goo blog サービス終了のお知らせ 

九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

米中関係、老碩学の予言   文科系

2018年10月05日 06時49分59秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 米中経済・関税問題は、単なる経済問題では到底済まなくなる。ということを2011年に予言していたあるイギリス人老碩学の言葉を紹介する。若くして東大に江戸時代の教育制度を学びに来て以来日英を行き来してきたような、政経版ドナルド・キーンのようなお方だ。
 以下も去年11月にここにエントリーしたもの。ロナルド・ドーア著書への言及はこのブログに多いが、こうすればバックナンバーが読める。ブログ右上の検索ランに彼の名前を入れて、その右を「当ブログ内で」として、天眼鏡印をクリックして検索をかける。すると、ブログ本欄が全て彼のことを書いたエントリーに替わるから、好きなものをお読み願えるということ。よろしく。


【 東アジア諸国に脱アメリカ徴候  文科系

2017年11月15日 | 国際政治・時事問題(国連・紛争など)

 東アジアサミットなど一連の首脳会議で、アメリカの力、信用が急激に衰退していると示された。北朝鮮問題、中国の南シナ海領有権問題、一帯一路開発問題など、現下ほとんどの東アジアをめぐる重要問題において、以下のように。

 北朝鮮問題では、「国連の制裁枠内でよろしい。それ以上のことは不要」という中ロの方向が支持された。「独自で、どこまでも制裁強化を」という日米の方向は浮いてしまったということで、安倍首相の「圧力を最大限まで強め、向こうから話したいという状況に追い込む」という演説も虚しく響いた。ましてや、「北を完全破壊する」と語ったトランプの言葉は、アメリカ軍部にさえ支持されていないと判明した。加えて、最大当事者の一方である韓国政府が以下のような態度を改めて表明したのでは、日米の振り上げた拳も一体どこへ向かうのやらということ。韓国首脳はこんなことを述べたのである。
①米韓安保は、これを軍事同盟には発展させない。
②北への軍事行動は、起こさないし、起こさせない。

 さて、今にも北との戦争が始まるかのように吹き回った日本のマスコミは、何と無責任な連中かと今は思わずにはいられないのである。

 次いで、南シナ海問題。これについてトランプは、ベトナム、フィリピンに対してちょっと口を利いたらしいが、ほとんど脈のある反応を得られなかったようだ。要は「当事者2国で解決します」という、中国の立場と同じものしか返ってこなかったのである。直接の当事者がそう語るのだから「公海」問題も困難な事態が起こるだろうとも言えなかったということだ。

 なお、もう一つの中国一帯一路開発問題でも、アメリカは「参加要望」のようなことを演じたらしい。これに絡んだ中国主導のアジア・インフラ開発銀行とともに、日本の面目丸つぶれということだろう。日本が総裁を務めるアジア開発銀行の将来も、中国の大陸陸海横断開発への参加も、弾き飛ばされたままということになっていくのだろうか。

 物経済の長期不振から、隠密裏のような金融グローバリゼーションに活路を求めてきたような日米。結果として、アジア通貨危機、ロシア通貨危機、南米通貨危機、リーマンショックなどなど数々の金融搾取を働いてきたものだが、その陰で世界にどれだけ不審感を植え付けて来たことだろう。その揚げ句が、嘘の理由で始まったイラク戦争、アラブの春の内乱と混乱、公然たるシリア内乱工作、今度は「北の脅威」では、もうどの国も付いては来ないと、そんな世界情勢到来と観る。

 こんなある老碩学の文章を改めて、再掲してみたい。

『 ドーア本あとがき、「米中関係」で「挑発」 文科系 2016年10月08日

 今紹介している、中公新書、ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(2012年6月第五版)のあとがきほとんどを抜粋してみたい。これを読めば、この本が日本の民主主義信奉者にとっていかに大切な書であるかが分かるというもの。

『「序文に代えて」で書いたように、一九四五年は正に、「終止符を打って再出発」の時期だった。人類同士が7000万人を殺した戦争に対する反省はそれくらい深かった。
 将来、金融化経済の不合理さ、不公平さに対して反省する時期は来るだろうか。同じく7000万人を殺さないで。歴史の教訓があるとすれば、「不可逆的に見える傾向でも、永遠に続くことはない」、であるし「大きな戦争がなければ大きな社会変化もない」である。
 そう考えると、どうしても世界の軍事力、外交力のバランスという現実にぶつかる。本書で描いた日本経済のアングロ・サクソン化は、米国が西太平洋における軍事的覇権国家であり、日本と安全保障条約を結んでそこに基地を持ち、その基地を移設しようとする内閣(たとえば鳩山内閣)を倒すくらいの力がある、という事情と密接な関係がある。
 詳しく論じる余地はなかったが、三、四〇年も経てば、西太平洋における覇権国家は中国になっているだろう。2010年、北朝鮮が韓国の延坪島を砲撃した。世界的な非難が広がる中、アメリカは黄海での韓国との合同軍事演習に航空母艦ジョージ・ワシントンを派遣した。この空母の航入を、中国は一時激しく拒否した。後で認めることになるのだが、この事件は長い冷戦の始まりにすぎないだろう。米ソの冷戦は半世紀近く続いた。熱戦にならず、何千万人もの犠牲者を出さずに終わったのは、ゴルバチョフが東中欧における米国の覇権を認め、「負けた」と手を上げたからだ。
 今度は半世紀も要さないだろうが、中国が勝ちそうだ。なぜそう思うかと言えば、次の条件を勘案しているからだ。
 ○ 今後の米中の相対的経済成長力
 ○ 政治的課税力ー国庫歳入の成長力
 ○ 国威発揚の意思の強さー軍事予算拡大の用意
 ○ 人的資源・・・・・・・・

 西太平洋における覇権の交代はほとんど必然的だと思うが、それについての大問題が三つ。
①アメリカにゴルバチョフがいるか、である。それとも、何千万人もの死者が出そうな実際の衝突、つまり戦争の勝ち負けに決済が委ねられるだろうか。
・・・・・・・・・
③60年もの間、日本を行ったり来たりし、日本人の友達が多い私にとって大変関心が高い問題だが、土壇場になっても、日本は依然として米国に密着しているのか。独立国家として、米中が何千万人を殺しかねない衝突に突き進まないよう、有効に立ち回れるのかどうか。

 「新書」の目的が、挑発的な問いかけで読者を考えさせることだとしたら、挑発はこのくらいで十分だろう。このあたりで筆を置いていいと思う。』

 これまで2度にわたってここに紹介し、後は3度目が残っているこの本によれば、「アメリカではこうだ」という理屈の下に、日本が米国共々経済から外交、軍事にいたるまでいかに危ない橋を渡って行きつつあるか。そのことが、日本経済最新変化の解明を通じてとてもよく分かる本だとつくづく考え込まされている。
 なおこの著者は、「ロンドン大学LSE」から、そこのフェローの資格を得ているイギリス人。かつ、若いころの東大留学時代(江戸時代の教育制度を学びに来た)からの日本オッカケでもあって、日本文学者ドナルド・キーンのマクロ経済版のようなお方だ。本書を書き上げたころは85歳と推定されてなお、この「日本語」健筆。本書中には、60年前の日本にこんな生き生きとした「論壇」があったとして、こんな下りもあった。
「一方に、「岩波文化人」(私の親しい友人であった丸山真男や加藤周一や、まだ珍しく元気であった鶴見俊輔をはじめとして)、他方に、彼らを「進歩的文化人」と野次って、その愚かさを攻撃する「保守派」の福田恒存や江藤淳など、その間の論争を懐かしく思い出す』(P109)」』


 日米の国家累積赤字は、それぞれのGDPに対して2倍と4倍。これらの国が自他国民向けにその国家財政で出来ることはもう知れている。対するに、中国の対外収支は伸びるばかり。対外互恵関係、いわゆる「ウインウイン関係」も、好む好まぬにかかわらず中国の余裕が大きい。株などで儲け逃げていくばかりの日米にどこの国が寄って来るのかと、どんどんなっていくことだろう。トランプのやっていくことは、物経済は保護主義で、金融は規制撤廃を迫ると、そんな自分勝手、得手勝手ばかりになっていく。】
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評「近現代日本史と歴史学」①   文科系

2018年10月03日 07時48分27秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 ちょっと久しぶりの書評だが、中公新書のこの本の著者は成田龍一氏、日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授で、「専攻・歴史学、近現代日本史」とあった。
 この本の最大の特徴は、本の題名が示す通りで、激しいネット議論が最も多い近現代日本史を通じて歴史学という学問自身を改めて根本から考えてみようという点にある。何よりも初めに、そのことを概論した「はじめに」と「序章 近現代日本史の三つのパラダイム」を要約してみよう。

 歴史とは先ず何よりも「無数の出来事の束」である。その中から何かを選んでものを語っている事自体にすでにその出来事などの「選択」、「解釈」、「意味づけ」などの作業が含まれている。ある解釈に基づいて通史、時代、事項などを叙述したものが「歴史像」であって、歴史学とはこういう歴史像にしていく作業なのである。
 という事自身が、「歴史とは事実の説明にすぎぬ」とだけ考えているやのネトウヨ諸君にはもう解説が必要だろう。
 明治維新一つとっても、そのなかの例えば開国一つを採ってみても、これらを説明していくのに不可欠な重要な出来事一つずつを採ってみても、まず、当時の「無数の出来事の束」の中からこれらを重要として選び出した選択・解釈やその基準があるということだ。そういう解釈や基準は、日本史全体を動かしてきた要因などにも関わる過去の歴史学(者)らの諸学説などを踏まえれば踏まえるほど、精緻なもの、学問として水準の高いものになってくる。歴史を解釈する方法論が豊かになるほど、歴史の叙述が豊かで、精緻なものになるという事だ。 

