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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ワガママ気分で聴くギター

2007-10-11 16:06:44 | Weblog

最近、仕事でのテンションが高すぎて、家へ帰るとグッタリモードです。

いろいろ仕入れたネタのDVDやCDも楽しむ気力が無く……。

しかし車の中や仕事場では、鑑賞意欲が抑えられないというワガママ病になっています。

ということで、本日は――

Frivolous Sal / Sal Salvador (Bethlehem)

モダンジャズギターの開祖=チャーリー・クリスチャンは黒人なのに、以降は何故か白人優位というのが、ジャズギター界の七不思議かもしれません。

そこで活躍したひとりが本日の主役、サル・サルヴァドールです。そのスタイルは正確無比なピッキングとストレートな歌心が強い印象を残します。

まあ、正直に言えば、タル・ファーロゥに近いものがありますが、あそこまでの豪快さよりは、逆に端正な様式美を追求した輝きに、私は大きな魅力を感じます。

その楽歴はスタン・ケントン楽団への参加が一番華やかなところですが、リーダー盤もシブイ名作が多く、いずれもジャズ者の心に支えになっているブツばかり♪ これもその中の1枚です。

録音は1955年、メンバーはサル・サルヴァドール(g)、エディ・コスタ(p,vib)、ジョージ・ルーマニス(b)、ジミー・キャンベル(ds) という面々で、なんと前述したタル・ファーロウの共演者が、そのまんま参加してきたような企画が興味深いところ――

A-1 Frivolous Sal
 テンションの高いドラムスのイントロから、ややバロック調の端正なアンサンブルが、瞬間的にモダンジャズに転換するという素晴らしい名曲・名演です。
 作曲は西海岸の名アレンジャーだったビル・ホールマンですから、さもありなん! とにくか間然することのない流麗なギターソロは、スピード感満点に歯切れが素晴らしいジミー・キャンベルのブラシと完全対決しながら、強烈な存在感を示してくれます。
 もちろんエディ・コスタは十八番の低音打楽器奏法のピアノを披露してくれますよ♪
 この1曲にアルバムの全てが凝縮されていると思います。

A-2 Tangerine
 如何にもモダンジャズのスタンダード曲が、絶妙のアレンジを加えて名演化していく過程が楽しいです♪ あぁ、こんなにスピードがついていながら、全く乱れないサル・サルヴァドールのピッキングは驚異的です。
 またエディ・コスタのストレートなピアノはパキパキしていて、気持ちが良いです。

A-3 Cover The Waterfront
 これも有名スタンダードですが、重厚で幽玄なアレンジが効いています。全体にはスローな和み系の演奏になっており、メンバー全員の歌心優先モードが素晴らしい♪
 ベースのジョージ・ルーマニスが大活躍しています。

A-4 You Stepped Out Of A Dream
 一転してハードバップな演奏! スタンダード曲を素材にアップテンポの解釈は極めて爽快です。
 全く淀みないサル・サルヴァドールのギターは、本人十八番のフレーズばかりですから、コピーするには最適かと思われますが、私には不可能です、難しすぎて……。
 終盤のギター~ピアノ~ドラムスのソロチェンジはモダンジャズの醍醐味でしょうね。

A-5 You Could Swing For That
 サル・サルヴァドールのオリジナル曲で、アグレッシブなイントロから、どっかで聞いたようなテーマメロディが楽しい限りです。アップテンポで一糸乱れぬバンドのノリも最高ですねぇ。
 そしてエディ・コスタがお待ちかねの低音打楽器ピアノの真髄を披露! う~ん、これが出ると、失礼ながらタル・ファーロウのバンドみたいになっちゃいますねっ。いや、それでも良いんですが♪

B-1 All The Things You Are
 これまたクラシック調のイントロからスピード感満点のテーマ演奏に入るという、最高の展開がたまりません。曲はモダンジャズでは避けて通れないスタンダードということで、数多い名演の中にあって、このバージョンもその仲間入りでしょう。
 とにかく奔放なサル・サルヴァドールは、珍しく破綻寸前のところまで行っていますし、エディ・コスタは低音打楽器奏法のピアノに加えて、洒落たヴァイブラフォンも駆使して大活躍!
 ジミー・キャンベルのヤケクソ気味のドラムスも良い感じで、このアルバムの中でも屈指の名演になっています。

B-2 Salaman
 このアルバムにアレンジャーとして参画したマニー・アルパムとサル・サルヴァドールが共作した名曲で、そのテーマメロディには、ちょっと昭和歌謡曲の雰囲気がありますから、私は大好き♪
 もちろんアドリブパートでもそれは横溢して止みません。エディ・コスタのヴァイブラフォンにも泣けてきます。あぁ、もうちょいとテンポを落としたら、松尾和子の世界ですよ♪
 ここは各人のアドリブ云々よりも、演奏全体の良いムードを楽しんでしまうのでした。

B-3 Handful Of Star
 美しいスタンダード曲を、さらに磨きをかけていくようなサル・サルヴァドールのギターが素晴らしいです。テーマメロディの歌わせ方なんて、絶品ですよ。
 またエディ・コスタのヴァイブラフォンには緩やかなグルーヴがあって、これまたモダンジャズの楽しみになっています。

B-4 I Love You
 コール・ポーターが書いた有名スタンダードですから、幾多の名演バージョンが残されていますが、こんなにシンプルで印象的なアレンジでの演奏は珍しいのではないでしょうか。
 アドリブパートは安定感優先というか、このセッションの中では普通の出来ですが、凡百の演奏は足元にも及ばない完成度がありますし、バンドアンサンブルは流石! アレンジはベーシストのジョージ・ルーマニスが担当したと言われています。

B-5 I'll Remember April
 オーラスは、これもモダンジャズでは大定番の歌物ですから、ここでのスピード感満点の演奏には安心して身をまかせ、そして痛快という仕上がりです。
 とにかくサル・サルヴァドールのギターが凄すぎます! 若干の乱れがあるピッキングさえも、完全にジャズになっているという恐ろしさ!
 エディ・コスタのヴァイブラフォン以下、共演者も熱演ですから、気持ち良くアルバムを聴き終えることが出来るのでした。

ということで、演奏はいずれも3~4分の短いものですが、内容は濃密で完成度の高さは驚異的です。如何にも白人ジャズらしいスマートでスピード感に満ちたノリは、実に爽快です。

ギターピックを持った指のアップというジャケ写も、自信の表れなんでしょうか。

ギター好きには宝典の1枚ですし、ジャズ者には避けて通れないアルバムだと、今日は断言させて下さいませ。

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ブラックホークの金曜日

2007-10-10 16:56:30 | Weblog

今週は、やっぱり仕事地獄です。明日は日帰り出張、週末にもありそうです……。

正直、やってらんないねぇ、ですよ。

ということで、本日は――

Miles Davis In Person At The Blackhawk Vol.1 (Columbia)

マイルス・デイビスの公式ライブ盤第1号となったアルバムで、「Friday Night」と副題がついています。

内容はもちろんヒットパレードですから、楽しさは保証付き! しかし決して馴れ合いをやっていない演奏は流石の緊張感に満ちています。

録音は1961年4月21日、メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ハンク・モブレー(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という、ハードバップとモードのゴッタ煮演奏は十八番の面々です。

ただし結論から言うと、マイルス・デイビスがハンク・モブレーの演奏を気に入らず、それゆえにアルバム収録にあたっては幾つかのトラックで編集により、アドリブがカットされたという裏話があります。

そして、それによってハンク・モブレーが時代に乗り遅れた存在として逆にクローズアップされるという因縁が出来たのです。

しかし近年発売されたコンプリートボックスを聴けば、ハンク・モブレーの演奏は決してイモではありません。曲によってはマイルス・デイビス以上にグルーヴィなハードバップを聞かせているトラックもあるほどです。

おそらく最初に出たアナログ盤は、もう1枚、翌日の演奏を纏めた「Vol.2 Saturday Night」もあるのですが、収録時間の関係で編集したと理解するのが素直かと思います。

確かにハンク・モブレーがバンド全体のノリに合っていない演奏もあるのですが、それはジミー・コブのクールなドラミングと相性が悪かった所為だと、私は思います。

また編集云々については、マイルス・デイビスさえたっぷり聞かせれば、リスナーは満足という、レコード会社の方針があったのでは? 大手のコロムビアでは、さもありなんと思うのですが……。

