goo blog サービス終了のお知らせ 

OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

偏愛してます

2007-06-30 18:37:57 | Weblog

単身赴任の快適さに、実家に戻るとペースが乱れるという我侭に陥っています。

本当はいけないことが分かっているんですが、片意地張ってしまう自分が情けない……。

ということで、本日は意地の1枚です――

Blue Serge / Serge Chaloff (Capitol)

不治の病で早世した白人バリトン・サックス奏者のサージ・チャロフは、全くレコーディングの少なさが残念なひとりです。

しかし残された演奏は、どれもが素晴らしく、このアルバムは最後のリーダーセッションを集めたものですが、ジャケットの素敵さもあって、偏愛している1枚です。

録音は1956年3月4日、メンバーはサージ・チャロフ(bs)、ソニー・クラーク(p)、ルロイ・ヴィネガー(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) というワンホーン体勢! 顔ぶれと録音時期からして東西入り乱れの面白さが白眉です――

A-1 A Handfull Of Stars
 バリトンサックス特有の重厚な響きを活かしつつも、軽妙洒脱なテーマメロディの解釈が素晴らしいです。けっこう消え入りそうな音使いとか、スカスカにソフトな音色、また逆にアタックの強い低音での呻き! もう全てが最高です。
 もちろんアドリブパートでの歌心とノリの軽妙さは唯一無二のスタイルで、同業のジェリー・マリガンとは一線を画する個性が、明らかになっています。
 またソニー・クラークが、これまた素晴らしいですねっ♪ イントロの作り方から地味な伴奏、そして歌心に満ちた粘っこいアドリブ! 何度聴いても飽きません。
 それとルロイ・ヴィネガーも言う事無しの快演ですし、フィリー・ジョーは自分の役割をしっかりと弁えているようです。終盤に4者がそれぞに見せ場のブレイクを披露し、ラストテーマに入っていくあたりの凄さは、地味ながら名手達の面目躍如でしょう。

A-2 The Goof And I
 一転してアップテンポの豪快な演奏です。
 アドリブパートは先発のソニー・クラークが小気味良くスイングすれば、フィリー・ジョーが抜群のクッションで後押しします。
 そしてサージ・チャロフは軽々と複雑なフレーズを吹きまくって痛快です! 決して濁らないソフトな音色が良いですねぇ。

A-3 Thanks For The Memory
 これはスローでじっくりと演奏される歌物で、サージ・チャロフのコントロールの効いたバリトンサックスの実力が存分に味わえます。強いアタックからソフトなサブトーンの響きまで、変幻自在の吹奏は驚異的! 歌心の豊かさも特筆されます。
 リズム隊の力強さも、流石に黒人トリオだと納得♪

A-4 All The Things You Are
 これが凄いです! アルバムの目玉演奏にして、数あるこの曲のモダンジャズバージョンでは、ベストテン級の名演だと思います。
 まずサージ・チャロフが自己主張するイントロからテーマ吹奏の崩し方、そしてアドリブパートの歌心とグルーヴィなノリは、天下一品です!
 リズム隊のハードバップな雰囲気も、実に良いですねぇ。まずソニー・クラークが、また自身の代表的な名演となる潔さ! ステックとブラシを使い分けて豪快かつ繊細なドラミングのフィリー・ジョーも最高ならば、定評あるウォーキングベースのルロイ・ヴィネガーはアドリブソロも絶妙です。
 あぁ、一期一会!

B-1 I've Got The World On A String
 B面に入っては、これも地味なスタンダード曲をじっくりと仕上げていくサージ・チャロフの大胆なバリトンサックスが楽しめ快演です。良くもまあ、ここまで楽器のコントロールが効くもんだと、心底、思いますねぇ。
 ちょっとハズし気味でもありますが、躍動的なフィリー・ジョーのドラムスに煽られてテンポを早くしていくあたりは、スリルがあります。
 まあ、そのあたりは、このリズム隊なればこそかもしれません。ソニー・クラークは相変わらず好調ですし、どっしりとしたルロイ・ヴィネガーの揺るがぬビートに感動したりします。

B-2 Susie's Blues
 快適なリズム隊がリードするハードバップのブルースなので、サージ・チャロフは軽快な中にも豪胆なフレーズも入れて奮戦しています。独特のアタックとかリズムに対する軽妙なノリは、本当に個性的で、早世が悔やまれますねぇ。
 リズム隊ではフィリー・ジョーが本領発揮のグッドオールド・エモーション♪ クッションの効いたスタイルは不滅の良さがありますし、これは代表的な名演のひとつでしょう。
 またソニー・クラークも十八番のフレーズを弾きまくり! 後年のネバリはほどほどながら、独特のマイナー感覚は、やっぱり魅力的です。

B-3 Stairway To The Stars
 オーラスは超スローテンポのバラード演奏で、サージ・チャロフがバリトンサックスの真髄を聞かせてくれます。それはコントロールの効いたサブトーンの響きであり、カタカタと鳴るキーワークの素晴らしさ、タンギングの超絶技巧、歌心とアドリブの構成力……等々、素人の思惑を超えたプロの必殺技がたっぷりです。
 リズムのグルーヴも申し分無く、何時までも聴いていたい気持ちの良さが、名盤の必須条件を提示しているのでした。

ということで、私的には大名盤だと思っているのですが、友人・知人関係は、私があまりこれを偏愛するので、呆れ顔です。

確かにバリトンサックスのブリブリ・ゴリゴリの魅力はありません。しかしそれが本来の魅力だなんて、誰が決めた!? と私は何時も反論しては、またまた呆れられている始末です。

ゆえに偏愛はますます強くなるという、依怙地のアルバムなのでした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする