海側生活

「今さら」ではなく「今から」

三立てのソバ

2011年11月18日 | 海側生活

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「そば打ち昇段試験で2段を取りました」と、一通のメールが来た。

「ソバ打ち」と言うとメダカの飼育、おやじバンド、土いじり、俳句の会など、団塊世代の五大趣味とも言われて久しいが、現役を最近、退いたN,Aさんが「ソバ打ち」に熱中しているとは知らなかった。      

しかし自分とは違う趣味を持つ人との会話は楽しみだし、またメールに書き添えてあった「打ち立て、茹で立てのソバはやっぱり美味しいですよ。特に日本酒を飲んだ後のソバとソバ湯は最高です」の言葉に引かれた

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彼は奥さんと共に、ソバ打ち道具一式を持参し、ソバ粉は信州の新ソバらしい。自分は酒の肴に旬の魚々の刺身と、ソバ用に生ワサビを用意して待った。
やがてソバ打ちが始まった。顔つきが、今まで仕事の打ち合わせ中でも見せた事がないような真剣さだ。鋭い目つきが指先に集中している。粉を混ぜ始めた頃、仄かにソバの香りが漂って来た。時々奥さんが何やら声を掛けている。自分には意味が分らない。夫婦だけに通じる会話らしい。

彼は高校生時代、小学生の家庭教師をしていた。その時、一人の美少女に出会った。その後、大学へと、さらに社会に出てからも家族共々付き合いは続き、美少女が成人した時に結婚した今の奥さんだ。

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水を加えたら徐々にそば粉が薄い緑色に変わってゆく。練って、揉んで、延ばす。この延ばす作業にも思わず見入ってしまう。丸く延びた一枚のソバを、棒一本で四角に延ばしていく。そして畳み、切る。その時、今日のソバ打ちの出来映えを称えるかの様に、海からの反射の夕陽が包丁に一瞬光った。

友人と共に食した新ソバの挽き立て、打ち立て、茹で立ては、お代わりをしたくなるほど口の中で踊っていた。
機会をつくり近い内にまた彼にソバを打って欲しい。

しかし彼が二段になるまで、ソバばかり食べさせられた家族は迷惑だったに違いない。


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1 コメント

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       新蕎麦を打てば職人顔となり (宮本靖夫)
2011-11-18 14:55:21
       新蕎麦を打てば職人顔となり
職業が顔をつくります。坊さんは坊さんらしく、刑事は刑事の顔をもち、先生は先生らしい顔を持ちます。それらしいことは周りを安心させ、本人もしっくりきています。
時々、職業とかけ離れた風貌に会うと慌てさせられます。蕎麦打ちの顔がどんな顔とは言えませんが、その時
彼はきっと蕎麦職人の顔になっていたと思います。銀行員の顔ではありますまい。顔の見えない顔は最悪ですが、違った顔も困りものです。
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