A-1 Walkin'
 マイルス・デイビスがハードバップ宣言をした1954年のブレスティッジセッションから、常にステージでは定番となっていた熱いブルースです。
 もちろんここではオリジナルバージョンよりもテンポアップした演奏になっており、クールで熱いジミー・コブのドラムスに煽られたマイルス・デイビスが吹きまくり! 十八番のフレーズばっかりというか、これしか出来ない開き直りが最高です!
 リズム隊では安定感のあるポール・チェンバースと粘っこく絡んでくるウイントン・ケリーも素晴らしく、ついつい音量を上げてしまうほどです。
 そしてハンク・モブレーはグルーヴィに迫ってきますが、徐々に自己のペースを乱していくあたりが、モブレーマニアとしてはヤキモキするところ……。なんとか過激なフレーズを吹こうとしてドツボに落ちていくあたりに、ハンク・モブレーの不幸があると感じます。だいたい6分目あたりを境にして、苦しくなるんですねぇ。
 このあたりはコンプリートボックスに収録された別の日の演奏を聴くと、さらに明らかになるところで、ハンク・モブレー的には、もっと凄いアドリブがちゃんと残されているのです。しかもそこではジミー・コブが熱血主体のドラミングに変えた敲き方をしているのですから……。
 まあ、それはそれとして、ここでの楽しみはウイントン・ケリーの強烈なスイング感に満ちたハードバップピアノでしょう。時として沈黙し、突然に絡んでくる伴奏から、粘りとグイノリのアドリブは凄いの一言! 全く痛快です。 

A-2 Bye, Bye Blackbird
 これまたマイルス・デイビスのヒットパレードに欠かせない演目です。愛らしく楽しいテーマメロディを一抹のユーモアに哀愁を混ぜ込んで変奏していくマイルス・デイビスは、もう最高です。
 また抜群のイントロを作ってしまうリズム隊も流石で、ブラシとステックで抜群のアクセントをつけるジミー・コブが本領発揮! ウイントン・ケリーの強烈なスイング感と歌心の両立も素晴らしく、ポール・チェンバースのブンブンブンも、本当に気持ち良いです。
 演奏全体は徐々にテンポが上がっていく雰囲気なんですが、ハンク・モブレーが和み中心のノリを追求していきますから、このグルーヴィな感覚こそ、素晴らしい宝物だと思います。
 もちろんマイルス・デイビスはミュートで勝負しているのでした。

B-1 All Of You
 これもマイルス・デイビスのミュートの妙技が冴える歌物スタンダード♪
 リズム隊が秀逸なのは言わずもがな、些か抽象的な表現に入り込んでいくマイルス・デイビスを現実世界に?ぎ止める役割も果しています。ウイントン・ケリーが時折入れるファンキーなタッチが、実に良いですねぇ~♪
 またハンク・モブレーのアドリブパートが、オリジナル盤ではカットされています。しかし前述のコンプリート盤で聴いてみると、これが素晴らしすぎる快演でした。これぞ、ハンク・モブレー♪ という温か味が存分に楽しめるんですから、罪深い話です。スバリ、ここはマイルス・デイビスよりも、良いです。

B-2 No Blues
 如何にもマイルス・デイビス的なクールなハードバップですが、ハンク・モブレーのアドリブが、ここでもカットされています。
 そしてマイルス・デイビスが唯我独尊のブルースを存分に聞かせてくれるんですねぇ~♪ ジミー・コブの淡々としたシンバルにズバリと切り込むタムとバスドラのコンビネーションも最高です。
 またウイントン・ケリーが、言う事なしの快演! 粘っこいファンキーさと明快なビアノタッチが完全融合し、う~ん、最高! という瞬間が何度も楽しめるのです。寄り添うポール・チェンバースのベースも、ジャズの楽しさを体現していると思います。
 さらに終盤は、グルーヴィな雰囲気はそのままに、マイルス・デイビスとジミー・コブの遣り取りがあって、これもまた、たまらない瞬間がっ♪
 で、気になるハンク・モブレーのカットされたアドリブパートは、極めてハードバップな楽しさに満ちています。ただしそれゆえに演奏全体が、些か古いフィーリングに逆戻りしているような……。そこではジミー・コブのドラムスが浮いている感じもありますから、これはカットで正解だったのでしょうか……。もしもドラマーがフィリー・ジョーだったら、ここはブルーノート系のノリになっていたんでしょうねぇ。

B-3 Bye, Bye
 所謂バンドテーマの短い演奏で、ポール・チェンバースとウイントン・ケリーがアドリブをやっているうちにお終いというのが、勿体無い! ジミー・コブの合の手ドラミングも楽しいかぎりです。 

B-4 Love, I've Found You
 さて、これは完全にオマケというか、ウイントン・ケリーがソロピアノでスタンダード曲を短く弾いてくれます。まあバンドチェンジの雰囲気をライブ盤特有の編集方針で入れたのでしょうが、ニクイです♪

ということで、観客の拍手や掛声もリアルなライブ盤の傑作です。収録されたのはサンフランシスコの「ブラックホーク」というクラブで、芸能人や芸術家も出入りしていた有名店ですから、レコーディング当夜の雰囲気も良かったのでしょう。

主役のマイルス・デイビスは、これまでも指摘されているように、スタジオレコーディングされた演奏よりも、かなり奔放な雰囲気で自由に吹いている感じです。まあ、アドリブ自体にそれほどバリエーションのある人ではないので、安心感もあるのですが、素晴らしいリズム隊の存在ゆえに輝きが違います。

そのあたりは前述したように、今ではコンプリート盤も出ていますから、そちらでも真相を楽しめますが、巧みに編集されたオリジナルアナログ盤の良さも、捨てがたいと思います。

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楽しきリードタンバリン

2007-10-09 17:58:33 | Weblog

う~ん、いきなり朝から、仕事でバタバタしています。

自分のテンションの高さが恐くなるほどですから、聴くのも、こんなブツを出してしまいました――

Preach Brother ! / Don Wilkerson (Blue Note)

世の中には、ある日突然、とんでもない事が起こりますが、それまで局地的に偏愛されていたこのアルパムの廃盤価格が、突如として青天井になった事件も、そのひとつでしょう。

その原因は1980年代、ロンドンを中心にジャズで踊るというブームが、きっかけでした。そしてクラブのDJ達にヘヴィユースされたのが、このアルバムだと伝えられたのですから、たまりません。

アッという間に、廃盤価格が五倍ほどになったと言われています。

録音は1962年6月18日、メンバーはドン・ウィルカーソン(ts) 以下、ソニー・クラーク(p)、グラント・グリーン(g)、ブッチ・ウォーレン(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、当時のブルーノートでは常連の面々がパックアップしています。

ちなみにリーダーのドン・ウィルソンという人はR&Bの専門職として、モダンジャズ畑ではイマイチ評価されておらず、しかしソニー・クラークとグラント・グリーンという人気者が参加しているので、2人のファンからは大切にされてきた作品でした。

そういうわけですから、我国のジャズ喫茶で置いている店も、それほど多くなかったと思われますし、ジャズマスコミは長らく無視していた1枚です――

A-1 Jeanie Weenie
 いきなり景気の良いバンドアンサンブルのイントロから、強烈なブギウギ調の演奏が始ります。とにかくビリー・ヒギンズのバカノリがたまりませんねぇ♪
 ドン・ウィルカーソンのテナーサックスは黒っぽさ満点のR&Bスタイルで、所謂テキサステナーの醍醐味に溢れていますが、この人は1960年頃まではレイ・チャールズのバンドで看板スタアだったのですから、さもありなんです。当時のヒット曲「I Got A Woman」でのテナーサックスソロは、ドン・ウィルカーソンの代表的なプレイでした。
 その最高のフィーリングを見事に活かしきった熱血のブローには、心底、心シビレます。
 ブギウギピアノのソニー・クラークも珍しいところですが、グラント・グリーンの火傷しそうなギターも凄いです。

A-2 Homesick Blues
 レイジーでR&B感覚に満ち溢れたブルースで、ソニー・クラークが粘っこい絡みで、良い味出しまくりです。リズム隊の3連ノリも、本当にたまりません♪
 しかしドン・ウィルカーソンが必要以上に下品になっていないのは、名門「ブルーノート」の品格ゆえでしょうか。そのあたりが物足りなくもありますが、これが本来のドン・ウィルカーソンなのかもしれません。