 ところで、この解釈という事がまた、変わっていく。重大な新資料が出てくると換わるのは当然としても、解釈者自身らの時代も移り変わるところから歴史事実の束に臨む「問題意識」自身が変わるからである。近現代史における解釈変化の一例として、こんなことを著者はあげる。
 明治維新の基点である近代日本の始まりをどこに観るか自身が、変わったと。1950年代までの基点は1840年代の天保の改革の失政だったと観られていて、1960年にはペリー来航(1853年)がその基点に替わったというのである。歴史学会自身いおいて、そのように通説が変わったと。

 さて、近現代日本の通史を見ていく見方、解釈法、思考の枠組みについて作者は、科学史の用語を借りてパラダイムと呼ぶ。そして、大戦後の日本近現代史学会には、2回のパラダイム変化が見られたと論を進める。つまり、日本近現代史を通した解釈について、戦後三つの解釈枠組みがあったと。もちろん、前の解釈枠組みを踏まえて後の解釈枠組みが、地層が重なるように生まれてきたわけだがと条件を付けて。この三つとは、こういうことになる。
 第一が「社会経済史」ベースのパラダイム。第二が「民衆史」ベース、第三が「社会史」ベースだったと。第一ベースは既に、戦前の30年代からあったもので、第二は1960年ごろに始まり、第三が始まったのは1980年ごろだとも述べられてあった。
 ちなみに、日本史教科書のパラダイムは、第一期をベースにして、第二期の成果も取り入れている程度のものだという説明もあった。


 さて、以上を踏まえた上でこの本の全体はこう進んでいく。日本近現代史の各章名に当たるような重要事項、時期それぞれがこの三つのパラダイム変化によってどのように解釈変更されてきたかと。
 先ず、明治維新には、開国、倒幕、維新政権と、三つの章が当てられる。以降は「自由民権運動」、「大日本帝国論」、「日清・日露戦争」、「大正デモクラシー」、「アジア・太平洋戦争」、「戦後社会論」と、全9章が続く。この9項目それぞれにおいて、三つのパラダイム時代でどこがどう解釈改変されてきたかと説明されていくわけである。

 次回には、第9章「アジア・太平洋戦争」の3パラダイムによる解釈変化だけをご紹介してみる。このブログ13年間でも最も激しく議論されてきた生々しいテーマでもあるし。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中日新聞紙面への紙面批評   文科系

2018年09月24日 04時19分38秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 いつか標記のエントリーを書いてみたいと、目論んできた。新聞はやはり公器という性格があり、読者がそう思って信頼しているという点もあるからだ。ただし、純粋な公器などは、政治的中立がありえないように存在しないと、これは世界の常識だろう。もっとも、NHKも含めた昨今日本のテレビとか一部大新聞のように安倍政権べったりの姿勢が目立ちすぎては、公共放送とか公器などとはとうてい言えないと考える。民法などはすでに、スポンサーの意向を体現している電通などの威力から、政治的中立などはかなぐり捨てているはずだ。マスコミにも、経営、経済的基盤問題がついて回り、金を持っている団体に買われていたり、その政治的意向を忖度するようになっていたりという事だろう。

 さて、感想、評価の観点について一言。公器の要件であるいわゆる公正を、普遍人間的観点ということで意識している。ただし、文化面、地方記事面などはこの点の理解がとても難しい。文化には趣味性が関わるし、地方新聞には地方性も大事だろうからだ。等々と述べてくると大変面倒くさい事になってくるのだが、今回はまー手始めに、公正を頭に置いた上で日頃強く感じて来た事を羅列するに留める。


・地方記事が4面と多すぎて、国際記事が少なすぎる。後者は1面と「総合面」の一部が当てられるだけだ。よって国際記事は、いわゆるアクセス報道、それも地域も内容も偏った「お定まり」がほとんどで、調査報道が少なく、政経、文化などすべてがグローバルになっている時代に甚だしく遅れている。僕は、ホームステーなども含めて世界20を越える国を訪ねた事があるが、これから世界に出て行きたいという若者には、この新聞は先ずとうてい役には立たない。国際的教養、視野、思考力などと縁遠い情報の質量ということだ。

・文化面がまた、古すぎると思う。スポーツは野球面ばかりで、例えば今や野球と同じようにやる人も人気も多いサッカー記事は野球の4分の1も無いのではないか。やる人の多さでは圧倒的に差がある(場所中の)相撲に比べてさえ、サッカーの扱いは小さなものだ。

・サッカーもそうだが、登山とかランニングとか、生涯を通じてやる人が多い分野を何故もっと重視しないのだろう。ここでも「観るスポーツ」という「文化消費者の観点」が主で、「やるスポーツ」の観点が少ないような気がするのである。これは、国民皆スポーツ、生涯スポーツなどなどという公共的観点にも甚だしく欠けているということではないか。

・宗教や芸能記事も仏教、歌舞伎、能楽など、日本の伝統を踏まえているやの古くさい記事を一体誰が読んでいるのか。そしてここでも、文化の消費という観点が主で、「やる人」つまり文化の生活化の観点がとても弱いと思う。「古くさい趣味を持った古くさい文化消費記者の飯の種、つまり住み処」と皮肉りたくもなる。

・これはだめ押しだが、スポーツも芸術ももはや観る時代ではなく、やる時代という観点がもっと必要なのではないか。ということでいえば、専門家とかプロとか、競技スポーツを中心に鑑賞する立場から扱うやり方は公器としてはなはだ大変不十分というべきだ。まるで興業主の立場の記事であると述べたら言い過ぎになるだろうか。言い換えれば「中日新聞主催または後援」が文化記事編集の表面に出過ぎている? 「地方スポーツ結果報告」などが細々と二面も出てくるときがあるのは、そういうことの結果とも思われる。
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初のトランプ本、内容紹介   文科系

2018年09月07日 11時39分32秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 本日もう一つの別記事もそうだが、アメリカ大統領ドナルド・トランプの勝手気まま、理不尽が、世界を大騒ぎさせている。唯一肯定的関心を示している朝鮮対策でさえ、「ノーベル賞狙い」と、僕は観てきたほどだ。そういう彼流のポピュリズム選挙対策ということなのだが、とにかくこれだけは言える。彼の動向が見えていなければ、日本の政治経済の目の前の先行きさえ分からないと。
 アメリカでベストセラーになった最初のトランプ本「炎と怒り」をこの4月にここで内容紹介した。4月8~16日の間に6回連載で。その最終回分を、ここに改めて再掲したい。興味のあられる方は、右欄外の「バックナンバー、年月」クリックから入って、4月の連載記事をお読み願えれば嬉しい。



【 トランプという人間(12)「炎と怒り」の総集編⑥  文科系  2018年04月18日 | 書評・番組・映画・演劇・美術展・講演など

 今回を、この本の内容紹介最終回とする。以下は、この書評第4回目「この本の輪郭」とも重複する部分もあるが、要するに粗筋、概要、結論ということだ。

①大統領としてのトランプは、こんな事をやった。
・地球温暖化対策の枠組みから抜けた。
・エルサレムを首都と認定し、シリアを爆撃し(この4月で2回目である)、サウジの皇太子交代(宮廷革命?)にも関わってきたようだ。
・メキシコとの国境に壁を築き、移民に対して厳しい施策を採るようになった。
・ロシア疑惑によって、コミーFBI長官を解任し、モラー特別検察官とも厳しい関係になっている。
・続々と閣僚、政権幹部が辞めていった。

②これらを推し進めたトランプは、こういう人物である。
・知識、思考力がないことについて、いろんな発言が漏れ出ている。「能なしだ」(ティラーソン国務長官)。「間抜けである」(財務長官と首席補佐官)。「はっきりいって馬鹿」(経済担当補佐官)。「うすのろ」(国家安全保障担当補佐官)。
・その代わりに目立ちたがりで、「他人から愛されたい」ということ第1の人柄である。マスコミの威力を信じ、これが大好き人間でもある。
・対人手法は、お世辞か恫喝。格上とか商売相手には前者で、言うことを聞かない者には後者で対する。大金持ちの父親の事業を継いだ後、そういう手法だけで世を渡って来られたということだろう。
・反エスタブリッシュメントという看板は嘘で、マスコミと高位の軍人、有名会社CEOが大好きである。よって、閣僚にもそういう人々がどんどん入ってきた。

③本人に思考らしい思考も、判断力もないわけだから、政権を支えていたのは次の3者である。スティーブ・バノン他ボストンティーパーティーなど超右翼のネット人間。共和党中央のごく一部。そして娘イヴァンカ夫妻(夫の名前と併せて、ジャーバンカと作者は呼んでいる)である。トランプへの影響力という意味でのこの3者の力関係は、30代と若いジャーバンカにどんどん傾いて行き、前2者の顔、バノンもプリーバス首席補佐官も1年も経たないうちに辞めていった。つまり、トランプ政権とは、「アットホーム」政権、家族第一政権と言える。なお、二人の息子もロシア疑惑に関わる場面があり、アメリカではこれも話題になっている。

④よって、期せずして棚から落ちてきて、何の準備もないままに発足した政権の今までは、言わば支離滅裂。選挙中から「アメリカファースト、外には手を広げない」という右翼ナショナリズムが戦略枠組みだったのだが、エルサレム首都宣言によってアラブの蜂の巣をつつくし、発足3か月でシリア爆撃も敢行した。ロシア疑惑でコミーFBI長官を解任して、大変な顰蹙も買っている。閣僚幹部はどんどん辞めていく。「馬鹿をさせないために側にいる」位置が嫌になるいう書き方である。

