーリー作家が時代劇を書くのだろう、などと。

 反論が書けなかった? (文科系)2017-12-21 18:14:17
 SICAさん、反論が書けなかったでしょ? ご自分の判断基準が、世界史から見たらいかにちっぽけな、狭いものかが、お分かりになりましたか。(この場合は僕が自分を誇っているのではありません。この著作それに顕れた人類史を誇っていると言えるでしょう。・・・これは今回付けた文章です)
 このエントリーがベスト10に入ってきて、改めて読み直したもの。それでお返事。
 民主主義とか、一般的殺人が悪などとなったのでさえ、たかだかこの200年程のことです。200年前など、今のアメリカでは黒人を殺すことなど何ともありませんでした。人間ではなく、所有物だからです。ジャンゴという映画見たことがあります?

 こうして・・・ (文科系)2017-12-25 07:10:34
 こうして、例えば200年ほど前から民主主義がどう変化、発展してきたかが分からなければ、今後50年など何も見えてこないわけです。そういう人がまた「戦争は人間の自然、必然」などと語っているのでしょう。僕は、そのことが言いたかった。
 過去の世界変化がきちんと見えなければ、未来は予測も希望も出来ないということ。特に日本だけを見ていたり、20世紀になって初めて出来た世界の民主主義組織・国連も見えなければ、日本の明日も見えて来ないでしょう。】
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書評「サピエンス全史」(1) 文科系

2019年01月20日 10時35分51秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 この世界的ベストセラー本の著者、ユバル・ノア・ハラリは最近NHK・BS1スペシャル特集番組に出たりして、かなり名が知られてきた。ちなみに、日本でも100万部を達成したとか。よって旧稿を再掲する事に決めた。特に戦争というテーマを重視して、三回に分けて内容紹介をしてみたものだ。


【 書評「サピエンス全史」(1)野心的人類史  文科系  2017年05月01日

 例によって、要約付きの書評をしていくが、なんせこの本は題名が示すとおりハードカバー2冊合計500ページを優に超えてびっしりという大部なもの。ほぼ全部読み終わったが、人類史をその通りの順を追って紹介してみても仕方ないので、この本の特徴とか、目立った章の要約とかをやっていく。その第1回目として、この本の概要と特徴。

 オクスフォードで博士号を取った40歳のイスラエル人俊秀の歴史学者が書いた世界的ベストセラー本だが、何よりも先ずこの本の野心的表題に相応しい猛烈な博識と、鋭い分析力を感じさせられた。中世史、軍事史が専門とのことだが、ネット検索にも秀でていて、古今東西の歴史書を深く読みあさってきた人と感じた。ジャレド・ダイアモンドが推薦文を書いているが、このピューリッツァー賞学者のベストセラー「銃、病原菌、鉄」や「文明崩壊」(当ブログにこの書の書評、部分要約がある。06年7月8、19、21日などに)にも匹敵する守備範囲の広い著作だとも感じさせられた。両者ともが、一般読者向けの学術書をものにして、その専門が非常な広範囲わたっている人類学者の風貌というものを成功裏に示すことができていると思う。

 まず全体が4部構成で、「認知革命」、「農業革命」、「人類の統一」、「科学革命」。このそれぞれが、4、4、5、7章と全20章の著作になっている。
「認知革命」では、ノーム・チョムスキーが現生人類の言語世界から発見した世界人類共通文法がその土台として踏まえられているのは自明だろう。そこに、多くのホモ族の中で現生人類だけが生き残り、現世界の支配者になってきた基礎を見る著作なのである。
 「農業革命」は言わずと知れた、奴隷制と世界4大文明との誕生への最大の土台になっていくものである。
 第3部「人類の統一」が、正にこの作者の真骨頂。ある帝国が先ず貨幣、次いでイデオロギー、宗教を「その全体を繋げていく」基礎としてなり立ってきたと、読者を説得していくのである。貨幣の下りは実にユニークで、中村桂子JT生命誌研究館館長がここを褒めていた。ただし、ここで使われている「虚構」という概念だが、はっきり言って誤訳だと思う。この書の中でこれほどの大事な概念をこう訳した訳者の見識が僕には疑わしい。哲学学徒の端くれである僕には、そうとしか読めなかった。
 第4部は、「新大陸発見」という500年前程からを扱っているのだが、ここで語られている思考の構造はこういうものである。近代をリードした科学研究は自立して深化したものではなく、帝国の政治的力と資源・経済とに支えられてこそ発展してきたものだ、と。

 さて、これら4部を概観してこんな表現を当てた部分が、この著作の最も短い概要、特徴なのである。
『さらに時をさかのぼって、認知革命以降の七万年ほどの激動の時代に、世界はより暮らしやすい場所になったのだろうか?・・・・もしそうでなければ、農耕や都市、書記、貨幣制度、帝国、科学、産業などの発達には、いったいどのような意味があったのだろう?』(下巻の214ページ)