A-3 Dem Tambourines
 これこそがロンドンのDJ達を目覚めさせた畢生の名演だと言われています。手拍子とビリー・ヒギンズのズンドコドラミング、さらに誰が叩いたのかビートの効いたリードタンバリン! 摩訶不思議な掛声も良い感じです。
 そしてグラント・グリーンがリードするテーマのディープな味わい♪ ドン・ウィルカーソンの黒いテナーサックスが唸ってから後は、もうコアなファンク地獄です!
 あぁ、こんなにシンプルで執拗なソウルの呻きがあるのでは、暗くて深刻なジャズ喫茶は、およびじゃない! 本当に踊ってみたくなりますねぇ~。

B-1 Camp Meetin'
 おぉ、これまたリードタンバリンが炸裂する烈しいR&B! まるっきりレイ・チャールズのバンドみたいです。叫ぶボーカルと掛声は、誰でせう!
 ドン・ウィルカーソンは強烈なリズム隊に煽られながらも、分かり易いブロースタイルに撤していて、実に爽快です。
 そしてグラント・グリーンの歪んだギターの響きも素敵です。簡単なフレーズしか弾いていないんですが、グッと惹きつけられるんですねぇ~♪

B-2 The Eldorado Shuffle
 これまた正統派R&Bのシャッフルが楽しめる快演です。
 もちろんグラント・グリーンの大活躍はお約束ですが、ドン・ウィルカーソンとの相性の良さも聞き逃せないところでしょう。

B-3 Pigeon Peas
 ようやくここに来て正調ハードバップという雰囲気になっていますが、やはりR&B感覚が濃厚です。しかし4ビートでの真っ当なノリを聴かされると、やはりドン・ウィルカーソンのジャズ的な実力は流石だと痛感させれます。
 またグラント・グリーンが、ちょっと珍しいほど軽妙な味わいのアドリブを披露すれば、ソニー・クラークは本領発揮の粘っこいファンキー節を聞かせてくれるのでした。

ということで、決して正統派のハードバップ作品ではありませんが、こういうジャズもあり! それが当時の黒人音楽界だったと思います。

そのへんをあえてブルーノートが記録したのは、ライバル会社のリバーサイドが、既にドン・ウィルカーソンのリーダー盤を作っていた事と関係あるんでしょうか? そちらはキャノンボール・アダレイがプロデュースしていたはずですが……。

まあ、それはそれとして、ガチガチのモダンジャズに拘らなければ、非常に楽しい作品だと思います。

告白すると私はソニー・クラーク目当てで、1977年頃に入手しましたが、当時でも珍しいとは言われながらも、それほど高値ではありませんでした。それが……。

しかし何であろうとも、人気盤になったことは喜ばしいのです。

ドン・ウィルカーソンは、1960年代中頃から悪いクスリの所為でムショ暮らしとなってリタイアしていますが、残された録音は立派に楽しめるものばかり! このアルバムあたりから、その魅力に触れるのも良いのではないでしょうか。

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デューク・ピアソンは人気者

2007-10-08 17:34:35 | Weblog

ヤフオクで連敗中……。加えて今週は仕事が地獄の予感……。

ですから、聴くのは調子が良いものを選びました――

Hush ! / Duke Pearson (Jazzlien)

デューク・ピアソンは1950年末頃にドナルド・バードのバンドレギュラーとして注目され、さらに1960年代後半にはブルーノートで音楽監督まで務めた名ピアニスト! さらに作編曲家としての評価も高いという隠れた人気者でしょう。

なんといっても、いろいろな面でセンスが抜群♪

ピアニストとしてはトミー・フラナガンの優しい味わいにハービー・ハンコックあたりのファンキーで先鋭的なフィーリングを併せ持った名手として、私は大好きです。

さて、このアルバムは1962年初頭に録音されたというウルトラ級の幻盤で、一時はイギリスでタイトルを変えて発売されていた正統派ハードバップの逸品です。もちろん我国で復刻された時には、大歓迎されましたですね。

メンバーはドナルド・バード(tp)、ジョニー・コールズ(tp)、デューク・ピアソン(p)、ボブ・クランショウ(b)、ウォルター・パーキンス(ds) という魅惑の面々ですが、結論からいうと、2人のトランペッターはアドリブソロの区別が難しいほどです。それは調子がイマイチなんですねぇ……。

しかしそれでも人気があるのは、プログラムの良さと演奏の楽しさゆえでしょう――

A-1 Hush !
 デューク・ピアソンのかつてのボス、ドナルド・バードが書いた死ぬほどカッコ良いゴスペルハードバップです。ウォルター・パーキンスのノーテンキ寸前というドラミングも心地良く、デューク・ピアソンは心地良い合の手の伴奏ですから、最高にグルーヴィ♪
 トランペットのアドリブは最初が多分、ドナルド・バードでしょうか? そこはかとないマイルス・デイビス味があるところから、ジョニー・コールズという気も致しますが……。すると二番手に登場する塩味の強いトランペットがドナルド・バード!? 全く調子が悪く、音の抜けもイマイチなんですねぇ……。
 しかし演奏そのものは、素晴らしく弾んだリズム隊を中心に聴いて、楽しい限りなのでした。
 ちなみにドナルド・バードとデューク・ピアソンが共演したオリジナルの演奏は「ロイヤルフラッシュ(Blue Note)」という名盤に収録されています。

A-2 Child's Play
 これもドナルド・バードが書いた痛快なハードバップ曲なんですが、ここではイントロからテーマにかけて、バロック調のアレンジが凝っています。
 もちろんリズム隊は快調なんですが、ここでも二番手で登場するトランペットが苦しんでいます。いったいダレなんでしょう?
 まあ、それはそれとしてデューク・ピアソンが最高のセンスを発揮していますから、結果オーライと致しましょう。

A-3 Angel Eyes
 マット・デニスが書いた人気スタンダード曲を、デューク・ピアソンはジンワリと黒っぽく演奏してくれます。しかもリズム隊だけの、つまりピアノトリオですからねぇ~♪ ほんとうにたまりません♪
 ヘッドホーンで聴くとわかりますが、ギシギシと軋むような音はなんでしょうか? ピアノに向かう椅子なのか、妙に魅力的な擬音です。

A-4 Smoothie
 これまた調子良すぎるハードバップ曲で、デューク・ピアソンのピアノは優しい味わいを大切にしていますが、躍動的なドラムスが実に良い感じです。
 気になるトランペットソロは、多分、ドナルド・バードでしょうか? ちょっと「らしくない」雰囲気もありますが……。
 またボブ・クランショウのベースソロが、なかなか素晴らしいと思います。

B-1 Sudel
 デューク・ピアソンが書いた人気オリジナル曲で、後年のリーダー盤「スウィート・ハニー・ビー(Blue Note)」でも再演していますが、このバージョンも捨てがたい魅力があります。
 アドリブ先発はドナルド・バードの流麗なトランペット♪ 新感覚のフレーズも入れながら熱演すれば、続くデューク・ピアソンはホーンのリフを潜り抜けながら、独特の味の世界を堪能させてくれます。
 そして続くジョニー・コールズは擬似マイルス・デイビスなんですが、はっきり言ってショボイです……。しかしシャープなリズム隊に助けられ、終盤のアンサンブルに入っていくあたりは、なかなか熱いですねぇ~♪

B-2 Friday's Child
 微妙な「泣き」が入ったスローな名曲で、ハスキーなジョニー・コールズのトランペットが本領発揮! 実に味わい深い名演だと思います。本当に泣いているのか? ジョニー・コールズ!
 デューク・ピアソン以下のリズム隊もツボを押えた伴奏で、アルバム中でも出色の仕上がりではないでしょうか♪

B-3 Out Of This World
 オーラスは再びリズム隊だけの演奏で、素晴らしいピアノトリオの真髄が楽しめます。
 曲は有名スタンダードなんですが、ラテンリズムを取り入れた幻想的なアレンジから、快適な4ビートに移るアドリブパートになると、グルーヴィな雰囲気が横溢します。
 もちろんデューク・ピアソンはファンキーな感覚に加え、持ち前のセンスの良さから巧みなフレーズを作り出し、粘っこく弾むボブ・クランショウのベースやジックリ構えたウォルター・パーキンスのドラムスと共謀して、最高のハードバップを聞かせてくれるのでした。

ということで、実に楽しいアルバムです。惜しむらくは2人のトランペッターがイマイチ実力を発揮していないところでしょうか。しかしホーンのアンサンブルは上手くいっていますし、なによりもリズム隊の充実度が最高♪

ちなみにボブ・クランショウとウォルター・パーキンスは、当時、売出中のリズムコンビとして、MJTなんていうグループを組んでいたほど! それは「モダン・ジャズ・トゥー」の略なんです。

そしてデューク・ピアソンは、決して歴史的な活躍はしていないものの、実は縁の下ではモダンジャズの本流を守り続けた人です。ここには既にプロデューサー的な感覚が表れているように思いますねぇ。

所謂名盤ではないでしょうが、聴くほどに楽しい作品なのでした。

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グラント・グリーンの西部劇

2007-10-07 17:49:25 | Weblog

最近、自分でも愕くほどにモロジャズばっかり聴いています。これは、いったいどうしたことだ!?

