「金で買えない人生を送る」ということは素晴らしいかもしれませんが、自分のこれまでの人生は、金に支配され続けです。
仕事をするのだって、欲望に後押しされているわけですし……。
今朝はやたらに早く目が覚めて、注文して届いていたブツの梱包を解いたのですが、買ってしまうと安心してしまう自分が、なんだかなぁ……。
ということで――
■Worktime / Sonny Rollins (Prestige)
アドリブの天才たるソニー・ロリンズが残した録音の中でも、特に豪放磊落な演奏が楽しめる大名盤! この人の最高傑作は「サキソフォンコロッサス(Prestige)」と衆目が一致するところですが、同時期に行われたセッションは、それぞれに味わい深い名演ばかりですから、何が愛聴盤になるかは、十人十色、その日の気分も大きく関係してくるでしょう。
で、本日の私は、このアルバムがどーしても聴きたくなったわけです。理由は尋ねてほしくありませんが――
録音は1955年12月2日、メンバーはソニー・ロリンズ(ts)、レイ・ブライアント(p)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) という気心の知れた面々です。もちろんロリンズ、モロウ、ローチは当時のバンド仲間ですし、レイ・ブライアントは後に新編されたマックス・ローチのグループに入るわけですから、コンビネーションの良さは保証付き――
A-1 There's No Business Like Show Business / ショウほど素敵な商売はない
ソニー・ロリンズというよりも、ジャズ史上に残る名演とされています。う~ん、確かに何度聴いても凄いとしか言えません!
緩急自在の豪快なノリと太い音色でウネリまくるソニー・ロリンズはもちろんですが、何よりも凄いのは、そういう我侭な天才を支えて煽るリズム隊じゃないでしょうか? けっこう意地悪く突っ込んだり、外したりするソニー・ロリンズを無視して自分達だけでやっている雰囲気が、逆に天才を刺激しているように感じられます。
アドリブパートでも小気味良いレイ・ブライアントが素晴らしく、またシャープなアップテンポを敲き出しているマックス・ローチは、ドラムソロでますます真価を発揮していますし、微動だにしないジョージ・モロウのベースも一級品!
ですからソニー・ロリンズという天才でも必死にならざるをえないところに、溜飲が下がる思いなのでした。ラストテーマ最後の部分の咆哮に意地が感じられます。
A-2 Paradox
これがまたまた強烈な演奏で、曲はソニー・ロリンズのオリジナル! そのタイトルどおりに逆説のノリが凄まじい限りです。リズム隊はラテンビートを主体にしており、テーマ部分から丁々発止の掛合いが楽しくて、屈折したテーマメロディに爽快感が出ています。
もちろんアドリブパートはグルーヴィな4ビートで、グイノリのジョージ・モロウとポリリズムっぽいマックス・ローチのゴッタ煮がたまりません。
そしてソニー・ロリンズは案外落ち着いた演奏をしているんですねぇ~。でも奥底では物凄いことをやっているんでしょうが、私のようなド素人には分かりかねる深みが、なんとなく感じられます。
またレイ・ブライアントは歌心満点の展開を聞かせてくれますが、途中からマックス・ローチとソニー・ロリンズの2人芝居になるんで、ちょっと勿体無い中途半端です……。
A-3 Raincheck
デューク・エリントン楽団の参報役だったビリー・ストレイホーンが書いた名曲を、ソニー・ロリンズとマックス・ローチは楽しいアドリブ主体のモダンジャズに仕立て上げています。
まずテーマ部分から2人の掛け合いが楽しく、スリル満点♪ そしてアドリブに専念するソニー・ロリンズは、十八番のフレーズとノリの大盤振る舞いで、これぞソニー・ロリンズという快演になっています。
もちろんマックス・ローチが一歩も譲りません。堂々の渡り合いから、その場を空気を緊張感いっぱいにしていくのです。
しかし続くレイ・ブライアントが、繊細なピアノタッチとアドリブメロディの妙をたっぷりと聞かせてくれますから、ご安心下さい♪ なかなかバランスのとれた名演だと思います。
B-1 There Are Such Thing
B面に入ってはソニー・ロリンズが己のテナーサックスの魅力を全開させたスローな演奏を聞かせてくれます。素材はフランク・シナトラの十八番になっていますが、私はこの演奏で、テーマメロディを知りました。ソニー・ロリンズの大らかで気配りのある解釈は本当に素敵だと思います。けっこう破天荒なフレーズも吹いているんですが、今、テーマのどこを吹いているか、ちゃ~んと分かる歌心が凄いですねぇ~♪
またマックス・ローチが細やかなブラシの使い方で、流石と思わせます。ソニー・ロリンズのアドリブフレーズを先回りしてピッタリのオカズを入れてくるんですねぇ~♪ 天才は天才を知るってやつでしょうか!
それとレイ・ブライアントが、ここでも泣きそうになるほど素敵なアドリブを聞かせてくれます。「間」の取り方が消え入りそうな感覚で、私の琴線を刺激するのでした。
B-2 It's Allright With Me
オーラスはアップテンポの大ハードバップ大会です♪
まずお馴染みのメロディを適度に崩しながら突進するソニー・ロリンズとリズム隊の対決がド迫力ですし、結果的にマックス・ローチに引張られ気味のソニー・ロリンズが、最後には立場を逆転させていくストーリーは、考え抜いていたものでしょうか、とにかく手に汗握る名演になっています。
クライマックスのソニー対ローチの一騎打ちは、本当に熱くなりますよっ!
ということで、決定的な名盤選には必ず登場するアルバムなんですが、欠点は聴いているうちに、ここでクリフォード・ブラウン(tp) が出たらなぁ……、と思ってしまうことでしょうか? 少なくとも私はそうなんで、これの次にはブラウン&ローチの盤を出してしまうのでした。