⑤こうして、この政権の今後は4年持つまいというもの。ロシア疑惑が大統領弾劾につながるか、「職務能力喪失大統領」として憲法修正25条によって排除されるか、やっとこさ4年任期満了かの3分の1ずつの可能性ありと、バノンは観ている。

 なお、何度も言うようにこの本の執筆視点は、バノンの視点と言える。全22章の内4つの題名に彼の名がある上に、プロローグとエピローグとがそれぞれ「エイルズとバノン」、「バノンとトランプ」となっているし、そもそも内容的に「バノンの視点」である。ちなみにこのバノンは今、次期の大統領選挙に共和党から出馬しようという意向とも書いてあった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日米外交、一つの転換点・・・(2)   文科系

2018年09月02日 00時14分51秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 安倍内閣が自ら進んで中国と初めての首脳会談をやろうなどとこの国に急に近づき始めたのは、このままトランプ・アメリカについて行くだけでは日本経済はどうしようもなくなると認めたということ。つまり、「2%目標」も、GDPの2倍を優に超える国家累積赤字も、若者にまともな職場を作って少子化を防ぐ道も、これら何もかもに何の目処も立っていないと認めたからに他ならない。つまり、従来の自らの政策が全て破綻したと認めたということ。こんな事態は、民主党政権発足時に小沢幹事長が大代表団を率いて中国に渡ったあの時のことを先見の明ありと認めたも同然なのである。こういう安倍の誤りをずっと以前に予告していたような書物が存在していて、これを紹介した旧稿の2回目である。言わば、日本の「失われた20年」を解明した書とも言える。



【 日米外交、一つの転換点・・・(2)   文科系 2015年04月05日 | Weblog

(2)冷戦後の「米最大の脅威」日本経済力に対して

 このことについて孫崎は以下のような象徴的例などを挙げていく。
 一つは、ニューヨークのロックフェラーセンタービルが89年に三菱地所に買収されたこと。そして、コロンビア・ピクチャーズがソニーに買収されたこと。当時のコロンビアは米国文化の華である映画会社において、ロックフェラーセンターと同様に名門中の名門であった。また米国産業の中心である自動車と鉄工業も日本に追い抜かれていたのだと、孫崎は解説を加えていく。

 併せて、孫崎のこの書にはこんな1991年のある世論調査結果が記載されている。シカゴ外交評議会の「米国にとっての死活的脅威は何か」という以下四項目の選択調査である。「日本の経済力」、「中国の大国化」、「ソ連の軍事力」、「欧州の経済力」。この四つの順位が、一般人では多い方からこの通りで、60,40,33,30%となっているが、指導者層はちょっと違って、こうである。63,16,20,42%。つまり指導者層内部では、こんな結論になったと言えるのだ。これからのアメリカ、怖いのは他国の軍事力などではなく、その経済力の方がよほど怖い、と。軍事スパイ機関のはずのCIAが、以降対ソ諜報から日欧経済スパイ機関の様相を強めていく背景はこんな所に求められると、孫崎は述べている。
こうして、冷戦後のアメリカには、こんな意見も多かったという。軍事力を半減したその力を経済に回し日本に対抗せよと。しかしながら、結局は軍事力を維持増強し、世界の覇者となる道を選んだと、孫崎は述べていく。ちなみに、マクナマラ元国防長官のこんな上院予算委員会発言をも紹介している。
『ソ連の脅威が減少したいま、3000億ドルの国防予算は半分に減らせる。この資金は経済の再構築に回せる』


 さて、軍事力維持強化、世界の覇権の道を選んだとすると、経済的脅威・日本にはどう対していったのか。アメリカの片棒を担がせ、そこに金も使わせることによって日本経済を発展させないようにするという道なのである。併せて、世界経済に対しては、マネーゲーム収益第1と現になっていった。日本企業の株主になるなどの道である。
 「ならず者国家」と呼ばれたイラク、イラン、北朝鮮などと戦うべく、日本が応分の負担をせよということが第1で、マネーゲームでもいろんな日米共闘をしていくということだ。前者の例がこれ、91年に始まった湾岸戦争で日本が130億ドル負担してもなお「あまりにも遅すぎ、少なすぎ。人も血も、出せ」というようなものだ。この道は次いで、イラク戦争への協力、参戦へと繋がっていく。マネーゲームでは、世界に次々と通貨危機を起こした。94年メキシコ、97年アジア、98年ロシア、99ブラジル、01年トルコとアルゼンチンなどである。

 この後の20年、日本が先進国では唯一名目経済成長率がゼロとなった原因がここにあったのかと、僕などは改めて振り返っていた。

(続く)】


 まーこういうわけで、安倍が誇っているのは、マスコミを使ったこんな誤魔化しばかり。
①不安定労働者だけが劇的に増えた、「失業率の劇的改善」
②まともな職がどんどん減って内需がどんどん減っているからこそ、公約の物価2%もどんどんどんどん先延ばしした末に、もはや諦めたというような情けなさ。年金基金や日銀などで大量株買いを進めただけの「長期上向き経済」って、一体何なんだ?
③中国や韓国、BRICS諸国に馬鹿にされるだけの「ドナルド・シンゾウ」屈服外交。その証拠こそ、他ならぬこれら。安倍の北への強硬姿勢とは裏腹に、トランプの首領様接近によって安倍のハシゴが外されてしまったこと。また、アメリカの対中接近外交が日本の頭越しに進められたことも。
④トランプにどんどん兵器を買わされる「軍事予算の毎年記録更新」という、「国際社会への積極貢献」!



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日米外交、一つの転換点・・・ 文科系

2018年09月01日 16時37分38秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 アメリカ・トランプの保護主義は、国際法、慣行を無視した利己主義極まるもの。世界経済、その世界総需要収縮などどうでも良いというような、昔だったら戦争が起こる乱暴狼藉である。
 それに慌てた安倍政権も流石に、中国、BRICSを無視できなくなったようだ。アベとしては初めて、日本国家の政権としても7年ぶりだかの首脳会談目指して、懸命な求愛下交渉を始めた。こうなることは、もう初めから分かっていたことである。GDPの4倍を超える国家累積赤字を抱えて困っている国に頼り、ここに着いていくだけでは碌なことはないと。なにせ、こんな国家大赤字を抱えていても、年60兆円だかの軍事費だけは減らさないで来たアメリカだ。最大の圧力団体・産軍複合体の威力によるもので、こんな国に日本が着いていっても、もはや高価な兵器を買わされるだけのこと、自動車の輸出を維持する程度では到底割に合わなくなるばかりだ。この先いずれ、アメリカの戦争のために日本の若者が死ぬことになる。

 さて、こういう今を一種見通していたというように、アベの対米政策に反旗を翻していたやの骨のある元外務官僚が居る。孫崎享である。その書を紹介した旧稿を3回にわたって再掲したい。今こそ耳を傾けるべき著作の紹介である。


【 日米外交、一つの転換点・・・ 文科系  2015年04月02日 | 国際政治・時事問題(国連・紛争など)

はじめに

 今、日米外交が一つの転換点に遭遇していると思う。それを示したのがこれ、15年末開設を目指したアジア・インフラ・開発銀行が世界中で脚光を浴びているのである。日米最大の同朋国だった英国苦肉の参加決定以降、初代参加国に名乗りを上げる雪崩現象が世界中で湧き起こっている。18日には英独仏伊が加わって27ヶ国だったものが、1日の中日新聞では、こう報道された。
『創立メンバー・参加表明国が31日の申請期限までに46ヶ国に上った』

 同じ日米同朋の韓国やオーストラリアは既に加盟したし、G7のカナダまでが加わる見込みと伝えられた。アメリカは隣国カナダに対して起死回生の制止・懐柔工作を暗躍これ努めていることだろう。世界主要国では、日米だけが乗り遅れたという形になった。中国はこういう日米をも歓迎しているのだから、日米不参加には意地のようなものしか感じられない。世界銀行とアジア開発銀行それぞれの歴代総裁国として、中国の発言権拡大を拒んできた者という意地でもあるのだろう。アジア通貨危機とその後始末などでこの二つが嫌われ尽くしたから、亜インフラ銀行への雪崩現象が起こっているのであるから、今の転換点が極めて深刻な物だと示されているのである。
 
 国境問題で中国と揉めているフィリピンやベトナムも参加したが、これは日本の右の方々にとっては不快この上ない出来事になるはずだ。「国境? 領土? そんなことより今の失業者をどうするのか?」。けっして安定的労働者とは言えないはずの日本のネトウヨ諸君こそむしろ、ここから学ぶべきなのである。
 ちなみに、英国の参加決定でも、こんな激論があったという。「日米関係にひびが入る」と猛反対したのが英国外務省。対して「国民がどうやってくっていくのか」と反論した財務省に、キャメロン首相が同意したのだった。

 今我々は、世界が音を立てて変わっていくその転換点に立っているのだと思う。
 スペイン、オランダ、イギリス、米国と、歴史上の世界新興経済大国が遅かれ早かれ国際政治の強大国にもなったというのは、歴史の法則。戦後政治の次の転換点が意外に速いのではないかという観点から、一つの考察を試みたい。戦後世界政治にもう一つ大転換点があったのは、つい25年前。それを振り返ることによって国際政治の近い将来を正しく観測していく一つの資料を提供しようという意図である。