ということで、本日も名門「ブルーノート」から、これを――

Goin' West / Grant Green (Blue Note)

グラント・グリーンはブルースとR&Bをベースにした、如何にも黒人らしい感覚がウリのギタリストですから、モダンジャズの大衆路線には待ってましたの人気者!

しかも、それゆえのアルバム製作はテーマがしっかりとしていますから、分かり易くて得した気分になりますね。

さて、この作品はグラント・グリーンがカントリー&ウェスタンに挑戦した趣向で、1962年に録音されたセッションが収められていると言えば、あぁ、やっぱり当時、レイ・チャールズが出した名作アルバム「モダンサウンズ・イン・カントリー&ウェスタン(ABC)」をパクッたのか! と合点がいくはずです。しかも演目が一部、重なっているんですねぇ~♪

ただし発売されたのは、1970年頃だと思われますから、罪深い話です。

メンバーはグラント・グリーン(g)、ハービー・ハンコック(p)、レジー・ワークマン(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、当時のブルーノート・オールスタアズです――

A-1 On Top Of Old Smoky
 初っ端からゴキゲンなジャズロックです♪
 原曲は知らないのですが、演じられているのはニューオリンズ系R&Bの某曲と同じでしょうか? まあ、聴いていて気持ち良ければ全然、OKですね。
 グラント・グリーンは何時もと同じくシャープで骨太のピッキングで迫っていますが、ここではハービー・ハンコックが最高です。弾む伴奏にファンキーなアドリブは、あの名曲・名演「Watermelon Man」と同質のグルーヴがありますから、たまりません♪ ラテン&ロックビートを叩くビリー・ヒギンズのダサダサのカッコ良さも、感度良好です。
 終盤では同じフレーズを執拗に繰り返す、所謂「針飛びフレーズ」を披露するグラント・グリーン! やはりこれが出てこそナンボ! でしょう♪ 全く、たまらんですねっ♪

A-2 I Can't Stop Loving You
 レイ・チャールズが前述のアルバムで取上げ、シングル盤としても大ヒットさせた名曲のジャズバージョン! ここでは、より一層、ゴスペル色が強いスローグルーヴが満喫出来ます。
 まずハービー・ハンコックのイントロと伴奏が素晴らしすぎます♪ グラント・グリーンのテーマメロディの歌わせ方も、辛抱たらまん状態なんですねぇ~♪ まさにブルース&ソウルの味付けが存分に楽しめます。
 地味ながらグサッとくるレジー・ワークマンのベースも印象的です。

A-3 Wagon Wheels
 モダンジャズでは既にソニー・ロリンズ(ts) の名演が残されていますから、グラント・グリーン以下、バンドの面々も大ハッスル! アタックの強いリズム隊の中でも、ビリー・ヒギンズが大技・小技で奮闘しています。
 う~ん、この粘っこい重量級のビートは、ジャズロックとゴスペルロックがゴッタ煮になったような強烈さ! ですからグラント・グリーンも好演ですが、ハービー・ハンコックが、また凄いです。この粘り、このファンキーな醍醐味は、ヤミツキになりますねっ♪

B-1 Red River Valley
 これまた有名曲で、既にジョニー&ハリケーンズによってロックインストの名演が残されていますから、ここでのメンツなら! と大いに期待したのですが……。
 結論から言うと、軽快なノリが楽しい仕上がりで、ちょっと肩すかしでした。
 しかしビリー・ヒギンズのリムショットの楽しさとか、ボサロック調のアレンジには捨てがたい魅力があって、グラント・グリーンのスピード感溢れるフレーズ展開も流石だと思います。
 するとハービー・ハンコックは若干モード風の展開に持っていくんですねぇ~♪ レジー・ワークマンも烈しくツッコミを入れますから、全くニクイです。あぁ、これでソニー・ロリンズが出てきたら! なんて、ありえない妄想にとらわれてしまうのでした。

B-2 Tumbling Tumbleweeds
 オーラスはちょっと知らない曲ですが、演奏の出来はアルバム中で最高だと思います。ダークでファンキーで新主流派! 変則三連ビートとヘヴィな4ビートの交錯がディープな雰囲気を煽ります。
 そしてグラント・グリーンは十八番のフレーズを粘っこく展開させ、針飛びフレーズに加えて、珍しいコード弾きや擬似オクターブ奏法まで駆使しながら、じっくりと山場を作ります。あぁ、これぞ畢生の名アドリブじゃないでしょうか!?
 またハービー・ハンコックが素晴らしいアドリブを演じているバックでは、実に味のある伴奏のギタープレイが楽しめますので、要注意です。
 あぁ、何度聴いても凄いです!

ということで、実は最後の「Tumbling Tumbleweeds」だけでも満足するわけですが、これが一般的な人気盤になっていないのも、ジャズ喫茶の七不思議かもしれません。

まあ、リアルタイムじゃなくて、一種のオクラ入り盤だった所為なんでしょうか……。

ちなみにグラント・グリーンの諸作品中、私が一番最初に買ったアルバムがこれでした。それゆえに、一層の愛着があるんですが、実はハービー・ハンコック目当てだったことを告白しておきます。

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気の合う仲間は良いもんだ♪

2007-10-06 18:20:48 | Weblog

せっかくの休日なのに、野暮用が多くて、ちっとも自分の時間がありませんでした。

それでも古い友人達の集りに、ちょっとだけ顔を出せたのは嬉しかったですねぇ♪

ということで、本日は――

Hank / Hank Mobley (Blue Note)

ハンク・モブレーはハードバツブを代表するテナーサックス奏者で、モダンジャズ全盛期には多くのレコーディングを残していますが、リーダーとしての評価は低いとされています。

それは本人の奥ゆかしい性格云々と解説されていますが、何か仕事をやる現場では、強力なリーダーシップよりも、その場の皆が気持ちをひとつに出来るような、一歩引いた纏め役も必要でしょう。

そしてハンク・モブレーは、まさにそうした人だったと思います。例えばマイルス・デイビスのバンドで些かヘタを打った時期でさえ、自分のリーダーセッションでは水を得た魚のように素晴らしい演奏を残しているのですから!

このアルバムもそんな資質が良い方向に作用した名演集で、メンバーはハンク・モブレー(ts) 以下、ドナルド・バード(tp)、ジョン・ジェンキンス(as)、ボビー・ティモンズ(p)、ウィルバー・ウェア(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、アクの強い面々が勢揃い! もちろん熱血演奏はお約束ながら、非常に纏まった仕上がりになっているのは、ハンク・モブレーの人徳かもしれません。

しかし、ズバリと自分の名前をアルバムタイトルにしたのは、矜持の表れ!?

ちなみに録音は1957年4月21日とされています――

A-1 Fit For A Hanker
 ハンク・モブレーが十八番のリフを繋ぎ合わせて作り出したスピーディなハードバッブ♪ 快適にリズム隊が特に秀逸ですから、ホーン陣も気持ち良くアドリブをスイングさせていきます。
 まずドナルド・バードが流麗なフレーズと淀みない展開を聞かせれば、ジョン・ジェンキンスはチャーリー・バーカー直系のスタイルながら、その音色やフレーズの特徴はジャッキー・マクリーンにそっくりというイキの良さです。
 続くボビー・ティモンズのビアノも硬質なスイング感が強烈ですし、フィリー・ジョーは素晴らしいクッションを生み出しているのです。
 演奏は中盤でグルーヴィなリフが提示され、ウィルバー・ウェアがヘヴィなベースのブレイクを入れた後、満を持して登場するのがハンク・モブレーですから、たまりません♪
 あぁ、独特のタメとモタレのコンビーションから泉のように流れ出る流麗な「モブレー節」の魔力こそ、ハードバップ全盛期の魅了のでしょう。
 ちなみに当時のハンク・モブレーはホレス・シルバー(p) のバンドではドナルド・バードと一緒であり、ジョン・ジェンキンスはニューヨークに出てきたばかりの新鋭、さらにボビー・ティモンズは西海岸から東部に戻った直後という、なかなか意味深な時期でした。またフィリー・ジョーはマイルス・デイビスのバンドレギュラーであり、ウィルバー・ウェアはジャズ・メッセンジャーズやセロニアス・モンク(p) のバンドを行き来していた頃ですが、全員が何らかの繋がりでハンク・モブレーとは顔馴染みという仲間意識が、アルバム全体の雰囲気の良さなんでしょうねぇ、決して馴れ合いでは無く。

A-2 Hi Groove, Low Feed-Back
 これもハンク・モブレーのオリジナルで、典型的なハードバップのカッコ良さに溢れた名曲・名演になっていますが、曲名そのものも、なかなか味があると思います。
 アグレッシブなドラムスとベースのコンビネーションに導かれたテーマからハンク・モブレーがグルーヴィなアドリブに入っていくあたりは、ゾクゾクさせられます。フィリー・ジョーを中心としたリズム隊も実に素晴らしいですねぇ~♪
 そして明朗快活なドナルド・バードと骨太のジョン・ジェンキンス、抑えたファンキー感覚が実に味わい深いボビー・ティモンズと快演が続きます。
 さらに終盤ではウィルバー・ウェアのベースが大活躍! その裏街道的なグルーヴは、フィリー・ジョーのオールドタイミーなクッションとは意外なほどに相性が良く、セッション成功のカギだったのかもしれません。
 
B-1 Easy To Love
 和み系スタンダードをアップテンポのハードバップに仕立て上げた、これまた素晴らしい演奏です!
 まず短いテーマの提示からハンク・モブレーが流麗な歌心に満ちたアドリブに突入! テーマメロディの変奏も巧みに混ぜ込みながら、まろやかな音色で歌いまくりです♪
 待ちきれずにアドリブに入ってしまうドナルド・バードのスピード感も強い印象ですし、ジョン・ジェンキンスの激情節は、決してジャッキー・マクリーンの代打ではない存在感があると思います。
 それとここでもフィリー・ジョーが痛快なドラミングを聞かせてくれます! ボビー・ティモンズも全く油断出来ない雰囲気になっていますし、ウィルバー・ウェアは実に楽しそうなんですねぇ~。
 クライマックスでのフィリー・ジョー対フロント陣の対決は、ハードバップ最良の瞬間だと思います。

B-2 Time After Time
 これまた和み系のスタンダードですが、定石どおりにスローテンポで演じられますから、ホッとします。
 美しいテーマメロディをリードするドナルド・バードは素直で好感が持てますし、刺激的なリズム隊に煽られたジョン・ジェンキンスもシブさを聞かせます。またボビー・ティモンズは後年のジャズメッセンジャーズ時代に多用するリズムパターンを既に使っているんですねぇ
 肝心のハンク・モブレーはラストテーマに繋ぐ最終パートで登場し、そこはかとない歌心の妙を堪能させてくれます。素晴らしいブレイクと音色の魅力♪ この黒くてソフトな感性こそ、ハードバップそのものでしょうね。

B-3 Dance Of The Infidels
 オーラスはバド・パウエルが書いたエキセントリックなビバップ曲を豪快なハードバップにしていますが、その要はフィリー・ジョーの強烈なドラミングです。猥雑な雰囲気が滲むホーンの合奏もたまりません。
 アドリブ先発は熱き心のジョン・ジェンキンスですが、やはりジャッキー・マクリーンとの比較は避けられないところでしょう。個人的には残念ながら……。
 しかしドナルド・バードが異常にハッスルしますからねぇ~♪ フィリー・ジョーのドラムスもゴキゲンなノリですし、ボビー・ティモンズもニクイ小技を出してきます。
 するとハンク・モブレーが、お約束ばかりの快演です。あぁ、これがハードバップです!

ということで、モダンジャズ全盛期の1枚として忘れられない名盤でしょう。特にフィリー・ジョーは全曲で決定的な快演を残していますし、メンバー全員が安定感のあるプレイでソツがありません。

しかし皮肉にもそれが人気盤になれない原因かもしれません。なにしろ当時は、このレベルのセッションが連日のように記録されていましたし、もちろんこれ以上の出来栄えとなった演奏だって、どっさり残されているのですからっ!

正直、やや違和感のあるメンバー構成ゆえに、それが面白いと受け取るか、聞かず嫌いに終わるかという分かれ道のアルバムかもしれません。

しかし結論は、聴かずに死ねるか!

特に大音量で体感すると、たまらないものがありますので、機会があればジャズ喫茶でリクエストするのも一興かと思います。

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森の音楽

2007-10-05 17:08:48 | Weblog

今日は秋晴れ、なんだか腹もへりまくっています。

これから実家に戻りますが、道中には喰いまくりそうですね。

どうなっているでしょう……。

ということで本日は――

Mucique Du Bois / Phil Woods (Muse)

1970年代の一時、フュージョンに走りそうになったとはいえ、フィル・ウッズはチャーリー・パーカー以来の伝統を継承した、極めて本格派のひとりです。

それゆえに、1960年代にはアメリカで仕事を失い、欧州に活路を見出したのも、また事実でした。

しかしそこでの「ヨーロピアン・リズム・マシーン」が大成功! フィル・ウッズはアメリカに錦を飾って作られたのが、このアルバムです。

録音は1974年1月14日、メンバーはフィル・ウッズ(as)、ジャッキー・バイヤード(p)、リチャード・デイビス(b)、アラン・ドウソン(ds) というワンホーン編成ですが、リズム隊は一切の妥協が無い鬼のような連中ですから、個人的には「フィル・ウッズ&リアルファイト・リズム・マシーン」かと思っています――

A-1 Samba Du Bois
 フィル・ウッズが書いた強烈なジャズサンパ!
 というよりも、暗い情念とかリズム的興奮が溢れ出た凄い演奏です。まず初っ端からリチャード・デイビスとフィル・ウッズがデュオで睨み合いですからねぇ。
 そしてリズム隊がラテンビートを拡大解釈した4ビートで烈しく斬り込んできてから後は、猛烈に疾走するアドリブ合戦が始ります。
 フィル・ウッズはエキセントリックなフレーズと豪快なノリを出し惜しみせず、またジャッキー・バイヤードは全く正体不明のツッコミに撤しています。
 しかしそれがモダンジャズとして纏まっているのは、リチャード・デイビスの頑固なベースワークと刺激度の高いアラン・ドウソンのドラミングがあってのことでしょう。
 ついつい音量を上げてしまう演奏です。

A-2 Willow Weep For Me
 ブルース色が強いお馴染みのスタンダード曲を、ここではマイルス・デイビスの「All Blues」から引用したリズムパターンを用いて、粘っこく演奏しています。
 もちろんフィル・ウッズはテーマの解釈からして抜かりなく、所々に正統派のブルースリックを織り交ぜながら、熱い歌心を披露しています。
 またアラン・ドウソンはブラシの粘っこさと鮮やかさなステックが印象的ですし、リチャード・デイビスは通常のウォーキングを捨て、執拗な絡みを聞かせてくれるのですから、たまりません。ベースソロは、ちょっとヤバイほどです。
 そしてジャッキー・バイヤードが、これまた危険極まりないです。というか支離滅裂なところもあるんですが、ドラムスとベースがしっかりと付き添っていますから、ギリギリのところで踏み止まっているんでしょうか……。
 いやはや、それにしてもリチャード・デイビスが凄すぎます!

A-3 Nefertiti
 マイルス・デイビスが黄金のクインテットで残した演奏が決定版とはいえ、それには「らしい」アドリブパートがほとんど無いという、問題曲でした。
 それをここではフィル・ウッズが十八番の思わせぶりを活かすことによって、見事に克服した仕上がりを聞かせています。アルトサックスによる唸りと力みの表現が、嫌味になっていないんですねぇ~♪ アドリブパートもオリジナルのテーマメロディを変奏するという手段に拘っています。
 また抽象的なリズム隊は、ジャッキー・バイヤードが煮詰まった雰囲気ですが、リチャード・デイビスが、またまた驚異的な働きをしているのでした。

B-1 The Last Page
 フィル・ウッズがヨーロピアン・リズム・マシン時代に書いた名曲・名演の再現を狙いつつ、新しい展開に挑んでいますから、好感が持てます。
 それはゆったりと度量の大きなスイング感であり、千変万化のアドリブの妙でもあり、徹頭徹尾、正統派に拘った意気地のようでもあり……。もはや私のような者が戯言を書くことすら許されない境地です。
 う~ん、やっぱりグイノリのフィル・ウッズは魅力満点! 一瞬飛び出すロックビートと高速4ビートが嵐のように交錯してく痛快な演奏! 何回聴いても最高です♪

B-2 Summer Know
 ミッシェル・ルグランが書いた畢生の名曲ですから、フィル・ウッズの情熱的な泣き節が、これでもかと堪能出来ます♪
 スローな展開は自由度が高いリズム隊によって大らかな空間となり、そこでジンワリとインスピレーションを煮詰めていくフィル・ウッズという、お約束が心に染み入ります。

B-3 Airegin
 オーラスは、このアルバムでは一番真っ当な新感覚のハードバッブです。イントロから弾みまくったリズム隊が、まず良い感じ♪ もちろんフィル・ウッズはスピード感満点にテーマメロディを吹奏し、そのまんまの勢いでアドリブに突入していきます。
 それは、チャーリー・パーカー直伝のビバップフレーズの洪水なんですが、独特のウネリとドライブ感が見事ですから、聴いているうちに思いっきり熱くさせられてしまうんですねぇ~♪
 リズム隊も自然体の好演で、ジャッキー・バイヤードはハチャメチャなオチャメ感覚ですし、アラン・ドウソンはシャープでパワフルですが、ちょっとリチャード・デイビスが不満顔のような……。

ということで、出た瞬間から、これはジャズ喫茶の人気盤! 特にB面は耳タコになるほど聴かされましたが、それでも買ってしまったほどの秀作です。

はっきり言えば、当時のジャズ界では既に古くなっていたスタイルなんですが、クロスオーバーやフュージョンの流行に翻弄されていたリアルジャズの世界では、これこそが救世主でした。

さらにアルバムタイトルがフランス語だったのも意味深で、ようやく本国に戻ったフィル・ウッズにも、違和感があった表れなんでしょうか? 一応 Bois = Wood なんですが……。

このアルバム発表後には大手レコード会社のRCAと契約を結び、かなりフュージョン志向の作品を吹き込んでいくことになりますから、これはひとつの区切りというか、ケジメの一発だったと思います。

それゆえの気合が心地良いのでした。

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ローランド・カーク・オールスタアズ

2007-10-04 17:15:32 | Weblog

老人向けのケイタイを借りてみたら、これが使いやすい!

キーボタンが大きいのが、まず良いです。バイク用のグローブをしていても、簡単に使えますねぇ~♪

やたらにメールとかも来ないし、デザインはシンプルだし、思い切って、これに機種変更しようと思ったら、登録がほとんど出来ないらしいので……。

全く帯に短し、なんとやらでした。

ということで、本日は――

Reeds & Deeds / Roland Kirk (Mercury)

ローランド・カークは身体にいろんな障害を持ちながら、それを音楽で克服していった人、と書くのは簡単ですが、並大抵の努力ではなかったでしょう。もちろん音楽的な感性にも優れた才能があったのです。

しかもやっている音楽は、ジャズをベースにしながらも、けっして難しいものではなく、むしろ大衆的です。実際の演奏の場では、ジャケ写からもわかるように、複数の管楽器を一度に鳴らしたり、盲目であることのハンデを逆手にとって観客を驚愕させたりする、ちょっとアザトイところもあるんですが、それはローランド・カークが生み出している音楽そのものを聴けば、驚嘆して納得するしかありません。

ですから、業界にも信奉者が多く、もちろん虜になっているファンも多いという人気者! 一時の中古盤市場では人気最高だったと言われているほどです。

さて、このアルバムはベニー・ゴルソンがアレンジで参画した上昇期の傑作です。メンバーはローランド・カーク(ts,stritch,manzello,fl,siren) 以下、バージル・ジョーンズ(tp)、ハロルド・メイバーン(p)、ウォルター・パーキンス(ds) を中心に、チャールス・グリーンリー(tb)、トム・マッキントッシュ(tb)、リチャード・デイビス(b)、アブラダ・ラフィック(b) が加わったオールスタアズ♪ 録音は1963年2月25&26日とされています――

A-1 Reeds & Deeds (1963年2月26日録音 / arr:Benny Golson)
 ローランド・カークが作り出す複数管同時吹きによるホーンのハーモニーと背後で蠢くリチャード・デイビスのベースで織り成すアンサンブルが、最高にグルーヴィです。
 アクセントを付けるバージル・ジョーンズのトランペットはアドリブパートでも快調で、幾分細い音色とフレーズの妙が楽しく、また大らかなトム・マッキントッシュのトロンボーンにも和みます。
 そしてローランド・カークのフルートが唸り声も含んだ独特の吹奏ですから、たまりません。歌心も申し分なく、極めて正統派でありながら、ユニークな音楽性が良く表れた演奏だと思います。
 ハロルド・メイバーンのビアノもスイングしまくって感度良好♪

A-2 Hey Ro (1963年2月25日録音)
 忙しなく落ち着きの無い演奏ですが、もちろん狙ったものでしょう。バンド全員が必死の有様ですが、ローランド・カークはストリッチというアルトとソプラノの中間みたいな音色を出す楽器で奮闘しています。

A-3 This Is Always (1963年2月26日録音 / arr:Benny Golson)
 一転して雰囲気満点♪ 美メロの有名スタンダードを素材に、ローランド・カークがじっくりとフルートを歌わせます♪ あぁ、この歌心の素晴らしさ! 感情表現の豊かさ! そこには自身の肉声も混ぜ込んだアドリブフレーズの面白さがあります。 
 繊細なリズム隊のスイング感やベニー・ゴルソンのアレンジも冴えていますから、ズバリ、このアルバムの目玉演奏です!

A-4 Song Of The Countrymen (1963年2月26日録音)
 スローで抽象的な演奏ですが、所々に聞いたことがあるようなメロディラインが滲みます。まろやかでダークな音色のテナーサックスは、まさにローランド・カークの真骨頂でしょう。
 そして中盤からは、一気にテンポを上げてグイノリにスイングしていくんですねぇ~♪ もちろん山場では複数管同時吹きの荒業も飛び出しますし、フリージャズっぽいノリや痙攣が止まらない曲芸的な吹奏も、嫌味になっていません。
 そこへ絡んでいくバージル・ジョーンズのトランペットやハロルド・メイバーンのビアノも、自分の役割を心得ているのでしょう。この快適さはクセになりそうです。

B-1 Limbo Boat (1963年2月25日録音)
 ラテンとゴスペルをゴッタ煮にしたテーマメロディとリズムパターンが、不思議な楽しさを醸し出しています。
 ローランド・カークは十八番の痙攣フレーズを出しまくりながら、ハードバップ感覚も大切にしたテナーサックスを聞かせてくれますが、もちろんトランペットやトロンボーンとの掛け合いやアンサンブルも大衆的な楽しさに満ちています。

B-2 Lonesome August Child (1963年2月25日録音)
 まるっきりセロニアス・モンクが書きそうな曲ですが、実はローランド・カークのオリジナル! 煮え切らない悲しみの表現があるようです。
 変態っぽいリズム隊とホーン陣のやりとりは、アドリブパートでクールなものに変質していきますから、やるせなさが残ります。特にローランド・カークがテナーサックスで大名演!

B-3 Land Of Peace (1963年2月25日録音)
 一転して軽快なハードバップで、快適なリズム隊にノセられたチャールズ・グリーンリーが素晴らしいトロンボーンを聞かせれば、バージル・ジョーンズも快演でしょう。
 そしてローランド・カークはテナーサックスで、どうにも止まらないという山本リンダ風のアドリブが、物凄いと思います! お約束の複数管同時吹きもやってくれますし、ハロルド・メイバーンが、これまた最高! ウォルター・パーキンスの調子良すぎるドラムスも、実に良いです。対決するホーンアンサンプルも楽しいですねぇ♪

B-4 Waltz Of The Friend (1963年2月25日録音)
 タイトルどおり、ワルツテンポのハードバップが、リラックスして演奏されていきます。ピリリと辛口のリズム隊も侮れません。
 ローランド・カークは独自に考案したといわれる各種管楽器を駆使してバラエティ色の強いアドリブを聞かせてくれますが、圧巻は口真似トロンボーンみたいなところです。なんと本職のチャールズ・グリーンリーと対決しているんですねぇ~~♪

ということで、実にモダンジャズの楽しさを押えた演奏だと思います。ジャズを聞きこんでいるほど、思わずニヤリとする仕掛けがいっぱい! こういう稚気というか遊び心を真剣にやってしまうのが、ローランド・カークの魅力だと思います。

ジャケ写のグロテスクな雰囲気とは裏腹に、正統派ジャズの面白さが詰まったアルバムです。

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隠れた熱演ジャム

2007-10-03 17:02:20 | Weblog

政治と金、相撲協会の不祥事、高校生ドラフト……。毎日、様々なネタが尽きませんから、マスコミは今日も大忙し!

全く庶民も落ち着きませんね。なによりも仕事がバタついているのが、困りもの……。

そこで本日は――

Wheelin' & Dealin' (Prestige)

ブレスティッジ十八番のジャムセッション盤のひとつで、今日的にはジョン・コルトレーンの参加ゆえに忘れられない1枚でしょう。

ジャズの基本がアドリブである以上、個人芸の競い合いが魅力のひとつですから、様々なメンツが寄り集まって、せ~の! で演奏を始めれば、それだけでひとつの商品が出来てしまうという、些かイージーな製作方針も、その自然体とハプニング性の面白さや危険性が、そのまんまジャズの魅力に結びつくのですから、一概に安易とは決め付けられません。う~ん、深いなぁ……。

そこで重要になるのが、現場の音楽監督とメンバー集めの妙でしょう。

ここではそれがマル・ウォルドロンに任せられていたようです。

で、気になるメンバーは、フランク・ウェス(fl,ts)、ポール・クイニシェット(ts)、ジョン・コルトレーン(ts)、マル・ウォルドロン(p)、ダグ・ワトキンス(b)、アート・テイラー(ds) という、強力リズム隊にミスマッチ寸前のフロント陣が興味津々♪ ちなみに録音は1957年9月20日とされています――

A-1 Things Ain't What They Used Be
 デューク・エリントンが書いたグルーヴィなブルースですから、このメンバーなら、快演はお約束! まずフランク・ウェスの一芸主義というフルートが雰囲気満点にテーマメロディをリードし、リズム隊は粘っこいグルーヴを発散♪ そのまんまの流れで入るアドリブパートも、良い感じです。
 そして続くテナーサックスがポール・クイニシェットで、この人はレスター・ヤング直系のなめらかなスタイリストですから、ここでの思わせぶりなブルース表現は、妙なファンキー感覚があります。
 ところが次に出るジョン・コルトレーンが全く容赦無く、完成間近のシーツ・オブ・サウンドを駆使した音符過多症候群で、通常のブルースフィーリングをブチ壊してくれます。
 う~ん、これは……。と思っていたら、再び登場するのがポール・クイニシェット! フガフガモゴモゴと完全はぐらかしのフレーズを積み重ねてジョン・コルトレーンを翻弄します。しかし、これで参らないのがジョン・コルトレーンの意気地でしょうか、またまたダークな音色で強烈なアドリブを聞かせてくれるのです。
 そしてマル・ウォルドロンが、これまたアブナイです。例の訥弁スタイルから同一の音ばかり鳴らしてしまう、モールス信号のような自己主張! う~ん……。
 ですからラストテーマでフランク・ウェスのフルートが出てくれば、ホッとするのでした。

A-2 Wheelin' (take-2)
 一転して景気の良いハードバップで、フランク・ウェスはテナーサックスに持ち替えていますから、フロント3人による烈しいバトルはお約束!
 まずジョン・コルトレーンがグリグリに吹きまくれば、ポール・クイニシェットが、ちょいと古いブロースタイルでジャズの基本に撤しています。
 するとフランク・ウェスが流麗で歌心優先のテナーサックスを聞かせてくれますから、吃驚です。
 演奏はこの後、コルトレーン~クイニシェット~ウェスの順番でコーラスを詰めていくテナーバトルの世界へ突入ですから、たまりません。三者三様のスタイルの面白さと意地の張り合いは、ジャズの楽しみに満ちていますが、フランク・ウェスが熱くなってタフテナー風のブローに走ったり、ウネウネと迷い道に入っていくジョン・コルトレーンを尻目に、老獪な余裕を聞かせるポール・クイニシェットが貫禄でしょうねぇ♪
 リズム隊の安定感も流石ですが、張り切りすぎて混濁したアドリブを演じるマル・ウォルドロンにも熱くさせられます。フリー寸前!? そんな状況を楽しんでいるようなアート・テイラーとダク・ワトキンス! 実に凄いと思います。熱演ですねぇ~~~♪
 ちなみにこの演奏の take-1 は、やはりジャムセッション盤の「ザ・ディーラーズ」に収録されていますが、そっちもまた熱演ですので、聴きくらべも楽しいと思います。

B-1 Robbin's Nest
 これまたフランク・ウェスのフルートがリードする楽しい演奏で、2本のテナーサックスがハーモニーをつけるテーマのアンサンブルに和んでしまいます。
 アドリブパートもフランク・ウェスが先発で、ややハスキーなフルートの音色と細かいフレーズの積み重ねが素敵ですねぇ。グルーヴィなリズム隊とのコンビネーションも、さり気なく上手いところ♪
 もちろんポール・クイニシェットは、この手の演奏は十八番ですから、繊細な歌心と「泣き」を含んだ音色の妙技が素敵です。ただし後半は、ちょっと無理してい感じも否めないところ……。ちなみに私は、このアルバムはポール・クイニシェットが目当てでしたから、これでも納得しています。
 それとジョン・コルトレーンが、すぐにそれと分かる「節」を完成させています。どこまでもウネウネと続いていくようなフレーズの嵐は、全く唯我独尊の響きで痛快!
 穏やかにスイングしたリズム隊の中で、ひとりだけネクラな情念を感じさせてしまうマル・ウォルドロンの特異性も、また魅力でしょうか。

B-2 Dealin' (take-2)
 マル・ウォルドロンが書いたネクラのブルースで、ミディアムテンポでグルーヴしていくリズム隊と重厚なホーンの合奏が、如何にもハードバップになっています。
 アドリブ先発は、淡々として露払いの趣もあるマル・ウォルドロンですが、それに応えてシブイ味わいのフルートを聞かせるフランク・ウェスが絶妙! 切迫した息使いとか、所々にエキセントリックな悲鳴のようなフレーズを織り交ぜるところが、ニクイですねぇ~。
 続くポール・クイニシェットはリラックスした好演ですが、またまたジョン・コルトレーンが気の抜けたビールをガブ飲みしたようで、ここはちょっと虚しい感じ……。
 するとフランク・ウェスがテナーサックスに持ち替えて乱入してきます。これが実に良い味なんですねぇ~♪ タフテナー系のフレーズと音色が、時に熱く、また時に柔らかく織り成していくアドリブは、本当に聴き応えがあります。
 ちなみにこの曲も、take-1 が「ザ・ディーラーズ」に収録されていますが、ともに出来は可も無し不可もなしだと思います。

ということで、正直に言えば、ジョン・コルトレーンが参加したことによって生き残ったアルバムかもしれません。しかしモダンジャズ全盛期の味わいが深く楽しめるのも、また素直な感想です。

特に「Wheelin' (take-2)」におけるマル・ウォルドロンのアドリブソロとリズム隊の混濁したグルーヴは、驚異的! ここだけ聞きたくて、何度も針を戻したこともありました。

それとポール・クイニシェットやフランク・ウェスは、カンウト・ベイシー所縁のミュージシャンでもありますから、自然体でカンサスシティ風のグルーヴが微妙に滲み出ています。

そこで、もしギターが入っていたら、どんな雰囲気になるのか? 私は大いに気なって、不遜にもこれを聞きながら、自分でリズムギターを入れてしまった事もあると、告白しておきます。

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ジャズはアングラ

2007-10-02 17:06:48 | Weblog

最近、自分に珍しく正統派ジャズばっかり聴いています。

それはブログでも明らかですが、本日も――

Howard McGhee (Blue Note)

ハワード・マギーはモダンジャズ創成期から頭角を現していた黒人トランペッターですが、そのスタイルには中間派っぽい味わいが感じられて、私は好きです。

もちろんビバップ特有のバリバリなツッコミ感覚に溢れた演奏も得意ですからねぇ~♪

しかし同時に新しい展開にも敏感だったようで、マイルス・デイビスとギル・エバンスあたりが共謀していた例の「クールの誕生」から西海岸派ジャズの様な演奏も、リアルタイムでやっていたようです。

さて、このアルバムは名門「ブルーノート」から出された10吋のLP盤で、内容は既にSP盤として発売されていた演奏を纏めたものですが、それは1948年というビバップ全盛時代と1950年という、クール~ウエストコーストという新しいモダンジャズの流れが勃興した2つ時期のセッションですから、ハワード・マギーの良い部分が存分に楽しめる1枚になっています。

まず1948年のセッションには、ハワード・マギー(tp,p)、ファッツ・ナバロ(tp)、アーニー・ヘンリー(as)、ミルト・ジャクソン(vib,p)、カーリー・ラッセル(b)、ケニー・クラーク(ds) という、当時バリバリのビバップ野郎が勢揃い! 録音は10月11日とされています。

そして1950年1月23日のセッションには、ハワード・マギー(tp)、J.J.ジョンソン(tb)、ブリュー・ムーア(ts)、ケニー・ドリュー(p)、カーリー・ラッセル(b)、マックス・ローチ(ds) という、これまた興味深いメンバーが集いました――

A-1 Meclendo (1950年1月23日録音 / SP:1574)
 ラテンリズムのイントロから明るい楽しいテーマが始まり、アドリブ先発のブリュー・ムーアが流麗な白人スタイルを披露するあたりは、完全に西海岸派のノリになっていますが、サビとアドリブでバリバリのビバップ魂を発揮するハワード・マギーに拍手喝采!
 続くケニー・ドリューとJ.J.ジョンソンも好演ですから、なかなか良く纏まっています。

A-2 Lo-falme (1950年1月23日録音 / SP:1574)
 これも軽やかなモダンジャズで、ハワード・マギーはビバップ以前の花形トランペッターだったロイ・エルドリッチ直系のスタイルを聞かせてくれます。
 またJ.J.ジョンソンはテクニックよりは歌心優先、ブリュー・ムーアの浮遊感あふれるテナーサックも、非常に魅力的です。

A-3 Fluid Drive (1950年1月23日録音 / SP:1573)
 いきなり溌剌としたハワード・マギーのトランペットが鳴り響き、アップテンポの痛快な演奏が始ります。エッジの鋭いリズム隊も素晴らしく、柔らかくスイングしていくブリュー・ムーアを烈しく煽るところは本当にたまりません♪
 もちろんハワード・マギーは強烈なツッコミ! ビリビリに吹きまくって場を熱くすれば、続くJ.J.ジョンソンが痛快なテクニックを披露しています。破綻寸前のケニー・ドリューも良いですねぇ~♪

A-4 Boperation (1948年1月23日録音 / SP:558 / LP:1532)
 ちょっと重厚な演奏なんですが、面白いのはハワード・マギーとミルト・ジャクソンが専門ではないピアノ伴奏をやっていることでしょうか。それでもミディアム・テンポのグルーヴィなノリが、殺がれるはありません。
 まずイントロからのピアノがミルト・ジャクソンです。続くテーマ部分は2人のトランペッターを中心に、かなりエキセントリックな倍テンポのフレーズも含んだスリル満点な吹奏で、アドリブパートは先発がファッツ・ナバロ、コーラスの途中からハワード・マギーに受け継がれます。
 そしてアーニー・ヘンリーのアルトサックスを経てミルト・ジャクソンがヴァイブラフォンでアドリブを始めたところで、ハワード・マギーがピアノを交代していると終われますが、各人ともにスジを通した演奏が見事だと思います。
 ちなみにファッツ・ナバロはクリフォード・ブラウンにも影響を与えた歌心優先派の名人! 残念ながら早世していますが、残された演奏は音質の悪いものを含めて絶大な価値があるとされています。
 
B-1 I'll Remember Aprill (1950年1月23日録音 / SP:1572)
 お馴染みの定番曲が爽快なアップテンポで演じられますが、テーマ部分でメンバー各々の見せ場が用意され、ケニー・ドリューが素晴らしいアドリブに飛び込んでいくという、まさにモダンジャズの醍醐味が存分に楽しめる仕上がりになっています。
 う~ん、これはケニー・ドリューのリーダーセッションか!?
 実際、この日のセッションでは、4曲もオリジナルを提供しているのでした。 

B-2 Fuguetta (1950年1月23日録音 / SP:1572)
 そのケニー・ドリューが、またまた冴えたオリジナル曲を提供して大活躍した演奏です。リズム隊の弾みきった感じが最高ですし、ブレイクのピアノも鮮やかです。
 またテーマ部分でのホーンアンサンブルも見事で、このあたりが既にビバップを超越した雰囲気になっています。
 ハワード・マギーのアドリブも安定感がありますし、ブリュー・ムーアとJ.J.ジョンソンも実力を完全発揮!

B-3 Donnellon Square (1950年1月23日録音 / SP:1573)
 これまたケニー・ドリューのオリジナルで、アドリブも冴えまくりです。続くブリュー・ムーアも最高で、それはスタン・ゲッツとウォーン・マーシュの良いとこ取りという感じでしょうか♪
 肝心のハワード・マギーは中間派っぽいスタイルで押し通していますが、リズム隊のグルーヴが強烈なので、結果オーライだと思います。

B-4 The Skunk (1948年1月23日録音 / SP:558)
 ハワード・マギーとファッツ・ナバロが共作した景気の良いビバップ剥き出しのブルース曲です。
 まずアドリブ先発のアーニー・ヘンリーがチャーリー・パーカー直系の熱演で、なかなか素晴らしいですねぇ~♪
 続く流麗なトランペットはファッツ・ナバロ、珍しいミルト・ジャクソンのビアノソロを挟んでアドリブを受け継ぐのが、ハワード・マギーでしょう。2人のトランペットは共に溌剌として歌心も大切にした名演になっています。
 ちなみにここに収録されたのはSPマスターで、後に「ファッツ・ナバロ第2集(BN-1532)」として12吋LP化された時には別テイクに入れ替えされましたので、要注意です。

ということで、ちょいと時代遅れの感もありますが、ハワード・マギーの演奏はこのアルバム以降、ブルーノートでは12吋化されませんでしたので、貴重です。

しかも1950年のセッションでは、ブリュー・ムーアという素晴らしい白人テナーサックス奏者の快演が楽しめるのです。告白すれば、私はこのアルバムで虜になり、一時はコンプリートコレクションを目指したこともありました。もちろん挫折しましたが……。

肝心のハワード・マギーは、悪いクスリの影響もあって、度々演奏活動が中断されたりしましたが、その都度、復活盤を出しては注目され続けました。ただしそれは、マニア向けの世界という印象が強いと思われます。

なにしろブルーノートには、前述したファッツ・ナバロとの共演セッションも含めて、SP時代には傑作演奏が多く残れさていますし、10吋LP盤も2枚だされていますが、何故かハワード・マギー名義での12吋アルバム化が成されていません。

もしかしたらCDとして効率よく纏められているのかもしれませんが……。

こういうマニアックな世界も残されて嬉しいのが、アングラ音楽としてのジャズの楽しみだと思います。

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