今日は昼飯にカツサンドを食っていたら、中から金属片が出たっ!
で、一応、製造元に連絡したところ、同じカツが何箇所かへ出回っていて、騒ぎになってしまったです。もちろん私のところへは詫びに来たんですが、かえって恐縮というか……。
まあ、その業者は学校とか老人施設あたりとも取引があるらしいんで、悪い評判は困るんでしょうが、どうかマスコミにだけはという願いが切実でしたねぇ。こっちは別に特段の被害も無かったんですが、あまりのペコペコ姿勢には逆に同情してしまったです。
給食屋もたいへんです。
ということで、本日は密やかな和み盤を――
■Tranquility / Lee Konitz (Verve)
白人アルトサックス奏者のリー・コニッツは、クール派の代表選手というイメージですが、決して固定観念に縛られないスタイルだと、私は思います。
もちろん、聴き手を突き放したようなクールな煌きを発散するのは得意技で、余人の付け入る隙が無い完璧主義は絶品ですが、そこに「和み」や「やすらぎ」を滲ませた演奏を聞かせてくれるようになった1950年代中頃の作品こそ、私が一番好きなリー・コニッツです。
このアルバムタイトルは「清らかな安らぎ」という意味でしょうか、そのとおりにアンニュイな気分で和む名演集♪
録音は1957年10月22日、メンバーはリー・コニッツ(as)、ビリー・バウアー(g)、ヘンリー・グライムス(b)、デイブ・ベイリー(ds) というビアノレスのカルテットで、ドラムスとベースに黒人を起用しているのが、ミソです――
A-1 Stephanie
ボン、とベースが1音なって、すぐに泣きそうになるほど淋しいメロディを、リー・コニッツがゆっくりと吹いてくれます。もちろん本人作曲ですから、ツボを外さないテーマ変奏のアドリブが素敵♪
また寄り添うビリー・バウアーのギターが見事過ぎます!
あぁ、消え入りそうに歌うリー・コニッツのウォームなアルトサックス! というか、気分はロンリーのイジケ節でしょうか……。
当時のLPはA面のド頭に一番良い演奏を持って来ているので、これは納得の名演です。
A-2 Memories Of You
そして続くのが、これまた胸キュンのスタンダード♪
ここではビリー・バウアーのギターがリードして、リー・コニッツのテーマ吹奏をせつなく誘い出すという巧みの技が光ります。
もちろんリー・コニッツも期待に応えての孤独な泣き虫に撤します。それはクール云々よりも、さらに基本的なジャズそのもののアドリブというか、とにかく即興とは思えない歌心ばっかりのアドリブフレーズは最高です。
これもゆったりしたテンポながら、淡々としたベースとドラムスが的確なビートを送り出していますから、ダレていませんし、ビリー・バウアーは言わずもがなの神業伴奏です。
A-3 People Will Say We're In Love / 粋な噂をたてられて
これはシブイ選曲です♪
男女の歌物デュエットが多く、インストバージョンは極めて珍しいながら、このバンドは素晴らしい快演を聞かせてくれます。
それは軽快なテンポで絶妙の節回しを聞かせるリー・コニッツの資質が最大限に発揮され、その遠慮がちな姿勢は、クールでありウォームな味わいがたまりません。このあたりは、当時としても、かなり斬新なフレーズ展開だったんじゃないでしょうか。決して突っ込まない奥深さと独特の浮遊感は、当にリー・コニッツ!
またビリー・バウアーが、珍しくもバリバリと弾きまくっていますが、これは黒人リズム隊に刺激されてのことだと思います。ベースソロのバックで聞かせるコード弾きも味わい深いですねぇ。
A-4 When You're In Love (= When You'er Smiling) / 君ほほえめば
アルバムジャケットには「When You're In Love」と記載されていますが、これは有名スタンダードの「When You'er Smiling」です。
もちろんこの曲も快適なテンポで演じられ、特にデイブ・ベイリーのブラシが最高に気持ち良く、ビリー・バウアーの伴奏も絶品のコード付け♪ ですからリー・コニッツも得意技のウダウダ節を連発しながら、テーマメロディのツボを上手く解釈したアドリブを聞かせてくれます。
ちなみにこの曲は同時期にアート・ペッパー(as) も演じていますから、聴き比べるのも面白いかもしれません。
そしてラストテーマは、師匠のレニー・トリスターノ(p) の教えを守った変態ユニゾンで締め括るという、この手が好きなファンを感涙させる仕掛けになっているのでした。
B-1 Sundy
これも有名スタンダードの歌物を、穏やかなテンポで演奏していくバンドのノリが最高です。リー・コニッツの歌いまわしは脱力系の気持ち良さですが、伴奏のビリー・バウアーが緊張感たっぷり! 個人的には、その名人のギターばかりに耳がいってしまいます。
また要所で小技をキリリと極めるデイブ・ベイリーのブラシも鮮やかです。
B-2 Lennie Bird
これは師匠レニー・トリスターノの有名オリジナルで、ビバップをクールに変換したアドリブ優先曲ですから、弟子のリー・コニッツとビリー・バウアーにとっては張り切る以外に道はありません。
デイブ・ベイリーのビシッとしたステックに煽られて、複雑怪奇なテーマを颯爽とユニゾンしていく2人の快演を支えるのが、ヘンリー・グライムスのグイノリベース! 要所でのツッコミもかなり烈しくなっています。
もちろんリー・コニッツは、既に述べたようにクールスタイルだけではなく、ヒステリックな音出しとか、相等にエキセントリックなフレーズで迫っていますが、これこそ当時の最先端モダンジャズだったと思われます。
B-3 The Nearness Of You
ホギー・カーマイケルが書いた和みの名曲を、ここでは通常よりもテンポを上げたスインギーな展開で聞かせてくれます。
そして前曲では烈しい一面を聞かせたリー・コニッツが、ここでは和み優先の脱力系美メロのアドリブに撤して、泣きたくなるほどに、せつないです。あぁ、こんなスタイルは、本当にこの人だけの個性でしょうねぇ。ちょっと分かり難いところもあるんですが、一端虜になると、もう、これでなければ感じないという、アブナイものを秘めています。
もちろん伴奏のビリー・バウアーは、全てお見通しのオカズ入れ♪ ギターだけ中心に聴いても、充分に感動出来るんですねぇ~♪ アドリブソロも歌心があって、なおかつ周囲に気を使ったようで、憎めません。
B-4 Jonquil
オーラスは、そのビリー・バウアーのオリジナル曲で、ムード満点なコード弾きに導かれたスローな演奏になっています。知的なテーマメロディが、時としてユーミンの曲を思い出させるというのは、私の勝手な思い込みですが……。
で、リー・コニッツは、そのあたりを思う存分に孤独感で彩ったアルトサックを聞かせてくれます。もちろんビリー・バウアーのギターも絶品♪
ジンワリとしたビートを送り出しているデイブ・ベイリーにも拍手喝さいでしょうね。
ということで、派手さは無いアルバムなんですが、虜になったら最後の1枚という感じです。特にA面最初の「Stephanie」は永遠の名曲・名演かと思いますが、いかがなもんでしょう?
実はジャズ喫茶でも、ほとんど鳴っていた記憶が無いんですが、我国ではヴァーブの再発がある度にしぶとく出続けていますから、それなりの人気盤かと思います。