OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

不遇時の傑作

2007-06-04 19:26:26 | Weblog

覚悟はしていましたが、月曜日、つまり今日はメチャ、忙しかったです。

昼飯食う時間もなくて、いまデスクの片隅にその時のソボロ弁当が残っています。

なんだかなぁ、と思いつつも、心地良い疲労感もあったりして……。自分は、やっぱり仕事中毒なんでしょうか……? 人生を楽しめない体質が恨めしいやら……。

ということで、本日は――

Duke Jordan Trio (Swing / Vogue)

晩年は人気ピアニストだったデューク・ジョーダンも、モダンジャズ全盛期の1950~1960年代は不遇でした。

それはなにも、本人の実力が劣っていた所為ではなく、世渡りが下手とか、そういうことだったと言われていますが、モダンジャズ創成期にチャーリー・パーカー(as) のバンドレギュラーだった史実に、些かの翳もありません。

このアルバムは、そういうデューク・ジョーダンに憧れて渡米してきたフランス人ピアニストのアンリ・ルノーがプロデュースした逸品ですが、もちろんその時のデューク・ジョーダンはジャズの仕事が無かったと言われています。

つまりアンリ・ルノーにしたら、そんな不条理な境遇にある、この名手の姿を記録する情熱に駆られていたのでしょう。発売はフランス優先で、アメリカや日本で陽の目を見たのは、1970年代に入ってからという事情が、全てを物語っていると思います。

録音は1954年1月28日、メンバーはデューク・ジョーダン(p)、ジーン・ラミー(b)、リー・エイブラムス(ds) というシブイ面々です――

A-1 Just One Of Those Things
 テーマ部分のアレンジが、なかなか面白いですが、アドリブパートに入ると、デューク・ジョーダンならではの「泣き」の美メロが尽きること無く溢れ出てきます。
 アップテンポで安定したビートを生み出しているドラムスとベースも心地良いですが、何故かデューク・ジョーダンのビアノタッチは、何時も音色がチープに聞こえてしまいますねぇ???

A-2 Embraceable You
 チャーリー・パーカーのバンド時代に不滅の名演となった曲の再演なので、もちろん、あのイントロと同じフレーズにグッと惹きつけられます♪
 そして哀愁に満ちたテーマの変奏とアドリブの展開は、もう涙が止まらない雰囲気です。ビートの強いベースも実に良いですねぇ。
 これこそ、デューク・ジョーダン! と独り納得しています。

A-3 Minor Escamp
 タイトルが変えてありますが、実はデューク・ジョーダンの代表曲「Jordu」です。それには、きっと何かがあったんだと思いますが、演奏はミディアムテンポで哀愁とファンキーの両立が存分に楽しめます。
 というか、ここで聴かれるアドリブの存在は、後々までの基本になったような完成度の高いもので、実際、デューク・ジョーダン自身による幾多のバージョンが残されていますが、中身はだいたい、これ同じになってしまうほどです。

A-4 Scotch Blues
 これもデューク・ジョーダンが書いた代表曲!
 ピアノ鍵盤上で踊る力強い左手と軽妙な右手のバランスが素晴らしいテーマとアドリブの妙♪ もちろん独特の哀愁とマイナー感覚が、たまりません。
 しかもドラムスとベースが、なかなか強いビートを出していますからねぇ~♪ 演奏が進むにつれ、現場はハードパップ色に染まっていくのでした。

B-1 Confirmation
 一応、チャーリー・パーカーのオリジナルとなっていますが、イントロはいろんなセッションでデューク・ジョーダンが十八番としているメロディ展開で、そのまんま、アドリブに入っていくという痛快な演奏です。
 それはもちろんアップテンポで全てが「ジョーダン節」という「泣き」の連続です。あぁ、これが私の求めているデューク・ジョーダンなんですねぇ~~~♪

B-2 Darn That Drame
 ちょっと陰鬱な雰囲気のスタンダード曲とあって、ここでのデューク・ジョーダンは些か湿っぽい雰囲気を醸し出しています。全体としてはテーマメロディの変奏に終始するんですが、ビバップのエキセントリックな面よりは、あくまでも「歌」に拘った、どちらかというと、テディ・ウィルソンの影響が強いと感じます。
 それが古いとか時代遅れとか、そういうところに落ちていないあたりに、デューク・ジョーダンの真の実力が窺い知れると思うのですが……。

B-3 They Can't Take That Away From Me
 これもスロー~ミディアムのテンポで、歌心優先の演奏が心地良い限りです。
 と言っても、けっして雰囲気だけで弾いているのではありません。これがデューク・ジョーダンの本質なんだと思います。
 その自然体のジャズフィーリングが、ファンに支持されるんじゃないでしょうか? 少なくとも私は、そうです。テーマメロディよりも素敵なアドリブフレーズとフェイクの妙♪ 全く最高ですねっ♪
 飛び跳ねるような強気のフレーズ展開は、後年では徐々に聴かれなくなってしまう、この時期だけの妙技だと思います。

B-4 Wait And See
 これは私の大好きなデューク・ジョーダンのオリジナル曲です。あぁ、この「泣き」のメロディ展開とコード進行が、たまりません!
 もちろんそれは、アドリブパートで、尚一層、輝きを増すのです♪
 演奏全体には、やはりテディ・ウィルソンあたりのスイングビート系の色合が強く、しかし、決して古めかしいところが感じられないという、これはモダンの極北という出来だと思います。

ということで、このアルバムのオリジナルは10吋盤なので、曲毎の演奏時間は短いのですが、その密度の濃さと出来の良さは最高です♪

ちなみにオリジナルの仏盤は、現在では物凄い高値になっていますから、所有盤はもちろん日本プレスの再発盤ですし、最近はCDで鑑賞しているという、つまり私にとっては珍しく中身の方に強い愛着がある名演集なのでした。

コメント
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