(1)日米は冷戦終結をどう迎えたか

 冷戦終結と東欧崩壊。今からわずか25年前1990年前後のこれは国際政治における100年に一度の大事件だったと言える。この時の日米は肩を並べて世界で頭抜けた経済大国だったから、それぞれが互いを意識しあって、この転換点をどう迎えるかで大議論になった。結果は、まさに大議論を行ったアメリカの決定に日本が従属し直したのであるが、以来25年間、日本住宅バブル破裂、リーマンショックなども挟んで、日米の経済的没落、中国の台頭が続いた。このことは、世界周知の事実である。

 この冷戦終結後に、アメリカはどんな議論をして、日本をどう従属させ直したか。このブログでも紹介した好著を種本にして、この時の議論をご紹介したい。13年1月3~7日の5回にわたった当ブログ拙稿の孫崎享著「戦後史の正体」第6章の要約紹介である。まず、この著者のご紹介。

【43年生まれで外務省に入省し、ウズベキスタンやイランの大使を歴任し、国際情報局長から、最後は防衛大学教授を務めていた。日本最高レベルの国際情報掌握者であって、かつ冷戦直後の93~96年にウズベキ大使を務めていたとなれば、冷戦後のアメリカ、その恥部などを最もよく知っている人物と言えるだろう。そういう人物が退職後の晩年に近くなって反政権・反米と言える著作を書いたとなれば、これは一読の価値ありというものである。】

【 孫崎はこの章の書き出し近くで、こんな文章を引用している。後のアメリカ統合参謀本部議長コリン・パウエルが、議長就任の前年1988年春にソ連のゴルバチョフから打ち明けられた話なのである。
『1988年春、ゴルバチョフは私に「将来私は冷戦を終わらせるつもりだ。あなたは新しい敵を探さなければならない」と述べた。「信じられない。しかし彼は本気だ」私は口にこそ出さなかったがこう思ったものである(中略)
 米軍がこれまで維持してきた膨大な兵士や兵器は不要になります。ソ連を仮想敵国として作られてきた軍事戦略も意味のないものになります】

【こうした状況のなかで米国が考えるべきことは次のふたつです。ひとつは「ソ連が崩壊したあとも、われわれは強大な軍事力を維持する必要があるだろうか。もし維持しようとした場合、国民の支持が得られるだろうか」という問題。もうひとつは「日本の経済力にどうやって対抗するか」という問題】

続く (2)はこういう内容です「冷戦終結、アメリカは「最大の脅威・日本」にどう対処したか」)】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今読んでいる本は面白いのばかり   文科系

2018年08月24日 11時23分11秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 ここにも良く書評を書いてきて、その書評というのも詳しい内容紹介を何回にも分けてやってきたが、今日は今同時進行で読んでいる何冊かの本のざっとした紹介をしようと思い立った。いずれも優れた興味深い物ばかりが偶然重なった時期のように思えるからだ。
 最初に、前置きとして、僕の本の選び方について。結局は書店で現物を見ながら買う場合がほとんどだが、新聞や週刊誌などの書評欄から店頭で探す場合が多い。たくさん買うので、今は新書版がほとんどである。
 これらの読み方は、おおむねこんなふうだ。①ざっと目次を見る。②そこの主要点を、前書き、後書きなどと共に読み、執筆の問題意識と結論という輪郭をつかむ。③そこから、その本の価値を推し量り、すぐ精読してここにほぼ全編を内容紹介したいもの、ちょっと先に回してもきちんと読みたい物、今ざっと読み飛ばして終わりにする物などに分ける。なお、買ったけれどほとんど読まないという本は僕の場合ない。既に店頭でざっと目を通して買うからだろう。
 さて、まず、以下の紹介本自身の順番だが僕が買い入れた時の古い順に紹介する。上の方の古い本は、上で言うところの「ちょっと先に回してもきちんと読みたい」一通りは読んだものになる。それぞれの紹介内容は、出版社と書名、著者名、印刷(発行ではない。第5刷○月○日とかの・・・)年月日、そして概要紹介というもの。概要紹介はその著作の問題意識程度になるだろう。

岩波新書「古代国家はいつ成立したか」。都出比呂志大阪大学名誉教授(考古学)。14年11月5日
 「弥生社会をどう見るか」「卑弥呼」から始まって、「巨大古墳と古墳の終焉」「律令国家」と続いて、題名の結論で終わる。文献史学に比べて考古学の方がよりリアルな事実の探求というように感ずるとは、以前に述べた通りである。

②中公新書「近現代日本史と歴史学 書き替えられてきた過去」。成田龍一日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。12年3月20日
 戦後日本では、日本近現代史の流れのつかみ方について、三つの時期があったこと、つまり2回解釈転換があったと述べて、その内容がまず明かされている。1960年ほどまでの社会経済史ベースの時代から、「民衆」史ベースの時代へ。次いでそこからさらに80年頃に起こった社会史ベースの時代へという変換であると。その上で、明治維新、大日本帝国、アジア・太平洋戦争などなど歴史の重要項目について、三つの時期それぞれでどう解釈変更されたかと、描かれていく。壮大かつ野心的な志と内容と感じたところだ。

中公新書「日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実」。吉田裕一橋大学院社会学研究科教授。17年12月25日
 書名に言う「現実」の中身は、こういうこと。餓死者、餓死以前の栄養失調からの戦病死兵士が圧倒的に多かったと。そして制空権を握られてからの海没者など、戦争末期の死者が特に多かったこと。もう一年早く終わっていたら死なずにすんだ人がどれだけいたかなどと思って読んだものだ。これらが、可能な限り詳しい数字と共に述べられている。

ちくま新書「日本の転機 米中の狭間でどう生き残るか」。ロナルド・ドーア、ロンドン大学名誉教授・同志社大学名誉文化博士(日本経済、日本社会構造)。12年11月10日
 副題の通りの内容である。つまり、米中冷戦が既に始まっているのだが、「では、日本はどうしよう?」と。中国の欠点を挙げ、今にも崩壊するというような日本マスコミほとんどの「アクセス報道」(下記⑤参照)論調とはかなり違う描き方だから、驚くことも多かった。トランプ政権になってからさらに進んだ世界慣行制度無視によるアメリカの権威失墜は、それだけアメリカの困窮ぶりの帰結なのでもあって、世界史を10~20年単位で見た大家のみに可能な貴重な著作と思う。

⑤集英社新書「権力と新聞の大問題」。望月衣塑子東京新聞社会部記者、マーティン・ファクラー前ニューヨーク・タイムス東京支局長。18年6月20日
 管官房長官記者会見で厳しい質問を浴びせ続けて来たことで名をはせた女性記者を、日本マスメディアの根本的欠陥に通じた同業米記者が励ます内容と言って良い。マスコミ報道には、報道対象関係者の言葉などをそのまま伝える「アクセス報道」と、事件を詳細に調べて記者の見解なども入れる調査報道とがあるが、日本は前者ばかりだから政治家らとも密着しやすく、政権忖度から批判が少なすぎると描かれてあった。

⑥角川新書「日本型組織の病を考える」。村木厚子元厚生労働事務次官。18年8月10日
 言わずと知れた冤罪事件の主。取り調べの可視化など一定の検察改革にも繋がった著者の体験を通じて表題のこと、改革方向などを説いた物である。

⑦集英社新書「スノーデン 監視大国日本を語る」。エドワード・スノーデン元米シニア情報局員、国谷裕子キャスター、ジョセフ・ケナタッチ国連人権理事会特別報告者他。18年8月22日
 この興味深い著者らの取り合わせに即引かれた本だが、内容は、現代世界の民主主義の生死に関わってくるほどに大きな問題、解決方向を語っている。スノーデンの運命はどうなるのだろうと憂慮していたが、この大悪と戦っている団体、人々がこのように存在するのだと、勇気づけられたものだ。

 他に、③の著者、吉田裕の「昭和天皇の終戦史」(岩波新書)も読んでいるが、目配りの広い、天皇に厳しい内容になっていると読んだ。吉田裕は戦後の著名な近現代史家、藤原彰の弟子のようだが、僕が愛読してきた歴史学者である。


 なお、上記太字の人物、著作は、このブログの中に既に一部書評などが存在することを示している。その出し方はこうする。右欄外最上部にある「記事を書く」の右にある「検索」空欄に氏名(が該当エントリーに最も上手く行き着ける)を入れて、さらに右のウェブ欄をクリックして「このブログ内で」に替えて、右の天眼鏡印をクリックして検索をかける。すると、エントリー本欄が、その語の当ブログ内関係エントリーに変わりますから、お好きな物をお読み願えます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

狂気のアメリカ政治(9)金融栄えて民滅ぶ③ 文科系 

2018年08月04日 06時49分54秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 老碩学の著作内容紹介第3回目である。もう一回続くが、今日はその3回目。この人物、紹介してきたようにイギリスで経済学を学び、日本の江戸時代教育(制度)を学ぶために若くして東京大学に留学して以来の日本通のイギリス人。日本経済が米英のそれのようになり切って欲しくないという切望から、日本語でこの本を書いている。よろしくお願いいたします。

【 ある書評② 社会、政治、教育も「金融化」 文科系  2016年10月01日 | 書評・番組・映画・演劇・美術展・講演など

 ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月初版)を要約している。その第二部は、金融化が社会、政治、教育、そして学者たちをどう変えたかという内容。これがまた4節に分けられていて、各表題はこうだ。①社会を変える金融化、②金融化の普遍性、必然性?(疑問符が付いている事に注意 文科系)、③学者の反省と開き直り、④「危機を無駄にするな」(括弧が付いている事に注意 文科系)。

 第1節では、格差、不安の増大、最優秀人材が金融にだけ行く弊害、人間関係の歪みの四つに分けて論じられる。
・「格差」では、06年のゴールドマン・トレイダーら50人のボーナスが、一人最低17億円だったという例を28日のここで紹介した。こういう強食の背後には、無数の弱肉がいると解説を付けて。(この点については、28日拙稿を参照願いたい)
・「不安の増大」では、こんな例が良かろう。日本の国民年金掛け金未納者が38%にのぼること。日本で新たに導入された確定拠出年金が、10年3月末の110万人調査で63%が元本割れとなっている発表された。これらの人々の老後はどうなるのだろうか?
・人材の金融集中では、2010年8月の日経新聞広告を上げている。
『野村、「外資流」報酬で新卒40人採用へ 競争率16倍 専門職で実績連動 11年春、初任給54万円』
 マスメディアのライターからも、大学人やフリーライターとかジャーナリストらがどんどん減って、金融アナリストが急増している。
・人間関係の歪みでは、情報の非対称性(情報量に大差がある2者ということ)を利用して起こる諸結果から、「人をみたら泥棒と思え」と言う世の移り変わりが説かれている。

「金融化の普遍性と必然性?」の要は、金融に特化する先進国に不当な世界的優位性を与えているということである。そこから、西欧がアメリカを追いかけ、今日本がつづき始めた、と。ただし、主要国の家計に占める株と証券との割合は05年でこうなっている。アメリカ46・6%の6・7%、ドイツ23・7%の9・7%、フランス28・0%の1・4%に対して日本15・0%の4・0%である。
 この程度でもう100年に一度のリーマンが起こって莫大な公金を注ぎ込まざるを得なかったとあっては、これで儲けるしかないアメリカがいくら頑張っていても金融立国はもう駄目だという文脈と言える。上記4国の証券%合計は21・8%となるが、1980年のこれは合計34・9%となっていた。4国で割れば、この25年で8・7%から5・5%へと家計における証券保有率は大幅に低減したという事になる。ただこれは家計に占める率であって、世界から金融業者に掻き集められた金はカジノばかりに膨大に投入されているということである。

「学者の反省と開き直り」は省略させて頂く。作者自身も嘲笑的になりそうになる筆を押さえつつ書いているようだし。

「金融危機を無駄にするな」に括弧が付いているのは、掛け声だけという意味である。アメリカの妨害でちっとも進まないからだ。
 リーマンショックが起こって、「100年に1度の危機」と叫ばれた08年秋のころはアメリカも大人しかったようで、金融安定への不協和音はゼロだったとのこと(ただ、この「危機」の長期的根本的意味が一般には3割も理解できていたかどうか、僕はそう思う。)ところが、国際機構をきちんとして罰則を入れるようなものは全くできなかった。決まった事は、G7よりもG20サミットが重視され始めて、保護主義を排し、経済刺激策を取ろうという程度だった。IMFとこれによる規制との強化とについて、新興国と西欧とがかなり主張して端緒についたはずだったが、その後はほとんど何も進まなかった。
 ここで作者は、世界政府、国際制度作りの歴史などの話を起こすことになる。特定分野の国際協力機関は20世紀初めの国際連盟やILO設立よりも前に12もできていたと述べて、「万国郵便連合」などの例を挙げる。
 同じ理屈を語って日本人に大変興味深いのは、日本の戦国時代統一の例が語られている下りだろう。
『日本が16世紀の終わりに一つの国になったのは、信長、秀吉、家康の武力による統合と、幕府という統治制度の意識的な創出が決定的だった』(P132)
 アジア通貨危機やギリシャ危機は、大国金融が中小国から金を奪い取る金融戦争、通貨戦争の時代を示している。そんな金融力戦争はもう止めるべく、戦国時代の戦争を止めさせた徳川幕府のように、金融戦争に世界的規制を掛けるべきだという理屈を語っているのである。IMF(国際通貨基金)のイニシアティブ強化以外に道はないということである。

 金融の国際制度とこれによる執行力ある万国金融規制についてさらに、前大戦中から準備されたケインズの国際通貨、バンコール構想も解説される。が、これはドル中心にしようとのアメリカの終戦直後の実績と強力との前に脆くも崩れ去ったということだ。ドルが基軸通貨になったいきさつ説明なのである。
 以降アメリカは自国生産量より4~5%多く消費でき、日本や中国はその分消費できない国になったということである。それぞれ膨らんだドルを米国に投資する事になってしまった。その意味では、中国銀行総裁、周小川が09年に「ケインズ案に帰るべし、新機軸通貨、本物の国際通貨の創設を!」と叫び始めた意味は大きい。中国は今や8000億ドルの米国債を抱え、不安で仕方ないのであろう(この8000億は現在では1兆2500億ほどになっている。文科系)。中国のこの不安は同時に、アメリカにとっても大変な不安になる。「もし中国が米国債を大量に売り始めたら。国家、家計とも大赤字の借金大国の『半基軸通貨』ドルは大暴落していくのではないか」と。周小川中国銀行総裁が「本物の国際通貨の創設を!」と叫ぶのは、そんな背景もあるのである。
 なお、これは私見の言わば感想だが、アメリカが中東重視から西太平洋重視へと世界戦略を大転換させたのは、以上の背景があると観ている。中国に絶えず圧力を掛けていなければ気が休まらないのだろう。】
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

狂気のアメリカ政治(8)金融栄えて民滅ぶ② 文科系  

2018年08月03日 10時12分50秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 今書いているような国の経済の金融化現象が、アメリカの物経済をすっかりダメにしたという側面は「アメリカ式経営の重大欠陥」として、日本でもすでに有名な事実。また、これを国際的に深化発展、強要してきたのが今までのアメリカ流新自由主義。ところが、これがリーマンショックですっかり破綻してしまった。アメリカ金融は世界の信用を失ってしまった。そこに登場したのがトランプで、彼は今、こんな事をやっているわけです。金融は相変わらず新自由主義で、ただし物貿易については新たに保護主義を敷かせて頂く、と。といっても、長期的物作り、物作りへの長期投資をダメにしてきたこの国ですから、外国に売れる物はもう兵器しかありません。貿易の保護主義とはこうして、落ち目の経済大国の無法極まる悪あがきというだけのこと。


【 ある書評、第一回 経済の「金融化」現象 文科系 2016年09月24日

 中公新書、ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(2011年10月初版)の要約を3回ほどに分けて行いたい。同書が以下の3部に別れているのに合わせて。「金融化現象とは何か」、「これにより、社会、政治、教育などがどう変わるか」、「各国、国際機関による、これの弊害是正、金融改革の試み」である。今回はその第一部の要約とする。
 ただこの本、非常に難解である。最大の特長が21世紀日本経済(ある過渡期)の最新・最大テーマということなのだが、なんせ、日本語の達人と言っても外国人が書いた日本語。やはりどこか違うと言わざるを得ない。時に省略、時に冗長と、言葉の選択が普通の日本語とは違う。これに研究対象の難しさも加わったこの難物を、順不同、勝手に要約していく。それも、この続き第二回目はいつになるのやらという、お断りをも付して。

 第一部の目次はこうなっている。①金融化ということ、②資本市場の規模拡大、③実体経済の付加価値の配分、④証券文化の勃興、と。

 金融化について、ある人の要約が紹介される。『国際国内経済で、金融業者、企業の役割や、一般人の金融志向が増していく過程』。この「増していく」の中身は、こういうもの。社会の総所得における金融業者の取り分が増えたこと。貯蓄と企業との関係で金融業者の仲介活動が急増したこと。株主資本主義。政府がこの動向を国際競争力強化の観点から促進してきたこと。

 米企業利益のうち金融利益の割合が、1950年代までは9・5%であったものが急増して、02年には41%と示される。その後非金融業の巻き返しがあってやや減少期があったものの、2010年度第一四半期はまた36%まで来たとあった。サブプライムバブルの膨張・破裂なんのそのということだろう。

 次は、こうなった仕組みとして、金融派生商品の膨張のこと。
 著者は先ず、シカゴ豚肉赤味の先物市場投資額を、急増例として示す。初めの投資総額はその豚肉生産総費用にもみたぬものであったが、これが、生産費用とは無関係に爆発的急増を示すことになる。1966年の先物契約数が8000だったものが、2005年に200万を超えるようになったと。そして、これも含んだ金融派生商品全体のその後の急増ぶりがこう説明される。2004年に197兆ドルだった国際決済銀行残高調査による派生商品店頭売り総額が、2007年には516兆ドルになっていると。この期間こそ、08年に弾けることになったサブプライム・バブルの急膨張期なのである。同じ時期の現物経済世界取引総額とのこんな比較もあった。同じ2007年4月の1日平均金融派生商品契約総額が3・2兆ドルだが、これは世界のこの月の1日実体経済貿易総額(320億ドル)の実に100倍であると。

 これほど多額の金融派生商品の売買は、証券化という技術が生み出したものだ。
 証券化の走りは売買可能な社債だが、『住宅ローンや、消費者金融の証券化、様々な方法で負債を束ね「パッケージ」にして、低リスク・高リスクのトラッシュ(薄片)に多様に切り分けて売る証券や・・』というように進化していった。リスクが大きいほど儲かるときの見返りが大きいという形容が付いた例えばサブプライム債券組込み証券(の暴落)こそ、リーマン破綻の原因になった当の「パッケージ」の一つである。
 そんな金融派生商品の典型、別の一つに、これに掛ける保険、クレディット・デフォルト・スワップ(CDS)という代物がある。この性格について、有名な投資家ジョージ・ソロスが「大量破壊兵器」と語っているとして、こう紹介される。
『ゼネラル・モータースなどの倒産を考えよ。その社債の持ち主の多くにとって、GMの再編より、倒産した場合の儲けの方が大きかった。人の生命がかかった保険の持ち主に、同時にその人を打ちのめす免許を持たせるようなものだ』
 まさに「(会社再建よりも)打ちのめした方が儲かる」というCDSの実際が、投資銀行リーマン・ブラザースの倒産でも、見事に示された。倒産時のリーマン社債発行残高は1,559億ドルだったにもかかわらず、その社債へのCDS発行銀行の債務総額は4,000億ドルだったのである。社債を実際に持っている者の保険と言うよりも、単なるギャンブルとしての約束事だけの保険のほうが2・5も大きかったということになる
。約束事だけへの保険ならば、競輪競馬に賭けるようなもので、無限に広がっていく理屈になる。

 こうして、こういうギャンブル市場がどんどん膨張していった。政府も国際競争力強化と銘打って証券文化を大いに奨励した事も預かって。各国年金基金の自由参入、確定拠出年金・・・。これらにともなって、機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった。

「経営者資本主義から投資家資本主義へ」
そういう、大転換英米圏で起こり、日本はこれを後追いしていると語られる。

 この大転換の目に見えた中身は語るまでもないだろう。企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった。
 彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。こうして、米(番犬)経営者の年収は、一般社員の何倍になったか。1980年には20~30倍であったものが、最近では彼の年金掛け金分を含んで475倍平均になっている。その内訳で最も多いのは、年当初の経営者契約の達成に関わるボーナス分である。全米の企業経営者がこうして、番犬ならぬ馬車馬と化したわけだ。

「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・。

(二部、三部に続く。ただし、ぱらぱらと。つまり、それぞれの間がかなり空くと思います) 】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「炎と怒り」から ⑥総集編   文科系

2018年06月25日 02時05分57秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 トランプの理不尽が、世界を騒がせている。唯一関心を示している朝鮮対策でさえ、「ノーベル賞狙い」と、僕は観てきたほどだ。そういう彼流のポピュリズム選挙対策ということなのだが、とにかくこれだけは言える。彼の動向が見えていなければ、日本の政治経済の目の前の先行きさえ分からないと。
 アメリカでベストセラーになった最初のトランプ本「炎と怒り」をこの4月、6月にここで内容紹介した。4月8~16日の間になど6回連載で。 その最終回分を、ここに改めて再掲したい。

【 トランプという人間(12)「炎と怒り」の総集編⑥  文科系  2018年04月18日 | 書評・番組・映画・演劇・美術展・講演など

 今回を、この本の内容紹介最終回とする。以下は、この書評第4回目「この本の輪郭」とも重複する部分もあるが、要するに粗筋、概要、結論ということだ。

①大統領としてのトランプは、こんな事をやった。
・地球温暖化対策の枠組みから抜けた。
・エルサレムを首都と認定し、シリアを爆撃し(この4月で2回目である)、サウジの皇太子交代(宮廷革命?)にも関わってきたようだ。
・メキシコとの国境に壁を築き、移民に対して厳しい施策を採るようになった。
・ロシア疑惑によって、コミーFBI長官を解任し、モラー特別検察官とも厳しい関係になっている。
・続々と閣僚、政権幹部が辞めていった。

②これらを推し進めたトランプは、こういう人物である。
・知識、思考力がないことについて、いろんな発言が漏れ出ている。「能なしだ」(ティラーソン国務長官)。「間抜けである」(財務長官と首席補佐官)。「はっきりいって馬鹿」(経済担当補佐官)。「うすのろ」(国家安全保障担当補佐官)。
・その代わりに目立ちたがりで、「他人から愛されたい」ということ第1の人柄である。マスコミの威力を信じ、これが大好き人間でもある。
・対人手法は、お世辞か恫喝。格上とか商売相手には前者で、言うことを聞かない者には後者で対する。大金持ちの父親の事業を継いだ後、そういう手法だけで世を渡って来られたということだろう。
・反エスタブリッシュメントという看板は嘘で、マスコミと高位の軍人、有名会社CEOが大好きである。よって、閣僚にもそういう人々がどんどん入ってきた。

③本人に思考らしい思考も、判断力もないわけだから、政権を支えていたのは次の3者である。スティーブ・バノン他ボストンティーパーティーなど超右翼のネット人間。共和党中央のごく一部。そして娘イヴァンカ夫妻(夫の名前と併せて、ジャーバンカと作者は呼んでいる)である。トランプへの影響力という意味でのこの3者の力関係は、30代と若いジャーバンカにどんどん傾いて行き、前2者の顔、バノンもプリーバス首席補佐官も1年も経たないうちに辞めていった。つまり、トランプ政権とは、「アットホーム」政権、家族第一政権と言える。なお、二人の息子もロシア疑惑に関わる場面があり、アメリカではこれも話題になっている。

④よって、期せずして棚から落ちてきて、何の準備もないままに発足した政権の今までは、言わば支離滅裂。選挙中から「アメリカファースト、外には手を広げない」という右翼ナショナリズムが戦略枠組みだったのだが、エルサレム首都宣言によってアラブの蜂の巣をつつくし、発足3か月でシリア爆撃も敢行した。ロシア疑惑でコミーFBI長官を解任して、大変な顰蹙も買っている。閣僚幹部はどんどん辞めていく。「馬鹿をさせないために側にいる」位置が嫌になるという書き方である。

⑤こうして、この政権の今後は4年持つまいというもの。ロシア疑惑が大統領弾劾につながるか、「職務能力喪失大統領」として憲法修正25条によって排除されるか、やっとこさ4年任期満了かの3分の1ずつの可能性ありと、バノンは観ている。

 なお、何度も言うようにこの本の執筆視点は、バノンの視点と言える。全22章の内4つの題名に彼の名がある上に、プロローグとエピローグとがそれぞれ「エイルズとバノン」、「バノンとトランプ」となっているし、そもそも内容的に「バノンの視点」である。ちなみにこのバノンは今、次期の大統領選挙に共和党から出馬しようという意向とも書いてあった。


 以上長い連載を読んで頂いた方、有り難うございました。これで、このトランプシリーズは終わります。なお、外信ニュースによるとコミー元FBI長官がトランプに解任されたいきさつなどを書いた本を最近出したそうです。日本語訳を楽しみに待っている所です。 】
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

老後ギター上達法、僕の場合  文科系

2018年06月24日 13時43分26秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 久々に僕のクラシック・ギター人生を振り返ってみたい。振り返る視点は、こういうもの。アマチュア音楽活動において楽しみを増やし、大きくする一つの方法ということである。

①人前で弾ける曲はないという拙い一人習いから、定年退職後の62歳に初めて先生について、15年ほどたった僕は、音だしの基礎習いの後はずっと、好きな曲を選び暗譜主義でやってきた。極端に言えば、1~2小節ごとにくそ暗記して、それをつなげていく。1ページの楽譜を1週間ほどかけた末に全曲暗譜し終えてから、おもむろに弾き込みにかかるというやり方だ。

②その都度とうてい無理な曲にも挑んで通し暗譜・弾き込みをしてきたが、そこで出てくる技術的難点は全部残っているという経過をたどってきた。これは、無理もないのである。習い始めて2年で魔笛やローボスのプレリュード1番を、3年でソルのグランソロなども暗譜群に載せて来たのだから。この暗譜群とはこういうものである。大好きな暗譜維持群目次を作り、それを月に数回りずつ弾いてきたということだ。新たな曲を入れるためにここから落とした曲も多いし、魔笛の変奏曲とか大聖堂、アルハンブラとか、難点が残っていて人前では未だに弾く自信が持てない曲も含まれている、現時点では20数曲である。なお、僕の先生はこの特殊なやり方を全て認めて下さった。

③さて問題は、こういう音楽習得法のどこが良かったか。何よりも先ず、こんなことがある。大好きな曲、弾きたい曲をずっと暗譜し暖めてきた前向きな気持ちから、技術的難点の自覚や克服へのエネルギー、「この曲は、音楽としてこう弾きたい」という改善、気持ちよさの深化などが、もたらされてきた。

④そして今では、こんな喜びも生まれるに至った。人前で弾けなかった暗譜群曲や、暗譜群から落とした曲を復活させて、発表会で弾けるようになること。去年の発表会で弾いたバリオス「郷愁のショーロ」やタレガ「マリーア」がこの復活組に当たり、今年のソルのエチュード作品6の11番(セゴビア編集ソルのエチュード20曲集の第17番)が今までは人前では弾けなかった暗譜群曲に当たる。

⑤さて、こんなやり方だと77歳の僕がまだまだ上達できているのである。その主たる原因は、こう理解してきた。暗譜群のあちこちにある自分の技術的難点などと常に集中的に戦い続けていたという結果になっていること。「どれだけ苦労してもこの悪癖は直そう」としていくつかの基本技術的欠陥修正という結果を出してきたエネルギーもここから生まれたといって良い。たとえば、左手小指が薬指に連動してしまう硬さを苦労して直すことに成功しなかったら、郷愁のショーロもマリーアも、そして17番も、発表会では弾けなかったはずだ。