 日本近代史の偏った断片しか知らずに世界、日本の未来を語れるとするかのごとき日本右翼の方々の必読の書だと強調したい。その事は例えば、20世紀後半からの人類は特に思い知るべきと語っている、こんな言葉に示されている。
『ほとんどの人は、自分がいかに平和な時代に生きているかを実感していない』
『現代は史上初めて、平和を愛するエリート層が世界を治める時代だ。政治家も、実業家も、知識人も、芸術家も、戦争は悪であり、回避できると心底信じている』

 と語るこの書の現代部分をこそ、次回には要約してみたい。こんな自明な知識でさえ、人類数百年を見なければ分からないということなのである。げに、正しい政治論には人類史知識が不可欠かと、そういうことだろう。第4部「科学革命」全7章のなかの第18章「国家と市場経済がもたらした世界平和」という部分である。

(続く) 】


 この書評は三回続くが、あまりにも予想通り、予想した箇所で(上記文中の最後の太字部分などで)、右らしき方々から社会ダーウィニズムにどっぷりとつかったと言える反論が出てきた。書評、内容紹介文言自身への反論だから、この作者への反論になるのだが、そこから起こった討論も4回目に紹介してみたい。
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書評「習近平と米中衝突」③  中国側の理解と対応   文科系

2018年12月01日 10時27分07秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 11月21、22日のエントリー、「米中衝突の舞台裏の一端」と「書評『習近平と米中衝突』」とは、この本の書評、紹介の連載である。今回はその3回目だ。ちなみに、第1、2回のあらましはこうだ。
 第一回目はこの衝突の情勢認識を中国人民銀行総裁の言葉で表現したものをこの書から抜粋した。そして、第2回目は、アメリカ側の、特にペンス副大統領など政権中枢の「今叩かないと大変なことになる」など、現在の認識、決意を同書からまとめてみた。
 そして今回は、中国側の「今後ありうる貿易摩擦対応策」をまとめてみたい。日本マスコミにはなかなか見られない中国側の言葉、認識、対応策などがちりばめられているのが、この本の特色である。以下は、著者が対面で聴取した、匿名の「中国経済関係者」の言葉だ。

 会話はまず、著者のこんな質問から始まったという。
『3月の時点で、中国がアメリカとの「ガチンコ勝負」を選択したのは誤りではなかったのか』

 以下、相手の応えを抜粋していこう。

『中国は国内の市場規模ではすでにアメリカを追い越し、資金力では五分五分の力を蓄えた。アメリカにまだ追いつけていないのは、技術力だけだ・・・アメリカは、そのことに危機感を抱いたのだ。現在の中国は、20世紀のソ連の軍事力と、日独の経済力を合わせた以上のパワーでもって、アメリカに挑戦してきている。このままでは、アメリカの先端技術とドル体制を基軸とした世界秩序は、中国に取って代わられるかもしれない。世界中がアメリカ国債を買わなくなるかも知れない。
 アメリカは、いま中国を叩かないと、アメリカの時代が終焉すると判断したのだ』

 こう説明した上で、著者が「中国の対抗策」と小見出しを付けた話者の言葉を、こう展開していく。
『第一に、ボーイング社から受注している大量の民間航空機をキャンセルする。・・・第二に、農産品をアメリカ以外の国からの輸入に切り替えていく。・・・トランプは農家に補助金を出すと言っているが、これは何年もは続けられない。第三に、アップル社のiphoneをボイコットする。・・・第四に、GM、フォードなどアメリカの自動車会社を中国市場から締め出す。第五に、スターバックやマクドナルド、ハリウッド映画など、その他のアメリカ企業への締めつけ強化だ。・・・・・われわれは現在、日本とドイツが過去にどうやってアメリカとの貿易摩擦を解消していったかを、深く研究しているところだ。日本人とドイツ人は生真面目な民族だが、中国人は頭がもっと柔軟だ。そしてトランプも、決して真面目なタイプではない。中国とアメリカは、十分妥協点を探れると信じている』
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書評「習近平と米中衝突」② 、アメリカの姿勢   文科系

2018年11月22日 08時50分38秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 昨日も触れた『習近平と米中衝突 「中華帝国」2021年の野望』(NHK出版新書、近藤大介著)の最終章を要約してみたい。章題は、「冷戦—米中衝突はどこへ向かうか」。この章は、この著作としては珍しく、著者の感覚に属するような断定的表現、命題は極力減らしていて、事実や人の言葉をありのままに伝えていると読める。
 要約の仕方だが、今回言わば喧嘩売ったアメリカ側の言葉などを中心にこの章から拾っていくというやり方を採る。

『そもそも中国が世界第2位の経済大国になたのは、アメリカの投資によるところが大きい。それなのに中国共産党は、関税、割り当て、為替操作、強制的な技術移転、知的財産の窃盗などを行ってきた。中国の安全保障機関も、アメリカの最先端技術の窃盗の黒幕となり、大規模な軍事転用を図ってきた。・・・
 最悪なことに、中国は(トランプ大統領とは)別の大統領を望んでいるのだ。アメリカの民主主義に干渉していることは間違いないのだ。・・・しかし我々の大統領が屈することはない。アメリカ軍はインド太平洋の全域で、アメリカの国益を追求していく。中国の知的財産の窃盗行為が終わる日まで、行動を取り続けていく』
(ペンス副大統領)

『私は以前、中国人とは話せばわかる、中国は発展すれば民主化すると信じて、多くの協力をしてあげた。だが今世紀に入ったある時点から、中国人とは話しても理解し合えないし、中国は民主化しないと悟った。それどころか、中国はアメリカを超えて世界の覇権を握る野望を抱いていて、いま叩かないと大変なことになると確信するようになった
(ペンスが上の演説をした保守系シンクタンクの長。トランプ政権に強い影響力を持っている)
 
 著者は次に、アメリカの国防予算2019年度分(18年10月~19年9月)が7,160億ドルになったと伝えつつ、国防省がこの10月5日に出したレポート「アメリカの製造業と防衛産業基盤、サプライチェーンの弾力性に関する評価と強化」を、こう要約する。
このレポートは一言で言えば「このままではアメリカは中国にやられてしまう」という危機感から作成されたものだった。
 例えば、日本や韓国を含むアメリカのアジアにおける同盟国もしくは準同盟国の8カ国・地域が、どれだけ貿易面で中国に依存し、逆に中国が当該国にどれだけ依存しているかが示されている。そしてアジアにおけるアメリカの同盟地域でさえ、既に中国に相当程度「侵食」されているため、早急に手を打たねば手遅れになると警鐘を鳴らしているのだ

 要約テーマの最後として、最新の日米首脳会談の著者による一種の報告で締めよう。
『こうした中、安倍首相が10月25日から27日まで、日中平和友好条約発効40周年を記念して中国を訪問すると発表されたが、7年ぶりの日本の首相の中国訪問となったものの、華々しい成果はもともと期待薄だった。日中関係を担当する日本政府関係者が明かす。
「安倍首相は訪中に先がけて、9月23日にニューヨークのトランプタワーを2年ぶりに訪れ、トランプ大統領と夕食を共にした。その際、トランプ大統領から、『早ければ来年にも、中国と戦争になるかもしれないのだから、経済協力などは慎んでほしい』と釘を刺された。同盟国のアメリカに背中を引っ張られた格好となり、その時点で派手に日中友好を打ち出せなくなったのだ』


 と言ってもさてこの書発刊の後、米中間選挙では下院過半数が逆転して、この大統領について去年からずっと話題に上がってくる大統領弾劾決議も出せるようになった。度重なる重要閣僚辞任などにも示されてきたように、政権内部ですらがトランプの言動をもてあましてきた政権でもある。国連を通じた世界の多国間主義、つまり世界の民主主義を否定したという意味では、アメリカ民主主義が機能していないという世界にとって深刻過ぎる問題が横たわっている。


(③に続く)


 昨日のアクセスが、ここまで毎日の4分の1か3分の1ほどへと一挙に減っている。この数年無かった数字へと急に少なくなったのは、誰かが手を入れたからと思う以外には無い。文科省記事がどこかの気に障ったのだろう?
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ある書評 斜陽米の本質(5)この本の序文と「あとがき」

2018年11月02日 08時52分33秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 この連載の最後として、ドナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(2012年6月第五版)の序文の前半と、あとがきのほとんどとを抜粋してみたい。これを読めば、この本が世界・日本の民主主義信奉者にとっていかに大切な書であるかが分かるというもの。金融グローバリゼーションが作った世界が分からなければ、世界の民主主義的改善などできないはずだ。

 まずズ序文の前半。
『 2006年あたりからサブプライムローン問題でくすぶり始め、2008年のリーマン・ショックで本物のパニックに発展した金融危機は、たしかに世界政治経済史の画期的な出来事だった。それは、1930年代の不況、第二次世界大戦、ベルリンの壁の崩壊に匹敵する画期的な事件であった。そこでは、「アングロ・サクソン資本主義の終焉」が叫ばれ、金融危機が世界経済にとって重要な転機となるように見えた。
 資産価格が急落し、国によっては、翌年の成長率がマイナス2%からマイナス5%、1000万人の新しい失業者が生まれた。銀行救済のために膨大な公共資金がつぎ込まれ、先進国平均で国民総生産(GNP)が3%減、何百万という人たちが持ち家を失いホームレスになった。災難としての規模は決して小さくなかったのである。
 しかし、2011年の今現在、世界経済の仕組みは大して変わっていない。1945年の時のような、「終止符を打って再出発」の感が、全くと言っていいほどない。・・・・』


 次に「あとがき」を転載すると、
『「序文に代えて」で書いたように、一九四五年は正に、「終止符を打って再出発」の時期だった。人類同士が7000万人を殺した戦争に対する反省はそれくらい深かった。
 将来、金融化経済の不合理さ、不公平さに対して反省する時期は来るだろうか。同じく7000万人を殺さないで。歴史の教訓があるとすれば、「不可逆的に見える傾向でも、永遠に続くことはない」、であるし「大きな戦争がなければ大きな社会変化もない」である。
 そう考えると、どうしても世界の軍事力、外交力のバランスという現実にぶつかる。本書で描いた日本経済のアングロ・サクソン化は、米国が西太平洋における軍事的覇権国家であり、日本と安全保障条約を結んでそこに基地を持ち、その基地を移設しようとする内閣(たとえば鳩山内閣)を倒すくらいの力がある、という事情と密接な関係がある。
 詳しく論じる余地はなかったが、3、40年も経てば、西太平洋における覇権国家は中国になっているだろう。2010年、北朝鮮が韓国の延坪島を砲撃した。世界的な非難が広がる中、アメリカは黄海での韓国との合同軍事演習に航空母艦ジョージ・ワシントンを派遣した。この空母の航入を、中国は一時激しく拒否した。後で認めることになるのだが、この事件は長い冷戦の始まりにすぎないだろう。米ソの冷戦は半世紀近く続いた。熱戦にならず、何千万人もの犠牲者を出さずに終わったのは、ゴルバチョフが東中欧における米国の覇権を認め、「負けた」と手を上げたからだ。
 今度は半世紀も要さないだろうが、中国が勝ちそうだ。なぜそう思うかと言えば、次の条件を勘案しているからだ。
 ○ 今後の米中の相対的経済成長力
 ○ 政治的課税力ー国庫歳入の成長力
 ○ 国威発揚の意思の強さー軍事予算拡大の用意
 ○ 人的資源・・・・・・・・
 西太平洋における覇権の交代はほとんど必然的だと思うが、それについての大問題が三つ。

①アメリカにゴルバチョフがいるか、である。それとも、何千万人もの死者が出そうな実際の衝突、つまり戦争の勝ち負けに決済が委ねられるだろうか。
・・・・・・・・・
③60年もの間、日本を行ったり来たりし、日本人の友達が多い私にとって大変関心が高い問題だが、土壇場になっても、日本は依然として米国に密着しているのか。独立国家として、米中が何千万人を殺しかねない衝突に突き進まないよう、有効に立ち回れるのかどうか。

 「新書」の目的が、挑発的な問いかけで読者を考えさせることだとしたら、挑発はこのくらいで十分だろう。このあたりで筆を置いていいと思う。』


 この本によれば、「アメリカではこうだ」という理屈の下に、日本が米国共々経済から外交、軍事にいたるまでいかに危ない橋を渡って行きつつあるか。そのことが、日本経済最新変化の解明を通じてとてもよく分かる本だとつくづく考え込まされている。
 なおこの著者は、ケインズなど伝統的なイギリス経済学界の伝統を継承する「ロンドン大学LSE」を出て、そこのフェローの資格を得ているイギリス人。かつ、若いころの東大留学時代(江戸時代の教育制度を学びに来た)からの日本オッカケでもあって、日本文学者ドナルド・キーンのマクロ経済版のようなお方だ。本書を書き上げたころは85歳と推定されてなお、この「日本語」健筆。本書中には、60年前の日本にこんな生き生きとした「論壇」があったとして、こんな下りもあった。
『一方に、「岩波文化人」(私の親しい友人であった丸山真男や加藤周一や、まだ珍しく元気であった鶴見俊輔をはじめとして)、他方に、彼らを「進歩的文化人」と野次って、その愚かさを攻撃する「保守派」の福田恒存や江藤淳など、その間の論争を懐かしく思い出す』(P109)


(終わりです。ここまで読んで下さった300人ほどの方、大変有り難うございました。)
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ある書評 斜陽米の本質(4)金融改革をこう妨害  文科系

2018年11月01日 12時51分27秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 各国、世界機関の金融改革を妨害   


 ドナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書2012年6月第5刷発行)の終章である第3章は、計4節に分かれている。「国際協調」、「適切な報酬制度」、「現状維持に終わる金融改革」、「金融化は不可逆的か」。これを、順不同で要約していきたい。サブプライムバブルが弾けた後のG20やそのサミットでどんな改革論議がなされ、対立があって、ほぼ元の木阿弥に戻ってしまったか。リーマン以降、ロンドンG20から、10年のソウルG20とそのサミットまで、世界の金融規制論議経過は省いて、書かれている改革の内容自身を観ていきたい。

 ロンドン大学政治経済学院の「金融制度の将来」には4つの目的がこう書かれているとあった。①実体経済を攪乱しないように。②破綻金融の税金救済の問題。③そんな金融機関の報酬が高すぎる問題。④高報酬により人材が集まりすぎる問題。
 また、2010年11月のG20ソウル会議でもっと具体的に4つの討論がなされ、抽象的合意だけが成されたと言う。①銀行規制。②金融派生商品契約を市場登録すること。③格付け会社の公共性。④新技術、商品の社会的有用性。
 以上から何が問題になってきたかをお分かりいただけたと思うから、G20ソウル会議の4項目の順に討論内容などを観ていきたい。

 ①の銀行規制に、最も激しい抵抗があったと語られる。また、現に力を持っているこの抵抗者たちは規制提案に対して「否」と言っていれば良いだけだから、楽な立場だとも。国家の「大きすぎて潰せない」とか「外貨を稼いでくれる」、よって「パナマもケイマンも見逃してくれるだろう」とかの態度を見越しているから、その力がまた絶大なのだとも。この期に及んでもなお、「規制のない自由競争こそ合理的である」という理論を、従来同様に根拠を示さずに押し通していると語られてあった。

 ②の「金融派生商品登録」問題についてもまた、難航している。債権の持ち主以外もその債権に保険を掛けられるようになっている証券化の登録とか、それが特に為替が絡んでくると、世界の大銀行などがこぞって反対すると述べてあった。ここでも英米などの大国国家が金融に関わる国際競争力強化を望むから、規制を拒むのである。つまり、国家が「外国の国家、法人などからどんどん金を奪い取ってきて欲しい」と振る舞っているから換えられないと、酷く暴力的な世界なのである。

 ③格付け会社の公準化がまた至難だ。その困難の元はこのようなものと語られる。アメリカ1国の格付け3私企業ランクに過ぎないものが、世界諸国家の経済・財政法制などの中に組み込まれているという問題だ。破綻直前までリーマンをAAAに格付けていたなどという言わばインチキの実績が多い私企業に過ぎないのに。ここで作者は「ワイヤード・オン」という英語を使っている。世界諸国家法制にムーディーズとかスタンダードとかの格付けランクがワイアーで縛り付けられているという意味である。この点について、こんな大ニュースが同書中に紹介されてあったが、日本人には大変興味深いものだろう。
『大企業の社債、ギリシャの国債など、格下げされると「崖から落ちる」ほどの効果がありうるのだ。いつかトヨタが、人員整理をせず、利益見込みを下方修正した時、当時の奥田碩会長は、格付けを下げたムーディーズに対してひどく怒ったことは理解できる』(P189)
 関連してここで、つい昨日の新聞に載っていたことを僕がご紹介したいのだが、こんな記事があった。先ず見出しは、『国際秩序の多極化強調BRICS首脳「ゴア宣言」』。その「ポイント」解説にこんな文章が紹介されていた。
『独自のBRICS格付け機関を設けることを検討する』
 15日からブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ五カ国の会議がインドのゴアで開かれていて、そこでの出来事なのである。ついでに、日本でこういう記事はまず大きくは見えないようになっているということも付け加えておきたい。なお、この会議宣言4つのポイントすべてにおいて「国連」が強調されていたということも何か象徴的なことと僕には思われた。国連を利用はするが無視することも多いアメリカと、国連を強調するBRICSと。
 とこのように、国連や、G7などではなくG20やにおいてアメリカ以外の発言力が強くなっていかなければ、金融規制は進まないということなのである。

 最後に、「④新技術、商品の社会的有用性」について。金融商品、新技術の世界展開を巡る正当性の議論なのである。「イノベーションとして、人類の進歩なのである」と推進派が強調するが、国家の命運を左右する為替(関連金融派生商品)だけでも1日4兆ドル(2010年)などという途方もない取引のほとんどが、世界的(投資)銀行同士のギャンブル場に供されているというような現状が、どうして「進歩」と言えるのか。これが著者の抑えた立場である。逆に、この現状を正当化するこういう論議も紹介されてあった。
『「金作り=悪、物作り=善」というような考え方が、そもそも誤っているのだ』
 金融が物作りを「攪乱」したり、原油など世界的な独占価格を設定したり、現代世界人類に必要な新たな物作りへの長期的大々投資がマネーゲーム短期投資の対象にならないことから事実上これを妨げてきたりしてきたというのは、悪だろう。関連して、世界的大銀行は、中小国家の資金まで奪っていくという「罪」を史上数々犯し、世界庶民の福祉向上を妨げてきたのである。そして、世界の主人公である普通の人人の生活、職業というものは、物(作り)とともにしか存在しない。


 この著作中に集められた膨大な数値などは今後の討論で折に触れて適宜ご紹介していくつもりです。「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」という書名をどうかご記憶下さい。


(続く、もう一回やります)
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ある書評、斜陽米の本質(3)社会、政治、教育も「金融化」  文科系

2018年10月31日 08時56分59秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 中公新書、ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(2011年10月初版)の要約を4回に分けて行っている。第一回目に本のさわり部分を紹介した後、同書が以下の3部に別れているのに合わせて。「金融化現象とは何か」、「これにより、社会、政治、教育などがどう変わるか」、「各国、国際機関による、これの弊害是正、金融改革の試み」である。今回はその第二部の要約とする。この30年ほどの英米社会全体がその経済の金融化によってこう変わったと言う内容である。


 社会、政治、教育も「金融化」  

 ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月初版)を要約している。その第二部は、金融化が社会、政治、教育、そして学者たちをどう変えたかという内容。これがまた4節に分けられていて、各表題はこうだ。①社会を変える金融化、②金融化の普遍性、必然性?(疑問符が付いている事に注意 文科系)、③学者の反省と開き直り、④「危機を無駄にするな」(括弧が付いている事に注意 文科系)。

 第1節では、格差、不安の増大、最優秀人材が金融にだけ行く弊害、人間関係の歪みの四つに分けて論じられる
・「格差」では、06年のゴールドマン・トレイダーら50人のボーナスが、一人最低17億円だったという例を28日のここで紹介した。こういう強食の背後には、無数の弱肉がいると解説を付けて。(この点については、28日拙稿を参照願いたい)
・「不安の増大」では、こんな例が良かろう。日本の国民年金掛け金未納者が38%にのぼること。日本で新たに導入された確定拠出年金が、10年3月末の110万人調査で63%が元本割れとなっている発表された。これらの人々の老後はどうなるのだろうか?
・人材の金融集中では、2010年8月の日経新聞広告を上げている。
『野村、「外資流」報酬で新卒40人採用へ 競争率16倍 専門職で実績連動 11年春、初任給54万円』
 マスメディアのライターからも、大学人やフリーライターとかジャーナリストらがどんどん減って、金融アナリストが急増している。
・人間関係の歪みでは、情報の非対称性(情報量に大差がある2者ということ)を利用して起こる諸結果から、「人をみたら泥棒と思え」と言う世の移り変わりが説かれている。

「金融化の普遍性と必然性?」の要は、金融に特化する先進国に不当な世界的優位性を与えているということである。そこから、西欧がアメリカを追いかけ、今日本がつづき始めた、と。ただし、主要国の家計に占める株と証券との割合は05年でこうなっている。アメリカ46・6%の6・7%、ドイツ23・7%の9・7%、フランス28・0%の1・4%に対して日本15・0%の4・0%である。
 この程度でもう100年に一度のリーマンが起こって莫大な公金を注ぎ込まざるを得なかったとあっては、これで儲けるしかないアメリカがいくら頑張っていても金融立国はもう駄目だという文脈と言える。上記4国の証券%合計は21・8%となるが、1980年のこれは合計34・9%となっていた。4国で割れば、この25年で8・7%から5・5%へと家計における証券保有率は大幅に低減したという事になる。ただこれは家計に占める率であって、世界から金融業者に掻き集められた金はカジノばかりに膨大に投入されているということである。

「学者の反省と開き直り」は省略させて頂く。作者自身も嘲笑的になりそうになる筆を押さえつつ書いているようだし。

「金融危機を無駄にするな」に括弧が付いているのは、掛け声だけという意味である。アメリカの妨害でちっとも進まないからだ。
 リーマンショックが起こって、「100年に1度の危機」と叫ばれた08年秋のころはアメリカも大人しかったようで、金融安定への不協和音はゼロだったとのこと(ただ、この「危機」の長期的根本的意味が一般には1割も理解できていたかどうか、僕はそう思う。)ところが、国際機構をきちんとして罰則を入れるようなものは全くできなかった。決まった事は、G7よりもG20サミットが重視され始めて、保護主義を排し、経済刺激策を取ろうという程度だった。IMFとこれによる規制との強化とについて、新興国と西欧とがかなり主張して端緒についたはずだったが、その後はほとんど何も進まなかった。
 ここで作者は、世界政府、国際制度作りの歴史などの話を起こすことになる。特定分野の国際協力機関は20世紀初めの国際連盟やILO設立よりも前に12もできていたと述べて、「万国郵便連合」などの例を挙げる。
 同じ理屈を語って日本人に大変興味深いのは、日本の戦国時代統一の例が語られている下りだろう。
『日本が16世紀の終わりに一つの国になったのは、信長、秀吉、家康の武力による統合と、幕府という統治制度の意識的な創出が決定的だった』(P132)
 アジア通貨危機やギリシャ危機は、大国金融が中小国から金を奪い取る金融戦争、通貨戦争の時代を示している。そんな金融力戦争はもう止めるべく、戦国時代の戦争を止めさせた徳川幕府のように、金融戦争に世界的規制を掛けるべきだという理屈を語っているのである。IMF(国際通貨基金)のイニシアティブ強化以外に道はないということである。


 金融の国際制度とこれによる執行力ある万国金融規制についてさらに、前大戦中から準備されたケインズの国際通貨、バンコール構想も解説される。が、これはドル中心にしようとのアメリカの終戦直後の実績と強力との前に脆くも崩れ去ったということだ。ドルが基軸通貨になったいきさつ説明なのである。
 以降アメリカは自国生産量より4~5%多く消費でき、日本や中国はその分消費できない国になったということである。それぞれ膨らんだドルを米国に投資する事になってしまった。その意味では、中国銀行総裁、周小川が09年に「ケインズ案に帰るべし、新機軸通貨、本物の国際通貨の創設を!」と叫び始めた意味は大きい。中国は今や8000億ドルの米国債を抱え、不安で仕方ないのであろう(この8000億は現在では1兆2500億ほどになっている。文科系)。中国のこの不安は同時に、アメリカにとっても大変な不安になる。「もし中国が米国債を大量に売り始めたら。国家、家計とも大赤字の借金大国の『半基軸通貨』ドルは大暴落していくのではないか」と。周小川中国銀行総裁が「本物の国際通貨の創設を!」と叫ぶのは、そんな背景もあるのである。

