OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

夏のアルバム

2007-06-18 17:50:18 | Weblog

今の赴任地は雪国の所為か、梅雨入りが遅い感じで、今日も気持ち良く晴れました。そして暑いですねっ!

爽やかに暑いという、私が一番好きな天候です。

こういう時は熱いネギラーメンで汗をかきながら、こんなアルバムを聴いています――

Native Dancer / Wayne Shorter (Columbia / Sony)

1975年に出た、ウェイン・ショーター久々のリーダー盤です。

というのも、この人はご存知ウェザーリポートのバンド活動に集中していたからですが、確かこのアルバムと同時期にバンド名義の「テイル・スピニン」なんていう作品も発売されたと記憶しています。

当時はクロスオーバーがフュージョンと呼び名を変えられて大ブームの上昇期とあって、イノセントな4ビートのジャズは片隅に追いやれていましたから、いきおいジャズ喫茶でも、その手の新譜が鳴りまくりでした。

で、その中で、一味違った感覚だったのが、このアルバムです。

それはラテンフュージョンやファンキーミュージック、そしてジャズロックなんていう言葉とは一線を隔するゴッタ煮演奏がびっしり! しかも何度聴いても最高に気持ち良い「音」なんですねぇ~♪

録音は1974年9月、メンバーはウェイン・ショーター(ss.ts,key)、ミルトン・ナシメント(vo,g)、ハービー・ハンコック(key)、ワグネル・チーゾ(key)、デビッド・アマロ(g)、ジェイ・グレイドン(g)、デイヴ・マクダニエル(b)、アイアート・モレイラ(per,ds)、ロベルト・シルバ(per,ds) 他となっていますが、ちょっと初見のメンツが気を引きます。

実はこの作品はウェイン・ショーターをリーダーとしていながらも、本当のところはミルトン・ナシメントとの共演アルパム! これはウェイン・ショーターの強い希望で実現したと言われています。

ちなみにミルトン・ナシメントはブラジルのミュージシャンですが、1968年頃からアメリカでも活動し、業界からは高い評価を得ていた才人です。ウェイン・ショーターやハービー・ハンコックとは、彼等がマイルス・デイビスのバンド時代からの付き合いがあったらしく、ここにようやく、コラボレーションが実現したというわけです。そして演目はミルトン・ナシメントとウェイン・ショーター、そしてハービー・ハンコックが書いた名曲ばかり――

A-1 Ponta De Areia
A-2 Beauty And The Beast
A-3 Tarde
A-4 Miracle Of The Fishes
B-1 Diana
B-2 From The Lonely Afternoons
B-3 Ana Maria
B-4 LiLia
B-5 Joanna's Theme

まずA面ド頭の「Ponta De Areia」が、何と言っても新鮮♪ 呪文のようなファルセットボイスが、不思議な楽園的ムードのメロディを歌います。ブ~ンと入ってドンタンドンタンいくリズム隊も摩訶不思議な楽観主義で、実に和みますねぇ~♪ そして、一呼吸置いた後のウェイン・ショーターのソプラノサックスが、心に滲みます! もう、これ1曲で、未知の桃源郷へ旅立ったような気分になるのです。

さあ、それから後は夢見心地♪ マヌケてファンキーな「Beauty And The Beast」や爽快な「From The Lonely Afternoons」は、泣きそうになるほどに気持ちが高ぶりますし、ソフト&メロウな「Tarde」や「Ana Maria」も最高です。もちろんウェイン・ショーターのサックスは冴えまくりで、1音とも無駄な音は出していなと思います。

そのあたりは静謐な「Diana」や比較的4ビートに近い「LiLia」で、ますます顕著になっていますが、共演のバンドメンバーも、またしかりです。特にミルトン・ナシメントが連れて来たワグネル・チーゾやロベルト・シルバは、要となる働きだったんじゃないかと思います。

と言うのは、ミルトン・ナシメントの作曲や歌い方は、明らかにアメリカの大衆音楽では括れない新鮮さがありますから、自然体でそのグルーヴを出すには、常にいっしょにやっているバンドメンバーが必要だったでしょう。

もちろんハービー・ハンコックのプレイも聴き逃せません。自身が書いた「Joanna's Theme」は生ピアノでの独奏から、慈愛に満ちたウェイン・ショーターのサックスが入って大団円を迎えるという厳しくも心和む名演になっています。

そしてミルトン・ナシメント! その作曲能力は抜群ですねぇ~! 聴きなれたアメリカンポップス、ユダヤ人モードのスタンダード曲には無い節回しが、違和感を通り越して琴線に触れます。ドラマチックな「Miracle Of The Fishes」は反権力の歌らしく、ウェイン・ショーターの熱血なテナーサックスも相まって、素晴らしい演奏になっています。

ということで、全てが素晴らしいトラックばかりなんですが、その曲の配列も実に練られていると思います。個人的にはA面を聴き終えて、B面にひっくり返す、そういう儀式を経て聴き通すのが礼儀かと思っています。ジャケットも素晴らしいですからねぇ~♪

とは言え、実はCDも持っていて、車や仕事場でも今の時期には鳴らしまくっているのでした。自己矛盾するほどに、夏のアルバムっ!

コメント (2)
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