⑥最後になるが、高齢者のどんな活動でも最後は体力勝負。そして、活動年齢を伸ばしてくれる体力こそ、有酸素運動能力。酸素がよく回る身体は若いのである。ギターやパソコンの3時間ぐらいなんともないというように。ランニングが活動年齢伸ばしにこんなに効力があるとは、骨身にしみて感じてきたことであるが、これは今では世界医学会の常識になっていると言える。その証言がこのブログのいたるところにあるが、一例がこれ。『「よたよたランナー」の手記(222)走る、歩くで活動年齢が伸びる 2018年05月10日』
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「炎と怒り」の今⑤  文科系

2018年06月21日 04時34分41秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 自分の疑惑に大統領強権発動とは、遅れた国の首長がよくやる手口。トランプはすでに、大統領就任前からその選挙そのものへの疑惑を抱えているのである。ロシア疑惑だ。これのもみ消しに使った手口がこの本にはかなり立ち入って描かれている。トランプによる検察や司法への強引過ぎる介入は、従来の政治家の節度を超えたような荒技もあった。なおこの問題における2018年の最近況は、いったん沈静という妙な決着が成立したようだ。大統領選挙結果そのものが不正となっては、アメリカ政治への信頼が根こそぎになるという危惧からだろう。が、こういう不正疑惑は、ブッシュ当選の時にもすでに上がっていたと記憶する。


【 「炎と怒り」の今⑤  文科系 2018年04月13日

 この本のその後や結末に当たる重大な新聞記事二つが昨日載っていたから、その記事と本の内容とを照合してみたい。神が「炎と怒り」を示すような所業が、今尚続いているということである。

 一つは、「米下院議長が引退表明 ライアン氏 中間選挙 出馬せず」。
 これは以前の共和党副大統領候補にもなった人物で48歳とまだ若い。この本によると、こんな立場、人物ということになる。
『2016年春の時点でも、ライアンはなお共和党の候補者指名でトランプに対抗できる位置にあり、このころにはそうできる唯一の人物になっていた』
『だが、ライアン本人はもっとしたたかな計算をしていた。指名はトランプにとらせたうえで、本選で彼に歴史的な敗北を味わわせる。そうなれば当然、ティーパーティー=バノン=ブライトバード(バノンの新聞社)一派は一掃される。その後は誰の目にも明らかなリーダーとして自分が党を主導していく、というシナリオだ』
 こういう、初めはトランプを馬鹿にしていた人物が、当選後はトランプ政権に急接近。法案作りなどにも協力して来た。それが今、引退。トランプと違って非常なやり手だそうだから、素人が共和党を引っかき回したり、大統領府内部の家族支配などの政権内情を知ったりして、もうやる気が失せてしまったのではないか。


 もう一つの記事の見出しは、こうだ。
『特別検察官の解任「米大統領に権限」報道官が見解』
 トランプのロシア疑惑に関わるニュースなのである。大統領選挙中からこれを調べていたコミーFBI長官を、トランプは首にしてしまった。この本に書いてあるその場面をご紹介すると、こうなる。
 この解任は、バノンを初めとして周囲のほとんどが反対したもの。それを押し切って一人で密かに決めて、解任通知書を自分のボディガードにFBI長官室に直接届けさせるという方法が採られた。通知書の最も肝心な部分には、こう書いてあった。
『これにて貴殿は解任、免職とする。本通知は即刻発効する』
 大統領首席補佐官らは、今後のことをすぐにこう考えたのだそうだ。
『「となると、次は特別検察官だ!」五時前にこれから何が起きるかを知らされたプリーバス(首席補佐官)は呆然とし、誰に聞かせるともなくそう言ったという』

 この歴史上なかったような暴挙以降の成り行きは、司法省が特別検察官を任命し、彼にロシア疑惑を捜査させることになる。事実として、後に司法省は、元FBI長官のロバート・モラーを任命したわけだ。

 さて、昨日の新聞記事は、こういうモラー検察官に対して「こうやれば首に出来るんだぞ!」とばかりに、トランプがわざわざ記者会見発表をさせたということなのだ。新聞記事中にはこんな一文があった。
『米CNNテレビは十日、トランプ氏がローゼンスタイン司法副長官の解任を検討していると報じた。トランプ氏はモラー氏を直接解任できないが、副長官を解任し、後任者にモラー氏解任を間接的に指示することは理論的には可能である』

 コミーと言い、モラーに対してと言い、法理念を無視して、その間を擦り抜けるような荒技ばかりが続いている。まさにトランプらしく、こんな所がネット右翼らに人気が高い理由なのだろう。】
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「炎と怒り」から④  文科系

2018年06月20日 12時26分51秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 再度の連載を続ける。

【 「炎と怒り」から④、その「輪郭」  文科系  2018年04月12日

 この500ページ近い本の内容を3回に渡って大急ぎで紹介してきてまだその途中であるが、今日は閑話休題として、この本の最も大きい輪郭、狙いに触れてみたい。そもそも、いくつも賞をもらった著名なジャーナリストが、大統領選挙の泡沫候補時代からトランプに張り付いて200件の聞き取りを経て書いたと言われ、その内容はいわば激しい政争話だ。ついては、この争いの何を取り上げ何を落としたかという著者の立場の客観的概括がなければ、公平な読み方とは言えなくなる。本自身の中身としても「・・・という話だ」「・・・と誰それは述べていた」というある意味無責任な印象批判とも取られかねない表現も多いことだし。

 さて、この輪郭、狙いを僕なりに客観的に推察すればこんな事があると読んだ。
① バノンのサイドの目で書いており、トランプの娘夫婦を批判する内容になっている。この内容なら、バノンの復帰すら形としてはまだ残っているという程度の内容だと読んだ。

② ということはつまり、こういうことだ。米大統領トランプ政治の1年が結局、娘夫婦とその周辺の財界人らによってこう動かされてきたという内容になっている。なお、行方も定まらぬ泡沫候補上がりのトランプ政権内の娘夫婦にどんどん近づいてきた人物には、こんな人々が居る。マスコミ人でFOXテレビのビル・マードック。ゴールドマン・サックスの現役社長だったゲイリー・コーン。彼は、トランプの経済閣僚になった。また、超高齢政治家ヘンリー・キッシンジャーも所々に出てくる。

③ ①②を併せると、こういうことになる。ここに書かれた「全体像」が真実か否か、どれぐらい真実かなどは分からないとも。つまり、当然のことだが、「裁判になっても言い逃れできる程度の内容、書き方」とも言える。と言ってもまた、目撃者以外からは出てこないような具体的すぎる内部エピソード満載のドキュメンタリー、つまり記録作品と言えることもまた確かだろう。

 ちなみに、去年8月にバノンが大統領府を退いた瞬間に、こんな声明も発表されている。
『バノンが首席戦略官および上級顧問を辞任すると、古巣のブライトバート・ニュースは直ちに同年8月18日付でバノンが会長に復帰すると発表した。このときバノンはブルームバーグ・テレビに対して次のように話した。「自分はホワイトハウスを去り、トランプのために、トランプの敵との戦争を始める。その敵はキャピトルヒル(連邦議会)やメディアやアメリカの経済界にいる」。翌19日、トランプ大統領はツイッターに「バノンに感謝したい。彼は不正直なヒラリー・クリントンに対抗して立候補した私の運動に参加してくれた。それは素晴らしいことだった。Thanks S」と投稿した。』
(ウィキペディアから、文科系引用) 】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「炎と怒り」から②  文科系 

2018年06月18日 15時01分23秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 トランプがますます世界史的な物議を醸しているところから、4月のこの連載を前の通りに再現していきたい。典型的なこの物議が「貿易不均衡」に対する保護主義の提唱。レーガン政権に始まった新自由主義経済貿易の世界席巻を謳歌してきた国が、自分が不利になるとその仕組を壊すと言い放つというこの利己主義! 特に物貿易ならぬ金融自由化を世界に迫って、通貨危機、債券の空売りなどで散々暴利をむさぼってきたそのやり方はまだまだそのままという物貿易保護主義なのだから、何の説得力、知性も感じられない一方的なわがままというだけのこと。
 4月の6回連載の内①と⑥を再掲したから、間の②~⑤を続けていく。


【トランプという人間(8)「炎と怒り」から②  文科系 2018年04月10日

 トランプ(大統領府)の内幕を暴露した「炎と怒り」、2回目の紹介である。先回は、「当選が分かった時のトランプの七変化」、「トランプの会議の進み方」、「トランプの性格」の三つを書いたが、今回は以下を紹介したい。「続、トランプの性格」、「就任演説」、「組織図とブレーン3人」。ここまでで、この本の4割ほどの紹介になるはずだ。

「続、トランプの性格」

『バノン(選挙戦中盤以降大統領府に至ってからも、トランプ最高位のブレーンだった人物。大統領府では、主席戦略官、上級顧問)はトランプを、ごく単純な機械にたとえた。スイッチオンのときはお世辞だらけ、オフの時は中傷だらけ。卑屈で歯の浮くようなお世辞があふれるように口から出てくる──何々は最高だった、驚くべきことだ、文句のつけようがない、歴史に残る、等々。一方の中傷は怒りと不満と恨みに満ち、拒絶や疎外を感じさせる。
 これは、トランプ式経営術のコツでもあった。見込みのありそうな顧客候補はとにかく褒めそやす。だが、相手が顧客になる可能性が消えたとたん、屈辱や訴訟を雨のように降らせる。押してもだめなら引いてみよ。バノンはこう思っていた──トランプを簡単にオンにもオフにもできる』(P68)