 なお、これは私見の言わば感想だが、アメリカが中東重視から西太平洋重視へと世界戦略を大転換させたのは、以上の背景があると観ている。中国に絶えず圧力を掛けていなければ気が休まらないのだろう。
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ある書評、斜陽米の本質(1)   文科系

2018年10月29日 09時02分01秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 トランプが、物経済の保護主義的貿易に強引回帰している今とは、冷戦時代の終末期以降米英が中心になって世界に広げてきたこの40年の「マネーゲーム経済」、「金融グローバリズム」のどん詰まりを認めて、現物経済にも回帰し始めた時期だと言える。つまり、トランプの今の諸行動は、マネーゲーム経済破綻が分からなければ理解出来ないことになる。
 ところが、このマネーゲーム経済の理解がまた、大変難しい。金融派生商品とか、債権の証券化商品、CDSなどは、素人には難しいものだからだ。これを出来るだけ広く深く理解する格好の書物がある。ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月第一刷発行)だ。金融が世界を支配して、南欧、アジア、アフリカなどに大量失業者を生みだし、日米等先進国からまともな職業を無くして不安定労働者ばかりにし、現在の超格差世界を作り上げたと。だからこそ今や、この膨大な金持ち資金を有効に投資すべき有効需要など世界のどこにも見いだせなくなってしまったのだと。
この本の内容は、僕が12年ここで新たに勉強し直しては原稿を書き続けてきて、たどり着いた現代世界の諸不幸の大元の解説と言える。ここに展開されていることは、日本人にはなかなか書けないもの。著者は、イギリス経済学の伝統を学び継いだ上で、確か20代前半に日本江戸期教育の研究目的で東大に留学され、以来熱心な日本ウォッチャーを続けられたという政経版ドナルド・キーンのようなお方。以下は、この書評第一回目として全体のさわり部分の要約である。世界経済がこのようになったからこそ、今の世界の諸不幸が生じていると、そういう結論、大元解明のつもりだ。

『米企業利益のうち金融利益の割合が、1950年代までは9・5%であったものが急増して、02年には41%と示される』

『機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった』

『企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった』

『彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。こうして、米(番犬)経営者の年収は、一般社員の何倍になったか。1980年には平均20~30倍であったものが、最近では彼の年金掛け金分を含めば475倍になっている。その内訳の大部分は、年当初の経営者契約の達成に関わるボーナス分である。全米の企業経営者がこうして、番犬ならぬ馬車馬と化したわけだ』

『「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・』

 最後のこれは、以下のような数字は日本人には到底信じられないもののはずということ。この本の73ページを要約した、アメリカ資本主義の象徴数字と言える。
『2006年のように、ゴールドマン・サックスというアメリカの証券会社がトップクラスの従業員50人に、最低2,000万ドルのボーナスを払ったというニュースがロンドンに伝われば、それはシティ(ロンドン金融街)のボーナスを押し上げる効果があったのである』 
 これだけの強食がいれば、無数の弱肉が世界に生まれる理屈である。2006年とは、08年のリーマンショックを当ブログでも予測していた史上最大のバブル弾け、サブプライム住宅組込証券が頂点に達していたウォール街絶頂の時だった。この結果は、失った家から借金まみれの上に放り出された無数の人々の群であった。しかもこの動きはアメリカのみに留まらず、イタリア、スペイン、ポルトガル等々にも、そこの失業者の大群発生にも波及していくのである。こんな所業を放置しておいて、どうして世界の景気が良くなる時も来るなんぞと言えるのだろうか。

 さて、これから3回に分けて、この本の出来る限り忠実な要約をしていきたい。
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中日新聞紙面批評(2)  文科系

2018年10月10日 12時20分37秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 9月24日の同じ題名のエントリーに付けたコメントをご笑覧に供することにした。掲載順に載せる。デフォルメされ、強調して書いているが、これは問題を分かりやすくするため。以下の批判を持ちながらも、この新聞への僕の実際の評価は結構高い。毎日新聞とか、次は朝日新聞とかを取っていた時期も長かったのだから。以下の転載に当たって、補足修正した部分もある。


『 スポーツ哲学が弱い (文科系)2018-10-06 11:01:21
 本日6日「スポーツ哲学が弱い日本」というエントリーを書いた。このエントリーの岡田武史や古田敦也の表現を使えば、アマチュアリズム体育と「芸能のようなプロスポーツ」しかない日本と言い換えても良いだろう。新聞も同じように見える。文化・芸術としてのスポーツ、国民皆スポーツ、生涯スポーツの観点がない。

 文化、芸術を鑑賞するというだけの観点は、芸能を観ているようなもの。それを見せる人は興行主だ。新聞社がやっているテレビでも、芸能としての野球の興行主という方針、自覚が大部分なのだろう。相撲のようにやる人が僕らの学生時代などに比べてずっと少なくなっているスポーツはやがては廃れるのに、やる人がこれよりもずっと多いスポーツが全く軽視されている。国民皆スポーツ、生涯スポーツという公共性に欠ける。』

『 アスリートは早死にするが・・・ (文科系)2018-10-07 11:45:22
 スポーツ鑑賞の視点ではなく、やるスポーツ、国民皆スポーツ、生涯スポーツという観点から一言。
 標記の言葉、知識は、循環器などの医者の間では既に常識になっている言葉。
 特に、無酸素運動専門のような人が、活性酸素対策を教えられていないようなケースで、この言葉が当てはまるのではないか。僕のジムにも多くいる、走らないで筋肉を鍛えようというだけのウエートトレーニング専門の方々がこれに当たるだろう。脂肪が剥がせないから、太い筋肉も鋭角的には見えず、若いのにはっきり言ってただのデブである。10キロ程度走れるようになるのはそんなに難しいことではないのに、方法が分からないから諦めているように見える。
 相撲取りは流石に筋肉(と脂肪)の塊、ただのデブでは到底ないのだが、引退後対策をきちんとしている人がどれだけいるのか。だからこそ、相撲取りはみんな早死にとは、誰でも知っていることである。
 と、こんなスポーツをこの現在あるがままで若い人に勧めるのは罪だとさえ、僕は言いたい。今時にタバコを教えているようなものではないか、とさえ。国民皆スポーツ、生涯スポーツの時代なのだから、特にそう言いたい。

 例えば、マスコミが大相撲記事を載せる時、相撲の勧進元のような興行的観点ではなく、上のような「公共的観点」をも書いて欲しいものだ。
 そしてもう一言、生涯スポーツという公共的観点から言えば、相撲人口とサッカー人口とを公平に見ながら、それらの記事配分を考えて欲しいものだ。

 他の事だが、僕は日本芸能の家元制度が大嫌いである。尺八吹きの名取りの友人が、こんなことを言われていた。「師匠の第一の高弟である」と自負するお方だが、「師匠が死んだらあの2世を「我が師」と呼ぶのかナー!?」と。
「和楽器の大元締めは能楽師。大変な権力である」。
 いずれもぜんぜん芸術の世界らしくない、嫌な行事、所作、状態ばかりを連想させるものだ。
 日本の芸能マスコミはこんな点をどう考えているのだろうか? 何の信念、哲学もないように思える』

『スポーツマスコミの地方性 (文科系)2018-10-09 03:52:12
 中日新聞を読んでいると、「スポーツの地方性」なるものをいつも考えざるを得なくなる。野球はドラゴンズで、サッカーはグランパスの記事しかないと言って良いから。このファンが圧倒的に多い事は分かるが、それも関わって中日新聞がこれを後援しているからだという側面があると考えた。つまり、「投資している分、その元金も取らなきゃ」という「共存共栄」の感じがする? が、これは自社利益というだけのこと、公共的観点ではない。愛知県記事4面、國際記事1面とちょっとというのと同じ考え方だ。

 さて、ドラゴンズやグランパス応援じゃないサッカーそのもの好きには、全く面白くないスポーツ面だ。そもそもドラゴンズの勝ち負けが全ての新聞になっている。野球好きだけでスポーツ好きは切り捨て、それもドラゴンズ好きだけで野球好きは切り捨てということになってはいないか。そもそもこれは、失礼である。

 ちなみに、こんな視点で五輪の記事はどう書くのだろう。愛知県出身の、東海地方出身の選手に焦点を当てる?

 以上につき、僕にはこんな感じさえする。 
 相撲には、「西○○。××県出身」って、野球にはないよね。「3番長島。千葉県出身!」なんてね。それと同じ事を新聞がやってるんじゃないか。相撲のこれは、各藩があった徳川時代の名残なのではないか。 

 まとめとして、国民皆スポーツとか、生涯スポーツとかの観点が皆無だから、こんな事になっているのではないか?』

『事ほど左様に・・・ (文科系)2018-10-09 04:46:45
 以上書いたように、こんなに旧態依然な哲学、編集方針では、新聞は斜陽になるはずだ。

 斜陽になれば、重視していない部分の金を削るだろう。「地方性には金をさくから、国際性は倹約する」とか、「古典芸能や相撲、ドラグラは変わらぬ体制で・・・」とやっているから「文化、スポーツをやる人、やる記者」等新分野が軽視されているのではないか。これではじり貧だと思うがどうだろう。相撲、能楽のような狭い趣味とか、宗教の古いお説教趣味も持った年寄りだけの新聞。ネットに負けるはずだ。

 僕と同じ千種区に住んで家庭を持っている、二人の子どもも新聞は取っていない。こんなに新聞を隅々まで読む僕の子らなのに。ただし40代初めの彼らは、ネット検索は凄くやっている。』

コメント (8)
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