(ありし日のタロー)
「タロー」と思わず、今でも声を掛けてしまいそうになる。
住まいに通じる海岸通りに面した、ある一軒家の外側の日溜りの中に『タローです』と表札を掲げた犬小屋に、つい眼が向く。
「タロー」は昼間、家の中で過ごすのが嫌いだった。空気が冷たい真冬でも家人にねだって外に出ていた。犬小屋に入り、入口から僅かに差し込む陽に身体を委ねウツラウツラとしていた。家人は時間の経過と共に犬小屋の入口の向きを常に太陽に合わせていた。
ペットと言えば2/22は「ネコの日」だった。
興味本位でWEBを覗いてみると、日本では猫も犬も約900万匹飼われているそうだ。最近、猫の数が犬を逆転したらしい。昨年の国勢調査によれば子供の数は33年連続の減少で1633万人とある。子供の数が減る分だけ猫が新たに飼われているのか。また単身高齢者が急激に増えているらしい。同時に猫も増えている。
猫関連のツアーや商品が人気らしい。神田の書店が猫コーナーを設けたら売り上げが4倍になった。和歌山電鉄の貴志駅で初代駅長を務めた「たま」が大きな人気を集め、貴志川線が全国的に有名になった。猫が多く生息する離島が猫に合うために訪れる人々によって観光地化していると言うニュースも確かに耳にした。関連ビジネスも、今や全国に存在する「猫カフェ」やネコを対象にした保険やペットホテル、ペット葬儀など数限りない。
日本人が猫を愛するのは、現代社会のテンポが速く、殺伐とした人間関係に「猫が人に癒しを与えてくれる存在」、「日本人は忍耐や従属と言う文化の中で生きているため、気ままで自由と言う猫の性格が好まれる」と言う人もいる。
「アベノミクス」ならぬ猫が生み出す経済効果「ネコノミクス」と言う言葉があるらしい。
東京オリンピックの経済効果が3兆円と予測されているが、中国の爆買が3.5兆円、猫が2.3兆円の経済効果と言われていると知った。
好まれているのは可愛いだけではなく、不細工顔、変顔、ふてぶてしい顔つきの「ふてニャン」など、つまり飼う人との相性次第で何でも有りって感じだ。
確かに猫は犬みたいに散歩させなくても良いし、餌代も犬に比べ安い。共働き夫婦でも飼い易い。
「タロー」が逝って3年。
「タロー」は名を呼べば頭をもたげ、いきなり心の中に沁み入ってくるような優しい返事をする犬小屋に住む猫だった。今でもそこを通るたびに『タローです』が置いてあった場所に自然に眼を向けてしまう。
私の周りにも猫好きがけっこういます。猫好きが
集まると、しょうもない話が延々と続きます。そんなときは私は全く別なことを考えることにしています。ちょうど今頃から猫のあのいやらしくも
疎ましい声が聞こえてきます。毎年毎年のことなので、とうとう俳句の季語になってしまいました。恋猫の次に猫の子も春の季語です。私の家では猫は飼いません。くしゃみがでるので。