『ホワイトハウスで、トランプは自分の寝室に閉じこもっていた。・・・・トランプは入居初日に、すでに部屋に備えられた一台に加えて、さらに二台のテレビを注文した。ドアに鍵を付けさせ、緊急時に部屋に入れないと困ると言い張るシークレットサービスと小競り合いを起こしたりもした。・・・スティーブ・バノンと夕方六時半のディナーをともにしない日は、その時間にはもうベッドに寝転がって、チーズバーガー片手に三台のテレビを観ながら何人かの友人に電話をかける。電話は彼にとって、世界とつながる真の接点なのである』(P148)
 なお、上記のような三台のテレビと頻繁な電話がトランプの学習、情報収集手段なのだが、以上以外で彼が本を読むという習慣は皆無だと紹介される。一冊の本さえまともに読み通したことはない人物と書かれていただけでなく、本書の中には、こんな下りさえあった。
『ミスタートランプは、オバマのスピーチなど一度たりとも最後まで聴いたことがないとおっしゃっています』

「就任演説」

 就任式演説内容は、こんな風に描かれている。
これはほとんどバノンが文章化したものである。因みにこの本の著者は、トランプはまともに構成された文章など書けないと観ている。
『これらのメッセージは、トランプの好戦的な”カウンターパンチャー”としての側面には響いたが、もう一方の”愛されたがり”の側面には受け入れがたいものでもあった。トランプに内在するこの二つの衝動を、バノンはうまくコントロールできていると自負していた。前者を強調し、ここで敵をつくることはよそで仲間を増やすことにもつながると説得したのである』
 こういう演説への、ご本人とある有名人物一人との評価を観ておこう。
『このスピーチはあらゆる人の記憶に残るだろう』
『一方、貴賓席にいたジョージ・W・ブッシュは、トランプの就任演説に対して歴史に残るであろうコメントをした。「クソみたいなスピーチだったな」』 

「組織図とブレーン3人」

 従来の政治集団が何もないままに思いもよらず当選したこの大統領陣営には、組織とか、組織を作る人々というのがほとんど欠如している。父から譲られた会社が上手く行っただけのトランプも同じ事だ。そこにあったのは混乱のみだが、その混乱の中から選挙にも貢献した3人の人物が浮かび上がってくる。以下は、そういう様子に関わることだ。
『トランプ率いる組織ほど、軍隊式の組織から遠い存在はそうあるまい。そこには事実上、上下の指揮系統など存在しなかった。あるのは、一人のトップと彼の注意を引こうと奔走するその他全員、という図式のみだ。各人の任務が明確でなく、場当たり的な対処しか行われない。ボスが注目したものに、全員が目を向ける。・・・・大統領執務室はあっという間に、トランプの側近が日々入り乱れる喧噪の場に変わってしまった。大統領のそばに近づける人間がここまで多いのは、歴代政権を見わたしてもトランプ政権くらいだろう。執務室で大統領を交えて会議をしていると、ほぼいつも大勢の側近が周囲をうろつき、何かと割り込んでくる。事実、側近の誰もが、どんな会議にも必ず居合わせようとしていた。彼らははっきりした目的もないのに室内をこそこそと動き回るのがつねだった。バノンはいつも何かしら理由をつけては執務室の隅で書類をチェックしつつ、会議の決定権を握ろうとした。プリーバスはそんなバノンに監視の目を光らせ、クシュナーは他の側近の居場所をつねにチェックする。』
『トランプがジェームズ・マティスやH・R・マクマスター、ジョン・ケリーといった誉れ高い軍人(それぞれ、元海兵隊大将。元陸軍中将。元海兵隊大将。国防長官、安全保障補佐官などになった)にへつらうことの皮肉。そのほんの一端が、そこには表れている。彼らは、基本的な指揮原則をあらゆる面で害するような政権のもとで働く羽目になったのだから』

 なお、上で述べられた政権当初の頭脳、バノン、プリーバス、クシュナーについて、紹介しておこう
 バノンは、超右翼団体の、いわゆるボストンティーパーティーから台頭してきたジャーナリストで、大統領主席戦略官、上級顧問。プリーバスは、共和党全国委員長を経てトランプ当選に貢献し、大統領首席補佐官。この首席補佐官という地位は、内閣総理大臣にも当たるものだ。そして、トランプの娘婿、クシュナーは、大統領上級顧問である。
 なお、このうち、バノンは後に辞任して政権から離れるし、プリーバスに至っては解任されている。この辞任、解任続きというのはこの政権で有名な出来事だが、広報部長などはこの本が出た時点ですでに3回も交代させられている。それぞれ、辞任、辞任、解任ということだ。】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプという人間(7)「炎と怒り」から①   文科系

2018年06月14日 06時59分29秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 今日は、昨日の本紹介の第一回目を再掲する。お望みなら4月13日まで毎日続くこの続きをお読み頂ければ嬉しい。掲載日が判っているエントリーの出し方は、こうする。右欄外の今月分カレンダー下にあるバックナンバーと書いた「年月欄」で、18年4月をクリックする。するとすぐ上の今月分カレンダーがその月のものに替わるから、そのカレンダーの9日をクリックすると、エントリー本欄がその日のエントリーだけに替わるので、お求めの「炎と怒り」第2回目エントリーをお読み願える。よろしく。


【 トランプという人間(7)「炎と怒り」から  文科系 2018年04月08日

 今年1月発刊なのに瞬く間に全米170万というベストセラー「炎と怒り」。それも、この日本語訳が出た2月下旬に既にこの数字! 読み進むうちに、それも当然と、どんどん感慨が深くなって行った。この本を読むと、何よりも、「今のアメリカ」が分かるのである。こういう人物が大統領選挙に勝ってしまったというアメリカの現状が常軌を逸しているというそのことが。そういう内容紹介を、ほぼ抜粋という形で始めていく。泡沫候補の時代からトランプ選挙陣営の取材を許可されていた著者は、何回か全米雑誌賞を取った著名なフリージャーナリスト。そんな彼が経過順に22の題名を付けて描いたこの本の紹介には、エピソード抜き出しというやり方が最も相応しいと考えた。

 さて初めは、既に有名になった大統領当選が分かった時のトランプの様子。
『勝利が確定するまでの一時間あまり、スティーブ・バノンは少なからず愉快な気持ちで、トランプの様子が七変化するのを観察していた。混乱したトランプから呆然としたトランプへ、さらに恐怖にかられたトランプへ。そして最後にもう一度、変化が待ち受けていた。突如としてドナルド・トランプは、自分は合衆国大統領にふさわしい器でその任務を完璧に遂行しうる能力の持ち主だ、と信じるようになったのである』(P43)


 次が、「トランプの会議のやり方」。「初めて出席した時には本当に面食らった」とこの著者に話したのは、ラインス・プリーバス。政治や選挙の素人ばかりが集まったトランプ選挙陣営に選挙終盤期に初めて入ってきた玄人、共和党の全国委員長だ。彼の協力もあって当選後は、大統領首席補佐官になったが、間もなく解任された人物でもある。
『プリーパス自身はトランプに望みはないと思っていたが、それでも万一の保険にトランプを完全には見捨てないことにした。結局は、プリーパスがトランプを見捨てなかったという事実がクリントンとの得票差となって表れたのかもしれない。・・・・それでもなお、トランプ陣営に入っていくプリーバスには不安や当惑があった。実際、トランプとの最初の会合を終えたプリーバスは呆然としていた。異様としかいいようのないひとときだった。トランプはノンストップで何度も何度も同じ話を繰り返していたのだ。
「いいか」トランプの側近がプリーバスに言った。「ミーティングは一時間だけだが、そのうち五四分間は彼の話を聞かされることになる。同じ話を何度も何度もね。だから、君は一つだけ言いたいことを用意しておけばいい。タイミングを見計らってその言葉を投げるんだ」』
(P67)

 さて、今回の最後は、トランプの性格。選挙中からトランプに張り付き、200以上の関係者取材を重ねて来た著者による、言わば「結論部分」に当たる箇所が初めの方にも出てくるのである。
『つまるところ、トランプにだまされまいと注意しながら付き合ってきた友人たちがよく言うように、トランプには良心のやましさという感覚がない。トランプは反逆者であり破壊者であり、無法の世界からルールというルールに軽蔑の眼差しを向けている。トランプの親しい友人でビル・クリントンのよき友でもあった人物によれば、二人は不気味なほど似ている。一つ違うのは、クリントンは表向きを取り繕っていたのに対して、トランプはそうではないことだ。
 トランプとクリントンのアウトローぶりは、二人とも女好きで、そしてもちろん二人ともセクハラの常習犯という烙印を押されている点にはっきりと見て取れる。ワールドクラスの女好き、セクハラ男たちのなかにあっても、この二人ほど躊躇も逡巡もなく大胆な行動に出る者はそうそういない。
 友人の女房を寝取ってこその人生だ、トランプはそううそぶく。・・・
 良心の欠如は、トランプやクリントンに始まったことではない。これまでの大統領たちにもいくらでも当てはまる。だがトランプは、誰が考えても大統領という仕事に必要と思われる能力、神経科学者なら「遂行機能」と呼ぶべき能力が全く欠けているにもかかわらず、この選挙を戦い抜き、究極の勝利を手にしてしまった。トランプをよく知る多くの者が頭を抱えていた。どうにか選挙には勝ったが、トランプの頭では新しい職場での任務に対応できるとはとても思えない。トランプには計画を立案する力もなければ、組織をまとめる力もない。集中力もなければ、頭を切り替えることもできない。当面の目標を達成するために自分の行動を制御するなどという芸当はとても無理だ。どんな基本的なことでも、トランプは原因と結果を結びつけることさえできなかった。』(P51~2) 】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする